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「う・・・・・ぐっ」
ロンは突然胸を締め付けらる様な苦しみに襲われ、持っていた鉄刀【神楽】を落としてしまった。
「どうした!?」
ジャンが駆け付けロンの胴に腕を回し抱え上げそのまま横に飛ぶ
そのすぐ脇を電撃が駆け抜ける
「悪い・・・・・」
「そんなのは後だ、今は体勢を立て直す事に専念して!」
ジャンはロンを抱えたまま飛竜刀【翠】の切っ先ををモンスターに向けた
「来るよ!」
およそ10メートルはあると思われる飛竜、フルフルは大地を蹴りのしかかろうと飛び付いて来る
ジャンが間一髪の所で潜り込み、事無きを得たが
ロンを抱えたまま転がったために体制を崩してしまった
フルフルが着地した場所にはロンの太刀、鉄刀【神楽】は見るも無残に真っ二つに折れて転がっている
「しまっ・・・・」
「後ろ!!」
ディラの声で振り向くと、フルフルは尻尾を地面に吸い付け様としていた
放電の予備動作だ、直ぐに離れなければ体の内側から焼かれてしまう
「くっ!!」
渾身の力で地面を蹴り、放電の範囲から離脱した、しかしそう何度も避けられない
「ぐっ・・・・」
ロンは以前として心臓を握り潰されそうな感覚に襲われていた
呼吸すらままならない、意識が遠のく・・・・
「まずいな・・・・」
ロンの表情を窺いながら冷静に状況を整理する。
「何やってんのよ!早く離れて!!」
ディラはポーチから小ビンを取り出し、空になった強激ビンと入れ替えた
「ハンナ!強走を頼む!ディラ!足元に集中攻撃!」
「了解っ!」
「はいっ!」
ハンナは狩猟笛を器用に吹き鳴らし、その場にいる全員に強走薬を使用したと同じ効果を与える旋律を奏で
ディラは十分に引き絞った矢をフルフルの足に狙いを定め射る
ディラが放った矢はフルフルの左足に3本縦に突き刺さりバランスを崩し、巨体は横に倒れた
「一旦引くよ!」
ジャンは体勢を立て直したものの、ロンは未だ胸を押さえ苦痛の表情を浮かべていたため、ジャンは皆に一時撤退を促した。
数分後すぐ隣のエリア2に到着した
「はぁ・・・はぁ・・・もう・・・だめ・・・」
ディラはそう言うと仰向けに寝転んでしまった。
ジャンはロンを抱えて来たがそう大して息は切れていない。
「ディラ、いつフルフルが来るか分からないんだ、そうで無くても此処は・・・」
「此処は狩場、ランゴスタ一匹だろうが絶対油断はするな、でしょ?わかってるわよ・・・っと」
上体を起こしたが立ち上がろうとはせず、その場で胡坐をかいて座っている
「ハンナ・・・・あんた良くそんなちっこい体であれだけ走れるわね・・・」
「私は竜人なので人間よりも多少の無理は平気です」
いつもの淡々としたどこか取っ付き難いハンナ特有の口調で一言さらりと言い放った。
「・・・・・・前にも聞いたわねその言葉」
「はぁ・・・・はぁ・・・・・皆、悪い・・・・・」
ロンは苦しみからやっと解放され呼吸こそ荒いままだが落ち着きを取り戻しつつあった
「いや、そんな事は良いけど・・・・どうしたんだい?」
ジャンの腕から離れたがすぐに倒れてしまった。
「あぁ、大丈夫大丈夫、ちょっとよろけただけだからさ・・・」
ポーチから元気ドリンコを取り出して一気に飲み干し、空になったビンを投げ捨てた
「急に息苦しくなってさ、それでちょっとうずくまってただけだよ」
そう言うとディラが血相を変えてロンを睨み付けた
「ちょっとうずくまってた 『だけ』? 何言ってんのよ、アンタ今にも死にそうなほど苦しんでたじゃない!」
「もうすっかり良くなったよ、心配掛けてごめんな」
ロンは何事も無かったかのように立ち上がった
「あんたね・・・・もう少しでジャンが黒焦げになっちゃうとこだったのよ!?そんな危ない目に遭ったのは誰のせいだと思ってんの!?」
「黒焦げ・・・・」
目を細めながら呟く
「(そうだ・・・少し思い出してきた・・・・)」
遠い空を見つめてロンは今見たものを必死に思い出そうとした
「(大きな・・・・ブレスが地面に着弾したんだ・・・・そこには誰かが居た・・・・・地上にに降り立った時・・・目の前に自分とそう変わらない歳の男が居たな・・・・・腕が不自然に曲がってたっけ・・・・そして・・・・・)」
パシンッ!!
大きな音と共に左頬を何かで叩かれた、ディラの平手打ちをまともに受けてしまったのだ
「っ・・・・・てぇな・・・・・・」
左頬に手を当てると少し血が出ていた、ザザミガードの突起で少々切っってしまった様だ
「何無視してんのよ!人の話し聞いてたの?」
「・・・・・あぁ・・・・・悪かったよ」
ディラの言葉はほとんど耳に入らなかった、今見たものが気になって仕方が無い・・・
「もういいよディラ、何事も無かったんだしさ」
ジャンは飛竜刀【翠】を研ぎ終えたところで、鞘に収めながら言った
「それよりどうしようか、まだ時間はあるけどロンは武器無くなっっちゃったし・・・・」
「え?あぁ!!」
ロンは今、自分の武器が手元に無い事にようやく気付いた。
「どこだ?どこに落としたんだ!?」
「ついさっき、あんたが胸押さえて倒れこんだ時自分で離したのよ、覚えてないの?」
「神楽ならフルフルに踏み潰されて折れちゃったよ、残念だったね・・・」
ロンは数ヶ月前、ジャンが持っていた鬼神斬破刀に憧れて
自分も作ろうとずっと鉱石採取系のクエストばかり受注し、やっとの思いで神楽まで強化していた
今回フルフルの狩猟に来ていたのも、次の斬破刀に強化するための電気袋を入手する為だった
「・・・・最悪だ・・・・」
がっくりと膝を付き、落ち込んでしまっていたロンに一言ジャンが声を掛けた
「・・・確かに武器が壊れてしまったら工房じゃ直せないけど・・・・・」
「けど・・・?」
「一つ、直せる所を知ってるんだ、ギルドとは関係の無い所だけどね」
ロンの脳裏に 希望 の二文字が浮かんだ
「本当か!?」
先ほどとは目の輝きが違う・・・・同じ人間とは到底思えない
「ちょっと高くつくけど・・・・それでも良いなら紹介するよ」
「やった!」
「ちょっと声大きいわよ、雪崩でも起きたらどうするの!」
そう言った彼女の声が一番大きかったのは伏せておこう・・・
「ははっ、それじゃそろそろ行こうか、もう少しで捕獲出来るはずだ」
全員が立ち上がりハンナは千里眼の薬を飲んだ
「フルフルは今巣に居ます、これは・・・・どうやら寝ているようですね」
「ロン、これを渡しておくよ」
ジャンが差し出したのは地面を脆くして飛竜など大型のモンスターを落とし、行動不能にする罠と
弱らせ罠にかけた所で数発当て、眠らせる捕獲用麻酔玉を数個
「最後まで出番無しなんて君は嫌だろう?大事な仕事だ、しっかり頼むよ!」
ロンは強く頷き、手渡されたアイテムをポーチにしまった。
「よし、それじゃあ行こうか!」
4人は立ち上がり、エリア3へと続く入り口へと足を運んだ
数分後、落とし穴にかかったフルフルが寝息を立てている横で真っ二つに折れた太刀をロンは見つめている
捕獲した後にエリア7まで戻って回収して来ていたのだ
「粉々になってないだけまだマシじゃない、私なんか前にイヤンクックにハンターボウバラバラにされちゃったんだから」
ディラがパワーハンターボウの手入れをしながら言う
「そのぐらいなら直すのは比較的簡単かな?ただ・・・・・」
「ただ?」
「いくらかかるか、だね・・・・・・・」
「皆さん、狼煙が見えました。行きましょう」
エリア2と3を繋ぐ通路からハンナが促した。
「まぁ、足りなかったら僕が立て替えとくよ・・・・・・もちろん利子付きでね」
ジャンとロンの話はベースキャンプに着いてまで終わることは無かったが
幸運な事に報酬で電気袋が3つ手に入った、後は神楽を直し斬破刀に強化するだけだ
そう思うとあの時見えたものなどどうでもよくなってしまった。
鍛冶屋へは次回案内するとの事だった
今日はゆっくり休もう、久し振りに良く寝付けそうだ・・・・・
大老殿地下廊下
カツン・・・カツン・・・・
一人の男が手に持ったろうそくの灯りだけを頼りに、薄暗い廊下を歩いている
とある一室の前で止まり、2度扉を叩いた
「・・・・入れ」
中からはしわがれた老人の声が聞こえる
「失礼します」
男はそう言うと扉を開けて入り、ゆっくりと閉め老人に歩み寄った
老人は竜人族の様で背丈は男の腰程しかなく
異様に足の長い椅子の上に座っていた。
「体に異変は無いかの?」
そう言うと男の目の前に小瓶を置いた、中には薬のような物が入っていた
「頂いている薬のおかげで今の所変わりありません」
男はそう言うと差し出された薬を小瓶ごと飲み込んだ
「薬を過信するでない・・・・・何よりもお主の心一つで容易く 封印 は解けるのじゃからの・・・」
男は一息付き、老人に向き直った
「ふぅ・・・・・大丈夫ですよ、僕は絶対に力に溺れない、絶対に・・・・・」
薄暗い部屋に沈黙が流れる・・・・
たった数分の間なのだろうが、老人が口を開くまで1時間はかかった気がした
「・・・・実はの・・・・今日、ミナガルデに近い場所に向かわせていた観測気球から気になる物が送られて来た」
老人は横にある箱から真っ黒に焼けた棒を取り出した。
「これは・・・・人骨!?」
一見黒く炭化した物にしか見えないただの棒だが、良く見ると生物の
それも人の骨である特徴があることを男は見抜いた
「そうじゃ、しかもそれは死体が焼けて出来た物では無い・・・・生きた人間のものだ」
「・・・・・・・・・」
男に思い当たる物は一つしかなかった
「あいつが・・・・・・ 獄炎 がやったんですか・・・・・」
「まだ何とも言えん、しかしこれは先ほど届いた物じゃ・・・・・まず間違いは無いじゃろう」
男は炭と化した骨を静かに置き、手を合わせた
「それでは失礼します」
入って来た時とは対照的に、少々荒っぽく扉を明け男は出て行った
「・・・・・お主が道を踏み外す事は無いと思うが・・・・・」
老人は出て行った男が閉め忘れて行った扉へ向かい、静かに閉める
「あやつを斃すにはあの力に頼らざるを得まい・・・・・・」
そしてまた足の長い椅子に座り、煙草に火を付けた
「命の限り運命に抗うが良い、 蒼き竜よ 」
続く
第12章 温暖期の一日 2007年03月27日