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放出ゼロへ継続し戦略を採択
尾松 亮
海洋汚染の削減課す条約
OSPAR条約( 1998 年発効)は、放射性廃棄物の海洋放出のゼロを目指し、問題となる放射性物質の削減を締約国に義務付ける。締約国は定期的に放射性物質の海洋放出量を報告し、敬屋的に汚染削減技術の開発と導入に努める。
しかし、 98 年に採択された「 2020 年までに放射性廃棄物の海洋放出を限りなくゼロにする」という目標(シントラ宣言)は、 2023 年現在でも達成できていない。今後締約国はなにに向けてどのような取り組みを行うのか。
21 年 10 月、ポルトガルで行われた会議において、締約国らは 30 年に向けた新戦略((北東大西洋環境戦略(NEAES)2030)を採択した。同戦略は、 30 年に向けた国連SDGs達成に向けた取り組みとして位置づけられ、生物多様性、海洋汚染、気候変動という三つの課題に同時に取り組む方針を示す。
海洋関係における放射性物質蓄積をさらに減少するに際して障害となる問題を 25 年までに特定する、 27 年までに放射性物質流出を防ぐため追加対策を策定する、 23 年時点の報告結果を精査し 28 年までに海洋汚染の測定・評価法の問題を改善するなど、中間段階での目標も設定された。
22 年 4 月に開催された放射性物質小委員会では、上記の 30 年に向けた戦略の実現に向けた戦略の具体的な行動計画が審議されている。今後のさらなる汚染削減に向けて重要な課題の一つとなっているのが、分離処理の難しいとされるトリチウム汚染である。
その前月に行われた小委員会会議では、スウェーデンと英国がトリチウム汚染削減のための
利用可能な最良の技術」(BAT)の検討状況を報告した。それらの報告によれば、現時点で原発や再処理工場向けに商用利用可能なトリチウム除去技術は確立されていないが、トリチウムの発生それ自体を抑制する技術についての検討の必要性も提案された。
また、同小委員会の議長を務めたノルウェー放射線・原子力安全庁のグウィン博士は「トリチウム削減に関わるBATや除去技術に関して最新情報を報告することを実行計画の中間目標に含める」ことを提案している。
困難であっても締約国は「海洋放出ゼロ」という条約の理念を諦めてはいけない。
(廃炉制度研究会代表)
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