閑古鳥の巣箱

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2004.12.22
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カテゴリ: カテゴリ未分類
経済成長のためには、もっと不公平な世界にしなければなりません。

ノーベル経済学賞を受賞したヤン・ティンベルヘンによると、

経済成長には2つの方法があります。


1つは働く人を増やすこと、2つ目は、労働者1人が生み出す生産性を高めることです。


働く人を増やすといっても、仕事は無限にあるわけではないので作らなければなりません。

怒らずに聞いてください。これも経済成長のためです。


まず専業主婦を無職、パートはフリーター、家事手伝いはひきこもりやニートと呼ぶことにします。

そうした上で、家事は全て他人に任せます。


食事はインスタントや外食で済ませ、子供はベビーシッターや託児所などに預け、

勉強やしつけは塾や家庭教師などに全て任せます。

ちょっと調子が悪くなれば、自分で看病せずにすぐに病院に行ってたんまりと薬をもらい、

老人は老人ホームに放り込み、家計のやりくりは全て会計士に頼みます。

当然共働きであるべきで、家を留守にする間は空き巣に入られないように、セコムを頼ります。

休日は公園に行くべきではなく、家族でテレビゲームをしたり遊園地に行ったりするべきです。


このように、ライフスタイルそのものを変えれば、雇用が新たに生まれるので景気が良くなります。


労働者1人が生み出す生産性を高める方法は簡単です。

環境に負担をかけるほど、生産性は高まります。


経済成長は歴史上、石油、石油化学、金属関連産業、農薬を使う集約農業、公共設備、道路建設、

運搬業、採掘業などによってもたらされました。

これらは、自然環境を破壊し、大量の有害廃棄物を吐き出し、再生可能なエネルギー資源を

大量に消費する産業です。

つまり未来の幸福を現在に持ってくる作業こそが、経済成長になくてはならないものなのです。


ダイエットは是非するべきですが、500m先のエアロビクス教室には車で通いましょう。

暑ければ、窓を開けたりうちわで扇いだりせずに、冷房をがんがんにかけるべきです。

逆に寒ければ、厚着をしたり、やせ我慢したりせずに、暖房をつけっぱなしにしておきましょう。

物が壊れれば直すことは考えずに、すぐに捨てて、新しいものを買いましょう。


これくらいのことで躊躇していては、日本は不景気のまま、ずるずると行きます。

かつての日本の栄光を思い出しましょう。今まで何をしてきたか。


元々日本の戦後景気は、戦争特需にありました。

昭和25、6年には朝鮮戦争、31年にはスエズ戦争、40年頃はベトナム戦争。

人の不幸のおかげで、今の私達の繁栄があることは確かです。

ここまでは有名ですが、その他でも、人の不幸のおかげで繁栄しました。


フィリピン合同精錬会社(PASAR)が良い例です。

PASARはフィリピンのレイテ島で日本資産の銅錬工場を運営し、

日本向け高品質銅カソードを生産しています。


この工場の排ガスと排水には多量のホウ素や砒素、重金属、硫化物が含まれているため、

地域の水源が汚染され、漁獲量やコメの収穫量が激減し、森林が痛めつけられ、

住民は、呼吸器疾患が増えました。

PASARのために家も職も健康も何もかも失った住民が、今ではPASARで

パートや日雇いの口を捜し、危険で汚い仕事を引き受けねば生活できなくなっています。

若い女性には売春婦として生きていかざるを得なくなった人も大勢います。

高度経済成長期の日本人は、買春ツアーと称してよくフィリピンに行っていました。

これが国際的に叩かれたので、今はこちらから出向くのではなくて、向こうから来ています。


それでも会社は業績を伸ばしました。地域住民の生活は壊滅状態ですが、

経済成長というのは、誰かを犠牲にして成り立つものなので仕方ありません。


フィリピン、ベンゲット地方の先住民であるイゴロットの例も象徴的です。

彼らは、先祖伝来の地に埋蔵された豊かな金の鉱脈を少しずつ採掘しながら細々と暮らしていました。

ところが、今はフィリピン人富裕層、フィリピン政府、アメリカ人投資家が所有し、

大量に採掘しています。何十台ものブルドーザーやクレーン、トラックが山肌を切り刻み

樹木も土壌も根こそぎにしています。

そのせいで、水が汚染され、米やバナナが栽培できなくなり、山一つ越えないと

水を飲めなくなりました。


また、この会社はシアン化合物などの有害化学薬品を使い、そのまま川に流すので、

川が汚染されそれを飲んだ家畜が次々と死にました。

下流にある水田では、流れ込む排石のために収穫量が激減し、多くの農民が田を捨てて

都市に流れました。

さらに海に行くと排石がさんご礁を覆ったため、漁獲量が大幅に減少しました。


地域住民は悲惨なことになりましたが、

この採掘会社は莫大な利益を得ました。

経済成長はしても、結局は貧富の差を大きくしただけです。

経済成長を促す政策は、経済的強者が利益を得る一方で、弱者は生計の基盤を荒されます。


グローバル経済というのは、強いものが正義になります。

カナダのような先進国でも、危機的状況にある天然資源を保護し環境を守るための法律を制定したとたん、

米国企業エチル社に「利益を損なった」として訴えられたことがあります。

結局、多額の賠償金を恐れたカナダが2000万ドルを支払い、謝罪文を発行しました。


国連も強いものの味方です。というか、そもそも国連は強国のものです。

コスタリカは元々、貧しいけども、貧富の差はあまりない国でした。

ところが、IMFと世界銀行が対外債務軽減のためと称して、経済政策を一新してから

悲惨なことになりました。

経済全体が自国民用の食料を生産する小規模農業から輸出向け大規模農業へと移行しました。

その結果、何千人もの農民が土地を失い、土地は集約されて輸出用作物を作る大農場になり、

所得格差が急速に拡大しました。

しかも今まで自給できていた食糧を輸入に頼るようになったため、対外債務はかえって急増しました。

大失敗なわけです。でも、IMFも世界銀行も知らんぷりです。


ブラジルでも農業が自国向け小規模生産から輸出向け集約農業に移行したため、20年間に

2480万人が土地を失いました。タイも同様に100万人の農民が土地を失いました。

メキシコも悪名高き、NAFTA(北米自由貿易協定)のせいで農地を失う家族が100万世帯に達し

経済が壊滅状態になっています。

このように経済成長は難民を増やすことに成功しています。


日本のように、経済成長の結果、国民全体の暮らしが良くなったというのは奇跡的なことです。

普通は、貧富の差を拡大するだけで、貧民層は働けど働けど楽にならず、富裕層は

何もしなくてもどんどんと太っていきます。

でも、日本も結局は、他国をいじめぬいた結果そういうことができたのであって、

経済成長に負の側面があることは否定できません。


もっとも、日本もだんだんと経済格差が大きくなってきています。

そのうち、誰も経済成長を手放しでほめる人はいなくなってしまうと思います。

でもこれくらいのことでくじけてはいけません。

経済成長こそが、日本を救います。暮らしにくい世界になろうと、

不公平な社会になろうと気にしてはいけません。

搾取される側ではなく、搾取する側にまわればいいことです。

騙される側ではなく、騙す側に立てばいいだけです。

そんな社会。いいかなぁ・・・





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Last updated  2004.12.22 22:25:25
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