モンテヤマサキさん
喜んでいるかどうかは分らないけれども、反省はしていないと思います。今日たまたま加藤周一MLでこういう文章を紹介してもらいました。そうとう辛らつです。溺れている犬に石を投げています。

横光利一よ、何時まで我々の忍耐を試さうとするのか。
敗戦以来、言論の背後に権力とその犬共とのない自由な空気の中で、我々は「小説の神様」が、「知性の作家」が、そして大東亜文学者大会の宣伝の華々しき起草者が、過去と現在とに就いて語るのを待つてゐた。何故今日まで沈黙を続けてゐるのか。何故世界主義の流行の中で、「東洋と西洋」「心理と論理」「科学と精神」━ 或はそれに類する幾つかの意味ありげな対句に就いて語らないのか。何故この民主主義の嵐の中で、戦前の巴里の人民戦線運動に関する「旅愁」の議論を日本の運動に就いても展開しないのか。又何故特攻隊の再教育の必要な文壇の大先輩が説いてゐる時に、「特攻隊の神々」と「その足許にも及ばない我々作家」に就いて弁明を試みないのか。
(続く) (2010年06月17日 00時11分06秒)

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2010年06月14日
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カテゴリ: 邦画(09~)
オランダVSデンマーク戦が終わりました。カメルーン戦が始まるまで急いで書かせてもらいます。昨日の日曜は月一回の映画サークルの『語る会』でした。時間の半分は、元スポーツ実況中継もしたこともあるアナウンサーもいたこともあり、今年のW杯で終始してしまいました。
『韓国は強かったねえ』
『強かったねえ』
『アルゼンチンにさえも勝てるのではないくらい強かったよ
日本が二盾を食らったのも当然だね』
『日本はどうしようもないね』
『今年は本当に盛り上がらないねえ』
『早く代表が決まったのがいけなかったのではないかな』
‥‥‥とまあ取り留めのない話でした。

話がなかなか本題に入らないときには、例によって中味は薄い記事になります。と、いうことで本題。

『告白』
原作未読なのですが、こんな内容の作品だったんですね。
中島監督はいつも『内なる痛み』をカラフルにエンタメとして描き続けてきましたが、監督の好きな素材だとは思います。

監督・脚本 : 中島哲也
原作 : 湊かなえ
出演 : 松たか子 、 岡田将生 、 木村佳乃

でもやっぱり私には響かない作品でした。中心人物の14歳の中学生三人が圧倒的な演技力を持っていたとしたら、素晴らしい心理サスペンスが出来たかもしれません。彼らはよくがんばってはいましたが、結局ストーリーをなぞるのが精一杯のように感じました。彼らに複雑な心理描写は無理でした。そもそも監督でさえ分っているのでしょうか。14歳の中学生という"怪物"の正体を。中学生の彼らに殺人者の心理を演じて見ろというほうが無理なのかもしれません。

この映画でくっきり描けたのはやっぱり松たか子の"悪意"です。母性を殺された女の"悪意"は十二分に描けていました。しかし、反対に言えばそれだけ。ありふれた母性の悪意のみが描けたエンターテイメントな『暗い映画』だったわけです。

小説としてならば面白かったのかもしれませんが、映画としては私は中途半端に感じたのでした。

そろそろカメルーン戦が始まります。と、言うわけで今日はこの辺で‥‥‥。





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最終更新日  2010年06月14日 22時44分20秒
コメント(17) | コメントを書く
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Re:『告白』します。この映画は‥‥‥(06/14)  
10代の若い人があの脚本で演技するなんて無理でしょうね。
ちょっと救いを持って終わるかな(でも、それでは平凡だな)という観客の微妙な心理をついたラストは良かったと思います。 (2010年06月15日 19時14分52秒)

原作未読映画未見ですが  
モンテヤマサキ さん
私の12才の頃で既に一歩間違えれば死んでしまったというような出来事は結構ありました。多分そーいうのは、どの世代でも似たり寄ったりだと思うんですが、今すぐに思い出せるのは、ロケット花火を水平に向けて火を点けるというものですね。人に向けて発射。イジメの一環ですが、いじめられるのは必ずしも弱い者だとは限らないっていうのは、多分我々全員がよく知っていることでしょう。リーダーでもナンカノひょうしでキツイ危機に追い込まれたりもする。強い奴を嫉妬混じりで虐めるとなると、方法も残酷になるというわけ。なまじ強くて弱音はかないから、ロケット花火で標的にするという、恐ろしいことをやった。

ここまで殺伐となったのは、私は担任の教師が体育系の権化だったからではないかと今思っているんですがね。子供を嫌うタイプ。人のせいにするわけではないんですが、結構そこらへんにあるような気がする。暴力教師の本性を世間体からセーブしているのが、12才でも分りますからね。

加藤さんでも、横光利一を軍国主義に対するうさ晴らし的な標的として、八つ当たり的にいじめる、ということをやってはいると私は思います。年上で有名人だとしても知性は格段に目下だったんですから。慈悲のない、残酷な仕打ちであったと思います。 (2010年06月15日 23時29分10秒)

Re[1]:『告白』します。この映画は‥‥‥(06/14)  
KUMA0504  さん
ももたろうサブライさん
>10代の若い人があの脚本で演技するなんて無理でしょうね。
>ちょっと救いを持って終わるかな(でも、それでは平凡だな)という観客の微妙な心理をついたラストは良かったと思います。
-----
この映画の評判が、映画ブロガーの間で非常に良いというのに戸惑っています。
最後のところは救いを見つけた気分に陥る人がいたのかな。私は松たか子の復讐心を全然疑っていなかったので、それほど意外には感じませんでした。
でも、犯人の母親を本当に爆破したのかどうか、いくらなんでもそれをしたら自分も逮捕されてしまうのですが、そういうことを彼女は選ぶのでしょうか。原作はどうなっているのでしょうね。
(2010年06月16日 00時33分38秒)

Re:原作未読映画未見ですが(06/14)  
KUMA0504  さん
モンテヤマサキさん
本当に命にかかわるかどうか分らずに危ないことをしてしまうということは、私も良くありました。けれどもこの中学生たちは明確な殺意を持っているのです。その心理を果たして監督は本当に分って作ったのか。もし作ったのだとしたら、それを描くことが出来なかったのはなぜか。
というようなことを思ったのでした。

加藤さんの横光いじめは有名ですが、『羊の歌』を読む限りは冷静な批判のように思えます。ところが、横光自身は大きなショックを持ってしまった。いったいどんな詰め方をしたのでしょうね。 (2010年06月16日 00時38分36秒)

羊の歌でも充分残酷ですよ  
モンテヤマサキ さん
年下とはいえ、東大の腕に覚えのある奴らばかりなわけでしょ。

それに囲まれてボコボコにされたと一緒ですよ。1対1ならともかく。1対1だとしてもしかも元々格下で勝負は付いていたわけだし。

お人好しのクソ真面目な、自分より格下の人を、しかもそれをいいことに憂さ晴らしをしたんですよ。充分人柄を見極めた上で。

チクルのような人には、あんなことは奴らに出来ない。

でも誰にでも間違いはあります。それを正直に告白していると思います。反省は書いてないけれども、それでも引っ掛かるものがあったんでしょう。論破した勝利を喜んではいないと読めます

(2010年06月16日 23時56分10秒)

Re:羊の歌でも充分残酷ですよ(06/14)  
KUMA0504  さん

続きです。  
KUMA0504  さん
しかし、常に、門は開かれてゐる。出て行くのが自由だとは云えるであらう。
 今や記憶のなかの人物にならうとしてゐる横光利一よ、さうならざるを得ないことは自らも感じるであらう。「知性の作家」は怖しく抽象的であつたが、毫も論理的ではなかつた。「小説の神様」は人物を自在に操つたが、人物は少しも人間ではなかつた。「純粋小説」はジツドの徹底的誤解から発生したが、要するに情熱のない作家が、肉体のない人物を、人形師のように操ることにすぎなかつた。神託のやうに壮厳な多くの言葉は、凝視する鋭い眼光と固く結んだ唇から生れたが、要するに全く脈絡と発展とを欠いた断片に他ならなかつた。持続のない所に思想はなく、思想のない所に現実の認識はあり得ない。その後に来るものは、おゝ時代よ、おゝ、風俗よ、東條の主宰する残忍な喜劇の伴奏音楽指揮者、或は、神々とみそぎと聖戦とに香を焚く悲しむべき預言者、━何れにしても、必然的に、我々の日本と人民とを「理性の道」の外へ導いた戦争犯罪人の役割に他ならなかつた。(加藤周一)

出典・『文学時標』文学時標社・1946年4月1日・第6号・3頁目(全4頁中)・「文学検索(5)」3段目から4段目。定価参拾銭。
(2010年06月17日 00時11分51秒)

小林秀雄だと  
モンテヤマサキ さん
うろ覚えですが、小林秀雄の横光利一についての文章は、手に余ることにぶつかっていってしまった気の毒な人、みたいな感じで書いていたと思います。

加藤さんとも一致するのは、あまり大した人ではない、ということですね。

お人好しのクソ真面目な人であったんだと思います。

酷い目に合わせた加藤さんらを、警察に売るような卑怯な真似はしなかった。

そーいうことをする人には、そもそも話が出来なかった、と後年何処かで、加藤さんが書いてます。中野好男もチクル人ではなかったので「安心して」批判出来た、と言ってました。

1946年4月1日の文章は、相当頭に血が昇って書いてる、という感じですね。怒っていることを隠さない、人みたいですね。講演やテレビ出演時なども、怒る表情をを何度かみました。隠さないですね。 (2010年06月17日 00時40分43秒)

Re:小林秀雄だと(06/14)  
KUMA0504  さん
モンテヤマサキさん
>うろ覚えですが、小林秀雄の横光利一についての文章は、手に余ることにぶつかっていってしまった気の毒な人、みたいな感じで書いていたと思います。

>加藤さんとも一致するのは、あまり大した人ではない、ということですね。

>お人好しのクソ真面目な人であったんだと思います。

>酷い目に合わせた加藤さんらを、警察に売るような卑怯な真似はしなかった。

>そーいうことをする人には、そもそも話が出来なかった、と後年何処かで、加藤さんが書いてます。中野好男もチクル人ではなかったので「安心して」批判出来た、と言ってました。

>1946年4月1日の文章は、相当頭に血が昇って書いてる、という感じですね。怒っていることを隠さない、人みたいですね。講演やテレビ出演時なども、怒る表情をを何度かみました。隠さないですね。
-----
つまらない人間だけども、誠実な人間。
最低限、人を売るようなことはしない。
そういう見極めは大切ですね。

加藤は怒る人です。
当たり前、横光利一のせいで、どれだけの文学青年が勇んで戦場に消えたことか。
加藤は一生その怒りを消さなかった。

少なくとも、私のこれからの人生は平和を求めて生きたいと思います。
(2010年06月17日 23時04分02秒)

直きこと其の中に在り  
モンテヤマサキ さん
えーと。。。加藤対話集の第一巻あたりに、戦後間もない小林秀雄との対談が掲載されていたと記憶しますが、私はそれを初めて読む時に、期待した。喧嘩売ってくれないかな、と。

しかし、大人しいものでした。

2000年の「20世紀を語る」では、御用文学者とみなしているわけです。で、小林はそれなりの知性はあった。あるからには勿論責任も重い。
で、戦後は「俺は馬鹿だから反省なんぞしない」でしょ。

喧嘩を売る動機はあるはずです。しかし横光利一のような御し易いつまらない人間には得意の刃を向けて、小林には向けないっつーのはいただけないですな。

戦中、東大の御用教師には危険だから手出しできない。

しかし、時代の風潮に染まり易いおっちょこちょいの誠実な非常勤講師が、ノコノコ1回だけの講演にやってきた。

1回だけであとくされもない。のちの人間関係を考慮する心配もない。安全確認がいく重にもなされていく。。あとは売る心配だが、それもどうやら大丈夫だ。安全確認OK。その作業はなされたはずである。

その獲物が、よそ者が、加藤さんの共同体の内輪の網の中へ偶然も手伝って入って来た。そーいうドジなつまらない奴をいたぶったところで、何になろう。

残念ながら、ここにおいて卑怯な行為と私は考える。加藤さんの敵は横光利一ではないはずだ。その後ろにいる奴らを憎悪していたはずである。 (2010年06月18日 00時17分18秒)

直きこと其の中に在り  
モンテヤマサキ さん
あまり、キレイなたとえにはなっていませんが、論語の、この一遍を連想しました。

葉公語孔子曰、
「吾党有直躬者。其父攘羊、而子証之」。
孔子曰、
「吾党之直者、異於是。父為子隠、子為父隠。直在其中矣」。


葉公(しょうこう)孔子に語(つ)げて曰く、
「吾が党に直躬(ちょっきゅう)といふ者有り。
其の父羊を攘(ぬす)みて、子之(これ)を証せり」。
孔子曰く、
「吾党の直(なほ)き者は、是に異なり。父は子の為に隠し、
子は父の為に隠す。直きこと其の中に在り」と。 (2010年06月18日 00時21分39秒)

Re:直きこと其の中に在り(06/14)  
KUMA0504  さん
モンテヤマサキさん
>喧嘩を売る動機はあるはずです。しかし横光利一のような御し易いつまらない人間には得意の刃を向けて、小林には向けないっつーのはいただけないですな。


その頃には、いわば『分別』が出来ていた。ということでしょうかね。

>残念ながら、ここにおいて卑怯な行為と私は考える。加藤さんの敵は横光利一ではないはずだ。その後ろにいる奴らを憎悪していたはずである。
-----
まさにその通りであり、
だからこそ、加藤周一は戦後しばらくすると、けんかを吹っかけるようなこともせずにひたすら『日本人とは何か』を追求してきたのだと思います。

孔子の言ったことの本当の意味はよくわかりませんが、物事を『全体としてみる』ことは大切だと思います。
(2010年06月19日 08時03分19秒)

石原都知事  
モンテヤマサキ さん
ピーコの本によると昔、「オカマに選挙権があるなんてとんでもない」と放言したそうです。

夕陽妄語では「フランス語では数が数えられない」と放言したとあります。

私がDVD保存してあるテレビ番組の中では、アンディ・ウオーホルについて「あんなものが芸術かねぇ」と言ってました。
アンディ・ウオーホルについて加藤さんが夕陽妄語の中で分かり易い解説付きで評価しているのは熱心なファンなら御存じのとおり。

最近のテレビ番組で、都知事は再び「平和の毒」などというふざけたことを言っております。

こいつに関しては、もっと加藤さんは徹底的にやっちまってよかったのではないかと思っております。 (2010年06月22日 00時57分26秒)

Re:石原都知事(06/14)  
KUMA0504  さん
モンテヤマサキさん
加藤さんはちゃきちゃきの江戸っ子だからねえ、喧嘩っぱやいところはあるかもしれませんね。
石原のひどさは目に余るところあり。モンテヤマノサキさん請う邂逅吐毒舌。 (2010年06月22日 21時41分01秒)

いつも御世話になっています。  
ヒガシ さん
別館ヒガシ日記が、TBなど何時も世話になっています。

松たか子の印象だけが強く残りますよね。

良ければTBなど下さい。 http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/hum09041/10955203104/188b5f83 (2011年07月17日 12時19分58秒)

Re:いつも御世話になっています。(06/14)  
KUMA0504  さん
ヒガシさん
>別館ヒガシ日記が、TBなど何時も世話になっています。

>松たか子の印象だけが強く残りますよね。

>良ければTBなど下さい。 http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/hum09041/10955203104/188b5f83
-----
ありがとうございます。
TB受け付けなくてすみません。
TBさせてもらいます。 (2011年07月17日 13時46分08秒)

Re:いつも御世話になっています。(06/14)  
KUMA0504  さん
ヒガシさん
すみません。なんどかこのURLでとぼうとしたのですが、なぜかエラーになってしまいました。 (2011年07月17日 13時49分57秒)

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