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2021年04月23日
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カテゴリ: 洋画(12~)
昨日、思いもかけずNさんから「今回の映画評は良かった」とお褒めの言葉を頂きました。〆切過ぎても書ききれず、苦しんで書いた文章だったので、望外の言葉でした。



今月の映画評「ジョジョ・ラビット」



 あゝこれはリアルなヒトラー映画じゃないな、という予測がつきます。ポピュリズム(大衆迎合主義)を戯画化しているのかな。ところが、だんだんコメディタッチが、深刻な真実をあぶり出してゆくのです。子供たちが合宿で学ぶ「武器の使い方」「人の殺し方」「ユダヤ人の差別の仕方」。心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺せず、教官から<ジョジョ・ラビット>という不名誉なあだ名をつけられてしまいました。それでもジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)の助けを借りて、立派なナチスになろうと奮闘するのです。ナチスの洗脳教育の愚かしさをこれでもかと見せつけます。

 ベルリンの家では、隠し部屋にユダヤ人の少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)が匿われていました。ヒトラーの子分みたいなジョジョは、「アンネの日記」から出てきたようなユダヤ人少女に逢ったならばば、何を選択するのでしょうか?

 10歳の子供から見たら、世界はこのように見えるのかもしれません。冷静に見たら、狂気の世界が見えます。密かに反戦活動をしているお母さん(スカーレット・ヨハンソン)がかっこいい。密かに母親に恋している大尉(サム・ロックウェル)もかっこよかった。

 靴の紐を一人で結べなかったジョジョは、お母さんの死に出会って、必死の想いでお母さんの靴の紐を結びます。この場面の処理の仕方が、とっても悲しくて秀逸でした。

 喜劇と悲劇、寓話とリアル、空想のヒトラーとユダヤ少女、二つが重なりながら、ダンスが嫌いだった少年はラスト、ボウイの「ヒーローズ」に乗せて踊り始めるまでに成長するのです。
 そして最後はリルケの詩が、物語を締めました。

全てを経験せよ 
美も恐怖も 
生き続けよ 
絶望が最後ではない

(2020年 タイカ・ワイティティ監督、米国作品、レンタル可能)







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最終更新日  2021年04月23日 11時52分04秒
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