こころのオアシス

こころのオアシス

May 30, 2011
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という。
3・11大災害は、地震・津波・原発という
人類史上、未曾有の複合大災害である。
被災体験をしたどの生徒にも、大なり小なり、
何らかの心的外傷をもたらしたものと考えられる。
殊に、自我強度の脆弱な子や「うつ」的な気質を持った子、
広汎性発達障害の子などにとっては、
深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)発症の危惧がある。


PTSDは被災者に必ず出現するものではなく、
95年の阪神大震災後の子どもを対象とした調査では、
2ヶ月時で13%、6ヶ月時には9%の出現率であった。
3・11後の福島市の避難所でも、やはり同程度の出現率が見られた。
大雑把に言えば、被災者の1割弱に出現すると考えたらいいかもしれない。

PTSDには主に3つの徴候が1ヶ月以上継続して観られる。

1.フラッシュバック
2.関連刺激の回避
3.過覚醒

1.フラッシュバック (flashback) とは、強い心的外傷(trauma)を受けた場合、
後にその記憶が、突然、鮮明に思い出されたり、夢に見たりする現象である。
フラッシュバックには、恐怖感や不安感を伴い、恐ろしい出来事や体験した苦痛が、
何度もよみがえったり、それを生々しく再体験する。
3・11以後、巨大地震や津波に襲われる悪夢を何度も見る、というケースが多い。
ただし、繊細な子では、直接経験していなくとも、
テレビやパソコンなどで津波の映像を見て、
二次的な形で悪夢を見るケースもある。

2.関連刺激の回避とは、災害を想起させるものを避けたり、
不安になると無関心・無感動というような反応性の麻痺が起こったりすることである。
実際に津波に巻き込まれた子は、テレビで津波の画像を見るのも、
話をするのも忌避する傾向がある。

3.過覚醒とは、恐怖やショックを受けると
脳は興奮して緊張状態が続き、入眠困難や中途覚醒などの睡眠障害が生じたり、
落ち着きがなく、集中力が低下し、些細なことで驚愕する、などの行動が観察される。

他にも3・11災害で、PTSDを思わせる徴候としては

・成績が下がる
・登校意欲、活動意欲がなくなる
・過食・拒食がおこる(体重の増減)
・対人関係が悪くなる
・不自然に甘えた行動(退行)
・孤立感や疎遠感を感じる
・自分ばかり助かって罪悪感を感じる

 などがあるが、一過性である場合もあり、1ヶ月以上継続しているときには
PTSDを疑い、スクールカウンセラー(SC)に報告するか、
SCがいない場合は、保護者に連絡し精神科受診を奨めたほうがよい。
(ただし、心療内科を奨める場合、個人クリニック等で心療内科を標榜している内科医は
 専門外なので、精神科医のいる心療内科を奨めていただきたい)

PTSDはトラウマの程度が軽いものであれば、
一過性のものとして4週間以内でほぼ収まるものだが、
トラウマが重篤な場合には年単位かかることもある。
また稀に、外傷後、1年や2年後に発症するケースもあるので留意されたい。
3・11では、津波被害で家屋を失ったり、肉親を亡くした、
というのは重篤な対象喪失のケースといえる。

原発事故による放射能汚染は、目に見えず有害なものが、
何年も長期にわたって影響を及ぼすものなので、
これも深刻なトラウマを形成しやすいといえよう。
殊に、避難地区から退避してきた生徒たちは、
自分の家や故郷、母校などの喪失体験がトラウマになりやすい。

ふだんから知覚過敏な傾向があり、
認知の偏った広汎性発達障害の子は、
余震でパニック行動を起こしやすい。
実際にいくつかのケースが報告されている。

PTSDの症状は、うつ病とも似ていて、
実際に抗うつ剤(SSRI)で軽快する場合も多いので、
やはりSCや精神科医にリファーするのがベストである。
参考に「うつ病」の特徴をあげておく。

「うつ病」の主な症状
・睡眠障害
・気力の減退、無気力
・哀しい気分、涙がこぼれる、絶望感
・疲労感、脱力感
・身体の不調感(不定愁訴)
・食欲不振(過食の場合もある)
・人生の敗北感、失敗感
・集中力の低下
・貧困妄想
・自罪的感情
・希死念慮





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Last updated  May 30, 2011 08:22:22 AM


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