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世界初のカメラ
武庫川女子大学教授 丸山 健夫
一八五三年、黒船で日本にやって来たペリー。彼の日本での業績は、つれてきた画家ハイネとカメラマンのブラウンによって、視覚的に記録された。カメラが発明される前、公式映像記録は画家の仕事だった。それがペリーの頃には、カメラも台頭してきたというわけだ。おかげで私たちは、江戸時代の日本の姿をビジュアルに見ることができる。
ペリー艦隊が使ったのは、ダゲレオタイプという世界初のカメラだ。フランスのニエプスが一八二二年ころにその技術をほぼ作り上げ、ダゲールとの共同研究でそれが完成する。エニプスも評価されてよいはずだが、ダゲールの名だけを取り、日本では少しなまってダゲレオとなった。
ダゲレオタイプでは、シャッターを操作するとレンズが開き、被写体は長い間じっとすることが要求された。出来上がった写真も、左右が逆になった。逆になる事実を知る賢い武士は、写真を撮るときだけ着物の前合わせを逆に、刀を右にさし直したという。
当初、カメラの発明は画期的だったのにもかかわらず、特許の買い手がなかった。だが最後に、フランス政府が買い上げてくれた。そして七月革命後のリベラルな思想を持つ当時のフランスの政府は、一八三九年、この特許をオープンにした。人類共有の財産だという考え方だろう。この特許技術公開によって、人類はビジュアルに情報を伝える手段を得た。公開は世界に多大な恩恵をもたらした。
二〇二〇年、新型コロナウイルスのワクチンの完成が近いという。タゲールがその対価を受け取ったように、開発者の努力は報われるべきだ。その上で、技術が公開され、世界の数多くの人々の生命を救う、人類共有の財産になってほしいものだ。
【すなどけい】公明新聞 2020.11.13
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