KIROMERU’s Web MOVIE&DRAMA@CINEMAD

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January 11, 2003
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ミッシェル事件以降、映画の書き込みがなかったので、久しぶりにカキコです。
ちょっと堅めの映画評です。

『K19』潜水艦映画である。K19とはソ連の原子力潜水艦のことである。
映画は冷戦時代に実際に起こった事件を題材にしていて、アメリカではドキュメンタリー番組(アメリカのナショナル・ジオグラフィック製作)にもなっているそうだ。

1961年、北大西洋海。核ミサイルを搭載したソ連の最新原子力潜水艦K19は、ミサイル実験を行うための処女航海を行っていた。アメリカとの核軍拡競争の中、ソ連首脳陣は「大国の威信」をそのミサイル実験に賭けていた。是が非でも成功させなければならない実験に際して、兵士たちに信頼の厚いK19の艦長ポレーニン(リーアム・ニーソン)に代わり、筋金入りの共産党員ボストリコフ(ハリソン・フォード)が新しい艦長として送り込まれる。(ポレーニンは副艦長に降格する)ボストリコフのワンマンな振る舞いはポレーニンと対立する。それは『クリムゾン・タイド』のジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンのように、閉鎖された潜水艦の中で「男の信念」の対決が繰り広げられていくこととなる・・・ってのがストーリー。

冷戦時代、アメリカとソ連は、互いに大量の戦略核兵器を持ち、その「脅威」という抑止力によって核戦争を防止してきた。この核抑止力の構図を知っておくと、映画が分かりやすいかも。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦略爆撃機で相手が先制核攻撃を行えばこちらも同時に報復する状態だと、不意をつかれて先制攻撃を受け全滅してしまうと、反撃の手段を失うことになってしまう。そこで米ソ両国は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を開発し、原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)を配備することで、報復が可能なようにしていた。しかし、潜水艦は発射台としては不安定な分、ミサイルの精度が落ちるために、その開発に米ソはしのぎをけずった。そのころがこの映画の時代背景となる。

潜水艦映画は、名作「U・ボート」も、前記した「クリムゾン・タイド」にしても閉鎖空間がドラマを生む。海の底の恐怖、通信が途絶えてしまう恐怖、水が流れ込む恐怖、暗闇の恐怖・・・K19にはそれに加えて「放射能汚染の恐怖」がふりかかる。
整備不完全なまま任務につかざるを得なかったK19.起こるべきして起こってしまう原子炉事故。原子炉が溶解し爆発する危険が、兵士たちの精神を狂わせて行く。事故現場はNATOの海軍基地の近く。米ソ世界戦争の引き金を引きかねない緊迫した事態。

大国のイデオロギーとメンツを抱えるボストリコフ(ハリソン・フォード)、兵士の命を守る務めを果たそうとするポレーニン(リーアム・ニーソン)。人間の理性が平常心と良識を取り戻すことができるのか・・・
しかし、これは実話である。たった数人の人間が、核戦争を引き起こすかもしれないという責任を背負い込んでしまう現実。
この映画は作られるべきだったのだろうか?アメリカ文化の象徴であるハリウッドが、アメリカの役者を使い、旧ソ連時代のずさんな核管理体制を描く。くしくもアメリカが政治的な戦略としてイラク攻撃を行おうとする矢先に。
この映画がを通して、いかに冷戦時代は危険で恐ろしい時代だったことが見えてくる。恐ろしくもあやうい時代だった。もっと知られざる部分では、世界は日常的に危ない橋を渡っていたのかもしれない。

この映画に「ハッピーエンド」はない。それは原爆の悲劇が、ヒロシマ・ナガサキで終わったのではないのと同じである。ビキニ環礁の米国水爆実験で被曝したマグロ漁船・第五福竜丸や、旧ソ連時代に核実験場があったセミパラチンスク(周辺の住民約150万人が被曝した)など人間は過ちを犯し続ける。

潜水艦を描いた傑作漫画、かわぐちかいじの「沈黙の艦隊」で海江田艦長が最後に残した言葉がある。

「人間の善意は、かならず悪意を上回る」






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Last updated  August 20, 2004 11:07:15 AM
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