山行・水行・書筺 (小野寺秀也)

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小野寺秀也

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2022.11.06
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テーマ: 街歩き(652)
カテゴリ: 街歩き

 疲れやすくなったせいかもしれないが、このごろ以前よりもよく眠れるようになった。睡眠時間が長くなったことで眠りが浅くなったのか、夢もよく見るようになった。
 ところが、その夢がじつに面白くないのである。起承転結のないつまらない場面が続くのである。目が覚めたときは、そんな夢を見たと思っているのだが、いつの間にかその内容は雲散霧消するのである。それほどに印象が薄いということである。
 老化に伴って、体質や性格が微妙に変化しているのかもしれないが、何にもわからないのである。夢が精神の何らかの象徴である、など言うことはどこの世界の話か、フロイトでもユングでもラカンでもいいからご教示ねがいたい、などと少しばかり自分の夢にいらだってしまったりする。

 今日はなんとしてでもデモに出たいと思っていた。わが家の昼食はいつも午後2時近くになるので、今日は1時間早く家族の昼食を用意して、私は食べないで家を出た。胃腸が弱いので食後すぐに外出するのは控えている。朝1や午後1の会議などのときは食事をしないで出かけるのが常なのだ。よくしたことに、それでお腹が空いて困ったという経験もほとんどないのである。







肴町公園から一番町へ。(2022/11/6 14:02~14:15)


 集会の開始時間に遅れたので、フリースピーチで語られたことは正確にはよくわからない。ただその後の流れで、主催団体の「脱原発みやぎ金曜デモ」の代表者が入院療養に入ったという話もあったらしい。デモ開催に関わる諸々のほとんどを引き受けていた人なので、デモ終了後、急遽今後の方針について打ち合わせがあった。
 予定を超えた人数が集まった会議には、みんながその病状を深刻に心配していた当のご本人が病室のベッドの上からZOOM会議に参加されたので、少しほっとしての会議だった。
 会議ではデモの開催日数を減らすなどの案も出たのだが、さいわい積極的に手をあげてくれた人たちがこれまで代表者が担っていた仕事を分担することになり、当面の間は現状の開催方法を継続することになった。

 「脱原発みやぎ金曜デモ」が立ち上がってから10年以上が経った。金曜デモに参加しては、そのことをブログに綴ってきた。私と原発の関係は、原子力工学を学んでいた学生時代までさかのぼるが、そのころのことをこのブログに書き記したことがある(「 「4月11日 脱原発みやぎ金曜デモ」 辺見庸の言葉! 」)。


「もうひとつの、サブスタンスとロールという問題でいえば、ぼくはどうしたって物書く人間なものですから、集会でね、日比谷の野音かどこかでね、白いテーブルクロスしたところにみんな偉そうに座ってね、あれすごく嫌いなんですよ。
(……)
 何十年も原発をほったらかしてきたくせに、今頃偉そうな顔して言うかって思うわけです。そういうときに、ロールではなくて、人としてのサブスタンスが問われてくるんだと。」 (辺見庸『週間金曜日』2014年4月11日号、p. 20)

 辺見さんの言葉は、ジャーナリストや知識人へ批判の流れの中で語られているのだが、当然のように、それは私にも突き刺さってきた。
 大学、大学院修士課程まで「原子力工学」を学んでいた私は、当時、反原発という動きの中にもいた。それも理由の一部として原子核工学科を追い出された私は、拾ってもらった物理系の研究室で「ほっと」して物理学者への道を選んだ。
 「ほっと」したというのは、就職ができたということもあったが、もう原子力工学をやらなくてもいいという気分が大きかった。それを裏返せば、原発-反原発という構図の現場にもう居なくていいんだという気分があったのだと思う。もう少し突き詰めて言えば、反原発を担う責任のようなものも軽くなったと思っていたのではないかと、今になればそう思うのである。
 辺見さんが言うように、それはロール(役割)としての生き方だったということである。20歳ちょっとの時の反原発はロールとして演じられ、私の存在のサブスタンス(実質)にはなっていなかった、ということだ。(2014年4月













一番町。(2022/11/6 14:19~18:20)


 集会のフリースピーチの最後の部分の聞きかじりの中に40年超の原発をさらに20年を越えても延長稼働できるようにしようとする原子力規制委員会の話題があった。それを聞いても、「原子力でしか生き延びることのできない学者さんはそう考えたいのだろうな」という感想しかない。
 そんなに長い間原発を維持できるだけの人材は枯渇するだろうから、彼らの夢想は夢想のまま終わるのではないか。と言うのが私の考えである。20年も前になるが、原子力工学の大学院教授になっていた後輩が「学生の質がどんどん落ちていく」と嘆いていたことがあった。フクシマ事故以降、原子力関連の学部・学科への進学希望者が急激に減っているという新聞記事もあった。人材は確実に枯渇するのである。
 原子力産業が栄える、などというのは夢のまた夢なのである。経産官僚の妄想として潰えるのではないか。経産官僚の悪あがきの一つに高速増殖炉への妄執があるが、8年前のこのブログにも高速増殖炉「もんじゅ」についても書いていた(「​ 「4月27日 脱原発みやぎ日曜昼デモ」 青葉・若葉の風に吹かれて、うらうらと! ​」)。


 私は物理系の研究室に職を得たが、原子核工学科だった同級生のほとんどは原子力関係の職を得た(当たり前のことだが)。大学に残る少数を除けば、優秀な人たちは日本原子力研究所や動力炉・核燃料開発事業団に入った。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、私より一年上で、学部卒業で日本原子力研究所に入った一人である。同級生の中には、職業人生のほとんどを高速増殖炉「もんじゅ」に関わりつづけて退職した友人もいる。
 「もんじゅ」といえば、4月21日付けの読売新聞(私はネット記事で見たが)に「もんじゅ推進自信ない…原子力機構が意識調査」という記事が載った。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」で、多数の機構職員が「もんじゅのプロジェクトを進めていく自信がない」と考えていることがわかった、という内容である。
 日本原子力研究開発機構は、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構と改めた動力炉・核燃料開発事業団が統合されてできた国家レベルの原子力研究機関である。私が卒業した頃の原子核工学科の就職状況から類推すれば、ここには原子力工学を専門とするなかでも優秀な部分が集まっているはずだ。そのような技術者、研究者の多くが「もんじゅのプロジェクトを進めていく自信がない」というのだ。福島の事故で「絶対安全」という盲信、非科学的信仰が崩壊してしまった現在、ノーマルな精神・知性を持つ技術者、研究者が原子炉、なかんずく高速増殖炉という不安定な原子炉に不安を持つのは当然と言えば当然なのである。
 日本の原子力工学の中枢にいる人びとが不安に陥っている一方、政治・行政の世界では「世界最高水準の原子力安全基準」などというありもしない虚妄の根拠を問われて、政治家も役人も返答に窮している。なんという「反知性主義」の国なのだろう。最近、自民党・右翼的言動を「反知性主義」と呼んでいるようだが、安倍的言説を反知性主義というのは正しいとは思えない。ただの無知を反知性主義とカテゴライズするのは過ちだと思うのだが。もしかしたら「無知+政治権力」を反知性主義と考えるのだろうか。(2014年4月27日)











青葉通り。(2022/11/6 14:22~14:31)


 いつの間にか青葉通りのケヤキ並木がきれいに色づいている。そんなことに驚きながらのデモだった。老骨には暑さ、寒さの変化はけっこう堪えるので、季節には敏感になっているはずだと思うのだが、季節に応じて巡る自然の変化には逆に鈍感になっているのはどういうことなのだろう。老いは世界に開けていたパスがどんどん狭くなっていくことだろうとは考えてはいたがこんなに早いのはいやだなあ、ケヤキを見上げながらそんなことを考えてデモは終わった。  ケヤキには緑をしっかりと残したところ、赤や黄色に色づいたところと混じり合っていて、道には落葉がたくさん散らばっている。樹上の色とりどりの葉とは異なって、地上の葉がすべて枯葉色であることにちょっと不思議を覚えたが、枯葉色になったものが落ちてきたと考えればいいのだというつまらない結論にがっかりしながら家に帰ってきた。

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Last updated  2022.11.07 09:42:28
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