再出発日記

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2010年07月27日
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カテゴリ: 邦画(09~)
日本映画専門チャンネルで「南の島に雪が降る」(1961年作品、監督 久松静児、脚本 笠原良三)を観た。

以前、加東大介の原作に付いては読んで感想を書いたことがある。


加東大介といえば「七人の侍」の名参謀役が有名であるが、私にはそれよりも山中貞夫監督の「人情紙風船」(S12年)における縛徒役を思い出してしまう。この映画は日本映画が誇る大傑作で、私には生涯邦画ベスト10に残りうる作品である。当時の前進座総出演で、その関係で加東も出ている。加東があまりにも若かったので、ちょい役ながら覚えていたのである。山中監督はこの直後に徴兵され、還らぬ人となった。そしてその6年後、加東は2回目の徴兵を受け、ニューギニアに向う。時代はそういう時代だった。たかが、芸人ふぜい、いつ死んでもおかしくは無かったのである。

運命のいたずらで加東の部隊はアメリカ軍の総攻撃から免れる。しかし、補給路を断たれて七千人の兵士たちは次々と死んでいく。戦意高揚、いや、生きる意欲高揚のために加東たちは芸を持った人たちを集め、「マクノワリ歌舞伎座」を創設する。余興ではない。毎日休まず公演を行うりっぱな「部隊」である。数々の感動的な「場面」がある。「生きる」とはどういう事なのか、「生き甲斐」とはなんなのか、そのエッセンスが淡々とした加東の文章の中に隠れている。

さすが、名エッセイスト沢村貞子の弟だけあり、文章は時にユーモラスで、臨場的で、無駄が無く、素晴らしい。隠れた名戦争文学である。この作品は一度東宝で映画化されたそうだが、「生きる」意味を見失っている現代、ぜひもう一度映画化してもらいたい。
(2004年12月23日(木))


このときはまだ映画は観ていなかった。DVD化してないので映画の方もまさに隠れた名作となっている。出演俳優は加東大介は一応主演ではあるが、抑えた演技をしている。一人ひとりの兵士を描くことに主力をおいている。何しろ出演者が凄いのである。当時の喜劇俳優総出演と言っていい。伴淳三郎、有島一郎、三木のり平、渥美清、フランキー堺、西村晃、森繁久弥、小林桂樹‥‥‥とここまで書いて気がつく。みんな既に故人となった。彼らはおそらく全員戦争経験者だろう。その人たちが鎮魂の意をこめて舞台で「まぶたの母」をする。紙の雪が降る。やせ衰えた満員の兵士たちからざわめきが広がる。「おい、雪だ」「雪だぜ」遠くから命からがらやってきた一人の兵士はそこで息を絶つ。

歌舞伎座が少し立派過ぎるような気がするし、兵士たちの飢餓のリアルな描写は少ない。けれども、あまりリアルにしすぎると1961年当時だと経験者は多かっただろうし、少し生々しすぎたかもしれない。

私の母の兄も南の島で亡くなったと聞いている。「本当に秀才で‥‥‥兄が生きていたら‥‥‥」という母の言葉が今も忘れられない。南の島での戦闘の悲惨さは「野火」等の小説で知っている。水木しげるもラバウルで九死に一生を得ている。そのようないわば一般的な認識を元に戦場のなかで突然現れた異世界(ふるさと)を描くこの作品は、まさに鎮魂としての映画になっているのだろう。





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最終更新日  2010年07月27日 07時42分42秒
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Re:「南の島に雪が降る」隠れた名作(07/27)  
この映画は劇場で観た記憶があります(モノクロ)。まだ戦争の香が残っていた頃に」公開されました!子供心に「戦争はいけない」と思った記憶があります。 (2010年07月27日 09時29分59秒)

Re[1]:「南の島に雪が降る」隠れた名作(07/27)  
KUMA0504  さん
ジャイアント浜田さん
>この映画は劇場で観た記憶があります(モノクロ)。まだ戦争の香が残っていた頃に」公開されました!子供心に「戦争はいけない」と思った記憶があります。
-----
そんな昔だとすると、この映画を見たのだろうか。ただし、この映画はカラーなんですよね。昔の映画は白黒で記憶することは良くあることです。あるいはテレビドラマでやったことがあるか。
この時期、いろんなテレビドラマをしているので、子どもには見せてやりたいですね。 (2010年07月28日 00時25分03秒)

素晴らしい作品  
ジャンヌ さん
くまさん、はじめまして。
私もこの映画は、自分の中の邦画ベスト10に入っています。
芸達者が沢山集まり、笑いあり、涙ありの素晴らしい反戦映画です。
その後リメイクもされたようですが、期待外れになると思い見ていません。
書籍が先だったのも、最近初めて知りました。

是非DVD化していただきたいですね。 (2010年08月15日 15時29分46秒)

Re:素晴らしい作品(07/27)  
KUMA0504  さん
ジャンヌさん
>くまさん、はじめまして。
>私もこの映画は、自分の中の邦画ベスト10に入っています。
>芸達者が沢山集まり、笑いあり、涙ありの素晴らしい反戦映画です。
>その後リメイクもされたようですが、期待外れになると思い見ていません。
>書籍が先だったのも、最近初めて知りました。

>是非DVD化していただきたいですね。
-----
この豪華俳優人は、それだけで超大作の宣伝が出来る作品です。地上派で放映して直後にDVD化したら売れると思うのですが‥‥‥。
本の方は文庫化になっています。まだ読んでいないようでしたら、ぜひ手に入れてみてください。決して期待を裏切りません。
(2010年08月16日 07時50分51秒)

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