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エーザイ認知症薬 米承認日本では秋にも承認許可へ【ワシントン共同】米食品医薬品局(FDA)は6日、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を本承認した。今年1月、仮免許に相当する迅速承認を出し、米国内での販売が始まっていた。認知症の進行を遅らせるという患者の利益を認め、新薬の実用化に向けた最後の扉を開いた。日本でも承認申請しており、秋にも承認の可否が示される見込み。加藤勝信厚生労働相は7日の閣議後会見で、国内の承認申請に関し「米国を参考に、有効性、安全性について適切迅速に審査される」と述べた。エーザイの内藤春夫最高経営責任者(CEO)は同日会見を開き「(この分野の)研究開始から約40年を経てまず米国で患者に届けられることは大きな喜びだ」と述べた。高齢者向け公的医療保険メディアは、この薬の必要性をさらに検証するためのデータ提出を条件に保険適用した。脳神経を傷つける脳内の有害タンパク質「アミロイドベータ」に結合し除去する抗体の薬で、病気の原因に働きかける「疾患修飾薬」と呼ばれる。米イーライリリーによる同種の薬も開発の最終段階で、長く停滞していた認知症治療薬の開発は活発化の兆しを見せている。対象は、年齢だけでは説明できない物忘れが現れた軽度認知障害(MCI)から、生活に支障が出始めた早期の認知症の人で、有害タンパク質の蓄積が画像診断で確認できたことが条件。2週間に1度、点滴で投与する。薬剤費は体重で変わるが、標準で2万6500㌦(約380万円)。安全性に関しては複数の注意事項がついた。 2023.7.8聖教新聞10面
August 30, 2024
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高血圧改善の仕組み解明軽い運動、脳に適度な衝撃ジョギングなど軽い運動で、高血圧が改善する仕組みを解明したと、国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉)や国立循環器病研究センター(大阪)などのチームが6日、英科学誌に発表した。成人を対象にした臨床試験では最高血圧の平均が10程度下がった。チームは高血圧を発症したラットで実験した。足が地面に着地した際に頭部にも衝撃が加わり、脳内の体液が流動。血圧調整に関わる細胞が刺激され、血圧を下げるタンパク質の量が低下することを突き止めた。座面が上下に動き、ジョギングと同程度の衝撃が頭部に加わる椅子を開発し、高血圧の約30人を対象に1日約30分、週3回この椅子に座る臨床試験を実施。1カ月続けると、最高血圧の平均は141.9から132.9に改善した。終了後も効果が約1カ月持続した。水泳や水中歩行、自転車の乗車でもジョギングの半分程度の衝撃が頭部に加わることを確認。ラット実験では、この程度の衝撃でも改善効果が見られた。 軽い運動で高血圧が改善するメカニズム適度な衝撃で脳内の体液が流動⇓血圧を上げるタンパク質の量が低下高血圧改善 2023.7.8聖教新聞10面
August 29, 2024
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危険な未破裂脳動脈瘤脳の血管(動脈)にできる、こぶのような膨らみを脳動脈瘤といいます。このうち、発見時に出血(破裂)の兆候のないものを未破裂脳動脈瘤と呼びますが、破裂すると、くも膜下出血を引き起こします。昭和大学(東京都品川区)脳神経外科の水谷徹医師に危険性を解説してもらいました。 水谷医師は「脳ドックを受診した成人4000人以上を対象にした調査から、約4.3%に未破裂脳動脈瘤が見つかりました」と話します。未破裂脳動脈瘤は。脳の中の欠陥が枝分かれする分岐部にできます。「もともと構造的に弱い分岐部に血流が当たり続ける圧力で膨らんでくると考えられます」と水谷医師。 MRIで発見 大半は無症状脳ドック受診や頭痛、めまいなどで磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受けた際に見つかることが多いです。加齢とともに増え、高血圧や喫煙、大量飲酒、遺伝的要因などが破裂の危険因子になります。大半は無症状ですが、大きくなった動脈瘤が神経を圧迫し、物が二重に見えたり、まぶたが開きづらくなったりするといった症状が現れることも。もし脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を起こします。「脳の硬膜(脳脊髄を包んでいる固い莫)より内側の部位で、直径3㍉以上あると破裂する可能性があります。未破裂脳動脈瘤が発見された場合、サイズや形状、できた部位、患者の年齢などによって治療するかどうかを検討します。治療は頭蓋骨を開けて、動脈瘤の根元をクリップではさんで閉塞させる方法と、太もものの付け根の血管から医療用の管(カテーテル)を入れて治療する「脳血管内治療」があります。開頭術は患者の体の負担は大きいですが、再発の可能性はほぼありません。脳血管内治療は、カテーテルを通して柔らかく細いコイルを脳動脈瘤の中を満たし、血液の流れ込む隙間をなくすことで破裂を防ぎます。間口の広い動脈瘤の場合はステント(金属製の網状の管)を併用する場合があります。しかし、塞いだ部位に再び血液が流れ込み、一定の割合で再発が起こります。 新たな治療法で破裂のリスク減少そこで近年、新たなステント治療「フローダイバーター」が登場しました。従来のものよりもさらに目の細かいステントを血管内に留置して、動脈瘤内の血液をゆっくりと血栓(血の塊)化させることで動脈瘤が完全に閉塞し、破裂の危険がなくなります。根治を目指す治療ですが、血が止まりにくくなる抗血小板剤を使用すると、治療適応となる部位や大きさが限られています。年齢が比較的若く、体力のある患者では開頭術を検討することが多いといいます。「脳血管内治療は体の負担は少ないのですが、再発・再治療の可能性もあり、医師は個別の動脈瘤ごとに安全性を優先し、最適な治療法を判断します。患者さんは医師とよく話し合い、納得することが大事です」と水谷医師はアドバイスします。(メディカルトリビューン=時事) 【健康プラザ】公明新聞2023.6.27
August 19, 2024
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食いしばりをやめて不調改善肩凝りや頭痛、腰痛などの慢性的不調は、悔い縛りが原因かもしれません。無意識の食いしばりの力は、なんと、固いものを食べる時の3倍以上。歯や顎に約100㌔もの負荷がかかり、その影響は全身に及びます。原因や健康への影響、予防する習慣について、歯科医の西村育郎さんに聞きました。 西村歯科医院長 西村 育郎さんにしむた・いくお 医療法人西村歯科理事長・院長。1952年生まれ。75年、群馬大学工学部化学工業科卒業。92年、愛知学院大学歯科部卒業。歯科医院勤務の後、95年、西村歯科開業。独自の顎間接症治療を開発し、実用新案を取得する。著書に『「食いしばり」をなくせば頭痛・肩こり・顎関節症はなくなる!』(現代書林)他。 体全体に広がる影響食いしばりとは、強い力で歯と歯をかみ締めることです。睡眠時の歯ぎしりも食いしばりの一首です。日中、仕事に集中しているときなど、気付かないうちに食いしばっている人も多くいます。まずは、そうした癖がないか、セルフチェックしてみましょう(別掲❶)。上下の歯は、わずかに離れているのが正しい状態です。食事の時や唾をもみ込むだけで、一日に合計20分程度。歯と歯が接触しているだけでも、歯や顎には負担がかかるのです。強い力で食いしばると、歯が欠けたり、ヒビが入ったりして、知覚過敏や歯周病、歯肉炎。虫歯のリスクが高まります。また、顎に負荷がかかることで顎関節症の原因にもなります。かむ時に使う咀嚼筋は、頭や首、肩の筋肉と連動しています。食いしばりによって咀嚼筋が疲労すると、頭や首などの筋肉も緊張します。その状態を解消しようとして、知らず知らずのうちに首を傾けたり、片方の肩を上げたりすることが習慣になります。すると、背骨にひずみが生じ、首や肩の凝り、頭痛、腰痛、なまい、しびれ、倦怠感などの症状として現れるのです。食いしばりを治すことで、さまざまな不調が改善した患者さんを多く診てきました。歯や顎の健康は、全身の健康に深く影響することを、一人でも多くの方に知ってほしいと思います。 胸を張るのが理想的?食いしばりの最大の原因は〝悪い姿勢〟です。堅田の重心が後ろに移動し、かかと重心になると、頸の後ろの筋肉は緊張し、下顎が後方へずれます。すると、舌の位置が下がり、気道が狭まって呼吸が浅くなってしまいます。息苦しさを感じると、人は歯を食いしばることで気道を広げ、呼吸しやすくなるのです。姿勢を良くするには「胸を張ればいい」と思いがちですが、それは違います。頑張って胸を張ると、腰が反り、首や腰に余計な力が入ってしまうもの。首凝りや腰痛の原因になります。今回紹介する良い姿勢の一番のポイントは、力を抜いて立つことです(別掲❷)。実は、食いしばりのある人の多くは、脱力が非常に苦手です。体の力を抜くため、肩に力を入れて上げ、一気に脱力する。それを数回繰り返しましょう。椅子に座るときも、足の親指を意識して。足裏全体で支えましょう。自然と良い姿勢になります。歩く時は、足の指を使って歩くことを心がけてください。最後に足の親指で蹴り上げるようにして歩くイメージです。力が抜けている時、舌は自然と上顎にペタッと張り付くものです。正しい舌の位置を確認しましょう(別掲➌)。姿勢が良くなると、舌が上がり、呼吸しやすくなります。姿勢が悪く、常に体に力が入っている人は、たとえマウスピースなどの治療をしても食いしばりを改善することは難しいでしょう。良い姿勢を身に付けることが最優先です。その上で、その他の予防の習慣も、試してみて下さい。 👆ポイント➀体の力を常に抜く②良い姿勢にする⇓舌は自然と上顎に付く ❶―セルフチェック―食いしばる人に多く見られる特徴を紹介します。□上下の歯の中心がずれている鏡を見ながら「イー」と口を開いてください。上の歯と下の歯の真ん中が左右どちらかにずれていませんか。□上下の歯の接触面が崩れて凹凸がない□歯の詰め物がよく外れる□歯がしみる□下顎に梅干しのような凹凸のあるシワができる さらに悪化すると、舌の両脇に歯型が付いたり、顎の内側にこぶができたり、頬粘膜に上下に歯が合わさる位置に白い筋が入ったりすることがあります。 ❷良い姿勢・目線は大地と並行・肩の力は抜き、肩はやや内側に入る・背中のラインは緩やかなS字(少し丸まった感じ)・足の親指を意識することで、足裏全体にバランスよく重力が分散・舌が上顎に付き、呼吸しやすい・発声しやすい 悪い姿勢・目線が上向き・胸を張り、肩は外側に反っている・頸の後ろ、肩甲骨、腰に力が入っている・重心がかかとにある・足の指が浮いている・舌が下がり、呼吸が浅い・発声しにくい ➌正しい舌の位置・舌は上の前歯の付け根から5㍉ほど後方に・舌全体は上顎にペタッと付いている ―予防する習慣―●前歯を使って食べる●食事の時、無意識に片方の奥歯だけでかみがちです。しかし、奥歯だけを使っていると、顎の周りの筋肉が緊張し、睡眠中の食いしばりにつながります。前歯を使うことで、顔全体の筋肉が動き、奥歯での食いしばりを防ぎます。食べる時は、まず前歯でかみ、食べ物を少しずつ後ろの歯に送りながらかみましょう。コツは、一口分の量を少なめにすることです。 ●枕の高さを調整する●仰向けになって、枕の高さを➀~③の手順で合わせます。寝る姿勢が良くなると、舌は上がり、上下の歯は離れ、食いしばらなくなります。枕が低い場合は、バスタオルで高さを調整しましょう。➀枕の淵に肩を当て、頸と後頭部を枕全体でしっかり支える②バスタオルを三つ折りにして、一枚ずつ枕の下に敷く③天井に対して目線が直角になり、呼吸しやすく、唾が飲み込みやすい高さになるまで追加する・バスタオルを二つ折りにするなど、微調整する・横向きの場合は、鼻筋と床の面が平行になるように ●爪先立ちトレーニング●つま先立ちで足指を刺激することで体のバランスが良くなり、正しい姿勢の保持や食いしばり予防につながります。朝晩、15回ずつ行ってください。➀両手は壁に軽く付け、息を吸いながらつま先立ちをする②3秒間キープし、息を吐きながらかかとを地面ギリギリまで下ろす③下ろしたかかとは地面に付けず、再びつま先立ち。それを繰り返す 【健康PLUS+】聖教新聞2023.6.13
August 9, 2024
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飲酒に関する話題のニュース 健康のために、飲酒をやめたり、アルコール量を減らしたりと、断酒・減酒の努力をしている人たちは少なくありません。今回は、飲酒に関する話題のニュースを紹介します。一つ目は、禁酒と禁煙を同時に行うメリットに関する、国立病院機構久里浜医療センターの研究。二つ目は、英スコットランドで導入された、酒類の安売り規制の効果についてです。 アルコール依存症離脱へ禁酒と禁煙 同時が有効たばこを吸うアルコール依存症の患者は、禁酒と併せて禁煙を目指すと、断酒の成功率や大量飲酒からの離脱の可能性が大幅に高まるとの研究結果を、国立病院機構久里浜医療センターが国際学術誌に発表しました。喫煙は、アルコールを含む他の薬物依存症の入り口になるといわれてきましたが、そこからの離脱にも強く影響している可能性があります。研究チームの横山顕臨床研究部長は「『お酒をやめるんだから、たばこぐらい』と考えず、禁煙に同時に取り組むことの重要性が示された」と話しています。アルコール依存症で同センターを受診する人の喫煙率は男女とも6割超と一般成人を大きく上回り、1日の喫煙本数も多い傾向があります。研究では、2014年にアルコール依存症で同センターに初めて入院し、3カ月の断酒・禁煙プログラムを終えた、喫煙者128人を含む198人が対象。退院後1年間で計9回、調査用紙を郵送し、断酒率や禁煙率を調べました。その結果、29%の喫煙者が隊員1カ月後の禁煙に成功。1年間の断酒成功率は、禁煙に成功した人で59%、もともと吸わない人で45%となり、喫煙を続けた人の30%より高かったのです。1年間に多量飲酒をしなかった割合も禁煙車61%、非喫煙者60%に対して喫煙を続けた人では、41%と差が出ました。統計的な分析では、たばこも同時にやめると1年間の断酒成功の可能性が2.44倍に、多量飲酒しない可能性が2.13倍に高まることになります。横山さんによると「飲めば吸いたくなり、吸えば飲みたくなることが実験で確認されています。一方で、半年以上の喫煙で、うつや不安、ストレスが著しく改善すると複数の報告があるといいます。 安売り規制で死者減少英スコットランドで分析英スコットランドの公衆衛生庁やグラスゴー大学のチームが、2018年5月に種類の明日売りを押さえる規制が導入された後、アルコール摂取が原因で死亡する人が約13%減少したとする研究結果をまとめました。この規制は酒に含まれるアルコール量に応じて最低販売価格を設定する仕組み、純アルコールで1単位(8㌘)を含む酒なら50㌺(約80円)以上での販売が求められます。日本のストロング系チューハイのように「安上がりに酔える」酒の消費を抑え、危険な飲酒による健康被害を食い止めるのが狙いです。チームは、同じ英連合王国でもこうした規制が存在しないイングランドと、スコットランドの医療データを12~20年の期間で比較。すると規制導入後にスコットランドでアルコール摂取に伴う死亡者が13.4%、入院件数が4.1%減ったとの結果が示されました。年間156人の命が失われずに済み、同411件の入院が避けられた計算としています。アルコール性肝炎などの慢性疾患による死亡や入院の現象が大きな要因。一方で急性アルコール中毒などの急性疾患の入院が増えており、チームは一部の人の飲酒行動が変化した可能性があると見ています。この規制の導入を巡っては、酒類業界が激しく反発しました。同庁は酒類販売は3年間で3%減少したが、商品の価格が上がったことで売り上げが維持されたケースもあると分析。英国の欧州連合(EU) 離脱や新型コロナウイルス流行といった外的要因を考えると「酒類業界に規制が及ぼした影響はそれほど大きくなかった」と指摘しています。研究結果は英医学誌ランセットに発表されました。 【健康PLUS+】聖教新聞2023.5.23
July 26, 2024
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難病「パーキンソン病」発症の仕組み解明 手足の震えや体のこわばりが起こる難病「パーキンソン病」に関わる分子「PARK9」に異常があると病気の原因となるタンパク質を分解できずに、神経細胞が死んで病気の発症につながる仕組みを突き止めたと、富山大などのチームが20日付の英科学誌に発表した。富山大の藤井拓人助教(薬物生理学)は「発症の仕組みがわからず、根本的な治療法がなかった。この成果は発症機構の解明や新しい治療法につながる」としている。パーキンソン病は、神経伝達物質のドーパミン不足で前進の運動機能に障害が起こる。「αシヌクレイン」というタンパク質がドーパミンを作る神経細胞に蓄積することが原因とされ、治療は現在、ドーパミン補充など対症療法が中心だ。チームは、細胞小器官リソソームにあるPARK9に着目。ヒトの細胞のリソソームを使った実験で、PARK9が細胞内の不要な分子を分解する際に重要な役割を果たしていることを発見した。PARK9に異常があると、リソソームでαシヌクレインの分解能力が低下し、蓄積につながることも判明した。 聖教新聞2023.4.25
June 30, 2024
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若者にリスク高まる「スマホ認知症」 最近、若い世代から、スマートフォン(スマホ)の使い過ぎにより、記憶力の低下など認知症に似た症状を訴える人が増えています。病名ではありませんが軽視できないという「スマホ認知症」について、福井大学医学部付属病院脳神経内科の浜野忠則診療教授に聞きました。 過度な使用で記憶力低下「原因は疲労でしょう。現時点で直接認知症に症例は報告されていませんが、将来的なリスクが高まる可能性はあります」と浜野教授は指摘します。スマホ認知症は、アルツハイマー病などの認知症のリスクが高い高齢者より、若年層で問題視されています。「日常的にスマホを使う高齢者は、使わない高齢者と比較して認知症の比率が低いと報告されているため、適度な使用であればお勧めできます。問題は、1日5時間以上もスマホ画面を見ているような10~20代前半の若者の将来です。2060~2100年にかけて、アルツハイマー病患者がさらに増加する報告論文もあります」現時点では、スマホと認知症が直結しているとは断言できません。「しかし適度な使用により記憶力、学習機能、集中力低下、メンタルの不調や不眠を訴える割合が若年層を含めて高くなる論文が多数あります」 脳の疲労生む三つの原因は?スマホ認知症は脳の疲労から来るものと考えられています。その原因について、浜野教授は➀「スマホ依存症」ともいえる長時間の使用②マルチタスク③ブルーライト―—の3点を挙げています。マルチタスクとは、テレビや講義の合間にスマホを触るなど違う作業を同時に行うことです。しかし人間は本来、一つのことにしか集中できないため、不要な情報を無視するために脳(前頭葉)はエネルギーを浪費します。また、練る直前まで画面を凝視してブルーライトを浴び続けると、脳が日中と勘違いして睡眠促進ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制され、質の良い睡眠を取りにくくなります。 良質な睡眠が必要「脳をゆっくり休ませることで、脳疲労による記憶力や集中力低下が回復します。アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパクも睡眠中に体外に排出されますが、不眠が続くと脳にたまってしまいます。質の良い睡眠は最も重要です」浜野教授は「仕事や勉強以外でスマホなどの画面を見る時間は、1日2時間以内を勧めます」とアドバイスしています。 【▲生活らしんばん▼】公明新聞2023.4.20
June 26, 2024
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日本漢方の力菅原 健(漢方医) 治療のための実践的運用を重視皆さんは漢方に対して、どのようなイメージを持っているのでしょうか。慢性病にしか効果がない、長く飲まないと効かない、体質改善のためのもの、西洋医学の補助的役割、などでしょうか。当院には「ほかで治らなかった」と、さまざまな患者さんが来院します。そして、多くの方が漢方治療によって改善しているのです。漢方の起源は、2000年以上も前の中国、漢~三国時代に完成したといわれる、中国医学にあります。この頃、張仲景が著した『傷寒論』『金匱要略』をはじめ、『黄帝内経』『神農本草経』などによって、漢方の処方はほぼ完成したとされています。これらの医学書が日本に伝えられ、江戸時代に花開いたのが日本漢方なのです。中でも傷寒論と金匱要略は一番の基本的な教科書といわれています。その後中国では、中医学という思想や理屈にこだわった学問が発達したのに対し、日本では、吉益東洞らによって「患者は治ればよし、効くものは何でも取り入れる」と実践的な運用が重視されました。それが本来の日本漢方なのです。具体的には、病気の根本の原因のありかを六病位に分けて、それを治すための処方を行います。そんなことで実際に治るの?と思うかもしれません。でも、診断によって病気がどの位置にあるかを位どりすることで、多くの患者さんが軽快しているのです。 同じような肺炎でも異なる処方西洋医学との違いを新型コロナを例に紹介しましょう。2019年の終りに中国・武漢で発生した肺炎は、のちに新型コロナウイルス感染症と呼ばれ、世界的な流行を引き起こしました。当院でも、日本での医療体制が決まるまでの数カ月、新型コロナと思われる多くの患者さんを診察しました。漢方の脈診では少陰病という見立てでした。普通の風邪の場合、太陽病になるので、単なる風ではないと判断したのです。漢方の考え方に従い、真武湯を処方しました。そうしたところ、呼吸困難の一歩手前で苦しんでいた患者が、咳も収まり3日後には改善したのです。西洋医学のアプローチでは、肺炎で高熱と咳が出ている場合、解熱剤と咳止めを処方します。しかし解熱剤は、漢方では太陽病に対する薬なので、この場合は誤った使い方となり、病態が悪くなる可能性さえあるのです。その後、デルタ株に感染した患者も、数例診る機会がありました。初期のコロナとは違い、厥陰(体の最深部)に仮熱がある状態でした。この場合、漢方では涼膈散を処方します。解熱剤が発汗によって熱を下げるのに対し、これは清涼感のある生薬で熱を下げる働きをします。まさにデルタ株のためにあるような薬なのですが、西洋医学にはこのような働きをする薬はありません。 病気の根本にアプローチ西洋医学で治らない患者が軽快 互いの良い部分を取り入れる漢方治療で大切なのは診断です。六位病のどこかに位どりするか。中でも脈診が重要なのですが、感覚的な部分が大きいため、非常に勉強しにくい。それで、脈が診られたら大きく間違えることはなくなります。多少は違っても、治療によって悪くなることはないのです。ここまで漢方の力を紹介してきましたが、西洋医学が下で、漢方が上だと、言いたいのではありません。それぞれ、得手、不得手があるということ。例えば、漢方で手術をすることはまれです。江戸時代の漢方医・華岡青洲は、日本で初めて、全身麻酔を使用した乳がんの手術を行いました。しかし、盲腸などは薬の処方だけで治せますし、癒着なども剥がしやすくする処方もあります。ただ、胃潰瘍が悪化するなどして消火器全体に穴が空いたようなケースでは、漢方では手の出しようがありません。外科手術した方が治療にもいいでしょう。実は現代では、内科よりも外科のほうが、漢方を使っています。手術をすると一時的に消化管が動かなくなることなどがあります。その時に、大建中湯が使われるのです。多くの外科医がやっている方法ですが、これに代わる西洋薬がないのです。漢方と西洋医学と区別せず、両方用いていけばいいのにと思うことがあります。実際、江戸時代の文献を見ると、カタカナで書かれた薬がたくさんあります。従来の漢方薬だけでなく、蘭学で使用されていた薬も使われていたのです。=談 すがわら・たけし 健友堂クリニック院長。麻酔医として、山梨医科大学付属病院、県立中央病院などに勤務。開業前の8年間は大学病院の漢方外来に。2011年に漢方、ペインクリニックの健友堂クリニックを開業。山梨大学医学部非常勤講師、健康科学大学特任教授。著書に『知られざる日本漢方の力』『校正方輿輗解説講義』 など多数。 【文化Culture】聖教新聞2023.4.13
June 21, 2024
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風邪は治ったのに空咳が止まらない…今日のポイント▹▹▹長引く席で最も多い原因疾患〝風邪は治ったのに、咳だけが止まらない……〟。そのような人は「咳ぜんそく」の可能性があります。「咳嗽・喀痰の診療ガイドLINE2019」の作成委員長を務めた迎寛教授(長崎大学大学院)に聞きました。 咳ぜんそく迎教授 3週間までは後遺症 ―—〝咳だけが止まらない〟という人は多くいます。関は、肺や軌道に入った遺物を出すために起こる、ポピュラーな症状です。風や新型コロナウイルスなどの感染症による咳は通常、風邪などが治れば、自然に治ります。多くの患者は、咳が2週間も続くと〝なぜ止まらないのだろう〟と不安になります。しかし、3週間までは、感染症などによる〝急性の席〟が後遺症として続いている割合が高い、と考えてください。 ―—3週間までは後遺症なんですね。その上で、風邪などが治り、熱も出ていないのに、痰がほとんど出ない「空咳」が8週間以上続く場合、まず「咳ぜんそく」が疑われます。夜間や早朝。あるいは季節によって空咳が出る場合も咳ぜんそくの可能性があります。8週間以上続く〝慢性の咳〟は、感染症以外の原因が考えられますが、最も多い原因疾患が「咳ぜんそく」です。原因疾患が重なる場合もあり、一概には言えませんが、日本では慢性の30~50%ほどを占め、40~60代の女性で多く発症しています。痰がほとんど出ない「空咳」が唯一の症状です。痰などの異物を出す咳ではなく、軌道の炎症が治まらないために続いている席だと考えられます。 喉、耳、鼻、胃…咳の原因はさまざま ―—診断はどのように?咳は、さまざまな原因が考えられる症状です。肺がんや結核など、思い疾患の場合もありますので、問診や検査で丁寧に鑑別していきます。〝慢性の咳〟の原因疾患には、他にも「百日咳」や、喉のかゆみを伴う「アトピー咳」、耳や鼻が原因の「副鼻腔気管支症候群」などがあります。意外に思うかもしれませんが、胸やけや胃液の逆流を伴う「胃食道逆流症」も、原因疾患の一つです。原因疾患によって、治療法は異なります。かかりつけ医や近くの病院の呼吸器内科などを受信し、医師の診断を受けてください。 誤嚥から 発症するケースも 検査によって意外な原因が分かることもあります。 以前、ある日を境にぜんそく発作が起き、止まらなくなったという男性に、コンピューター診断撮影(CT)検査をしました。気管支に異物を思わせる白い陰影があり、手術で取り除くと〝昆布〟が出てきたのです。聞くと、運転中に昆布を食べていたとのこと。急ブレーキの差異にのみ込み、気道から気管支に入ってしまったようです。ぜんそくの治療を受けていた高齢者の咳の原因が、気付かずに誤嚥した〝歯の詰め物〟だったことも、それに当たります。 ―—咳ぜんそくの治療法は?炎症を抑える「ステロイド薬」と、狭くなった気道を広げる「気管支拡張薬」の吸入です。副作用はほとんどありません。気管支拡張薬の効果があった場合、あらためて、「咳ぜんそく」と診断します。効果がなかった場合は、アトピー咳など、別の疾患を疑います。これらを「治療的診断」と言います。一度〝ぜんそく〟と診断されると、例えば別の病を患ったさい、特別な追加検査を行ったり、処方薬が制限されたりします。ですから、過剰診断にならないよう、適切に鑑別する必要があります。 刺激を避けるよう心がける ―—日常で気を付けることはありますか。「冷気」「湿度の変化」「たばこの煙」「花粉」「黄砂」「運動」「その人にとってのアレルギー物質」などによる気道への刺激でアレルギー反応が起こり、炎症が生じます。そして、炎症で腫れ、狭くなった気道が過敏に収縮し、咳の症状が現れます。ですので、先に挙げた外的な刺激をできるだけ避けることを心がけてください。また、咳ぜんそくに限りませんが、マスクの着用には、保温・保湿や異物吸入を防ぐ役割があります。 ―—気管支喘息と何が違うのですか。気管支喘息の特徴である〝ヒューヒュー〟〝ゼイゼイ〟といった呼吸音を伴う喘鳴や、呼吸困難といった発作はありません。ただし、咳ぜんそくから気管支喘息に移行してしまう人も、3割ほどいます。ステロイド等の適切な吸入は、移行率を下げると考えられています。症状がよくなっても自己判断で薬をやめたりせず、医師の指導の下、長期的な視野で治療することが大事です。炎症が長引くと、次第に気道が固くなって、薬が効きにくくなり〝難治性〟の病となります。「咳なんていつか治る」など軽視せず、早めに受診してください。 【医療】聖教新聞2023.4.3
June 14, 2024
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あなたの〝生きづらさ〟ってどこから?精神科医 岡田 尊司さん —―「自分や家族が発達障害かもしれない」と感じて、受診や相談するケースが増えています。 家族や職場などの対人関係がうまくいかなくて苦しい。そうした生きづらさや困りごとを長年抱えてきた方々が、「発達障害に原因があるのではないか」と感じて診察にやってくる場合が非常に多いです。「グレーゾーン」と言われると、〝自分がこんなに悩んでいるのは過剰反応なのか〟と戸惑ってしまう方もいます。では、グレーゾーンは、障がいに比べれば軽いものと考えればいいのかといえば、そんなことは全くありません。逆に、グレーゾーンの人は、障がいレベルの人と比べて、生きづらさが弱まるどころか、時には、より深刻な困難を抱えていることも多いのです。 ―—それはなぜでしょうか? グレーゾーンの方は、ある部分では能力の高いケースも多々あり、その人にかかる期待も大きくなります。それだけでなく、グレーゾーンは単なる「障がい未満」の状態ではなく、心の傷など、性質の異なる困難を抱えていることが少なくありません。 ■親子に効く「愛着アプローチ」 ―—生きづらさを抱えたグレーゾーンの方の事例を教えてください。 発達の凸凹があるけれども、全体の能力は高く、発達障がいとまでは診断できない、中学1年の女の子がいました。その子は、自傷行為があり、学校にも行けなくなっているような状況でした。親御さん自身はすごく勉強を頑張った人で、大学卒業後は銀行に勤め、それなりの生活を手に入れたという自負がありました。しかし、解離性症状も出たりする子供に困り果て、正直、愛情が湧かなくなっているとも言っていました。私は、発達障がいを含め、さまざまな疾患や障がいにおいて、「愛着アプローチ」の有効性を提唱し、実践しています。中学1年だった子は、だんだん落ち着いて、もう高校生になっていますが、診察する必要はなくなりました。今はお母さんだけをサポートしている状況です。 ―—愛着アプローチとは? 精神科医ジョン・ボウルビィが、養育者と幼い子どもの結びつきを、発達や安定に不可欠なものとして「愛着」と呼びました。また、研究協力者のメアリー・エンストワンスは、愛着における子どもの〝安心感のよりどころ〟を「安全基地」と名付けます。医学モデルでは「症状を呈している人」が患者であり、治療対象は、「病んでいる患者」本人です。一方、愛着モデルでは、当人の症状を引き起こす原因となっているものが、他に存在することが視野に入ってきます。例えば、〝患者〟として連れてこられた子どもは、2呈次的に病気にされているのであり、周囲との関係の中で、症状を呈するようになっている。ゆえに治療されるべきは、子どもを追い込んでしまった環境であり、大人との関係なのです。 ■「安全基地」になる ―—安全基地になるためには、何が必要なのでしょうか? まずは、本人のありのままの状態を受け入れることです。例えば、学校や会社のことで悩んでいる人に接する場合、「学校はどうだ」「会社はどうだ」と根掘り葉掘り質問することは傷口に塩をすり込んでいるようなものです。安全基地になる上で大切な原則がいくつかあります。まずは「応答性」。本人が何か言えば、振り向くなり、返事をするなり、とにかく反応することです。〝まめである〟ことは、とても大事なのです。また本人のメッセージは言葉だけとは限りません。表情やしぐさなどの変化を察知する「感受性」も大切です。反応したりしなかったりといいうムラがない「安定性」、つまり、〝いつも変わらないことも大事になります。「コミュニケーションは苦手で……」という人もいるかと思いますが、実践しやすいスキルとしては、「なるほど」「ほう」「そうでしたか」といった合いの手となる言葉を、気持ちを込めて、大きな頷きとともに発するという方法があります。もう一つは、相手の言葉をなぞる方法です。例えば、相手が「会社に行くのが嫌になった」といえば「嫌になったんだ」というようにオウム返しする。するとそれが呼び水となり、嫌になった事情を話してくれるかもしれません。相手がゆっくり話しているならば、その声の調子に合わせ、表情やうなずきといった体の動きも合わせてみましょう。人生においては、そぐに解決が見つからないような状況に陥ることもあります。それは不幸なことに思えるかもしれません。しかし、私の臨床経験から感じることは、その困難、きっかけがなければ、人は自らを振り返り、限界を超え、成長することもできないということです。だからこそ、「行き詰ったピンチの時こそ、変われるチャンス」なのです。 おかだ・たかし 1960年、香川県生まれ。精神科医、作家。医学博士。岡田クリニック院長。日本心理学教育センター顧問。著書に『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』(SBクリエイティブ)、『愛着障害』(光文社)など多数。【WITH#「発達障がい」グレーゾーン】聖教新聞2023.4.1
June 13, 2024
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魚介類に寄生するアニサキス食中毒発症の恐れ 日本人の食卓に欠かせない〝海の幸〟ですが、寄生虫の「アニサキス」には注意が必要です。アニサスキが規制した魚などを食べると、食中毒を発症する恐れがあります。症状の特徴と予防対策を国立感染症研究所の杉山広客員研究員に解説してもらいました。 胃腸に刺さり激痛 起こす サバやサンマ、サケ、カツオ、イカなど日本人になじみ深い魚介類には、アニサキスの幼虫が寄生している場合があります。体長約2~3㌢で糸くずのような形をしていますが、生きたまま人間の体内に入ると、胃や腸などに刺さって激しい痛みや嘔吐といった食中毒症状を引き起こします。これは、アニキサスが寄生した刺身やすしを加熱や冷凍が不十分なままで食べることが原因です。 十分な加熱・冷凍の予防処理をアニサキスが侵入しても痛みを感じない無症状のケースもありますが、まずは魚介類をおいしく安全に食べるためにも、きちんと予防することが重要です。十分な加熱、あるいは冷凍処理でアニサキスを死滅させてください。加熱の場合、60度で1分以上焼いたり煮たりすれば死滅します。冷凍はマイナス20度で24時間以上が目安です。アニサキスの多くは魚の内臓に寄生するといわれ、死んだ後に魚の内臓から身に移動します。できるだけ新鮮な魚を買うか、自分で釣った魚はすぐに内臓を除去し、内臓を生で食べるのもやめてください。もし、魚を食べて数時間ほどで腹痛を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 国立感染症研究所客員研究員 杉山 広氏厚生労働省によると、アニサキス食中毒の患者数はここ数年、年間約400人で推移していますが、私が独自の方法で調査したところ、実態は年に約2万人に上ることが判明しました。厚生労働省の統計の約50倍です。過去にも同様の調査を実施した際は7000人だったので、患者数は年々増加していると推測されます。 患者数年間2万人も 増加理由として流通技術の発達に伴い、生で食べられる魚の種類が拡大したことが挙げられます。例えばサンマの刺身です。かつては漁獲された地域でしか食べられませんでしたが、現在では都内の飲食店でも気軽に注文できます。海洋環境の変化も見逃せません。アニサキスには種類があり、主に太平洋側の魚に多き寄生する「S型」と日本海側の「P型」に分かれます。S型の場合、内臓にとどまらず身にも移動することが判明しています。このため、S型が食中毒の主な原因になりますが、最近では日本海の魚からもS型が発見されるようになりました。地域に限らず、基本的な予防対策を実施することが重要です。 【健康プラザ】公明新聞2023.2.28
May 20, 2024
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運動の頭部外傷に注意「隠れ脳振とう」もスポーツは体によく楽しいものですが、思わぬけがをするリスクもあります。特に心配なのが頭のけが。胃の父関わる頭蓋内出血や骨折だけでなく、衝撃による脳振とうは、軽傷でも繰り返すと生活に支障が出ることがあります。脳神経外科医でもある福岡大学の重森裕教授(スポーツ医学)は「頭部傷害は手足のけがに比べて頻度は低いが、発生した時の健康の影響が大きい」と指摘。「予防策に加え、起きた場合にどう対処したらいいかを多くの人が知っておく必要がある」と語っています。 昨年W杯でも批判が昨年開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会では、飛び上がったイランのゴールキーパーが味方の選手と正面衝突して頭部外傷を負いました。キーパーは中断後もプレーを続けましたが、結局、試合ができなくなり短歌で運ばれました。国際サッカー連盟(FIFA)は脳振とうが疑われた場合は出場を続けずに交代させるルールを定めており、チームやFIFAの対応の遅さに批判の声が上がりました。重森さんは「大事な局面で選手交代をしたくない気持ちも分かるが、世界最高峰の大会としてお手本を示すべきだった」と話しています。頭部外傷の死亡例はボクシングなどで知られていましたが、アメリカンフットボールやラグビー、柔道などでも報告され、ここ数十年で世界的に研究が進んでいます。 ヘディング禁止措置頭への衝撃が繰り返されると長期的な影響も懸念されます。英国の元プロサッカー選手を調査すると神経変性疾患で死亡するリスクが高かったのです。米国や英国では頭への衝撃を減らすため、試合や練習で子どものヘディングを禁止する措置が取られました。日本サッカー協会(JFA)は指導や練習に配慮するよう求めるガイドラインを出しましたが、禁止にまでは踏み込んでいません。「サッカーの面白さに関わるので大人までヘディングを禁止するのは無理があるが、子どものうちは頭への衝撃を減らしたほうがよいのは間違いない」と重森さん。「親やコーチなど周囲の人のリスク啓発に加え、頭を打った時に本人が適切に対処できるような教育が必要だ」と語ります。頭を打って認知機能が低下した状態で運動を続けると、再び頭を打つ心配もあります。度重なる脳振とうで引退を余儀なくされる選手もいるといいます。重森さんが大学生のスポーツ選手を調べると、本人に自覚がない「隠れ脳振とう」が少なくないことがわかりました。10人に1人が自分の症状が脳振とうに当たらないと考えていたのです。 心配ならすぐに受診を 時間がたって症状悪化も頭を打ったらどのように対処すべきなのでしょうか。日本臨床スポーツ医学会は一般向けに「頭部外傷10カ条の提言」と題した手引きを公表。専門家による国際会議も脳振とうが疑われる際の対応を簡潔にまとめた手引き「CRT5」を発表しています。「まずはプレーを中断し、選手を試合から外すのが原則」と重森さん。意識喪失や、体・感覚の異常がある場合はすぐ救急車で医療機関に運びます。外見は大丈夫でも頭蓋内出血が起きていることがあります。さらに普段と変わった様子がないか周囲の人がよく観察します。本人に違和感の有無を聞いたり、今日の日付や試合のスコアを答えさせたりして記憶などの認知機能を評価します。気になる点があれば試合には復帰させず、医師の診察につなげる必要があります。重森さんは「脳振とうは時間がたって症状が悪化することもある。何度も繰り返し評価し、心配ならすぐに受診するのが大切」と話します。CRT5の日本語版は、日本脳神経外傷学会の学術誌「神経外傷」2019年42巻1号の特別寄稿で見ることができます。 【健康PLUS+】聖教新聞2023.1.31
April 29, 2024
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山芋と里芋で腎力を高めよう薬膳研究家 正岡 慧子精をつける池波正太郎の著書には「うまい料理」がよく出てきますが、『鬼平犯科帳』の中の『兇賊』に出てくるのは「芋酒」と「芋なます」です。年老いた一人働きの盗賊・九平が、表家業としてやっている居酒屋に、その事情も知らず、火付盗賊改方長官の長谷川平蔵がふらりとやって来ます。ちまたのうわさで、句兵のつくる芋酒がたいそう精がつくと評判だったからです。九平は芋酒の作り方を平蔵に説明します。皮をむいた山芋を細かく切ってザルにあげ、これをしばらく熱湯に浸して引き上げ、すり鉢ですりつぶし、少しずつかけを加えて混ぜ合わせる。それを卵酒と同じようにかんをする。一方、酒のつまみとして出した芋なますは、同じ芋でも里芋を用います。蒸した里芋の皮をむき、だしで煮る。適当に切って、その上に、塩と酢で身を締めた白身魚を適量乗せ、合わせ酢(酢、砂糖、しょうゆ)をかけて、刻みショウガを乗せる。江戸時代は今と違って漢方が医学の中心でしたから、庶民も食の知恵として、漢方的効能をいろいろ知っていたのかもしれません。精をつけるとは、体を温めて腎力を強め、エネルギーを蓄積するということです。日本では山芋と言えば「麦とろ」で、胃の調子をよくすることで知られていますが、中国では山薬という生薬です。『中薬大事典』(小学館)によれば、脾、肺を補い、腎を固め、精を増し、虚弱による咳や腰痛などを治すとあり、トイレの近い症状にもよいとあります。虚弱体質、高齢化予防などの薬膳にもよく使われます。一方、里芋の働きは、胃の調子をよくし、解毒、便秘解消で、腎力、精力を強めるスズキやタイを合わせれば、体のだるさや貧血などにも良いでしょう。酢とショウガを加えれば、体も温まります。腎力を高めて体力を蓄え、暴飲暴食に注意して、新しい年を元気にお過ごしください。 【生活に生かしたい薬膳の知恵■7■】公明新聞2023.1.21
April 22, 2024
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糖尿病、負の烙印解消へ――「本人のせい」と追い詰めない 今日のポイント▶▶▶患者中心の「治療サイクル」を糖尿病には不摂生、食べ過ぎ、運動不足など否定的なイメージがこびりつき、生活習慣病という用語が、それに拍車をかけます。同じ生活をして発病しない人もいますが、「患者本人のだらしない生活が原因ではないか」という負の烙印(スティグマ)が広まっているために、患者は前向きな治療から遠ざかり、時として周囲に病気を隠すにいたります。関係者は、こうしたスティグマの解消に向けた取り組みをスタートさせました。 自尊心の低下や自己否定治療に悪影響 関西電力病院(大阪市)の糖尿病・内分泌代謝センターの田中永昭部長は「糖尿病に関する誤解が依然多い」と嘆きます。例えば、食べ過ぎ、運動不足という認識です。熊本県立大学の報告では、2型糖尿病の人は食事によるエネルギー消費量も健常人と変わらない。平均余命も差がなくなり「適切に治療を続けなければ人生の目標を達成できる」と田中さんは力説します。田中さんらが、糖尿病患者のスティグマを調査した研究結果があります。生命保険に入れなかったり、住宅ローンが借りられなかったりする「社会的すてぃぐな」、病状が改善しないと患者の落ち度のように言われる「治療中のスティグマ」、医師の指示を守れない自分をみじめな存在と思いこむ「自己スティグマ」の三つで回答を数値化し、比較しました。結果は歴然、糖尿病でない人が約6点に対して、糖尿病のある人は約12点と2倍になりました。こうしたスティグマの影響で患者は差別や疎外感を感じ、仕事場や家庭で病気を隠す場合もあります。自尊心の低下や自己否定によってやる気を失い、隠れてものを食べたり、通院をやめたりします。治療への悪影響は明らかです。 上から目線の「療養指導」「教育入院」「順守率」 「医療やの言動もスティグマを生んでいた」と田中さん。「模範的な患者像を設定し、できなければ患者の生、もっと頑張れと求めた。患者という属性だけで生きているわけではなく、個別の人生の中でそんな模範的な生活ができる人はいないのに」スティグマの構造は、糖尿病に特有の用語にも現れています。「療養指導」「教育入院」などのうえから教えを導くような表現があります。服薬の「順守率」など、模範的な患者像とのずれが強調される傾向もあります。診察では「食べ過ぎましたか」などと言外に患者を責める言葉遣いも多くあります。糖尿病治療の指導が食事内容から日常活動量まで生活の隅々までに及ぶことも、患者を追い詰めます。病名も問題です。1907年に日本内科学会で決まった病名ですが、尿に糖が出るのは症状の一つに過ぎず、病気の本質ではありません。日本糖尿病教会の患者アンケートでは、自由記述欄に「不潔なイメージが不快」「排せつ物の名前は入っている」など強い抵抗感が吐露されました。 用語や病名の見直し行政に働きかけ 同協会はこの問題を解消するプロジェクトを開始。用語変更や病名変更の必要性についても今後、関係する学会や行政に伝え、見直しを働きかけていく方針です。田中さんは、用語変更は重要だとしつつ、「欧米では、患者と話しあって目標と計画を共有する『治療サイクル』という手法が主流。偏見解消と同時に、こうした動きを取り入れたい」と話す。病状に加え、仕事やライフスタイル、暮らしぶり、経済的な背景などを評価します。その上で患者と相談し、どんなことからできそうか、短期で達成可能な目標を立てます。医療側はそれを支援し、次のステップで達成率を評価しより良いやり方を提案し、新たな目標を立てます。このサイクルを回すことで、患者は目標達成を励みに、取り組みやすくなるといいます。 【医療ⅯedicalTreatment】聖教新聞2022.12.26
April 6, 2024
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取り出した免疫細胞(T細胞)固形がん治療遺伝子入れて体に戻す 抗原を見つけて標的にこの治療法では、人工的に作った遺伝子をT細胞に入れて、がん細胞の表面に現れている抗原を見つけて攻撃する働きを強化します。日本では「CART〈カーティ〉細胞療法」と呼ばれる手法を使った5製品が、一分の血液がんを対象に承認されています。米ペンシルベニア大学チームは今年2月、CART細胞療法を施した難治性の慢性リンパ性白血病の患者さん2で10年間、症状が安定したと発表しました。研究者らが次にねらうのは、患者数が多い固形がん。しかし、いくつかの課題があります。一つは、標的と異なる抗原の現れ方が細胞ごとに差があり、全てのがん細胞をまんべんなく攻撃するのが難しい点。正常な細胞にも多く存在する抗原を標的にすると謝って攻撃してしまうため、標的の運び方に注意が必要です。また、固形がんは免疫の働きを抑える傾向にあり、投与したT細胞が弱体化しやすく、長持ちしにくいのです。各国の研究者や企業は、標的を複数にしたり、弱体化を防ぐ改良を加えたりと工夫を重ねています。信州大学の中沢洋三教授らは、がんの増殖に関わる「HER2」という抗原を標的にしたCART細胞を開発。HER2を多く持つ骨・南部肉腫や卵巣がん、子宮がんの患者最大12人を対象に、今年5月から、主に安産性を確かめる治療を始めました。 脳や膵臓でも治療が奏功従来のCART細胞はウイルスを運び役として遺伝子を導入しますが、中沢教授らは酵素を使う手法を採用。細胞を作るコストを10分の1以下にできると見込んでいます。肉腫のあるマウスの実験では、細胞が短期間で弱体化せず、効果が持続することを確認しました。5年間ほどかけて、薬事承認に必要なデータを集めます。中沢教授は「分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤とうまく組み合わせたら、無理なく患者の生存期間を延ばせるかもしれない」と話します。米国では、神経膠腫という脳腫瘍を対象とした治験で、患者4人中3人で腫瘍が縮小するなど有望なデータが出ました。中国では、胃がんや膵臓癌の患者37人が参加した治験で奏功率が49%だったとの報告があります。中沢教授は「今後2,3年で勝ち組となる手法が出てくるだろう」と予想します。 薬のない滑膜肉腫にも光別の手法で実用化が近い試みもあります。タカラバイオなどは「TCRT細胞療法」と呼ばれる技術を研究。がん細胞を探し出す能力をT細胞ががん細胞を探し出す能力をT細胞が強化する点はCARTと同様ですが、強化する部位が異なります。患者の免疫の型を考慮する必要があるため投与対称が限られ、攻撃力が十分高くない点が課題とされます。一方、CARTでは難しい、がん細胞の内部に多く現れる抗原を狙えます。同社は多くのがんで現れる「NY-ESO-1」という抗原を狙って攻撃能力を高めたT細胞を開発しました。角膜肉腫の患者を対象に2017年から治験を実施し、「安全性と効果は確認できた」(担当者)といいます。国に承認申請する予定です。1回の投与で半年はT細胞が効果を発揮し続けると考えられ、同社の担当者は「滑膜肉種は治療薬がない。実用化したら効きの良い初めての治療薬になる」と話しています。 今日のポイント▶▶▶高い攻撃力の持続が課題患者の血液から取り出した免疫細胞の一種「T細胞」に遺伝子を導入して改変し、がん攻撃能力を高めて体に戻す治療法を、固形がんにも応用する試みが進んでいます。一部の血液がんでは高い効果を発揮していますが、固形がんに対しては攻撃を持続させるのが難しいとされてきました。壁を突破すべく、独自の技術を生かした臨床試験(治験)が世界中で進み、有効性を示唆するデータも出始めました。 【医療Medical Treatment】聖教新聞2022.12.5
March 20, 2024
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人生100年 楽しんでこそ精神科医 和田 秀樹さん 人と会うことで力は保たれる私が高齢者への情報発信をしている理由の一つは、コロナ対策に対する自身の考えがあります。感染症の学者は、感染拡大を抑えるため、直接人と会うことは避け、不要不急の外出を控えようと解説してきました。高齢者にも、自粛を呼びかけています。感染リスクを避けることは必要ですが、外出せず、人に会わないことが、本当に高齢者のためになるのか、懸命に判断しないといけないと思っています。高齢者は、使わない能力は落ちやすく、落ちた能力が戻りにくいため、家に閉じこもっているとフレイル((虚弱)の状態になり、転倒して骨折したり、免疫力や認知能力が下がったりする可能性があります。普段の生活をしているだけでも、年ごとに筋力は低下しますが、ある調査によれば、2週間寝たきり状態を経験すると、7年かけて減少する量の筋肉が一気になくなるという報告もあります。高齢者でも階段の上がり下がりや散歩などで日常的に使っている能力は、維持されます。筋肉以外に、脳の働きも同じことがいえます。人と会っておしゃべりすることや、社会的な活動をすることで、脳も体も若さは保たれます。感染症対策を行ったうえで、社会生活を営んで欲しいと思います。 我慢をやめて好きなものを食べるがんの発症リスクを高める一つがストレスです。「健康のため、あれも控えよう、これもやめておこう」というのは、それがストレスになることもあります。80歳近くになれば、食欲を保つためにも好きなものを食べ、肉や魚もしっかり摂取しましょう。むしろ栄養不足の方が心配です。たばこは、やめるに越したことはありませんが、70代、80代まで生きてきたのなら、禁煙によるイライラの方がかえってリスクになりかねません。お酒は晩酌をたしなむ程度なら、よいと思います。私のことになりますが3年前、糖尿病が発覚しました。糖尿病と分かる前は、強い倦怠感と高い血糖値、体重の激減をみて、すい臓がんも疑いました。結果的にがんは見つかりませんでしたが、生と死を見つめ直すきっかけとなりました。もし、がんが見つかって末期であれば、治療をしても、極端に寿命が延びるわけではありません。また、治療による副作用で、体もだるく頭がぼんやりすることは少なくありません。そうであるならば、私は治療をせずに、すっきりした頭で、今のペースを保って生きるのもいい。好きな映画を撮り、多少短くなっても納得する人生を送りたい。もちろん最後の数カ月は大変な思いをするかもしれませんが。治療の良い点、悪い点をよく理解した上で、自らで選択するのがいいと思いました。 若さの秘訣は脳も体も使うこと 「面白い」を探しに行くがんは早期発見、早期治療がよいとされていますが、高齢者には、必ずしもそれが当てはまるとは限りません。私は長年勤めていた浴風会病院で、毎年100人ほどのご遺体を解剖しておりました。体の中に、亡くなる原因となった病気以外にも、本人が自覚していなかった大きな病巣があるという例が少なくありませんでした。がんもその一つで、85歳を過ぎたご遺体では、ほとんどの体にがんが見つかりました。つまり、高齢になればだれの体にもがんがあるということです。年を取ってからの大手術は、体力を大きく損ないます。臓器を切除すれば、これまでの生活ができなくなる確率が高くなります。闘病以外に、病気を受け入れ、病と共に生きる〝共病〟という考えがあってもよいのではないでしょうか。「幸せとは何か」。答えは、人それぞれですが、何でも楽しむ能力だと思います。面白いと感じるには、刺激が必要ですが、年を重ねれば重ねるほど、刺激が強くないと楽しめなくなります。それは人生経験が豊富になったからです。何でも新鮮に感じられていたものが、次第に慣れてきて感動が薄れてしまうのです。楽しむ能力を高めるには、自分から「面白い」を求める必要があります。若い頃は橋が転んでもおかしくても、今は、簡単なことでは笑えなくなった。そんな時は、一流の芸を見に、演芸場などに足を運ぶのもいいと思います。国内旅行をしてきたから見るところがない。それなら、ピラミッドを見に、エジプトに行くとか。実際行けなくても、行こうと思って計画を立てたり、調べたりするだけでも前向きになります。行列のできるレストランに並んでみるのもいいでしょう。長時間並べば、おなかも減るし、普段以上においしく感じます。平日のランチならリーズナブルだし、勤め人時代にはできなかった、今ならではの時間の使い方にもなります。楽しんでこその人生100年。我慢や無理をせず、新しいことや好きなことに挑戦して、日々を楽しんでほしいと思います。 【幸福社会】聖教新聞2022.10.5
February 11, 2024
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熱中症から心臓を守る薬膳研究家 正岡 慧子ナスや豆類、ニガウリなど選ぼう気温が高い日が多くなり、熱中症が増えてきました。一般的に心疾患は寒い時期に発症しやすいのですが、体温が上昇して汗をかきやすい季節にも注意が必要です。体の水分が少なくなると、血栓ができやすくなったり、血液の循環が悪くなって、心臓に負担を掛けるからです。死につながる熱中症が高齢者に多いのは、若者に比べて体内の水分が常時少なくなっている上に、水分センサーの慢性的な機能低下が加わり、補水ケアが贈れるからです。夏は熱中症と心疾患の両方の観点で、水分と塩分の管理が必要です。起床時、食事時、食間、入浴時、就寝前など、小まめに水分補給しましょう。夏の薬膳をつくるキーポイントは、4月に五行の表で示した「暑」「心」「舌」「苦」です。選びたい食材は、ナスやトウガン、ニガウリ、トマト、キュウリ、ピーマン、スイカ、豆類などの「涼性苦味食品」です。これらの果菜は心臓に働き掛けて熱を下げ、炎症を抑えるとともに、抗酸化食品も一役買ってくれるでしょう。薬膳では豆類をよく使います。中国や台湾では緑豆飲料や緑豆粉が常時販売されていますし、黒豆豆乳もよく飲まれています。日本のスーパーマーケットには緑豆モヤシや緑豆春雨がありますので、私はトウガン、カニ身、貝柱、干しシイタケなどを加えて、春雨スープを作ります。その他、血液をきれいにするキクラゲやホウレンソウ、降圧作用のあるセロリ、ニンジン、ラッキョウなどもお勧めです。熱中症や心臓病は、なってからでは遅いので、日頃から脈拍だけでなく、舌のチェックもしておきましょう。熱があると舌の表面は赤くなり、血液が汚れていると紫色に、冷えがあれば白っぽくなります。舌の裏の二本の静脈が青く浮き出ていたら要注意。心臓に熱がたまって血流が悪くなってしまいますし、熱中症にもかかりやすくなってしまいます。 【生活に生かしたい薬膳の知恵■4■】公明新聞2022.7.26
December 8, 2023
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核医学治療絹谷 清剛教授放射性医薬品を病変に検査や治療のために体内に投与する放射性物質のことを「放射性医薬品」といい、これを利用した治療が「核医学治療」です。金沢大学大学院医薬保険学総合研究科長を務める絹谷清剛教授(核医学分野)に聞きました。 全身治療を行うことが可能放射性医療品は、特定の臓器や病変に集まりやすい性質をもった物質に、放射性同位元素(ラジオアイソトープ=RI)を受けたものです。同じように放射線を使った放射線治療が、体の外から放射線を当てるのに対し、核医学治療では、「放射性医薬品」を静脈注射や経口投与することで、体内の病変に取り込ませて治療を行います。古くは、1940年代から放射性ヨウ素が甲状腺がんの治療に使われています。外科手術と異なり、痛みはほとんどありません。また、その病変に医薬品が集まるので、他の治療薬よりも副作用が少ないといった特徴があります。加えて、放射線治療では、照射された局所にしか効果が期待できませんが、核医学治療では、全身の病変に薬剤が行きわたるので、はっきりと病巣が分からない場合でも、全身治療が可能で、「標的アイソトープ治療」とも呼ばれます。目的の病変に集中した治療効果が期待できるものとして、化学療法で使われる分子標的薬と性質がいています。 海外に渡航し治療をするケースも現在、国内で行われている核医学治療は、「ヨウ素131」を使った甲状腺がん、「イットリウム90」を使った低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、「ラジウム223」を使った骨転移した去勢抵抗性前立腺がん、「ルテチウム177」を使った悪性線形内分泌腫瘍の治療などです。現在では、国内で承認されていない「アクチニウム225」による「PSMA」といった進行性前立腺がんの治療のために、身体的な負担や経済的な負担を負ったうえで、海外渡航をされているケースもあります。近年、諸外国では、「治療(therapeutics)を組み合わせた「セラノステイクス」といった造語が脚光を浴びています。放射性医療品は、治療のだけでなく、シンチグラフィー検査、陽電子放射断層撮影(PET)検査などでも使われます。特に、がん診療においては、治療と診断を同時に行えることには大きなメリットがあり、新たな放射性核種を使った研究や治験も進められています。また、治療効果が非常に高いアルファ線核種の登場は、大きな話題となりました。 基準を満たした施設で実施される核医学治療は、国が定めた基準を満たした施設でのみ受けることができます。甲状腺がんの治療では食事制限などが必要になるものの、治療前に特別にしなければならないこともありません。また、核医学治療で使用される放射線(アルファ線、ベータ線)の飛程は数㍉程度と短いため、家庭や地域で患者さんに接する方々への被ばくは非常に小さく、外来での治療も可能になっています。しかし、アルファ線やベータ線と同時に、ガンマ線が放出される核種を使用する場合、周囲の被ばくを避けるため、一定期間の専用病室での入院が必要になります。なお、専用病室からの退院は、放射線の量が法律で定められた退出基準を下回ってからで、日本では、海外よりも厳格な数値が定められています。増加傾向がある甲状腺がんの患者数や治療数に対する専用施設の不足が課題になっています。また近い将来、承認されるであろう前立腺がんの治療でも同様な課題が指摘されています。 大半を海外からの輸入に頼っているもう一つの課題は、現在、国内で使用されているRIの大半を、海外からの輸入に頼っている点です。医療の進歩によって、世界各国の需要は増えているものの、各国では生産に利用中の原子炉は古く、いつ運転停止になるか分かりません。実際に、2009年には、カナダの生産用原子炉のトラブルがあり、需要が逼迫したことがあります。また近年では新型コロナによる運輸停止など、供給が不安定な状態が続いているのです。新しい製造用原子炉や加速器の製造・維持には膨大なコストが必要となります。そのため、米国やカナダ、欧州連合(EU)やオーストラリアなどでは、国が主導して医療用放射性核種の製造を推進、放射性医薬品の確保に努めています。新型コロナのワクチンや治療薬などの例と同様に、国内でのRIの安定供給は、急務になっています。そこで、2020年8月には、私が理事長を務める日本核医学学会など7医学界で日本原子力研究開発機構の試験研究炉「JRR3」と、停止中の高速実験炉「常陽」を利用して、RIの国産化を進める要望書を国に提出しています。昨年5月の参議院の決算委員会では、公明党の秋野公造参議院議員、三浦信祐参議院議員が国内製造に向けた予算確保に政府に要望。関連予算確保につながり、道が開かれました。今後、研究が進むことで、使用できる核種の種類も増加。対象となる疾患も増えることが見込まれています。核医学治療は、「核医学」という名前から想像するイメージとは異なり、体に優しい治療であることを知っていただきたいと思っています。 【医療Medical Treatment】聖教新聞2022.5.30
October 8, 2023
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「隠れ鉄欠乏」による不調を見逃さない日本栄養精神医学研究会会長山口病院(埼玉県)副院長奥平 智之さん 倦怠感、冷え 抑うつ、不安も鉄は、人体に必要不可欠なミネラルの一種で、全身の細胞のエネルギーを産生したり、ヘモグロビンの構成成分となって、全身に酸素を運んだりする役割を果たしています。鉄が欠乏している状態を「鉄欠乏」といいます。鉄欠乏となる原因は、整理や慢性的な痔・鼻血などの失血のほかに、鉄の摂取不足や、体内の炎症による鉄の吸収や利用の障害も挙げられます。鉄欠乏が心身に及ぼす影響は、貧血に至る前に、全身の臓器の機能低下や倦怠感、冷えなど、あらゆる不調として現れます。また、鉄はセロトニン(幸せホルモン)や、ドーパミン(ときめきホルモン)など、神経伝達物質の産生にも欠かせないため、鉄が足りなくなると、落ち着きがなくなったり、抑うつ、不安・焦燥などの精神症状、睡眠障害の原因となったりすます。さらに、鉄はコラーゲンの材料であるだけでなく、皮膚の活性酸素を減らす役割もあるため、鉄欠乏は、しわや染み、皮膚の乾燥など肌トラブルにつながります。鉄欠乏の問題は、自覚していない人が多い点です。特に女性の場合、整理が始まった頃から心身の不調が続いても、病気ではなく自分の「体質」だと思ってしまう人が多いようです。まずは、自身が鉄欠乏になってはいないか、セルフチェックで調べてみましょう。 注意すべき点はテケジョとテケコ整理のある女性や成長期の子どもは、注意が必要です。貧血がないために、見逃されている女性や子どもが非常に多いことから、私は鉄欠乏のある女性を「鉄欠乏女子(テケジョ)」、子どもを「鉄欠乏子ども(テケコ)」と呼び、啓発活動をしています。整理のある女性で、手先が冷えやすかったり、疲れやすかったりする人は、鉄欠乏になっている可能性が高いといえます。また妊婦の方は、特に鉄の必要量が増えます。胎児の成長や発達に鉄が欠かせないからです。胎児の鉄が足りないと、生まれてきた子どもが、発達障害や統合失調症などの精神疾患、アレルギー体質となるリスクが上がる可能性があります。また鉄欠乏が影響し、集中力の低下、注意散漫、倦怠感などにより、学校の成績が低下したり、運動のパフォーマンスが落ちたりする子どもは多いです。 生理のあり女性 約6割が欠乏世界には、国民の鉄欠乏を減らすため、小麦や米、しょうゆに鉄を添加する取り組みをしている国もありますが、現代の日本では、鉄は不足しがちな栄養素の一つといえるでしょう。厚生労働省の統計では、整理のある女性の約6割が鉄欠乏8フェリチン25㌨㌘/㍉㍑以下)の状態にあるとされています。厚生労働省が推奨している、1日に補給すべき鉄分の量は、次の通りですが、実際に、どの程度の量が必要かは、血液検査による個々の判断が必要です。○18歳以上の女性で、月経がない場合は6~6.5㍉㌘○月経のある成人女性は10.5~11㍉㌘○妊娠初期・授乳期は21~21.5㍉㌘○18歳以上の男性は7~7.5㍉㌘この数値は、あくまで鉄が足りている人の推奨量。鉄欠乏の人や鉄欠乏のリスクがある人(過多月経の人など)は、より多めの鉄を接種して改善を図るとよいでしょう。 酸味をプラスし非ヘム鉄も吸収鉄欠乏の人は、まず食事を改善していくことが基本です。鉄には、吸収しやすい「ヘム鉄」と、吸収しにくい「日ヘム鉄」の2種類があることを知っておいてください。ヘム鉄の中でも。赤身の肉(特に牛肉や馬肉)や青魚などの動物性タンパク質はオススメです。また、〝鉄分不足といえばレバー〟と考える人も多いのではないでしょうか。レバーには、鉄、タンパク質、ビタミンB群が豊富なので、鉄欠乏症の人にはありがたい食材です。豚肉レバー100ℊ当たり㍉㌘ほどの鉄を含んでいます。ただ、プリン体なども多いので、食べ過ぎに注意しましょう。肉や魚以外でも、野菜や穀類、豆腐、海藻類など、鉄が豊富な食材はありますが、いずれも非ヘム鉄の食材。ちなみにレバーも、ヘム鉄以上に非ヘム鉄がたっぷり含まれています。非ヘム鉄の多い食材は、レモンや梅干しなど酸味のあるものと一緒に接種すると、鉄の吸収効果がアップするので、調理の参考にしてください。 サプリを使うかは医師に相談し検査を女性や子どもは、食事の改善と併せて、サプリメントが必要な場合が多いです。ただし、鉄は〝もろ刃の剣〟――極めて大切な栄養素である一方、炎症がある場合は活性酸素の原因にもなります。また、体内で何かしらの炎症がある場合、鉄の吸収や利用がされにくくなるため、鉄サプリの積極的な服用は、活性酸素の原因となります。炎症があると、体は〝細菌に感染した〟と誤認して、最近の餌となる鉄を血液中に入れないようにするからです。サプリを使うかどうかは、血液検査で鉄欠乏の程度と炎症の有無を確認し、医師に相談するようにしましょう。治療や予防の観点からも、「メンタルヘルスは食事から」と、声を大にして訴えています。賢明な食事で、適切な栄養を取ることが、心身の健康のために重要であると、知ってほしいと思います。 鉄欠乏のチェックリスト次の15項目の中で、いくつ当てはまりますか?□固いものを噛みたくなる(氷。あめ、爪、鉛筆など)□爪が割れやすい、柔らかい、丸みが少ない□脚がむずむずする。落ち着きがない□疲れやすい。軽い運動でも動悸や息切れがする□冷え性□髪の毛が抜けやすい□喉に不快感がある。飲み込みにくい□頭痛がする、頭が重い。めまい、立ちくらみがある□イライラしやすい□あざができやすい□歯茎から出血しやすい□生理前の不調や生理痛がひどい□出血が多い(生理、痔、胃潰瘍、鼻血)□肉や魚をあまり食べない□出産経験がある 4個以上は黄色信号。6個以上は赤信号です。4個以上、チェックが入った人は要注意。医療機関で、鉄代謝関連の項目を含めた血液検査を受けましょう。健康診断の際に、ヘモグロビンの数値が参考基準内でも、鉄欠乏症の方はたくさんいます。通常の血液検査ではあまり調べられない、鉄代謝関連の項目(フェリチンやトランスフェリチン飽和度など)の数値を見なければ、鉄欠乏症かどうかは、正確には判断できないのです。 出典:奥平智之『マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ』(主婦の友社) 【健康PLUS+】聖教新聞2022.5.24
September 30, 2023
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人体の不思議―山本 健人(医師)―医学の教科書は実は面白い普段、生活している時には、あまり気付くことのない人体の素晴らしさ。医学部ではまず、人体の構造と働きから学びます。例えば、人体がいかに重いか。さほどは重くはなさそうな腕でさえ片方で約5㌔、脚になると約10㌔もあります。普段、重さを感じずに行動していることからすると、想像以上の重さです。でも、それを感じさせない精巧な仕組みがあるので、私たちは自由に動けているわけです。けがや病気などで寝たきりの状態になると、介護する人は大変です。また、寝たきりで筋肉が弱ってしまうと、立ち上がることさえ一苦労することを考えれば、腕や脚の重さを実感できるかと思います。そんな医学生時代に感じた驚きを伝えたいと、近著『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)を出版しました。載せた内容は、ほとんど医学部の教科書に載っていることばかり。実は医学部の教科書って面白いんです。それをかみ砕いて分かりやすくしているだけ。専門的になると難しく、学ぶのも大変ですが、身近な知識というのは、どんな学問であれ非常に面白いもの。今の私たちの暮らしにつながっているからイメージしやすい。自分自身、科学や数学、歴史などの教科書が好きで、医学・人体に関しても作ってみたいというのが動機の一つでもありました。知的好奇心を満足してもらえると幸いです。 知られていない偉大な発明内容のいくつかを紹介しましょう。コロナ禍にあって、パルスオキシメーターが注目されました。これは血液中の酸素飽和度を測定できるというもの。でも、指先に小さなキャップをつけるだけでで、どうして酸素飽和度が計測できるのでしょうか。血液中の赤血球が、肺で取り入れた酸素を全身にはこんでいることは、みなさんも知っていると思います。酸素と結合した酸素化ヘモグロビンと、結合していない脱酸素化ヘモグロビンでは、「赤い色の光を吸収する度合い」が違うのです。酸素を多く含む血液は鮮やかな赤色に、少ない血液は暗い赤色に見えます。この違いを測定することで、実際に血液を採取して分析しなくても、血中酸素飽和度を知ることができるのです。日本人が開発したこの仕組みは、今や、血圧や脈拍、体温と同様に、生命維持に重要な情報をリアルタイムで教えてくれます。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、肺炎がどの程度進行しているのかを知る指標として、血液中の酸素飽和度は非常に有効でした。まさにパルスオキシメーターの面目躍如といったところでしょうか。実は開発者の青柳卓雄さんは、2020年4月、84年の生涯に幕を閉じました。その死は、あまり大きく報じられませんでしたが、医療従事者・患者にとって、この発明は歴史に残る偉業と言えるでしょう。 精巧な仕組みと素晴らしい機能 病気と健康の境目はどこちょっと汚い話になってしまいますが、みなさんは肛門がどれだけ精緻な機関であるかご存じでしょうか。大腸から肛門へと下りてきたものが、固体か気体かを瞬時に見分け、気体のときのみ、おならとして排出するという高度な選別をしています。しかも、個体と気体が同時に下りてきた時には、個体を直腸内に残したまま、気体だけを出すという芸当までできます。これが、おならと便を識別できないと、非常に困ったことになります。トイレに行って便座に座らなければ、おならはできないということになるからです。また、病気と健康の境目はどこにあるのでしょうか。これは非常に難しい問題で、多くの人が誤解しているように思います。新型コロナウイルス感染症の診断に、PCR検査が用いられていますが、検査結果自体が病気か否かを決めるわけではありません。新型コロナウイルスに感染し、発症してから7~10日経つと、他人への感染性は無くなります。この時点で、何も症状がないのであれば、「病気」の状態ではありません。症状もなく、他人に感染を広げるリスクもないからです。ところが、PCRの検査結果は2、3週間も陽性が続くことがあります。病気だと見なすべきなのは、あくまでも治療や隔離などが必要な人であって、必ずしも検査が陽性の人ではないのです。=談 【文化】公明新聞2022.4.21
August 26, 2023
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食物や薬物、ハチ毒などが原因日本アレルギー学会理事長 海老澤 元宏アナフィラキシーアナフィラキシーとは「アレルゲンの侵入により全身性に複数の場所でアレルギー症状が引き起こされること」で、アナフィラキシーショックとは「アナフィラキシーが進行し、血圧低下や意識障害を伴い生命に危機が及ぶ状態」です。原因として最も多いのは食物関連によるものです。最近はクルミやカシューナッツなどの木の実類によるものが増えています。わが国のアナフィラキシーショックによる死亡例は年間50~70例程度、報告されています。死亡例の原因として薬物・ハチ毒によるものが多いのです。薬物は医療関係で血管内に薬物や造影剤などを投与する際に、重篤な反応が急激に進展することが多いですが、解熱鎮痛剤を経口的に内服しても起こることがあります。ハチ毒はスズメバチやアシナガバチによるものが多く、9月から10月に頻発します。過去にアナフィラキシーを経験されている方や可能性のある方は、アドレナリンの自己注射薬(商品名=エピペン)の処方を医師から受けておくこと、使うタイミングや使い方も聞いておいておくことが大切です。最も危険な症状は呼吸器や糸循環器系です。「呼吸がしにくい」「血圧低下により視野が暗くなる」などの症状を感じたらただちに助けを呼び、エピペンを大腿部の外側に筋肉注射します。使用後はただちに医療機関を受診するようにしましょう。 【アレルギーを知ろう15】公明新聞2022.3.8
June 24, 2023
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多くは口の中の症状に限定日本アレルギー学会理事長 海老澤 元宏「果物」原因の疾患日本の花粉症はスギやヒノキ、イネ科の雑草、ブタクサなどが代表的ですが、北海道では樹木の花粉症はスギやヒノキではなく、シラカバが問題になります。欧州では以前から、シラカバ花粉症と果物や野菜のアレルギーが問題になっていましたが、近年、日本でも花粉症と関連した果物アレルギーが急増しています。本州ではバラ科の果物(リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴなど)で口の中の違和感を訴える人を調べてみると、シラカバの仲間のハンノキの花粉に対するIgE抗体持っている方が多いです。シラカバやハンノキ花粉と似た構造がバラ科の果物中に存在することで、体の中でハンノキ花粉に対するIgE抗体が反応して症状が誘発されます。イネ科の雑草やブタクサなどの花粉は、ウリ科のメロンやスイカと似た構造があり、同じように反応します。原因物質は、加熱や消火に弱く壊れてしまうので、加工したジャムやジュースなどではアレルギー反応は起きません。多くは口の中のイガイガやかゆみなどの症状に限定されます。ただし、投入では全身的な症状が起ることがあります。モモでも全身的なアレルギー反応を起す方が、まれにおり、ヒノキ花粉と関連する新しい原因物質も見つかっています。スギやヒノキの花粉症をお持ちの方は、春にほかのアレルギーの症状が出やすくなることもあるので、症状を上手に管理してください。 【アレルギーを知ろう⑭】公明新聞2022.3.1
June 16, 2023
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高齢者のまぶたの下垂―隠れた病気にも注意して姉崎 裕彦 愛知医科大学教授 原因をしっかり特定することが大切見えにくさや見た目を気にして手術を選択する患者もいますが、専門家は、似た症状で様々な病気が隠されている可能性があり、まずは原因をしっかり特定することが大切だと指摘しています。日本医科大学非常勤講師の根本裕次医師(眼形成外科)によると、こうした症状は、まぶたを開ける筋肉や神経に原因がある「眼瞼下垂」と、その他の原因に縁る「偽眼瞼下垂」に大別されます。眼瞼下垂の主な原因は「生まれつき」「コンタクトレンズの長期使用」「眼の手術」「加齢」などです。ただ、数は少ないのですが脳動脈瘤、脳梗塞や脳出血、筋無力症、顔面神経の病気、腫瘍などでも同様の症状が現れる可能性があり、よく眼瞼下垂と間違えること一大事です。まぶたが垂れる病気を診断するには、いくつかのプロセスがあります。まず重要なのは「左右が対象かどうか」だと根本さんは強調します。「最初にまっすぐ前を見てもらい、左右差がないかを確かめる。さらに眼球の動き、まぶたの動き、同校の大きさも左右に違いが無いかどうか確かめる」。差があればその原因をさらに調べる必要があるといいます。 手術を踏んで鑑別をする偽眼瞼下垂では眼球の位置、まぶたの皮膚の垂れさがりで瞳孔が隠れていないか、眉毛の下がり具合などを調べます。まぶたの冷却や採決、磁気共鳴画像装置(MRI)撮影など調査も必要もあることがあり、患者の立場から診察が長い、検査が多いと感じそうです。ですが、根本さんは「よくある眼瞼下垂だと短絡せず、そうした鑑別の手順をきちんと踏むのが大切」と話しました。では、高齢者でまぶたに原因がある眼瞼下垂などのように起きるのでしょうか。「多くは、まぶたを持ち上げる筋肉『眼瞼挙筋』が緩んだり薄く伸びたりしている」と愛知医科大学の姉崎裕彦教授(眼形成・眼窩・涙道外科)は説明します。宇和まぶたは、億なった所にある眼瞼挙筋が挙筋腱膜を通じてまぶたを覆う瞼板を引き上げ、この動作ではまばたきができます。原研挙筋の力が衰えたりすると、まぶたが十分に持ち上げられなくなるというのです。 根本的な治療は外科手術根本的には治療は外科手術です。ゆるんだ挙腱膜を折りたたむようにして瞼板につなぎ直す方法が代表的。全体を縮めたのと同じ方法が代表的。全体を縮めたのと同じ形になり、力が伝わるようになります。また、高齢者ではほかに、額の皮膚がたるんで上がるまぶたが重なって切る場合があります。これはまぶた自体の問題ではないか偽眼瞼下垂ですが、この症状も皮膚を切り縮める手術の対象になり得ます。まぶたと同時に、あるいは単独で手術する場合があるといいます。ただ、外科手術には特有の難しさもあります。「手術跡はどうしての一次的に硬くなり、手術後しばらく見えにくさを感じるケースがある。また涙の流れ方に影響して、目が乾きやすくなることも」と姉崎さん。患者にとっては、手術後の外見(整要性)の問題も見逃せません。手術後に「思っていたようなまぶたの形になっていない」「左右差が大きい」などの不満が生じることがよくあるといいます。姉崎さんは「手術によって、自分の暮らしに必要な〝見え方〟が得られるかそうか、手術後のリスクとの兼ね合いで考えるべきで、慎重に検討してほしい」と話しました。 【医療Medical Treatment】聖教新聞2022.2.28
June 13, 2023
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第4回「メンタルヘルス」の理解のために㊦なぜ、「こころの病気」になるのか?酒井●「なぜ、「なぜ、『こころの病気』になるのでしょうか?」と聞かれることがよくあります。皆さんは、どうお考えでしょうか? 遠藤●「こころの病気」になる要因については、さまざまなことが挙げられます。身体におけるのうの器質的・機能的な要因などが影響している場合や、個人の気質や、性格など、心理的な要因が関係している場合もあります。 木内●成長発達過程のある時期に生じる場合、また、「コロナ禍や経済状況など、社会的要因によって影響を受ける場合もありますね。ほかにも、対人関係や家族関係等に影響を受ける場合など、さまざま考えたれます。 村松●一人一人の症状の内容や程度などによって、要員は極めて多様といえます。また、それぞれの要因が、どの程度、関与している者かも、人によって異なり、個別なものと考えられていますね。 長渕●よく、「こころの病気」を発症する直前にあった出来事や、印象深い出来事だけで取り上げて、その要因として考える傾向がありますが、必ずしも、それだけでは説明できないこともあります。 遠藤●エレベーターに例えて説明されることもありますね。十両超過でエレベーターのブザーが鳴った時、最後に乗った人が重量超過の原因とみなされ、皆の視線が集まります。しかし、実際には、乗り合わせたすべての人が関係しているのです。一対一の因果関係のように見える場合でも、実際には、その他の要因が潜んでいる可能性もあります。 村松●多くの場合、要員が複合的に作用して、一定の症状や状態がもたらされていると考えた方が、実情に近く、より適切に理解をしていくことができるのではないでしょうか。 「こころの病気」は回復するのか?酒井●「こころの病気」は回復しうる病気といえます。「こころの病気」になったとしても、多くの場合、適切な医療を受けることで回復し、社会の中で安定した生活、自分らしい生活を送ることができるようになると思います。 木内●医療者・当事者・家族が一緒になって、より良い環境をつくっている実践が、多くの医療現場で行われています。状況を適切にコントロールできるように改善し、回復したケースも多くありますね。 遠藤●身体の病気においても、「治る」というと、「元の状況に戻る」というイメージされることが多いかもしれませんが、必ずしも、そうとはいえません。そうして意味では、身体の病気も、「こころの病気」も、「治る=元の状況に戻る」と一面的に捉えない方がいいでしょう。 木内●「こころの病気」も、人によって症状や程度が異なるため、一律には言えませんが、元の状況に戻って治る場合も、長く薬の服用やその他の治療が必要な場合などがあります。そうした場合でも、生々をコントロールでき、日常の生活や社会生活を自分らしく送れている方もたくさんいらっしゃいます。 遠藤●「治る」「元の状況に戻る」ことも大切ですが、たとえ、そうでなかったとしても、状況をある程度コントロールできるようになるということも大切ですね。 長渕●「こころの病気」の経験を通して、自分自身の人生を見つめ直し、病気になる前に比べて、より深く自分自身を理解し、さらに自分らしい生き方ができるようになる方も多くらっしゃいます。 酒井●池田先生は、「病気も、生命のありのままの姿です。病苦それ自体は自然の摂理です。ゆえに病気になること自体、何ら恥ずかしいことでもないし、まして人生の敗北などでは断じてありません」と教えてくださっていますね。仏法では、病気は生命に本然的に具わっているものと捉えています。 「仏法は、一貫して、医学を最大に尊重病気も、生命のありのままの姿です」 仏法と医学の関係性を理解し、向き合っていく酒井●池田先生は、「『医学』は、病気の原因を客観的に認識し、治療していくのに対して、『仏法』は、病の根底にある生命そのものを把握し、そこから、病気の原因をとらえ、変革していく立場であります」と教えられていますね。 村松●「仏法は、一貫して、医学を最大に尊重してきました」とも、池田先生はいわれています。仏法と医学の関係性を理解し、向き合っていくことが、「こころの病気」の治療においても、大切なことなのではないでしょうか。 長渕●生命的次元の変革が、「こころの病気」における医学的な回復に影響するケースは多くありますね。「こころの病気」についても、身体の病気と同様に、医学的な治療と信心とが対立するものでは決してなく、互いが「補完し合うもの」であるといえます。 村松●「こころの病気」において、医学的な治療を総合的に行う中で、病気の回復だけにとどまらず、その治療を通して、自分自身に対する新たな気づきが生まれ、人生観や社会間が変化するような場合も多くあります。その結果、幾度となく同じような苦悩が繰り返されていた人生を自分らしく歩み、家族や周囲との関係が、さらによくなっていく方も多くいらっしゃいます。 酒井●本人が病気なので祈ることが難しい状況にあったとしても、「家族や同志の師子吼の題目は、必ず届きます」と、池田先生は教えてくださっています。皆で温かく包み込みながら、お題目を送っていくことも、とても大切ですね。 「生命という視座に立って、人間性と人間の主体性の回復を図ることが大切」 「メンタルヘルス」の重要性にいち早く着目木内●心身ともに充実した健康状態をめざす「メンタルヘルス」の取り組みの重要性については、近年、国内で注目されるようになりました。しかし、その本格的な取り組みの歴史は浅く、その重要性が大きく取り上げられるようになったのは、2000年頃からといわれています。 遠藤●池田先生は、今、いわれている「メンタルヘルス」の取り組みを含め、本来、求められる医療の在り方について、いち早く仏法の視点から深く広く、とらえられていますね。 村松●1975年9月15人、「ドクター部の日」の淵源となった「第3回ドクター部総会」での池田先生の指針は、現代医学の進むべき道を示された画期的なものでした。精神科医の立場から受け止めた時、医学全般における課題はもとより、「メンタルヘルス」の大事な要諦が詰まっており、大変に深い内容の指針であったと思うのです。 木内●小説『新・人間革命』第22巻「命宝」の章に、総会の模様がつづられていますね。席上、池田先生は、当時を「健康不安時代」ととらえ、「健康維持」が、人々の最大の関心事になっていると言及されます。 長渕●池田先生は、現代人の過度のストレスや「こころの病気」などの背後には、「現代文明、現代社会の人間疎外の問題がある」ことを指摘され、「生命という視座に立って、人間性と人間の主体性の回復を図っていくことの大切さ」を強調されています。そして、そのためには、「身体的な問題だけでなく、「心身両面にわたる研究」に着目し、特に、強い心をつくり上げていくことが、きわめて重要である」と訴えられました。 木内●「崇峻天皇御書(三種財宝御書)」の「蔵の財よりも身の財すぐれたり、身の財より心の財第一なり。この御文を御覧あらんよりは、心の財をつま(積)せ給うべし」(新1596・全1173)との一節を通し、池田先生は、こうつづられています。「人間の幸福のために、最も必要不可欠なものは、『心の財』である。心が満たされなければ、幸福はない」と。 遠藤●さらに、池田先生は続けて、こう呼びかけられますね。「人間の本当の幸福は、蔵や身の財によって決まるのではない。心の豊かさ、強さによって決まるのだ、どんな逆境にあろうが、常に心が希望と勇気に燃え、挑戦の気概が脈打っているならば、その生命には、歓喜と躍動と充実がある。そこに幸福の実像があるのだ」「わが生命からこみ上げてくる、この勇気、希望、躍動、充実、感謝、感動、歓喜……。これこそが『心の財』であり、私たちの信仰の目的も、その財を積むことにあるのだ。言わば、それは幸福感の転換であり、『幸福革命』でもあるのだ」 「どんな状況にあっても、生命に積まれた『心の財』だけは、断じて壊されません」 三世永遠にわたる「心の財」を共に長渕●「心の財」について、池田先生は、こうつづられています。「『心の財』は、精神的な健康です。『心の財』から、生きようとする意欲が、希望と勇気が、張り合いが生まれます」「その『心の財』は、人々の幸福のために、さらに言えば、広宣流布のために生きることによって、築かれるのである」「『心の財』を積んでいく中で、生きることの尊さを知り、エゴに縛られた自分を脱し、人々の幸福という崇高な目的のために、生き生きと活動していくことができるのであります。しかも、こうした精神的な健康の確立が、どれほど大きな、身体上の健康回復、健康増進の力となっていくか、計り知れないものがあります。いな、こころの健康なくしては、本当の健康はない。それを、広く社会に認識させていくべきであると思うのであります」 村松●改めて、精神科医の視点から申し上げれば、こうした池田先生の指針には、「精神的な健康」、つまり「メンタルヘルス」の位置付けや重要性、また、目的とすべきことなどが、全て含まれていると思わざるを得ないのです。「人間の幸福」には「メンタルヘルス」のための取り組みを、個人としても、社会においても推進し、理解を深めてもらうことが、今後、さらに大切になってくるのではないでしょうか。 酒井●池田先生は、こう教えてくださっています。「どんな状況にあっても、ひとたび妙法に遠視、広宣流布の世界に連なった『心の財』だけは断じて壊されません。生命に積まれた「心の財』は永遠に不滅です」と。たとえ、「こころの病気」であったとしても、生命に包まれた『心の財』が壊されることはありません。三世永遠にわたり、金剛不壊の生命を荘厳する「心の財」を共に輝かせていきたいと思います。 酒井ドクター部長村松中部総合ドクター部長(精神科医)長渕中国ドクター部長(精神科医) 木内東京ドクター部長(精神科医) 遠藤東京ドクター部副書記長(精神科医) 【誌上座談会「福徳長寿の智慧」に学ぶ】大白蓮華2022年2月号
June 12, 2023
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ダニや花粉が原因で目に炎症日本アレルギー学会理事長 海老澤 元宏結膜疾患ダニや花粉などが原因となり結膜などでのアレルギー反応の結果、炎症を起す結膜疾患の代表です。結膜は「白眼」と呼ばれる眼球の表面からまぶたの裏を覆う粘膜を指します。アレルギー性結膜炎はアレルギー性結膜炎、春季カタルなどが主なものです。アレルギー性結膜炎の主な症状は、目のかゆみですが、その他、「白眼が赤くなる」「涙が出る」「目がごろごろする」「目やにが出る」といった症状も伴います。ダニによるものは通年性に症状が起りますが、スギやヒノキ花粉症の眼症状として2月下旬から4月末まで悩まされる方も多いと思います。治療は抗ヒスタミン作用のある点眼薬を使います。点眼薬で改善しない場合には抗ヒスタミン薬の内服薬を併用するとよいでしょう。炎症がひどくなった場合、ステロイドの点眼薬も効果的ですが、濃度の高いものを連用するときは眼圧を測定し、緑内障の発症に注意してください。重症のアレルギー性結膜炎は春季カタルと呼ばれ、結膜が凸凹になるのが特徴で学童期の男児に多く見られます。アトピー性皮膚炎が目の周囲にできると、まぶたをかいて眼球をおす動作などをすることがあると思います。慢性的な場合には網膜剥離やアトピー性の白内障の発症に注意が必要です。予防札としては顔面、特に目周囲の湿疹のコントロールが大切です。 【アレルギーを知ろう13】公明新聞2022.2.22
June 7, 2023
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主に通年性と季節性の2種類日本アレルギー学会理事長 海老澤 元宏鼻 炎アレルギー性鼻炎の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが主です。通年性と季節性に分かれます。アレルギー性鼻炎は風邪によるビエント区別が難しいですが、「発作性が認められる」「朝に症状が多い」ことなどが鑑別点になります。冬の寒いが危機に触れて鼻水が出ることも多く、寒暖差などで起こる鼻炎もあります。アレルギー性鼻炎に合併していることもよくあります。それらを自己判断で「花粉が飛んでいる」などという人も多くいます。通年性の原因としてはダニやペットのフケやカビによるものが多く、季節性としては花粉によるものが代表的です。ダニは室内の布団や布製のソファなどにひそんでいて秋に最も多くなります。カビは室内外に存在するアルテルナリアなどが代表的です。花粉としてはスギ(2~3月)、ヒノキ(3~4月)、ハンノキ(1~5月)、イネ科の雑草(初夏・秋)、キク科の雑草(秋)などです。治療の第一歩は原因を避けることですが、避け切れないことも多いと思います。そのような場合には薬物療法として眠気の出ない抗ヒスタミン薬の内服、ステロイド点鼻薬がお薦めです。鼻づまりがひどい場合にはロイコトリエン受容体拮抗薬が有効です。ダニとスギに対しては皮下注射や舌下錠で原因物質を体に上手に入れることで反応しにくくする治療があります。 【アレルギーを知ろう12】公明新聞2022.2.15
June 2, 2023
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「メンタルヘルス」の理解のために㊤ 近年、「メンタルヘルス」(こころの健康)の重要性が一層、高まっています。「こころの病気」で病院に通院や入院をしている人たちは、国内で400万人を超え、日本人のおよそ30人に1人の割合になっています。今、コロナ禍の影響により、「こころの病気」を抱える人たちはさらに増えています。自分を守り、大切な人を守るために、今号では、「メンタルヘルス」の理解を深め、一緒に考えて聴く機会となるよう、ドクター部の専門医を交えて、語り合ってもらいました。(内容は個人的見解によるものです) 「こころの病気」は特別な人がなるもの?酒井(ドクター部長)●長引くコロナ禍により、「メンタルヘルス」への深刻な影響が懸念されていますね。 村松(中部総合ドクター部長〈精神科医〉)●「メンタルヘルス」とは、「こころの健康」「精神保健」といった意味として表現されています。最近では、「心身ともに充実した健康状態をめざそう」という意味でも多く使われ、私たちの生活における身近なテーマといえます。 木内(東京ドクター部書記長〈精神科医〉)●「メンタルヘルス」の問題は、長年、警鐘が鳴らされ続けてきましたが、コロナ禍の影響により、さらに喫緊の課題となっています。残念なことは、2009年以来、10年間、減少傾向にあった自殺者数は、2020年に入って増加に転じてしまいました。 遠藤(東京ドクター部副書記長〈精神科医〉)●近年、「こころの病気」、あるいは、「うつ病」「依存症」といった言葉を耳にする機会は多くなっていますが、いまだに理解が十分に広がっていないのが実情ですね。 長渕(中国ドクター部長〈精神科医〉)●「こころの病気」は、生涯を通じて、5人に1人がかかるともいわれ、決して特別なものではなく、誰にでもかかる可能性があるものといえます。 村松●私たちが、「メンタルヘルス」に取り組む上で、大切な第一歩は、「こころの病気」への理解を深めていくことではないでしょうか。 「偏見」「誤解」が生まれる背景長渕●「こころの病」について、なかなか理解が広がらない背景は、さまざま考えられます。日本に限らず、歴史上、「こころの病気」に対する「偏見」や「誤解」は根強く存在し、世間の人々の目に、実情が見えにくい状況が続いてきました。 村松●当事者や家族の方々の信条としても、ケースによっては、〝あまり人に知られたくない〟という思いから、積極的に周囲の人に語ることもためらわれてきました。そのため、結果的に、「こころの病気」が、〝聞きづらい話題〟や〝触れてはいけない話題〟のようになってしまったと考えられます。 長渕●長年、「こころの病気」については、〝自分とは関係のないところで起こっている出来事〟にとらえられ、〝できれば触れたくないこと〟として、避けられてきてしまったのではないでしょうか。 断片的な情報から誤ったイメージ遠藤●また、一部の「こころの病気」を抱えた人による事件や事故について、マスコミ報道などで、あたかも、「こころの病気」が原因であるかのように伝えられてきたことも、大きな影響を与えてきたのではないでしょうか。 木内●「こころの病気」を抱えた人が犯罪を起こすことはむしろ少なく、逆に犯罪被害に遭うことが多いとも言われていますね。報道により、偏見や誤解が助長されてしまうことも懸念されています。 長渕●断片的な情報をうのみにして、先入観をもとに〝自分流に解釈してしまう〟ことにより、〝「こころの病気」の人は危険〟といった偏見に陥ってしまうこともあるかもしれませんね。 遠藤●こうした中で、「こころの病気」は〝特別な病気〟〝よくわからない病気〟〝一生治らない病気〟といった偏見や誤解を抱いてしまうことも少なくありません。また、〝気の持ちようだ〟〝心が弱いから病気になった〟という誤った誤解やイメージが、定着したままになっているとも考えられます。 「こころの病気」への理解それが、自分を守り、大切な人を守る〝第一歩〟 正しい情報を見分けるむずかしさ木内●近年になって、自殺者が急増し、その正確な原因の究明とともに、自殺者を出さない対策が強く求められるようになりました。 村松●身の回りの友人や職場の仲間、学校の同級生など、自分が関係する人たちの中でも、「メンタルヘルス」の不調を起こす人が多くなり、医療機関で治療を受ける人も増えていきました。そうした結果、「メンタルヘルス」に対する対策が急務となり、「他人事」ではなく、「自分事」として、考えられるようになったのではないでしょうか。 酒井●こうした「メンタルヘルス」の問題は、個人で学ぼうとしても、なかなか難しく、また、何か正しい情報なのかを判断するのも困難なため、いまだに深い理解に至っていないという現状もありますね。 大きく異なる一人一人の理解遠藤●「メンタルヘルス」については、世代や人生経験、また住んでいる地域、家庭環境や友人関係の違いなどにより、一人一人の理解が大きく異なっていることも、特徴といえます。 木内●「こころの病気」の話題が、多くの人の中で、オープンなものとして語り合われたり、学び合ったりする機会が少ないことも一因ではないでしょうか。また、専門家の中で見解が分かれていることも、理由に挙げられるからかもしれませんね。 松村●「こころの病気」だけでなく、身体の病気、また、さまざまな事象も含めて、医学的に解明されている、ともあれば、いまだに解明されていないことも多くあります。現時点で正しいことは何か、また、自分自身が理解できていないことは何かなど、ありのままに受け止めていく「開かれた心」が大切ですね。 「開かれた心」による「開かれた会話」木内●自分が一度、理解したことを固定化し、絶対化してしまうと、その子Lと自体が、偏見や誤解につながる可能性があります。また、一面的な物差しだけでは、全体的に理解することができなくなってしまう恐れもあります。 遠藤●そうならないためには、様々な対場の人の考え方や感じ方なども尊重していくこと、そして何より、当事者の方々の経験や背景なども、先入観にとらわれずに理解していくことが大事ですね。 酒井●自分自身の偏見や先入観、また執着などにとらわれず、ありのままに受け止めていく「開かれた心」で、他者の意見や考え方を聞き、立場の違う人とも「開かれた対話」を続けていく。このことが、今後、さらに大切になって来るのではないでしょうか。 早めに周囲の人や専門機関に相談を長渕●「こころの病気」は、誰にでも起こりうるものといえます。身体の病気と同じように、早期発見・早期対処が大事です。 木内●早めに適切な治療や社会的なサポートを受けるなど、回復しやすいことが分かってきていますね。 遠藤●心の不調やストレス症状が長く続き、日常生活に支障が出ている場合は、自己判断せずに㎡早めに、周囲の人や専門機関に相談することがとても大切です。結果的に思い過ごしであってのいいので、変化を感じたら、相談することをお勧めします。〈「心の病気」の初期サインや専門機関への相談については、厚生労働省のサイトなど(85㌻)もご参照ください〉 「本当に深い慈悲の境涯を開き、豊かな人間性の社会を築いていく」「病気の姿を現していても、その生命の偉大さは変わりません。全員が、尊貴な宝の存在なのです」 焦らず、じっくりと温かく、長い目で村松●池田先生は、「こころの病気」について、次のように語られています。「長い人生だし、決して焦る必要はありません。専門家に相談して、じっくりと適切な治療を行っていただきたい。皆、いろいろな状況がある。一律に「こうすればいい」という処方箋はありません。でも、一点、妙法を持った皆さんが不幸になることは絶対にないと、私は断言できます。周りの人は、病気で苦しむ本人を温かく、また長い目で見守りながら、ご家族に真心からの励ましを送っていただきたい。そばで支えてくださっている方々は大変です。ときには工夫して、休息をとっていただきたい。こころの病を抱えた人を大切にすることは、本当に深い慈悲の境涯を開いていくことです。豊かな人間性の社会を築いていくことです」 酒井●私たちが、「メンタルヘルス」に取り組んでいく上で、とても大事な指針ですね。 悩んだ人ほど偉大になれる正真正銘の地涌の菩薩長渕●池田先生は、このようにも呼び掛けられています。「ともあれ、悩んだ人ほど偉大になれる。つらい思いをした人ほど、多くの人を救っていける。偉大な使命があるんです。これが仏法です。菩薩道の人生です。戸田先生は「時には、〝貧乏菩薩〟や〝病気菩薩〟のように見えるかもしれない。しかし、それは人生の劇を演じているんだよ。正真正銘の地涌の菩薩なんだ」と、よく言われていた。また『大病を患った人の人生の深さを知っている』語っておられた。全部意味があるのです」 酒井●「三千大千世界(大宇宙)に満ちる珍宝をもってしても、命に替えることはできない」(新1463・全1075、通解)と日蓮大聖人は仰せです。池田先生は、この御聖訓を通して、「病気の姿を現していても、その生命の偉大さ、尊さ、素晴らしさには何の変りもありません。皆さんを全員が、一人も残らず、最高に尊貴な宝の存在なのです」とも語られています。一人一人の「生命の尊厳」を大切にして生ける「豊かな人間性の社会」を共に育んでいきたいと思います。(㊦に続く) 〈厚生労働省〉こころの健康・メンタルヘルス治療や生活を応援するサイト みんなのメンタルヘルス総合サイトhttps://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/若者を支えるメンタルヘルスサイトhttps://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトhttps://kokoro.mhlw.go.jp/ 【「福徳長寿の智慧」に学ぶ】大白蓮華2022年1月号
May 3, 2023
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問題解決には負荷試験が必要日本アレルギー学会理事長 海老澤 元宏食物アレルギー㊥食物アレルギーの診断や対応に関する混乱は以前からありましたが、ガイドラインの普及や全国に食物経口負荷試験(医療機関で原因と思われる食物を食べて症状が誘発されるかを調べる検査で、イカ「負荷試験」と略す)が実施可能な施設が増えたので改善しつつあります。診断では詳細な問診に加え、血液検査で食物に対する特異的IℊE抗体測定や皮膚テストが行われますが、食べて実際に症状が誘発された事実との組み合わせや負荷試験に基づき診断されるべきです。血液検査や皮膚テストでIℊE抗体が陽性になることは必ずしも食物アレルギーの診断に直結しないのです。例えば、卵白に対するIℊE抗体を有する乳児は約30%程度存在しますが、加熱卵で食物アレルギー反応が起こるのは10%弱にしか過ぎません。また原因物質の似た構造のタンパク質に対してはIℊE抗体が検査では区別できずに陽性になることもあります。甲殻類と貝の原因物質、小麦と大麦の原因物質などが良い例です。甲殻類アレルギー患者の3割程度しか貝のアレルギーの方はおらず、重症小麦アレルギー患者しか大麦でアレルギー反応は起きません。問題解決には負荷試験が必須です。乳製品は取れなくても加工品の中に含まれている乳タンパクであれば取ることが可能な場合、生活の質の改善にもつながります。日本では小児の食物アレルギーに対しては負荷試験が広く行われています。【アレルギーを知ろう□6】公明新聞2022.1.4
April 30, 2023
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第4の治療法として注目される鳥越 俊彦教授がん細胞は毎日のように発生私たちの体には細菌やウイルスなどの異物を排除する「免疫」が備わっています。この免疫によって、私たちは、体内で毎日のように生まれている、がん細胞を排除し、発症しないようにしています。これを応用した治療法が「がん免疫治療」です。特に、2018年に京都大学の本庶佑特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで注目を集めましたが、実際の免疫療法の歴史は古く、多くの研究がなされてきました。がん免疫療法は、いくつかの種類に分類することができます。「非特異的免疫療法」といわれるものには、「サイトカイン療法」「免疫賦活罪」「免疫チェックポイント阻害剤」などがあります。また、「抗原特異的免疫療法」といわれるものには、「抗体療法」「免疫細胞療法」「ワクチン療法」があります。ただし、実際にその治療の効果が証明されている免疫療法は限られています。使われる治療法や薬の種類も異なりますが、次第に適用が増え一部は保険診療で受けることができます。薬物療法よりも副作用は少ない一般的な薬物療法で使われる薬剤は、ある意味で〝毒〟のようなもので、がん細胞に直接作用するだけでなく、正常細胞にも作用しています。いわゆるこれが、副作用です。一方、免疫療法は、がん細胞に直接作用しません。すなわち、人間そのものがもっている免疫の力を強めることで、がん細胞に対応させるのです。従って、一般的な薬物療法に比べ、副作用は少ないとされています。免疫療法で、衷心的な役割を担っているのが、がん細胞を攻撃する司令塔ともいうべき「樹状細胞」、そして、白血球(リンパ球)の一種で、特定の分子に結合する抗体を生産する「B細胞」、がんの持つ抗原(目印)を認識すると攻撃する「T細胞」です。がん細胞を狙い撃ちする「抗原特異的免疫療法」には、免疫系に願の抗原情報を教える「樹状細胞療法」「がんワクチン療法」などがあります。➀樹状細胞療法自分が取り込んだ抗原を、他の免疫系の細胞に伝える役割をもつのが樹状細胞です。患者さんから取りだした血液の細胞を樹状細胞に育て、がんの抗原を与えます。その樹状細胞を体内に戻すことで、T細胞が活性化され、がん細胞を攻撃するようになるのです。10年には、亜米利加で樹状細胞ワクチンの第1号が承認されています。ただし、特殊な細胞処理が必要だったり、重篤な副作用の危険性があったり、治療費が高価だったりするなどの課題が残されています。②がんワクチン治療人工的に合成したがん抗原ペプチドを、樹状細胞を活性化させるインターフェロンなどの免疫賦活剤とともに投与。体内のT細胞を増殖・活性化させる治療法です。免疫のブレーキを解除する薬剤正常組織は、自己免疫疾患、あるいはアレルギーなどを起こさないように、免疫の活性化にブレーキをかけています。この仕組みを「免疫チェックポイント」といいます。本庶佑特別教授が発見したのが、「PD-1」、ジェームス・アリソン教授が発見したのが「CTLA-4」という細胞の表面にあるブレーキ分子です。車に例えれば、先に述べたような免疫療法は、アクセルをオンにする治療といえます。しかし、ブレーキがかかったままでは、いくらアクセルを踏んでも、車は思うように進みません。従って、十分な治療効果が得られなかったのです。そこで、この免疫チャックポイントの動きを止める方法、すなわち、T細胞のブレーキを解除して、がん細胞を攻撃できるようにするのが、「免疫チェックポイント阻害剤」による免疫療法です。免疫チェックポイント阻害剤として、よく知られているのが、抗PD-1抗体の「二ポルマブ(オプシーボ)」です。その他、「ペムブロリズマブ(キイトルーダ)「イピリムバブ(ヤーボイ)」など、いくつかの種類があります。免疫チェックポイント阻害剤による治療を行うことができるがんも、増えていきますので、担当医と相談してみるとよいでしょう。なお、一分のクリニックや病院で行われている免疫治療法は、自由診療として行われていることもありますので、注意が必要です。また、免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法は、ある意味でもろ刃の剣といった部分もあります。すなわち、免疫のブレーキを解除するもので、免疫が暴走し、自己免疫疾患や炎症を引き起こす可能性があるからです。したがって、従来の薬物療法で起こるような、吐き気や脱毛などの副作用は少ないものの、全身にさまざまな免疫関連副作用が起こる可能性があることを知っておいてください。腸内細胞叢も免疫に影響がある繰り返しになりますが、免疫療法は、患者さん自身に備わっている免疫システムに作用して、がんと戦う治療法です。使用する薬剤(免疫チェックポイント阻害剤)は、ブレーキを解除するだけですので、ベースとなる免疫力が強くなければなりません。免疫力の強さは、遺伝的要因(体質)、環境要因、生活習慣などが関係します。近年、免疫と密接に関係することが分かってきたのが、腸内細菌です。腸内細菌叢に善玉菌、特にビフィズス菌が多いと、免疫治療薬の効果が高まるといった研究成果もあります。大切な免疫の力を低下させないためにも、善玉菌を増やす効果がある食物繊維を十分に摂取するなど、生活習慣の改善も心掛けるとよいでしょう。【医療】聖教新聞2021.12.27
April 24, 2023
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「敗血症」初の実態調査感染から起きる臓器障害敗血症の実態調査をまとめた千葉大学の中田孝明教授 高齢化で患者、死者が急増免疫機能が制御不能となって〝暴走〟感染症にかかると命に関わる場合があるということは誰もが知っています。その定義は2016年に改訂され、医学的に明瞭になりました。結論は「感染症」に対する生体反応がコントロールできなくなり、自らの組織や臓器を傷害することで起きる、生命にかかわる状態」というものです。実態調査を取りまとめた中田孝明千葉大学教授(救急集中治療医学)によると、細菌やウイルスによって感染症が起きると、体の中ではそれらの病原体を排除しようと免疫機能が働きます。ですが、この機能が制御不能となって、〝暴走〟すると、自らの組織や臓器を痛めてしまうことがあります。それが敗血症の実態だといいます。今回の調査で中田さんらは、保険請求に基づき国内の入院患者の大半をカバーする診療データベース「DPC」を活用。医療機関が10~17年に登録した5000万人以上の入院患者から敗血症の患者を抽出し、患者の背景や感染の詳細、治療の経過などを分析しました。 入院患者のうち約36万人が死亡その結果、入院患者のうち敗血症になった人は4%の約2000万人。そのうち約36万人が敗血症で亡くなっていました。年ごとの変化を追うと、10年には難関の敗血症患者は入院患者全体の3%、約11万人でしたが、17年には5%36万人に急増。入院1000人当たりの死亡数も6.5人から8人に増加し、死者は2.3倍になったことが分かりました。敗血症患者の死亡率は下がっていましたが、高齢化が総数を押し上げた形です。患者の年齢中央値は76歳で、高齢者はリスクが高いこともうかがえる結果となりました。敗血症によって傷害を受ける臓器、組織は感染症の種類や感染した部位によって呼吸器意外にも多岐にわたります。新型コロナでは肺炎が高じた呼吸不全に陥角が典型的でした。呼吸不全が重症化すると酸素が取り込めず、人工呼吸器や人工心肺装置ECMO(エクモ)での集中的な管理が必要となります。臓器障害には、血圧がさがる敗血症性ショック、急性腎障害や急性肝障害、重い呼吸不全はどのほか、全身の微笑欠陥で血栓ができたり出血が起きたりする播種性血管内凝固症候群(DIC)が含まれます。複数の障害が重なれば「多臓器不全」です。 医療は一刻を争うことを知ってほしい18年に日本集中治療医学会、日本緊急医学界、日本感染症学会の3学会が合同で結成した「日本敗血症連盟」は「敗血症では集中治療室での専門的治療が必要で、心筋梗塞や脳卒中のように治療は一刻を争うことを知ってほしい」と啓発の必要性を訴えています。今後は、行政にも働き掛け、一体となって取り組む考えです。中田さんは、「今回の調査で対策を検討するための基礎資料となるデータが得られた。今後、どのような感染で土井云った臓器障害が起きるのかや、それを防ぐ治療の在り方などを明らかにし、予防や治療につなげていきたい」と話しました。敗血症の増加は日本だけの問題ではありません。世界では毎年推定で約3000万人が敗血症を発症し3人に1人が亡くなります。世界保健機構(WHO)は17年、敗血症を「重大な健康課題」として認定し、多剤耐性菌対策やワクチン政策、公衆衛生対策などの強化を促しています。 【医療】聖教新聞2021.12.20
April 16, 2023
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腸は〝健康の要〟不腸(調)を改善しよう医学博士 江田 証さん 脳に次ぐ神経細胞の多さ近年、体にとっての腸の健康が大事だとよくいわれます。それは、消化器官としての働きはもちろんですが、脳をはじめとする体全体とつながっているからです。腸は、心臓や肝臓、腎臓など、多くの臓器と連携しながら、体内のバランス維持に日夜働いています。腸の不調は放っておくと、全身に支障をきたしてしまうのです。また、腸には約1億個の神経細胞があり、人体では脳に次ぐ多さ。庁が自ら判断する機能を持つことから「第二の脳」と呼ばれます。長鵜目は〝脳腸相関〟という双方向のネットワーク。腸の調子が悪いと脳へのメッセージが届き、あらゆる臓器に伝達され体の不調を興したり、逆に悩みやストレスが腸に伝わって腹痛になったりします。 最大の免疫臓器!免疫細胞の約7割は、腸の中に存在しています。免疫力を保つには、腸の環境を整えることが重要です。未だ世界で猛威を振るう新型コロナウイルス。実は小腸から感染しているケースもあります。腸の粘膜では通常、粘液がウイルスを通さず感染を得ロックしています。しかし、小腸は大腸と比べて粘液が少ないため、小腸の中は人間の弱点になってしまうことも。新型コロナウイルスで重症化してしまう人の多くは、腸内の健康状態が良くないということが分かってきています。感染症対策のためにも、腸内環境を意識したいところです。 お酒とたばこはNG健康を害する習慣の代表格——お酒とたばこは、腸にとっても、やはりNGです。お酒を飲み過ぎると、腸内の壁に隙間を作ってしまうリーキーガット症候群になる可能性を高めます。そうなると腸壁の隙間からウイルスや毒素が血管に侵入し、全身に運ばれ、あちらこちらでトラブルになってしまうのです。また、煙草も良くありません。煙草を吸うことで血流が悪くなります。すると、腸の粘液が減少し、腸内バリアー機能が落ちてしまうのです。 神経状態にも影響「幸せホルモン」といわれるセロトニン。幸福感と関わるホルモンで、ノルアドレナリンやドーパミンといった興奮物質の暴走を抑え、いら立ちを起こしにくくしたり、やる気や前向きな気持ちに作用したりします。セロトニンは、脳の中で2%、血液で8%、そして9割は腸で作られているのです。実際、うつ病の患者には便秘や下痢が多いというデータもあり,心の健康と腸内環境は密接なつながりがあると考えられます。腸内環境を整えることが、精神疾患の改善に一役買うのではないかと、期待されています。 これが食品ベスト4腸の健康を保ち、強い味方になる食品ベスト4を紹介します。➀ヨーグルトや納豆などの発酵食品②海藻やゴボウといった水溶性食物繊維③バナナやタマネギに含まれるオリゴ糖④青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)この4大食品を含め、さまざまな種類の食材を取りましょう。健康な腸の条件は、腸内細菌の種類がいいきこと。食品数が増えた分、それをエサにする腸内細胞の栄養素が増え、活発に働くようになります。例えば、コンビニで昼食を購入するときも、パンやおにぎりだけでなく、ブロッコリーやワカメが入った野菜サラダを付け足すなど、水溶性食物繊維などの品目を増やす工夫が、健康の秘訣です。 落とし穴はFODMAP食生活を改善したにもかかわらず、おなかの具合が良くならない人もいるかもしれません。真面目な人ほど、「毎食、ヨーグルトを食べる」など、極端な食事をしがち。ところが人によっては、整腸食が敵となり、おなかの調子を崩すこともあります。原因の一つとして考えられるのがFODMAP。発酵性のある4種類の糖質の総称で、ヨーグルトや納豆もこれを含んでいます。例えば納豆を食べると調子が悪くなる人はガラクトオリゴ糖が体に合ってない可能性があります。また、日本人の75%は乳糖不耐症といわれ、ヨーグルトが合わない人も結構いるんです。食べ物との相性は個人差があるので、何を食べたら、腸の状態がどうなったか、食事日記をつけてみてもいいかもしれません。 機能性の病気の時代医学的には腹痛を大きく二つに分けます。一つは大腸がんやポリープ、炎症といった、検査で異常が認められる「悪質的な疾患」。もう一つは、腹痛や下痢、便秘、お腹の張りなどで悩んでいるにもかかわらず検査をしても異常が見られない「機能性の病気」です。機能性疾患の治療が、今後の大きな課題で、21世紀は機能性の病気の時代だといわれています。 過敏性腸症候群かも機能性の病気の代表が、過敏性腸症候群やSIBO(小腸内細菌増殖症)です。テストや発表会の前におなかが痛くなったり、旅行先で便秘になったりした経験はありませんか。これは過敏性腸症候群という病気かも知れません。また、大腸と小腸の境にある弁に不具合が生じたり、ストレスや感染症が影響したりして、小腸内の細菌が飢えてしまう病気をSIBOといいます。増えすぎた腸内細菌によって大量のガスが発生し、おなかが張ってしまうのが特徴です。腸の環境を整える方法として薬の服用や食事の改善が一般的ですが、腸内の掃除をする時間の確保も大切です。間食しないことも工夫の一つです。また、心身のリラックスのため、1日に1回は日光を浴びたり、森林を歩いたりするなど、自然の揺らぎを感じてみてはいかがでしょうか。 えだ・あかし 医学博士。江田クリニック院長。日本消火器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国の内外から来院する患者を内視鏡、大腸内視鏡で診察している。 【健康PLUS+】聖教新聞2021.12.17
April 12, 2023
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第2次世界大戦後、社会問題に日本アレルギー学会理事長 海老澤 元宏歴 史20世紀に米国、欧州などの先進国を中心としてアレルギー疾患は増加傾向が顕著で、日本でもアレルギー疾患が社会問題になってきたのは第2次世界大戦後の1950年前後のことです。衛生状態が改善し、感染症が減少し、高度経済成長のともなう工業化、大気汚染の問題などとともに、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、結膜炎が60年以降、70年代くらいから小児期のアトピー性皮膚炎、その後、成人にも広がり、80年以降になると食物アレルギーが増加してきました。スギ花粉症が初めて報告されたのは50年代で、当時は不思議な現象と受け止められていました。アレルギーのメカニズムが解明されたのは66年、石坂公成・照子夫人によるIgE抗体の発見です。本来、体にとって有害ではないか粉や食物などに対してIgE抗体がつくられた後、それらの物質が体に再び入ると体にとって好ましくない症状が誘発されます。アレルギー疾患の中でも気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎などは管理法の確立、ガイドラインの普及・啓発などにより、ほぼプラトー(水平)、減少傾向に転じてきています。しかし、アレルギー性鼻炎、結膜炎などを中心としたスギ・ヒノキ花粉症、食物アレルギー、アナフィラキシーなどは、以前、増加傾向です。食物アレルギーの中でも最近は、クルミ・カシューナッツなどの木の実類、果物アレルギーの増加は顕著です。 【アレルギーを知ろう1⃣】公明新聞2021.11.23
March 9, 2023
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食品の有効成分が細胞を刺激◆順天堂大学 准教授 竹田和由腸内細菌乳酸菌を含むプロバイオテックス(健康に有効な金)をヨーグルトなどで取ることは、免疫を直接上げる可能性があります。食品中の有効成分が腸で吸収され、腸管に存在する免疫細胞を刺激し、この活性化した免疫細胞が全身を巡るので、食べることで全身の免疫力が上がると想定されるためです。このような細胞と腸の免疫情報交換は、普段は腸内細菌と腸の免疫細胞との間で行われていて、プロバイオティクスは、システムを拝借して健康増進効果につなげているのです。腸内細胞が健康に及ぼす影響を議論するとき、免疫について語られることが多いですが、保管分野の研究も進んでいます。腸内細菌のいないマウスは、落ち着きがないのですが、ビフィズス菌を飲ませると、すぐに落ち着きます。腸内にビフィズス菌が入ることで、腸のぜん動運動が促されて副交感神経が活性化した結果、落ち着きを取り戻すとされています。「脳腸相関」といわれる現象に一つです。肥満や糖尿病になりやすい人に特徴的な腸内細菌も報告されています。その菌は国や人種によって異なります。食生活や生活習慣の違いで腸内細菌叢(腸内フローラ)が異なるため、肥満や糖尿病に関係する菌種が異なるのだと考えられています。ですので、菌そのものではなく、菌の産生物が病気の発生に関係していると考えられています。子どもが大人になったときのメタボ疾患への感受性は、妊娠中の母親の腸内細菌によって決まることが、ヒトでもマウスでも示されています。母親の腸内細菌が産生する物質が血中を循環し、胎盤とへその緒を通過して退治に移行し、胎児の細胞の発達に影響を与えた結果です。免疫対応の個人差にも、腸内細菌が影響していると考えら始めています。 【免疫力を上げよう!13】公明新聞2021.9.23
December 17, 2022
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体温を上げれば細胞機能が向上◆順天堂大学准教授 竹田和由食べ物免疫を下げる食べ物を教えてくださいという質問を受けることがあります。食べると免疫が下がって病気になりやすくなるという場合は、それは、ほぼ毒です。動物はそのような食べ物を口にしません。つまり、免疫を下げる食べ物など一般にはないのです。免疫を上げるとされる食べ物の多くは、体温を上げる食材です。体温が上がれば代謝がよくなるので、細胞の機能が上がります。免疫細胞を元気に保つには、細胞のもととなるタンパク質やエネルギーとなる糖質など、全ての栄養素が必要。栄養素の観点からは、バランスのよい十分な食事が免疫を上げるという結論になります。一方で、直接的に免疫を上げると想定される食べ物もあります。プロバイオティクスと呼ばれる乳酸菌を含む健康に有効な菌や、キノコ類、発酵食品です。これら自体の有効成分や腸内環境の改善で増えた善玉菌の作る物質が腸で吸収され、腸管に存在する免疫細胞を刺激するので、食べることで全身の免疫力が上がると考えられています。古くは、これらの多くは分子が大きいので吸収されないとされてきましたが、腸にはそれらを通す特殊な細胞があることが発見されました。この細胞を介することで腸の免疫細胞は町内の情報を得、日々、私たちの健康維持に重要な役割を担っているとされています。また、このシステムに便乗し、プロバイオティクスなどが免疫によい影響を与えていると考えられています。私が大学で習ったときは、多量に存在する腸内細胞が腸の傷口からはいると重篤な感染症になるので、それに備えて腸には免疫細胞が多いのだと習いました。学説も、研究が進むことで変わり、進化していくものなのです。 【免疫力を上げよう!12】公明新聞2021.9.9
November 25, 2022
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NK細胞の活性が上がるかは不明◆順天堂大学 准教授 竹田和由笑うこと笑うとNK細胞の活性が上がるという説は、科学的には簡単に判断できません。笑ってもNK活性は変化しないという論文が、上がるという論文と同じくらいの数があるからです。どちらも同じようにお笑い番組や漫才、落語を見た前後で採血してNK活性を測定し、評価する点は共通しています。しかし、笑いの評価法が違います。NK活性に変化がないとする論文では、顔に電極をつけて表情筋の動きを調べたり、頭にセンサーをつけて脳の反応を調べて笑いを評価しています。一方で、笑うとNK活性が上がるという論文では、アンケート、つまり自己申告で笑いを評価しています。さらに、笑うとNK活性が上がると主張している人たちは、お腹を抱えて声を出して大笑いすることを推奨しています。すなわち、笑ってもNK活性に変化がないとするグループは、ほほ笑み程度の笑いでも笑いとしているのに対して、NK活性が上がるとするグループでは笑いのみを笑いとしているのです。お笑い番組や漫才、落語の間中、続けて大笑いしているわけではありません。適当な休みを取りながら大笑いを繰り返しているので、腹筋を使う軽い運動を取りながら程度に行っていることになります。また、大笑いはストレスの発散にもなります。それでNK活性が上がらないはずはないといってもいいくらいです。ストレス発散という意味では、感動的な映画で大泣きすることでNK活性が上がる可能性も示されています。ただ、この場合は見る映画の選択が難しそうです。本当に悲しくなる映画では、プラスとマイナスの要素が同時にあるので、バラツキの大きい結果になることが予想されます。 【免疫力を上げよう!11】公明新聞2021.8.26
November 2, 2022
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もらったものを思い切って処分精神科医・産業医 井上 智介部屋の環境繊細さんは、刺激に対するアンテナが敏感なので、少しの刺激にも反応します。それは視界や触覚などの刺激だけでなく、その場の空気や雰囲気も同じです。繁華街や満員電車のような刺激の多い場所では、気分が悪くなったり、人一倍しんどくなります。だからこそ、そのつらさを癒す場所となる自分の部屋の環境は、とても大切なのです。しかし、繊細さんの中にはうまく工夫ができずに、自分の部屋なのに落ちつかないという悩みを抱えている人もいます。その原因の一つとして、他人からもらったもので溢れかえっていることがあります。これは、必要がないと分かっていても、プレゼントしてくれた人の気持ちに共感して、「勝手に処分したら悪いよなぁ……」と罪悪感を感じることで起こります。例えば、むかしもらった置物や趣味の合わない洋服などが、何年もそのままなんてことはよくあります。ただ、自分がリラックスできる部屋を作るのに、他人の価値観がたくさん含まれた空間は適していません。そのため、思い切って処分する必要があります。その処分の判断は、もらったもの自体をパッと目にした時、どのような気持ちになるかを基準にしてください。いくら使っていなくても、見るだけで心が温まるようなものであれば、そのまま置いておきましょう。一方で、特に何も感じないようであれば、思い切って処分してください。また、繊細さんは部屋の白色灯をまぶしく感じて落ち着かないこともあります。その時は、夜だけでも暖色系のライトで過ごしたり、思い切ってキャンドルを利用しるのもお勧めです。生まれつき刺激を受けやすい繊細さんだからこそ、まずはできるところから、自分で自分を癒せる空間に変えておきましょう。 【元気になれる「繊細さんの生活術」▷3◁】公明新聞2021.8.19
October 20, 2022
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NK細胞や健康に大きく影響◆順天堂大学 准教授 竹田和由運 動免疫力(多くの場合がナチュナルキラー細胞の活性=NK活性)が話題となるとき、運動が免疫に与える影響が語られることは少ないようです。しかし、運動はNK活性に、激しく、素早く影響することが分かっています。運動中は、運動の強度(運動時の負荷やきつさ)が強いほど抹消血中のNK細胞数もNK活性も増強します。これは、年齢や性別を問いません。アスリートのような運動能力の高い人では一般よりもかなり高い運動がNK活性の増強に必要になりますが、アスリートでも起きる現象です。そして、運動を止めた瞬間から、末梢のNK細胞数もNK活性も低下し、その低下は運動した時間の4倍ほど続いた後に運動前の状態まで回復します。従って、日常的にトレーニングを行っているアスリートほどNK活性が低い、すなわち病気にかかりやすいことになります。アスリートは健康そうに見えますが、病気のかかりやすさを健康の指標にした場合、以外にも筋肉隆々ながら虚弱体質ということになってしまいます。ですが、アスリート自身はそのことをよく知っています。競技前には精神的なプレッシャーもあり、よりNK活性が落ちやすい状態になるので、体調管理に万全な注意を払っているのです。一方で運動は、ストレスの発散(精神的効果)や他人とのかかわりあいのきっかけ(社会的効果)になります。特に大切なのは、運動により心肺機能が向上して筋肉も付き、生活習慣病も予防されること(生理的効果)です。結局のところ、運動をすると健康になるのです。免疫は病気にならないように健康を下支えするもの。免疫をどんなに挙げても健康になりませんので、健康へ異なった作用を持つ運動と免疫のバランスが大切になります。 【免疫力を上げよう!🔟】公明新聞2021.8.12
October 9, 2022
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乱れるとNK活性が落ちる◆順天堂大学 准教授 竹田 和由生活習慣自然免疫と獲得免疫で構成される免疫ですが、テレビ番組などでいわれる免疫力は自然免疫、中でもナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性(NK活性)を指すことが多いようです。NK活性が環境変化などで敏感に変わるため、現状の免疫力を反映しやすいと考えられます。早寝早起きの生活習慣が、高いNK活性を維持する理想です。実際、昼夜逆転の生活を送っている人や勤務時間が不規則な人は、NK活性が低い傾向にあります。この人たちを強制的に理想の生活リズムにすると、一時的にNK活性がさらに低下し、その後に上がります。これは、生活リズムの変化でNK活性が低下することを示しています。実は、生活習慣の改善がNK活性を上げる効果より、生活習慣の乱れがNK活性を落とす影響の方が強いのです。仕事の関係で理想的な生活習慣の実践が難しい人も覆うはず。生活習慣を維持し、乱れてNK活性が落ちないようにすることが大切です。一般に交感神経を活性化させる運動が、NK活性を上げることが明らか。一方で、副交感神経が優位な状態と考えられるストレスの全くない状態では、NK活性が落ちます。また過度のストレス、つまり過度の交感神経の活性化の後には、リバウンドでNK活性が急激に低下します。これを交感神経の活性化によりNK活性が落ちると表現する場合があります。ですが過度なストレスである仕事を終えて充実感を感じている時には、達成感や満足感も伴い、NK活性は上がります。適度なストレスに対し、その後にストレスを解放する時間をとるようなリズムの生活をすれば、NK活性を徐々に上げていくことができると考えられます。 【免疫力を上げよう!9】公明新聞2021.7.15
August 27, 2022
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生活の中で丈夫な体を作る◆順天堂大学准教授 竹田和由効果的な方法免疫を上げて病気を防御とよくいわれますが、「自然免疫を上げろ!」といっているのでしょうか。それとも、「獲得免疫を上げろ!」といっているのでしょうか?自然免疫が不安定なのを逆手にとれば、自助努力で比較的手軽に(あまりお金をかけなくても)上げることができます。しかし、病気にかかりにくい、かかっても直しやすい程度の効果しかありません。一方で、獲得免疫を活性化すれば、物忘れが起きない限り、その病気にならないのですから、効果は絶大です。しかし、獲得免疫を上げるには感染するかワクチン(予防接種)しかありません。そして、獲得免疫は遺伝子1個の違いを見分けるので、病原体の数だけワクチンを打つ必要がありますから、一人の獲得免疫を上げるには大変なお金がかかります。また、ワクチンには、ちょっとした危険を伴う場合があるので、体温を測るなど健康状態をチェックしてから接種します。となると、危険性の高い病気がある時に、ピンポイントでその病気に対するワクチンを打っていくのが、獲得免疫を活性化して病気を防ぐ効果的な方法ということになります。力不足で頼りない感じもする自然免疫ですが、いろいろな病気に対処します。また、ワクチンのない病気では獲得免疫を上げるには感染するしかありませんから、自然免疫を上げることが唯一の対処方法です。さらに、自然免疫と獲得免疫は連携していますので、自然免疫と獲得免疫の活性化にもつながります。免疫を上げて病気を防ごうとは、生活の中で自然免疫を上げて、丈夫な体を作ろうということです。次回から、自然免疫を上げる方法について、いくつか解説していきたいと思います。 【免疫を上げよう!8】公明新聞2021.7.1
August 10, 2022
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#依存症INTERVIEW 精神科医 松本俊彦さん■家族だと近過ぎてしまう——「家族が依存症かもしれない。なんとかしたい」という悩みを友人から聞きました。日本ではアルコール依存症は約10万人、薬物依存症は約1万人、ギャンブル等依存症は約3000人病院で治療を受けているそうですが、どう考えていけばいいでしょうか。 「なんとかしたい」と思う、その家族の絆は素晴らしいことだと思います。でも、「家族だけでなんとかしよう」とは考えないでほしい。「自分の意志でコントロールできない状態」のことを依存症というのであって、本人や家族の努力だけでどうこうできるような問題ではないんです。さらに突っ込んで言えば、家族だと関係が近過ぎてしまうので、問題を客観的にみることが難しくなりやすい。パートナーが病者だった場合、自分が選んだ相手だからこそ、「こうあってほしい」という願いもかぶせてしまいがちなんです。 ■何でも素直に話せる場を——著書には、家族会などにつながる大切さも書かれています。 家族たちが悩みを共有し、支え合っていく組織が家族会です。依存症者がいる家族の方は、地域や親族の中でも、比較的、孤立していることが多いんです。近所の人に、「うちのパートナーが依存症ですね」って、ちょっと言いづらいというが、公にしにくいという人も多い。では。親族に話してみるとどうなるか。親身になって聞いてもらえるならいいのですが、「だからあの人との結婚は反対だったのよ」とか、「あなたがしっかりしていないからじゃないの」とダメ出しをされる場合も実は結構ある。こうなると、当事者家族としては自分を責めて、もうどこにも相談できなくなってしまいます。ですから、依存症者と家族が依存症に向き合っていくには、否定されずに何でも素直に話せる場が必要です。そうした場があれば、ちょっとずつ家族の表情とかが良くなってきます。すると、不思議と依存症の本人の問題が軽くなったり、本人が急に「病院に行くよ」と言いはじめたりするんです。 ——家族会や自助グループといっても色々あって、どこに連絡を入れていいのか迷いそうですが…… まずは、地元の保健所や精神保健福祉センターにつながって、どこのグループが自分にふさわしいかを相談してみるといいでしょう。 ■健康的な依存ができない——依存症についての理解を深めるために、重要になってくる視点はなんでしょうか。 「依存症」というと、さも「依存することが悪いこと」のように誤解しませんか? 私はそのイメージがまずいと思うんです。本当は「依存」は悪くない。健康な人たちもみんな何かに依存して生きています。朝、起きて、仕事に行く前にコーヒーを1杯、ないしは2杯飲まないと出社する気がしない人もいる。そうやって元気に仕事ができるなら、それでいいんですよ。物だけでなく人に対してもそうです。家族や友達、恋人の存在は大きい。「今日こういうことがあってね。本当にムカついたよ」と愚痴る相手がいると、気持ちが楽になりますよね。でも、依存症になる人は、「いろんなものにちょっとずつ依存したり、身近な人に弱音を吐いたり」っていう依存の仕方がわからなくて苦しむんです。「人」に依存せずに「物」だけに依存する。「薬物」だけとか、あるいはリストカットが止まらなくて「カッターナイフ」が手放せなくなったりとかね。ネット・ショッピングばかりしてしまう人は「クリックする衝動」なのかもしれない。だから、依存症ばかりが悪いのではなく、その逆。そもそも依存症になっている人たちは「依存できない病」なんです。健康的な依存ができなくなって困っている人たち。なので、「アディクション(依存症)」の反対語は、「コネクション(つながり)」になるんです。依存症を「孤立の病」というのは、そういう理由からです。 【WITHあなたと 】聖教新聞2021.6.5
July 3, 2022
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交感神経により制御、昼間は活発◆順天堂大学 准教授 竹田和由日内変動毎年、冬には免疫が下がるので、インフルエンザの流行にワクチンの接種で備えるように推奨されます。これは、不安定な自然免疫、特にウイルスやがんに対応するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性(異物を殺傷する能力)が冬に低下するために、安定な獲得免疫の力を強めて感染を防ごうとする対策です。NK細胞の活性化の低下により、最初の防御機構の自然免疫が突破されてしまう危険性が上がるので、ワクチンで第2の防御機構の獲得免疫をあげて感染を防ぐ作戦です。NK細胞の活性は夏と冬に下がります。季節変化の少ない国や地域では変化が少なく、日本では変化が大きいという報告がありますが、原因は不明。自然免疫は環境変化が大きいほど変化しますので、ゲリラ豪雨などがよく起き、冷房が普及した近年では、NK細胞の活性低下は冬より夏に顕著なようです。免疫全体の日内変化も良く知られています。活動期(人間なら昼間、夜行性のマウスなら夜間)に、末梢のNK細胞の数が増え、獲得免疫の細胞はリンパ節にたまっています。休眠期(人間なら夜間、マウスなら昼間)には、末梢のNK細胞の数が減り、獲得免疫のT細胞はリンパ節から出て病変部位へ移行します。この日内変動は交感神経により制御されています。交感神経の活性化している、つまり動物が活動しているときは病原体に出会いやすい時ですから、その間はすぐに働くNK細胞を末梢に配置し、獲得免疫の細胞は樹状細胞による自然免疫から情報を効率的に受け取れるようにリンパ節に待機しているのです。これは生体防御として非常に都合のよい布陣です。この作用によりワクチンは夜間よりも昼間、明るくなって5時間後くらいが効果が高いことが報告されています。 【免疫力を高めよう! 7⃣】公明新聞2021.6.3
July 1, 2022
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たくみにだまして体内に侵入◆順天堂大学 准教授 竹田和由ウイルスの変異免疫はウイルスを攻撃し、感染を予防したり治したりしています。では、ウイルスは一方的に攻撃されているかというと、たくみに免疫をだまして体のなかに侵入し、増殖しようとしています。「新型コロナウイルスが変異して、ワクチンの効果が無くなるのでは?」と、ウイルスの変異が問題となっています。それ以外にも、ウイルスに感染したことを隠すように正常な細胞を装い、自然免疫のナチュラルキラー細胞(NK細胞)や獲得免疫のT細胞から攻撃を避けるようになる変異も、いくつかのウイルスは知られています。がん細胞も発がんの初期に免疫により排除されていると考えられています。つまり、私達が、がんとして認識できないがん、病院で発見されるようながんは非常に小さいときに一度、免疫との戦いに勝って大きくなったものなのです。一度免疫に勝った強者ですから、免疫の活性化でがんを消失させることは非常に難しいのです。このようながん細胞の免疫から逃避にも、がん細胞の変異が関係していると考えられています。免疫はウイルスやガンを捉えようとがんばっているのですが、彼らも逃げようと工夫をこらしているのです。新型コロナウイルス感染の重症化では、〝サイトカイン(細胞からでるタンパク質で、他の細胞に命令を伝達するための物質)ストーム〟が起きることも問題です。これは、ウイルスに免疫系が強く反応し過ぎて、炎症性サイトカインが出過ぎた結果、ウイルス感染とは関係なく肺炎が起きてしまう現象。T細胞が老化すると炎症性サイトカインを出し過ぎるようになり、サイトカインストームになりやすいので、高齢者の新型コロナウイルスによる肺炎の重症化や慢性炎症疾患の一因となっていると考えられています。 【免疫力を上げよう! ⑥】公明新聞2021.5.20
June 14, 2022
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昼夜の生活にメリハリをつける「脳の学校」代表 脳内科医、医学博士 加藤 俊徳年を取っても成長脳は使い方次第で幾つになっても成長します。年齢とともに神経細胞はどんどん減り続けていると考えられますが、神経細胞が減っても、脳は毎日、成長できます。新鮮な日常の刺激によって、眠っていた未熟な神経細胞が活性化されます。これを潜在能力細胞と私は呼んでいます。潜在能力細胞は、100歳以上生きても使いきれないほどあるのです。これは年を取っても、脳を成長させることができるということであり、実際に脳をどんどん成長させている80歳以上の方もいます。1960年の平均寿命は女性が70.19歳、男性が65.32歳でしたが、60年近くたった2019年では女性87.45歳、男性81.41歳となりました。現在は、単に寿命が延びるだけではなく、自分らしく主体的に活動できる健康な時間を、長く伸ばせるかも課題となっています。教養を身に付けたり、専門の資格を取るなどの勉強は積み重ねてきましたが、よく考えると私たちは、この長い人生での脳の使い方、成長させ方を習っていません。寿命が長くなることについては先人の経験は少なく、私たちが新しい生き方をつくっていくわけです。脳の健康は自分自身の生活習慣の延長上にありますから、次の五つを日常の脳習慣に取り入れて維持、増進できるように心掛けたいものです。①1日最低でも7時間の適度な睡眠をとる②午前中に1度外に出て、1日約1時間は歩く③栄養バランスの良い夕食を20時までに取る④感謝や思いやりの心を忘れず日々を過ごす⑤孤立せず友人、知人と連絡を取る——です。私たちの体は、全てが脳が指令を出すことで生命が維持され、日常生活を営むことができ、日々成長を続けています。昼と夜の生活にメリハリをつけることで、脳の働きのリズムも安定するのです。 【きょうから実践! 脳トレの基本<1>】公明新聞2021.5.18
June 10, 2022
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リウマチやアレルギーの原因にも◆順天堂大学 准教授 竹田 和由過剰な防御免疫は、体の中に正常な自分の存在しか許さないワガママな反応とも言えます。その結果、たまたま病気が治っているのですが、自然免疫を獲得免疫の連携により病気を防ぐ生体防御として機能しているのです。しかし、何にでも間違いは付きもの。免疫、特に力の強い獲得免疫には間違いが起きると非常に厄介なことになります。無視するはずの正常な自分の細胞を異常と判断して攻撃すると、「自己免疫疾患」と呼ばれる病気になります。リウマチがその代表です。関節リウマチでは手の硬直などが起きますが、これは免疫が関節にある正常な細胞を攻撃し炎症が起き続けた結果です。私たちの体は常に異物にさらされていますが、中には無視した方が良い、または無視すべき異物もあります。身近なものだと食品がそうです。無視すべき小麦粉、卵、そば粉などに免疫が強く反応してしまうのが、アレルギーです。また、無視してもよいスギ花粉に過度に反応した結果がスギ花粉症です。自己免疫疾患もアレルギー治療が難しい疾患で、治療法を開発すべく研究が進められています。近年、アレルギーが増えている原因の一つとして「ハイジーンセオリー」が唱えられています。身のまわりが清潔になりすぎて、アレルギーが増えたとする説です。人は幼少期にいろいろな異物に出会うことで免疫系が鍛えられ、正しく働くようになります。しかし、世の中が清潔になり過ぎてその機会が減った結果、免疫の制御に間違いが起き、過剰反応のアレルギーが起きやすくなっていると考えられています。不潔な環境で病原体が多ければ感染症にかかりやすいのは事実ですが、清潔すぎる環境も考え物。病原性の低い異物にも少しは会っておいた方が良いのかもしれませんね。 【免疫力を上げよう!5】公明新聞2021.4.22
May 10, 2022
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情報伝え、強力な異物への総攻撃◆順天堂大学准教授 竹田和由「自然」と「獲得」の協調体を守る免疫は、性格の違う「早い、安い、そこそこうまい」自然免疫と「遅い、高い、うまい」獲得免疫で構成されていますが、このふたつが強調して働くことが大切です。私たちの体は生活の中で常に異物にさらされていますが、それらが全て病気の源となるわけではありません。弱くて少ない数の異物に二は常に自然免疫働いて除去していますが、私たちはそれを実感していません。時折やってくる病気の源となるような異物(毒を出したり、増えるのが早かったりする異物)には、力の弱い自然免疫だけでは対応できず、体の中で増殖を許して、(感染して)しまいます。この時、樹状細胞と呼ばれる細胞が自然免疫から獲得免疫へ、異物の情報を持って伝令として走ります。これを受けて、獲得免疫の司令塔、「ヘルパーT細胞」が活性化し、がん細胞や感染細胞を殺す「キラーT細胞」や異物に対する抗体をつくる「B細胞」を活性化させ。異物への総攻撃が始まります。そして、この獲得免疫の力で病原体が体から完全に排除されると、病気が治るのです。治った後、獲得免疫は異物の記憶を持ったまま休眠状態に入りますが、二度目の進入時にはすぐに目覚めて速攻で総攻撃を加え、迅速に異物を排除します。ですので、私たちは通常、同じ病原体による病気には二度はかかりません。侵入した病原体を体から完全に排除するには、自然免疫の活性化から獲得免疫の活性化が起き、抗体ができなくてはなりません。風疹、インフルエンザ、新型コロナウイルスなどは、抗体ができて病原体が完全に排除されるのに発病から10~14日かかるので、その期間は会社や学校に出ることが止められます。病原体の寿命によって日数が決められているのではありません。 【免疫力を上げよう!4】公明新聞2021.4.8
April 28, 2022
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一つの異物に反応する〝専門家〟◆順天堂大学 准教授 和田和由獲得免疫イギリスの医学者、ジェンナーによると天然痘ワクチン(予防接種)が免疫の発見をされているので、「遅い、高い、うまい」獲得免疫の方が自然免疫よりも早く発見されたことになります。獲得免疫は、初めて会った異物にはすぐ反応することができない免疫ですが、一度出会った相手を記憶しています。ですので、二度目に会ったときには異物に対して速攻で強く反応します。また、安定しているのも特徴で、体調が少しぐらい悪くなっても働きが低下することはありません。つわりで体調が悪い妊婦さんでも働きますから、ワクチンで風疹を予防するのです。ワクチンを打った時が初めての出会いで、その後に風疹ウイルスが体に入って来たときが二度目になるので、免疫獲得によって風疹にかからないで済みます。ワクチンには、それなりにお金がかかります。もし、安く活性化できる自然免疫とパワーが同じであればお金をかけるのは無駄ですが、コストパフォーマンスがあります。獲得免疫をつければ、〝物忘れ〟が起きない限り同じ病気には二度とかかりません。獲得免疫は遺伝子1個の違いで異物を見分けています。前の年のインフルエンザと遺伝子1個違えば獲得免疫は全く反応できないので、インフルエンザワクチンは毎年摂取する必要があるのです。厳密に異物を見分ける獲得免疫に属する1個の細胞は、一つの異物にしか反応できない専門家です。専門家ですので、完全に病気を防ぎ、治すことができます。異物を排除する能力は自然免疫の100倍程度もあります。とても強力な免疫なので、幻滅に異物だけを攻撃し正常な自分の細胞を攻撃しないように、獲得免疫の細胞は巧妙に教育されているのです。 【免疫力を上げよう!3】公明新聞2021.3.25
April 13, 2022
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何にでも素早く反応する〝便利屋〟◆順天堂大学准教授 竹田和由自然免疫新型コロナウイルスが世界中でまん延しているのは、これまで誰も出会っていなかったことが背景にあります。免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。コロナのような初めて会った異物にもすぐに反応できる免疫が自然免疫で、一方獲得免疫はすぐには反応できません。自然免疫の特徴は「早い・安い・そこそこうまい」です。自然免疫は何にでも素早く反応できるのですが、不安定です。気候の変化や体調により日々、活性が変化します。悪い生活習慣で落ちるとか、食習慣の改善で上がるとかいわれるのがこの自然免疫です。不安定だというと心もとないのですが、自然免疫はお金をかけなくても手軽に安く増強することができます。以前は、自然免疫は何にでも見境なく反応するとされていましたが、研究が進んだ今では、ウイルスと細菌の区別や、その種類程度はみ分けていることが分かっています。そして、このようなアバウトな認識をする免疫ですので、自然免疫に属する1個の細胞がいろいろな病原体に対処できるのも特徴のひとつです。すぐに、そこそこうまく反応してくれる自然免疫は、〝便利屋〟のような存在です。しかし、自然免疫をどんなに活性化しても、完全にその病気を防ぐことや、病気を治すことは難しいのです。自然免疫が活性化すると、いろいろな病気にかかりにくくなり、かかっても治りやすくなると考えられます。ですから、初めて会う新型コロナウイルスには自然免疫が最初に反応しますが、便利屋だけでは対処できないので誰でもかかってしまうのです。完全に感染を防ぎ、感染症から治るのに必要なのが、「遅い・高い・うまい」獲得免疫です。次回は、この獲得免疫について解説します。 【免疫力を上げよう! 2⃣】公明新聞2021.3.11
March 26, 2022
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よく聴き理解してくれる人を精神科医 田村 毅医療者ひきこもり支援に、医療は大きな力を発揮します。気持ちが不安定な時や落ち込んでいる時、あるいは不安で眠れないときなどに精神科の薬は効果を発揮します。薬は習慣性や副作用があるから使いたくないと考える人も多いのですが、少量を適切に利用し、その効用をよく理解して上手に付き合うことが大切です。ただ、薬の力だけではひきこもりの根本解決には至りません。大切なことは、家族や身近な人々の理解と環境調整、社会的なサポート、そして本人の気持ちの整理です。診療科は精神科や心療内科がよいでしょう。ただし、ひきこもりや若い年代の診療になれていない医師もいますので、事前に問い合わせるなど、よく調べるとよいです。話を聞かず、丁寧な説明がないまま、やみくもに薬を処方するだけの医師は避けた方がよいでしょう。心の病気は検査などの客観的なエビデンスが乏しく、医師の経験に基づく主観に頼らざるを得ません。診断する医師によって病名や処方される薬が異なることがよくあります。納得するためにセカンドオピニオンを求めるのもよいことです。よく聞いて理解してくれているという実感をもてる医療者を見つけてください。心の治療にとって、医療者との信頼関係がとても大切です。厚生労働省は、ひきこもりに特化した相談窓口として「ひきこもり支援相談センター」を全国70カ所余りに指定しています。地域の支援施設や医療機関の紹介、来所や電話による相談、家から出られない場合は訪問相談にも応じてくれます。一昔前までは専門家としての医師の言葉をそのまま受け取る風潮でしたが、今は違います。インフォームド・チョイス、つまり利用者とその家族が病気や治療薬についてよく説明を受け、希望する医療を自ら選択し、納得して受ける姿勢回復の近道になります。 【ひきこもり—求められる支援―▹8◃】公明新聞2021.2.11
February 14, 2022
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体に侵入した病原体を取り除く順天堂大学 准教授 竹田和由基本的な仕組み世界中で新型コロナウイルスの感染が収まりません。感染症への対策としては予防が何よりも大切です。絶対に感染症にかからないためには、無菌室で隔離されて供御すしかありませんが、それでは日常生活すら送れません。ともすれば、病原体に接する可能性はあるけれど、侵入した病原体を自分で排除しる力である「免疫力」を高めて、かからない、または重症にならないようにし、日常生活を送ることになります。このように免疫を解説すると体を守る正義の味方のように感じられますが、そうとも言い切れません。必要なものまで排除してしまう場合があるからです。重篤な心臓や腎臓の病気では、臓器移植をしなければ救えない場合があります。卓越した技術の外科医の移植手術を受け、高度な術後管理を受けても、一卵性双生児からの臓器移植でない限り、患者さん本人の免疫が他人の臓器を拒絶します。ですので、免疫抑制剤を飲まないと移植臓器は生着しません。免疫とは、「自分の体の中にある正常な自分以外のものを取り除く仕組み」なのです。それが敵対する悪者なのか有益なものなのか、判断してはいません。私達の体に入ってきた(感染した)ウイルスや細菌は免疫により排除されますが、それらの多くが病気の源(病原体)なので、たまたま感染症を予防でき、またかかっても治っているのです。新型コロナ関連で免疫の予防効果が強調されていますが、感染症からの回復も、ほとんど免疫力によるものです。免疫は、病原体に対するいろいろな細胞による反応で行われ、それは大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の二つに分けられます。この連載では免疫について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思っています。 【免疫力を上げよう!1】公明新聞2021.2.11
February 13, 2022
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