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日本でもデブリの定義付けを
尾松 亮
チェルノブイリ法の約束
ウクライナは「チェルノブイリ廃炉法」( 1998 年 12 月成立)で、チェルノブイリ原発 4 号機に設置された「新シェルター」を、「原子炉解体・デブリ取り出し」用施設として建設・運用することを義務付けた。さらに 2009 年に設立した「国家廃炉プログラム法」では、 100 年を要する廃炉工程を定めた。シェルター内部の石棺解体、デブリ取り出し、敷地のクリーンアップという完了要件を定め、政府による最終的な関与を約束している
こうしたチェルノブイリ廃炉法が定める工程と比較するとき、福島第一原発では、その廃炉工程を巡る制度的な不備が浮き彫りになる。
福島第一原発では事故から 11 年以上が経過した。政府と東京電力のロードマップでは 2011 年 12 月から最長 40 年で廃炉を終了させる目標が示され、今年 22 年末まで溶け落ちた燃料デブリの取り出しを開始する計画である(なお今月、東電は 23 年度後半に延期すると発表)。
しかし、廃炉に残るデブリをすべて取り出し終える見通しはない。また取りだしたデブリの最終処分についても決まっていない。
この燃料デブリはだれの責任でいつまで補完し、最終的にどこで処分するのか。日本では燃料デブリを「放射性廃棄物」として位置付ける規則がなく、そのために政府と東電に場当たり的な対応を許すことにつながっている。
そもそも政府や東電の資料で「燃料デブリ」というとき、その用語の定義も曖昧だ。
「燃料デブリ」は、「燃料と被覆管等が溶融し再固化したもの」と説明されている。しかし「被覆管」以外の物質と溶融している場合はどうなのか。「燃料デブリ」の今後の定義によっては、一定量の溶融燃料などを含むがれきが通常の廃棄物として選別される可能性もある。
対照的にウクライナでは、「国家廃炉プログラム法」で、「燃料デブリ(燃料含有物)」を明確に「高レベル放射性廃棄物」と位置付け、「放射性廃棄物」である燃料デブリが管理不能な状態で事故炉内部に残っている現状は、違法・規則違反常態としている。ウクライナ政府が、今なお「デブリ取り出し・安全貯蔵」を目指し続け目指し続けているのは、「デブリ=放置してはいけない放射性廃棄物」と法律で決まっているからだ。
日本でも、燃料デブリを高レベル放射性廃棄物として最終処分まで義務付ける法整備を急ぐ必要があるだろう。
(廃炉制度研究会代表)
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