2007.07.10
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カテゴリ: ウォール街から
 先週、楽天証券8周年記念セミナーで講演させていただいた際、「問題はサブプライムではなくCDO(債務担保証券)にある」事を、時間を長めに取って説明させていただきました。真の問題の所在を明らかにし、少なくとも漠然とした不透明感を抱く事のないようにしていただきたかったからです。

 サブプライム問題があるから米国株式相場は下落する-メディア等でも最近よく目にする論調ですが、これは恐らく誤りです。1994年から数年間は、アメリカは不動産不況の真っ只中でした。しかしそれから2000年までに米国株式はS&P500指数で見て約3倍になりました。その 2000年、アメリカは再度不動産不況の中にありました。2000年から2005年株式市場が振るわない時期、アメリカでは空前の不動産ブームが起きました。ダウが市場最高値を更新するようになった2006年以降、再び不動産市場は不況に入っています。

 これをご覧になってお分かりいただけるように、不動産が活況を呈しているような時期というのは、そもそも株式市場には期待できないのです。不動産市場の調子が良いのは恐らくその前に米国景気が不振で、金融緩和時期があったからです。逆に言えば、不動産市場が不況になって初めて本格的に株式相場が上昇するのが通常のパターンです。このコラムでも2005年に不動産がピークである事(第124回 「終わり」が始まった住宅ブーム(2005年4月11日))、2006年は米国株式を買うチャンスである事については繰り返し申し上げてきました。

 今騒がれているサブプライム問題は、債券市場では1年半ほど前から指摘されていた問題で、我々にとっては特に新しいニュースではありません。通常のサイクルでも5-6年に一回は不動産不況は来るものです。ましてや、不動産市場が不況になって初めて株式市場の上昇が本格的に始まるというのは歴史の物語っているところです。ですので「サブプライム問題で米国株式が下落する」という指摘にはかなり違和感があるのです。

 日本では銀行が不良債権問題に長く苦しんだ経験から、サブプライム問題が同様の問題に発展するのではないか、という懸念があるのかもしれません。しかし根本的に違うのは、米国の金融の中心は直接金融だという事です。度々指摘させていただいてきましたように、サブプライム住宅ローンはその殆どが証券化されており、そのパフォーマンスによって銀行貸出状況が影響を受けないよう仕組みが出来上がっています。

 サブプライム・ブームに踊った業者が淘汰されるのは当然の結果です。また前号で解説させていただきたCDO市場の関係者にはこの先かなり厳しい試練が待ち受けている事でしょう。確かにこの問題は、関係している会社、人々にとっては非常に大きな問題である事は間違いありません。一方関係のない会社はどうでしょう。むしろサブプライム問題が、これまで金融引き締め一辺倒であった連銀の頑固な理事達を再考させるきっかけにでもなれば、米国株式の上昇はさらに強固なものになるのではないでしょうか。





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最終更新日  2007.07.13 15:29:46


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