ken tsurezure

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trainspotting freak

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2007.12.10
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カテゴリ: 音楽あれこれ
 ダフトパンクの正体はその音楽を聴いている普通のファンにはわからない。彼らはライブでも雑誌のインタビューでもテレビでも、メディアに露出するときは必ずあの珍妙な宇宙服のような格好をして現れる。だからその宇宙服の中に誰がいるかわからない。ダフトパンクはフランスで火がつき、ヨーロッパやイギリスでの成功から日本でも知られるようになった。だから一応フランス人がその宇宙服の中にいるのではないかと推測される。しかし誰がそこにいるのかは本当のところはわからない。もしかしたらその宇宙服の中にアルジェリア人がいるかもしれないし、日本人がいるかもしれないし、ベトナム人がいるかもしれないし、イギリス人がいるかもしれない。
 その肉声もわからない。彼らがその音楽に歌をのせるとき、その声はボーコーダーで処理されている。
 つまりダフトパンクは完全に匿名的なプロジェクトなのである。
 その匿名性にもかかわらず、ダフトパンクの音楽は特長がある。彼らの音楽はちょっと聞くだけですぐわかる。最近の例だと、カニエウェストのシングル曲『ストロンガー』がそうだ。特にインフォメーションがなくても、その音を聞いただけで「この曲はダフトパンクが絡んでいる」とすぐにわかる。
 彼らの音楽の特長、または記名性。それはその独特なシンセサイザーの使い方と、彼らの出世作『ダ・ファンク』で開発されたその不思議なリズムにある。テクノビートによって構成されたいびつで異形な「ファンキー」ではないのにグルーヴ感のあるへんてこりんなファンク。彼らのアルバムはそのへんてこりんなテクノビートファンクを発展させていく過程のうえで作られていった。
 今回の幕張メッセ公演はDa Funk Festと銘打っているが、そこに集まった客の目当てはダフトパンクである。ダフトパンクが好きだという人はそのへんてこりんなテクノビートファンクに魅力を感じてコンサートに集まったわけである。だからはじめのうちは当然のように盛り上がる。
 しかしテクノ系のユニットはコンサートの中盤あたりに大きな壁が待っている。それは中だるみだ。コンピュータによる規則正しいそのビートにどうしても飽きが生じてしまうのだ。これが例えばロックの神様といわれるようなエリッククラプトンだとかキースリチャーズであるならば、そのカリスマ的な神業でそれを易々と乗り越えてしまう。
 しかしダフトパンクは最初に述べたように実体が誰だかわからない匿名的なユニットである。だから「神業」など起こすことが出来ない。また「テクノ」の革命性はそのようなアンチロックカリスマに求められていたという事情もある。
 前半にゴリ押しでテクノファンクビートを叩き付け、中だるみが起こりそうなその時に、彼らは『ワン・モア・タイム』を鳴らした。
 中だるみしかけた会場が一気にボルテージを上げ、このコンサートの最高の盛り上がりの瞬間ではないかと思わせるような祝祭ムードに包まれた。
 そしてその後も彼らはそのテクノファンクビートをゴリ押しして乗り切った。そのテクノファンクビートの上で今まで発表してきたアルバムの一部分を巧みにコラージュしていき、サンプリングしていく。
 肝を抜かすようなステージセットがあるわけではない。しかし絶妙な形で音楽とシンクロしていく照明が客を飽きさせない。

 ダフトパンクが開発したおかしな形をしていて本来的な意味では「ファンキー」ではない異形の「ダ・ファンク」が今もまだ威力と爆発力を持っていること。それをまざまざと見せつけられた。

 そうすると逆に、そのいびつな「ダ・ファンク」が擦り切れてしまったとき、彼らはどんな音楽を鳴らすのだろうか。そのとき彼らの音楽はどんな形に発展していくのだろうか。そんなことをフッと思った。しかし『ワン・モア・タイム』から7年経ってもこの元気さだ。もうしばらく、ダフトパンクはこの「ダ・ファンク」の勢いに乗って進んでいくのではないかとも思った。





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Last updated  2007.12.10 11:55:03
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trainspotting freak@ Re[1]:世界の終わりはそこで待っている(06/19) これはさんへ コメントありがとうござい…
これは@ Re:世界の終わりはそこで待っている(06/19) 世界が終わるといってる女の子を、「狂っ…
trainspotting freak @ Re[1]:ある保守思想家の死 西部氏によせて(03/02) zein8yokさんへ このブログでコメントを…
zein8yok@ Re:ある保守思想家の死 西部氏によせて(03/02) 「西部氏の思想家としての側面は、彼が提…
trainspotting freak @ コメントありがとうございます aiueoさん コメントありがとうございます…

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