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スペードテール 品種として確立している訳ではないのですが、尾ビレの後縁中央部分が突出し、尾ビレ全体がスペード型になっている個体をプラカットで見かける事があります。今の所、この点に着目して改良されている訳ではありません。 まったくの個人的な空想的意見によれば(笑)、このスペードテールの個体は妙に細身のボディを有する事が多いのと、初期のスペードテールの多くはブラック&メタルグリーン・マルチだった事などから、「スペードテールはプラカット(スプレンデンス)と他の近縁種との交配が起源」と予想しております。ちなみに、その近縁種とは尾鰭の形状から言って「ベタ・マハチャイ Betta mahachai」じゃないかと睨んでおります。バンコク近郊では結構日常的にこの2種のベタの異種間交雑が行われており、市場に商品として出回っていた時期もありましたから、遺伝学的に言ってもそれほど遠くない関係なんでしょう。
2013/07/30
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ダブルテール DT 尾ビレが上下2葉に別れたタイプで、ショーベタでは尾ビレ全体が「四葉のクローバーの二葉分(笑)」やハート型の様に見えます。また、一般的にダブルテールの個体は「1.ボディが短め」、「2.背ビレの幅が広い」と言う特徴を併せ持っています。 構造学的には、「幅が広い背鰭」に見える部分は実は尻ビレ起源の物とされています。つまりは、体の上下に尻ビレがあると言う事になります。ちなみに、我が国のメダカの改良品種である光メダカも同じ原理とされており、光メダカの背中部分が光るのは、本来腹部にある金属光沢部分が背中に来ている為の様です。また、光メダカでもベタ同様背ビレ(本来は尻ビレ)の幅が広くなっています。 尻ビレが背鰭の部分にも存在すると言う、非常に複雑怪奇な体内の骨格異常の為か、このダブルテールには脊椎骨異常(元々そうなんですが)の個体が多く見られます。中には、ボディがグニャグニャに捻じ曲がった個体や誰が見ても奇形と感じるほどのショートボディの個体も存在します。その為、ダブルテールの繁殖を手掛ける際には、かなり大量のハネを覚悟しなくてはなりません。 特にダブルテール同士の交配では、次世代に上記のような観賞に適さない個体が数多く出現する為、ノーマル×ダブルテールと言う組み合わせが一般的に推奨されています。ダブルテールという形質はノーマルに対して劣性である為、もしノーマルテール(ホモタイプ)×ダブルタール(劣性ホモタイプ)と言う交配を行うと、次世代はすべてノーマルテール(ヘテロタイプ)となります。この外見はノーマルタイプの次世代同士の交配では、理論上はノーマル:ダブルテール=3:1の割合で出現する事になります。 よく、両親共にノーマルテールで交配した所、子供世代にダブルテールが出現したと言うのは、たまたま繁殖に用いた両親が共にダブルの因子を持つノーマルテールだった為と言う事です。
2013/07/29
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ハーフムーン いまやショーベタの主流となった感のあるのがこのハーフムーン(HMと略)で、尾ビレが半月の様に180度開くのがその名の由来です。スーパーデルタの限りなく180度に尾ビレが開く個体との区別がやや困難ですが、1.尾ビレの上下最端の軟条がまっすぐである事。2.尾ビレの軟条が4レイ(4つに分岐)。3.尾ビレの角が鋭角である事などの点から区別できます。もっとも、ハーフムーンの個体と言えども、きちんと日常管理されていない個体は尾開きが不十分になりスーパーデルタ以下の尾開きと言う事も往々にしてあります。 現状では、「尾ビレの開きが180度前後の個体」はすべてハーフムーンと言う名称で流通している様です。個人的には、スーパーデルタの尾ビレの形質でも尾開きが十分ならばハーフムーンでもいいんじゃないかと感じていますが、そんな事を言うとショーベタ界の諸先輩方からお叱りを受けてしまうので、「尾ビレの形質に関係なく、逸品堂で扱うショーベタはすべてスーパーデルタです」と言う事で通しております。まぁ、そう言っとけばあんまり文句も来ないだろうと言う打算でして(笑) ハーフムーンの系統は本来は尻ビレや背ビレも他の系統に較べて幅があるため、各ヒレが隙間無くボデイを取り囲む為、全体が見事なシルエットになる事も長所の一つです。ただ、余りにも各ヒレが肥大化しすぎたため、互いに他のヒレの健全な慎重を阻害する事もあるため、過ぎたるは及ばざるが・・・と言う感も無きにしも非ずです。 また、最近のハーフムーンの系統はなぜか背ビレが妙に貧弱になってきた気がしてなりません。あまりに「180度の尾ビレ」にばかり固執しすぎて、背ビレや他の部位の形状には眼をつぶってきた弊害なんでしょう。尾ビレばかり立派で背ビレが貧弱なハーフムーンよりも、すべての部位がハイクオリティのスーパーデルタの方は、少なくとも鑑賞面では遥かに上だと思います。 ハーフムーンの作出もしくは系統維持を狙うには、当然の事ながらハーフムーンのペアを用意する事が大前提となります。オスの方は外見からかなり容易に種親の選択が可能なのですが、メスの方はなかなか決め手となる外見上のポイントが少ない為、自家系統ならばともかく「これぞハーフムーンのメスっ!」とわかる個体を他から入手するのは結構大変です。どちらかと言えば、ロングフィンタイプよりもプラカットのメスの方が尾開きがはっきりと判る傾向があるため、メスには「プラカットかも?」と言う尾開きの良い個体をチョイスするのも一つの方法でしょう。一応、理論上はロングフィン×ショートフィン(共にホモタイプとして)の子供はセミロングフィンになる筈ですから、その子供世代以降で片親(オスの場合が多いか)にハーフムーンを用いていれば、数世代後にはかなりちゃんとした?ハーフムーンの系統になると思われます。・・・と、これはバンコクのベタブリーダー達が良く用いる交配テクニックでした。
2013/07/26
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デルタテール~スーパーデルタ ハーフムーンが作出される前段階としてトラッド(ベールテール)から改良されたタイプで、尾ビレが三角形に開きます。これがかなり180度に近いレベルにまで開く個体をスーパーデルタと呼びますが、このデルタテールとスーパーデルタの間に明確な線引きがある訳ではありません。いつも言っている事ですが、改良ベタは所詮同一種にすぎませんから、トラッド=デルタテール=スーパーデルタ=ハーフムーンはそれぞれが独立した品種なのではなく、連続したものでありそれぞれの間の明確な境界線はありません。従って、「尾ビレの開きが何度以上からがスーパーデルタ」と言う決まりはありません。ハーフムーン以上になると、実際には尾ビレの上下端の軟条の形状などに相違が認められるのですが、それでも「ハーフムーンの尾ビレの資質を持ちながら、実際の尾開きは140度程度」なんて個体もざらですから、このような個体をそのポテンシャルだけでハーフムーンと呼ぶのは如何な物かと思いますし、やはデルタテールと区分すべきでしょう。 ハーフムーン全盛となった現在では、デルタテールの個体を見かけることはかえって稀になりつつあります。もっともポピュラーなのがスーパーデルタと言う事になるでしょうか。ハーフムーン同士のペアリングでも、すべての次世代がハーフムーンになる訳ではなく、かなりの率でスーパーデルタやデルタテールになってしまいますから、どうしてもデルタテールが入手したければショーベタを自家繁殖する事でそれは可能になります。
2013/07/24
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クラウンテール 尾ビレの軟条が伸長し、尾ビレ全体が王冠(Crown)の様に見える系統をクラウンテールと呼びます。一応、コンテストの基準としては最低でも「尾ビレの軟条の1/3以上は、糸状に伸長していなければならない」、つまり全体の1/3以上は尾ビレの切れ込みが必要とされています。実際に、ショーベタなどの非クラウン系の品種との交配では、切れ込みの浅い個体が生まれてきます。 通常、我々がよく目にするクラウンテールはデルタテールベースのもので、尾ビレは余り大きく開きません。しかし、中には扇形~ほぼ180度近くまで尾ビレが開く系統も存在し、これらはショークラウンと呼ばれ、バンコクの市場でも区別されています。この、ショークラウンはクラウンテールにショーベタの血を導入し、いったん尾ビレの切れ込みが浅くなった物を計画的に累代繁殖させ再びクラウンテールに戻した物なので、その辺のクラウンテールをいくら繁殖させても、そう簡単にはこの様な素晴らしい尾開きは獲得できる物ではありません。 また、クラウンテールの尾ビレの軟条は通常2レイ(2つに分岐)なのですが、ショークラウンの中にはショーベタ同様3レイ(3つに分岐)の個体も存在します。中には、ハーフムーン同様4レイ(4つに分岐)する個体もありますが、これは現時点では非常に希少でハーフムーンのショーベタなどよりも余程入手が困難です。 それと、このクラウンテールという形質はロングフィンと連動している訳ではないようで、ショートフィンであるプラカットにもクラウンテールの個体が存在します。ただ、ショートフィンと言う性質上、軟条は著しく伸長せずに尾ビレの外縁がギザギザになっているかの様な外見です。 最近になって、このクラウンテールには新しい尾ビレの形状を持った系統が作り出される様になりました。尾ビレの伸長した軟条の先が外側に反り返り、上下の軟条の先端部分と交叉するようになるタイプで、キング・クラウンと呼ばれています。まだ、市場に出回る事も少なく入手は困難で、販売価格もハーフムーンのショーベタを遥かに上回る高額で取引されています。
2013/07/23
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ベールテール(トラッド) 尾ビレがベール状に伸長するタイプで、我が国では古典的品種と言う意味でトラッド(Traditional)と呼ばれています。一般的に熱帯魚ショップで見かける改良ベタはほとんどがこのタイプで、値段も安価です。このタイプの個体は、どんなにフレアリングをさせても尾ビレが扇状もしくはそれ以上に開く事はありませんが、その点を除けば十分観賞価値の高い改良品種だと思います。 タイやシンガポール、インドネシアなどの改良ベタの産地でも生産が楽(日常のフレアリングの必要がない)な事から、物凄い数が量産されています。市場価格が安い事から、あまり色彩ごとの系統維持はなされていないようですが、その事が逆にこのカテゴリーに物凄く豊富なカラーバリエーションをもたらしました。バンコクでこのタイプを仕入れる事は基本的にありませんが、時折本当に驚愕するような物凄いカラーリングの個体を見かけたりします。 色彩的には非常に魅了的な系統ですが、このベールテールと言う形質は遺伝的にかなり優性な様で、ハーフムーンと交配すると次世代以降は片親がどんなに素晴らしいハーフムーンであっても確実にベールテール化しますので、両者の交配はショーベタブリーダーとしては避けた方が無難です。 ところで、この原稿を書く段になって初めて気が付いたのですが、トラディショナルの画像1枚も所有していませんでした(苦笑)。バンコクで物凄いカラーリングのトラッドとか見かけると結構購入してきているのに、なんて事でしょう!仕方がないので、今日の画像はバンコクのとあるショーベタ専門店の販売用水槽で済ませてしまっております。
2013/07/22
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プラカット 各ヒレが伸長しないショートテールタイプをプラカットと呼びます。元はタイ語の「プラー(魚)+カッ(噛み付く)」から着た呼び名で、プラガットと呼ばれる事もあります。タイ語を無理やりカタカナ表記している訳ですから、どちらの呼び名でも間違いとは言えないでしょう。ちなみに、タイ人の発音を聞いている限りでは、最後の「ット」と言う部分は発音しない様ですから、どうしてもタイ風を気取りたければ「プラーカッ」とお呼びになるのがよろしいかと(笑)。 野生種のスプレンデンスと同じ様な体型なので、精悍なイメージが強い品種です。反面、ショーベタなどロングフィンタイプに較べると優雅さと言う点では少々劣るのはいたし方ありません。ただ、ショーベタに較べるとヒレが破けにくく維持管理が楽な点や、ショーベタほど品種の純系と言う物に拘らない自由な交配が出来る分、非常に豊富なカラーバリエーションを誇ります。 元々は原種同様の扇形~長楕円形の小さめの尾ビレを持っていますが、現在ではハーフムーンとの交配で、ショートフィンながらも大きめで180度前後尾ビレが開く、ハーフムーン・プラカットが主流です。タイでは我が国と違いロングフィンタイプよりも、このプラカットタイプの方が人気が高く、クオリティの高いハーフムーン・プラカットはショーベタよりも高額で取引されています。特にメスの逸品個体はオスよりも高額で出回ればまだましな方で、基本的にブリーダーは「種親候補レベルのメス」は門外不出です。 また、最近ではダブルテール・プラカットやクラウンテール・プラカット(ショートフィン・クラウン)など、プラカットのヒレの形状もバリエーションが増えてきています。それと、ロングフィンのスペードテールとの関連性は判りませんが、プラカットにも確実にスペードテールの個体が存在します。
2013/07/21
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改良ベタのヒレの形状による区分 それでは、まず改良ベタのヒレの形状で分類した品種解説をはじめたいと思います。前で説明したように、「改良ベタはすべて同一種」なだけに、それぞれの品種の間に明確な境界線がある訳ではありません。例えば、今日の画像の個体はハーフムーンのオペックホワイトにショークラウンのメスを交配したF1です。以前、なかなか良質のホワイトのショークラウンが入手できなかったので、ならば自家生産!とばかりにチャレンジした時のものです。あっ、ちなみにこの試みはF2迄で敢え無く挫折いたしました(笑) この画像をご覧いただけるとお判りのように、ハーフムーンとしてはヒレ先がギザギザだし、ショークラウンとしてはヒレの切れ込みが不十分と言う中途半端な個体になっています。中学の生物の時間で「メンデルの優性の法則」って奴を習ったと思いますが、それによると「1組の対立する形質を持った両親から生まれた子供は、両親どちらかの形質のみが現れる」となっています。この時に、次世代に出現する形質を「優性」、外見上は出現しない形質の方を「劣性」と呼ぶ奴です。でも、実際には「優性の法則」に従わないケースなんてざらです。最近では、メンデルが「優性の法則」を発見出来たのは、研究材料にエンドウ豆を選ぶと言う幸運があったからとされています。 良く知られた所では、「オシロイバナの赤花と白花で交配すると、次世代はピンク色の花になる」と言う奴があります。このようなケースを不完全優性とか中間雑種と呼びます。同じように、ノーマルフィン(ヒレがギザギザしていないタイプ)とクラウンテールもこの不完全優性なのだと思われ、両者の交配ではどっちつかずの子供が生まれてくると言う訳です。メンデルだって、実験材料にオシロイバナ選んでたら、「優性の法則」導き出すのは並大抵の事じゃなかった・・・と言うか、科学的調査方法のなかった次代だった訳ですから、発見不可能だった気がします。 今日の個体に、ノーマルフィンの片親を交配すれば、孫世代ではギザギザがより小さくなりますし、クラウンの片親を用いればより切れ込みが深くなると言う訳です。例えば、3世代位片親にノーマルフィンを用いて累代繁殖させると、生まれてくる子供は「見た目はほぼノーマルフィンだが、ヒレの縁が僅かにギザ付いている個体」になります。このレベルになると、その個体をノーマルにすべきかクラウンに区分すべきかもう判断のしようがありません。 また、前述の様に、品種改良の過程で品種間交配は頻繁に行われていますから、目の前の品種が本当のところどんな品種なのかは、残念ながら調べようがないのです。まぁ、あんまり生真面目に考えずに「見た目がすべて」と言う事で、済ましてしまいましょう(笑)。どうしても気になるならば、その個体を研究施設に持ち込み、無理をお願いして&物凄い莫大な費用を払ってDNA鑑定してもらうしかないでしょうねぇ。もちろん、その個体は死んでしまいますけど。仕方がありませんから見た目がハーフムーンならば、過去にプラカットの血が導入されていようが、クラウンがかかっていようが、マイペンライッ! それでは、次回から「ヒレの形状による品種」解説各論に入って行きたいと思います。
2013/07/19
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改良ベタの定義 さて、先週えらそうに前振りしておきました様に、今週から頑張ってこのブログ再開させていきたいと思います。テーマは「改良ベタ」について・・・もう少し判りやすく言えば、「改良ベタって何?」から「どんな品種がいるの?」「飼育管理の方法は?」「繁殖させてみたい}の様な、ベタに関する様々な情報を頑張って網羅してみたいと言う訳です。とは言っても、かなり独断と偏見が入り混じっておりますので、駄文にお怒りの際は平にご容赦を(笑)。 まずは「改良ベタとは何ぞや?」と言う所から解説していきましょう。改良ベタと呼ばれる物は、ハーフムーンもプラカットもクラウンテールだってダンボだって、みんな一緒の種類です。元になった原種はベタ・スプレンデンス(Betta splendens Regan,1909)と言うワイルドベタで、タイやマレー半島辺りに広く分布するバブルネストビルダー(泡巣タイプ)のベタです。 この原種スプレンデンスが、むやみやたらにテリトリー意識が強く同種のオスに対して非常に攻撃的な面に着目して、賭け事つまり「闘魚」として楽しんだのが、ベタ飼育の始まりだったと言われています。もちろん、最初の内は「とにかく強けりゃよしっ!家族の生活かかってるんだから、見た目なんてどうでもマイペンライ!」って言う感じだったでしょう。現に現在の「闘魚」用のベタも、こげ茶ベースの物凄くバッチイ個体です。しかも、唇なんて相手に噛み付きやすいように「タラコ唇」だし。 でも、この「少しでも強い個体を作りだしたい」と言う切実な男達の(実際には結構オバチャンも熱くなって参加してる)願いは、強い系統同士の累代繁殖につながり、それが副産物的にそれぞれの系統が特有の外見を持つようになっていったのが、ベタ改良の始まりだったと思われます。 ある時期からは、ベタの持つ多色性に着目し、観賞魚としてカラーリングの妙を楽しむ人々も出てきたでしょう。実際、タイ王朝でも貴族や王様の趣味としてベタの飼育がなされていたと言う記録が残っています。 そんな観賞価値の高いベタがアメリカに観賞魚として輸出されるようになった、1900年代前半にアメリカでヒレの長いベタが突然変異として出現したと言われています、たぶん(真偽の程はよく知りませんが、巷ではそういう事になってます)。 そこから、ベタのカラーリング&形状の両面からの改良が続けられ、現在のように多種多様なバリエーションを有する観賞魚にのし上がったと言う訳です。 そんな多分に想像の領域が多いベタ改良の歴史を読んできたならば、もうお判りのように「改良ベタはすべて同一種」です。例えるならば、チワワとセントバーナードとダックスとチャウチャウは生物学的には、同じ種類「犬」と言うのと同じ事です。従って、見た目とか系統の純度を考えないのであれば、これらの品種間の交配は遺伝的な障害(遺伝的隔離)は存在しないと言う事です。 よく、「ハーフムーンにプラカットのメスを交配するなんて馬鹿げている。うちのベタは一度もプラカットの血なんて導入された事の無い純系」とか言う話を聞きますが、それはその飼育者が知る範囲でのお話であって、改良ベタのウン千年?の歴史を遡れば、結局の所同じ原種ベタにたどり着く訳ですから、「プラカットの影響の無いハーフムーン」なんて話は、生物学的には噴飯物です。もっとも、形質の異なる品種同士を交配すれば、中途半端な子供が生まれてくる事が大部分ですから、ある程度のレベルに達したベタブリーダーにとっては、安易な品種間交配は特別な目的が無い限りは忌むべきなのは間違いありません。犬のブリーダーだって、チワワ×セントバーナードなんて、絶対試したくないはずですからねぇ。子供とっても売れないし・・・って言うか、体格的にこの2品種の交配は可能なんでしょうか?? そうそう、蛇足ではありますが「交配」と「交雑」をここでは以下の様に区別しております。「交配」=生物学的には同一種の、品種間の繁殖「交雑」=生物学的に別種間での繁殖 と言う訳で「改良ベタの繁殖」は、それがプラカット×ハーフムーンだろうが、ダンボ×クラウンテールだろうが、すべて同一種間での繁殖と言う事なので「交配」と言う事になります。
2013/07/18
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形状による区分 クラウンテール 今まではヒレの長さで改良ベタを分類してきましたが、ヒレの形状の異なる品種も存在します。今日登場のクラウン・テールは、各ヒレの軟条部分がヒレの膜部分より突出し、尾ビレが王冠(CROWN)の様な形をしていることから、その名前が付けられました。一般的に見かけるのはロングフィンタイプですが、プラカットのクラウン・テールと言う奴も存在します。ただ、シュルシュルと長く伸長したヒレの軟条が売りな訳ですから、プラカットではその特徴が十分に生かされてるとは言い難いようです。 同じクラウンでも、トラディショナルベースのタイプと、より尾開きの良好なデルタテール、スーパー・デルタベースのタイプがあり、一応後者はショークオリティのクラウンと言う事で「ショークラウン」と呼ばれています。ただ、デルタ~スーパー・デルタ~ハーフムーンの所でも述べた様に、両者に明確な境界線が存在する訳ではありません。理論上はハーフムーンタイプでも作出可能な筈なんですが、今の所そこまでのレベルの個体は市場には出回っていないようです。 「クラウン」と言う形質は、遺伝形質なので代々受け継がれていきます。片親に非クラウン、もう一方の親にクラウン系の個体を用いると、その子供は軟条の伸び方が今一なクラウンになります。つまり、不完全優性って事です。バンコクのブリーダーは、ショーベタの形質をクラウンに取り込む為に「ショーベタ×クラウン」の交配を盛んに行っています。生まれてきた第一世代は、ヒレの軟条の伸びが十分ではない為、市場価値はほとんどありません。次にそのF1にクラウンテールの片親を交配し・・・って何代か続けて行くと、最終的にショーベタの形質を表現するクラウンが出現すると言う訳です。 ただ、逆に「クラウンの形質をショーベタに取り込む」のはやめておいた方が無難です。代を重ねるに従って軟条の突出は短くなっていきますが、相当長期間に渡ってショーベタの片親と戻し交配したとしても、そう簡単にクラウンテールは消えてくれませんから。 ショーベタに比べ、ヒレが育成途中でボロボロになってしまう事もほとんどない為、ブリーダーの労力もずいぶんと楽なものとなります。その分、市場価格も安いので、ショーベタブリーダー達はあまり積極的にこの品種を扱う事はありません。
2012/02/21
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形状による区分 オーバー・ハーフムーン 人間の欲望なんて止まる所を知りませんから、ハーフムーンでもまだ満足できないんですねぇ。ついには、尾ビレの開きが180度を越えてしまう個体が登場する様になりました。これがいわゆるオーバー・ハーフムーン(OHと略)です。ただ、尾ビレの軟条の分岐数や構造はハーフムーンと変わるところはありません。独立した系統と言うよりは、ハーフムーンを生産すると、中に何%かオーバー・ハーフムーンが混じっていると言う感じです。 世のショーベタマニアの方からの反感を覚悟で言わせていただければ(笑)、「オーバー・ハーフムーンなんて自己満足用の無用の長物」です。だって、ハーフムーンでさえそうでしたが、せっかく尾ビレが180度以上に開いたって、背ビレや尻ビレの後端部分と重なっちゃいますから、鑑賞面ではハーフムーンと、いや経論を言えばフォルムだけならスーパー・デルタとまったく変わりありませんから。さらに、必要以上に開いてしまった尾ビレが背ビレや尻ビレとぶつかり合って、各ヒレの奇形や裂傷を招くケースもしばしば見受けられます。 別に尾ビレが思い切り開くことに対して否定的な訳じゃありません。例えば、「土佐金」の尾ビレなんて芸術品だと思いますし、個人的にもっとも好きな金魚のひとつですから。あれは、他のヒレや体の部位にダメージ与えたりせず、独立して素晴らしい形状を見せてくれますから。要は、「鑑賞面から考えてプラス」になる変化かどうかが私にとって、その「改良」の是非を決めるポイントなんです。もちろん、形状や色彩に関する好みは人それぞれですから、他の方がどの様な判断を下そうとそれ自体文句はまったくありませんけど。 まぁ、販売する側から見ればオーバー・ハーフムーン=超高級品っていうイメージが定着してますから、より高額で販売できるって言うメリットがあるのは確かでしょう。また、一部の「他人に自分のベタを自慢する事に生きがいを感じているマニア」にとっては必須アイテムなのかも(笑)。 ただ、「ハーフムーン嫌い?」の偏屈な店主が経営するおさかな逸品堂では、すべての個体は「スーパー・デルタ」と言う名称で販売しています。後は、お客様がご自身で、スーパー・デルタなのかハーフムーンなのか、はたまたオーバー・ハーフムーンなのかご判断いただければという訳です。だって、みんな同じ親から生まれてきてる個体ですからね~。 ただ、一つだけ言える事は、例えオーバー・ハーフムーンになる素質を持った個体であっても、育成管理が十分でないと尾ビレは180度以上に開いてなんかくれません。そういう意味では、オーバー・ハーフムーンの個体は、それまでブリーダーが丹精込めて日夜育成に励んできた証であると言う事は言えるでしょう。
2012/02/16
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形状による区分 ショーベタ ハーフムーン2 前回の記事をご覧になると、私が「ハーフムーンに否定的」と取られてしまうかもしれないので、一応アフターフォローを(笑)。基本的に、私のショーベタに対するコンセプトは「ショーベタは形と色彩の両面から評価すべき。その割合はあくまでも半々が理想」と言うものです。つまり、別に「ハーフムーンを否定している」のではなく、「ハーフムーンであるかどうかばかり強調されがちで、色彩面からの評価がおざなり」の現状に対して文句があるだけですから。コンテストでも「その辺にゴロゴロいるカラーのハーフムーンに、尾開きはいまいちだけどカラーリングは絶品の個体」が勝利を収めたっていいんじゃないかと思います。そんな事やってるから、いつまでたっても同じようなカラーリングのショーベタばっかり巷にあふれ、せっかくショーベタホビーを始めた方も、しばらくすると飽きて別の趣味に移ってしまう事になるんだと思います。金太郎飴状態じゃね~。 そんな考えから、私がバンコクでベタを仕入れる際は「色彩面を第一に優先して」個体をセレクト」してます。もちろん、最低限のレベルのフォルムはキープしますが、皆さんに「ベタってこんなに色んなカラーリングの奴がいるんだぁ」って言って貰いたいから。これがフォルムにこだわって仕入れすると、どうしても同じようなカラーリングの個体ばかり揃っちゃうんですよね。それに、新しい品種にチャレンジしているタイのブリーダー達の少しでも力になれたらいいなって言う事も、ちょっとだけ生意気にも考えたりしてます。 ところで、今回の画像の個体ですがよく見ると尾ビレの分岐は2回(3レイ)にすぎません。つまり、スーパー・デルタやハーフムーンの基準を満たしてないんですが、どう見てもハーフムーンレベルの尾開きでしょ?要するにハーフムーンじゃなくたって観賞価値の高い個体は存在するって言うのはこう言う事です。 ただ、ハーフムーンとそうでない個体には、本来もう一つ明確な違いがあるんです。基本的に「ハーフムーンの個体の尾ビレ上下端は鋭角にカットされている」ものとされています。つまり本当の意味でも「半円」って事で、マニア辺りは通ぶって「ピン角」とか呼んだりします(笑)。それに対して非ハーフムーン系の個体では、この画像の個体の様に、「尾ビレ上下端が丸みを帯びている」のが普通です。ちょうど「怪物君の耳」みたいな形してます。 まぁ、「完璧な半円」であろうと「怪物君の耳」だろうと、鑑賞面ではたいした違いはありません。どっちにしろ、この部分は最近のショーベタでは発達した背ビレ・尻ビレの後端と重なり合っているので、その形状は良く見えませんから。ただ、ハーフムーンの系統を自分の所でキープしたいならば「ピン角」のタイプを選ぶようにしないといけません。
2012/02/14
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形状による区分 ショーベタ ハーフムーン それでもって、尾ビレの開き具合に対する追求は更なる高みを目指します。すでにスーパー・デルタでかなりの開きを獲得した尾ビレはついに、半円つまり180度まで開くハーフムーンにまで到達しました。ハーフムーンと言う言葉を私が耳にしたのは今から20年以上前の事ですから、品種としてはそれほど新しいものではありません。当時、スイス在住のラジフと言うアマチュアのベタ愛好家がブラックのハーフムーンを持っていて、その写真を見て心の底から驚愕した覚えがあります。 もちろん、半円状に開く尾ビレにも驚愕したのですが、実は当時私はショーベタのソリッド・ブラックに夢中でして、私の温室内はソリッド・ブラックの成魚や稚魚で一杯の状態でした。それでも、まだスーパー・デルタにまで到達していませんでした。当時は、スーパー・デルタの尾ビレを有する品種はソリッド・ブルー、マルチカラー辺りに限定されてました。もちろん、ただでさえ作出難しいソリッド・ブラックなんてせいぜいデルタ・テールの中では良好な尾開きっているレベルが関の山。・・・それを、ラジフったら既にハーフムーンレベルで持ってるなんて・・・。もちろん、当時のアメリカIBCのコンテストでは、ラジフ氏のハーフムーンのブラックが連戦連勝で向かう所敵なしって状態だったようです。 その後、ハーフムーンと言う形質は様々なカラーリングの品種に移植され、いくつかのルートで我が国にも入ってくるようになりました。でも、その当時、ラジフ氏に打ちのめされた私はスゴスゴとショーベタ界から脱落して「水草レイアウトの中を美しく泳ぐ小型カラシン&コイ科魚類の世界」に行っておりました・・・って、家族に言わせりゃ「社会復帰」とか「更生」って言うそうです(笑)。 今ではすっかりハーフムーンがショーベタの代名詞的存在になっております。人によっては「ハーフムーンにあらずんば、ショーベタにあらずっ!」って言い切る人まで。・・清盛じゃあるまいし(苦笑)。確かに、ハーフムーンは観賞価値から言えば、ほぼ完成レベルと言えるでしょう。ただ、実際にはスーパー・デルタとハーフムーンの間に明確な境界線がある訳ではありません。一応「尾ビレが180度開く個体がハーフムーン」って言う定義がありますが、じゃあ、179度開くスーパー・デルタとハーフムーンの区別付く人がこの世に存在するのでしょうか?170度の個体だって素人目にはよく判りません。要するに「ハーフムーン」って言った方が、販売するのに都合が良いって言う、「業界サイドの都合」レベルの違いです。 厳密に言うと、スーパー・デルタ以上の個体は尾ビレの軟条(うちわの骨みたいな奴)が3回分岐(4レイ)してるんですが、この最初の分岐がハーフムーンでは尾ビレの根元により近い場所で起こっていて、結果として分岐した各軟条の長さがほぼ等しく見えます。この様な状態で軟条の分岐が起こると、それだけ尾ビレを開く力が強固になり、結果として180度まで開くって訳です。でも、明らかにハーフムーンの軟条保有しているのに尾開きはいまいちって言う個体も存在します。こりゃ、若魚期のトレーニング不足ですな。また、軟条の分岐がハーフムーンレベルではないのにもかかわらず、なぜか180度の尾開きを実現している個体も存在しちゃったりします。 要するに、馬鹿の一つ覚えみたいに「ハーフムーン、ハーフムーン!」ってお題目を唱える必要なんてないって事です。販売側が「これはハーフムーンですっ!」って言ったからそれを盲目的に信じるって言うのも、これまた愚かな事です。ご自身の目で見た事実を、自信を持って信用しましょう。誰がなんて言おうと、あなたがハーフムーンって信じた個体は、間違いなくあなたにとってのハーフムーンなんですから。それに「ハーフムーンの小汚い個体」と「スーパー・デルタの見た事もないほど美しいカラーリングの個体」とどちらがショークオリティが高いというのでしょう。少なくとも作出難易度で考えれば、ハーフムーンの個体は「カラーリングにこだわらなければ、両親にハーフムーン個体を使用する事で」、サルにだって作出可能です。 ちなみに、ベタブリーダー達もスーパー・デルタとハーフムーンを厳密に区別していません。・・・って当たり前の事で、たとえハーフムーン同士で交配しても、100%ハーフムーンの子供が取れる訳じゃありませんから。元は同じスプレンデンス種ですからね~。同じ両親から得た子供が成長した後に、「これは尾開きがいいからハーフムーン」とかやってるだけの事。もちろん、スーパー・デルタの個体だって、もったいないからそのまま市場に出しちゃいます。最近のバンコクでは「ショーベタ=ハーフムーン」って言うのが常識で、お店に行って「ショーベタ欲しいんだけど」なんて言おう物なら、「うちにはハーフムーンしか置いてないよっ!」って言い返されちゃいます。たとえ、その店の個体のレベルがデルタ・テールに毛が生えたようなレベルであっても、奴らは自信満々に「ハーフムーン」って言い切ってます。そして、驚いた事に販売価格は基本的に同一店舗内であれば、同じ品種は個体のレベルに関係なくどれも一緒です。・・・さすがタイ人(笑)。 結論としては「ハーフムーンと言うのは非常に素晴らしい形質だが、盲目的に崇め奉るのは商業戦略に乗せられた愚か者のする事。あくまで自分の目で判断し、気にいった個体をチョイスすべし!」って事になるでしょうか。
2012/02/14
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形状による区分 ショーベタ スーパーデルタ さてさて、ロングフィンベタの「尾開き」に関する改良はとどまる所を知りません。今から20年以上前には、前回のデルタテールから、さらに尾開きの良くなった「スーパー・デルタ・テール」が登場して来ました。我が国にも、当時アメリカからスーパーデルタの個体が持ち込まれ、我々ベタマニアの度肝を抜いたもんです。当時のスーパーデルタは、ソリッド・ブルーの個体がメインだった気がします。 このデルタ・テールからスーパー・デルタへの移行は、ベタに興味がない人にとって見れば「別に、少々尾開きが良くなっただけでしょ」と言うレベルの話だと思います。しかしながら、ベタマニアにしてみるとそれこそ驚天動地の出来事だったのです。・・・と言うのも、尾ビレにウチワで言う所の骨みたいな奴がありますよね。これを鰭条(レイ=ray)って言うんですが、それがデルタ・テールまでの改良ベタの尾ビレは3レイつまり、2回分岐している状態だったのですが、スーパー・デルタでは4レイ、つまり分岐の回数が3回になっていたんです。分岐の回数が多ければ多いほど鰭を広げる力が強くなり、結果としてどんどん尾開きが良くなっていくと言う仕組みです。 ショーベタの理想のフォルムは、「ほぼ円形に近い楕円形」とされていますが、デルタ・テールまでは尾ビレと背ビレ・尻ビレの間に隙間があり、理想のフィルムにはなっていませんでした。しかし、スーパー・デルタの登場で、尾ビレが半円近くまで開く様になり、この隙間がなくなる事でほぼ理想のフォルムを獲得したと言う訳です。 たんなる尾開きの角度で見ればデルタ・テールとスーパー・デルタの間に、明確な境界線はありません。「何度からはスーパー・デルタっ!」って決まりありませんしね。それにスーパー・デルタの個体でも日常管理が下手だと尾開きが悪くなり、デルタ・テールよりもしょぼい個体になっちゃいます。でも、尾鰭の分岐数では、明確な差異が認められるという訳です。
2012/02/11
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形状による区分 ショーベタ デルタテール プラカットに関しては前回まででざっと形状による区分を説明したので、今日からはロングフィンタイプに移りましょう。もともと改良ベタの原種であるスプレンデンス種(Betta splendens)は、前述の様にプラカット同様ヒレが短いものでした。それが、アメリカでヒレの長い突然変異が個体されたのが、ロングフィンタイプの始まりとされています。もっとも、当時アメリカで愛好されていたりビィベタと言う系統と今の系統がまったく同じものなのかどうかはよく判りません。 現在、一般的な熱帯魚ショップで単に「ベタ」として、コップや小型容器に収容されているロングフィンタイプのベタを、古典的品種と言う意味から、ショーベタマニアは「トラディショナル・ベタ」もしくは「トラッド」と言う呼び方をします。このタイプは、ヒレがほぼ同じ幅のまま長く伸長するのが特徴です。中には、ヒレの中ほどがやや大きく広がって、ヒレ先に向かって再度すぼまっていくと言う形をしている個体もいます。 実は、本来「トラディショナル・ベタ」だけで一回分の原稿をって考えていたのですが、なんと!手元に「トラッド」の画像が一枚もありません(苦笑)。仕方がないので、この系統に関してはサラッと流してしまう事にしましょう。 これに対して、同じロングフィンタイプでも尾ビレが三角形の形になっているのを「デルタ・テール」と呼びます。一応、「ショーベタ」と言う名称を名乗れるのは、最低限この「デルタ・テール」からって言う事になるんじゃないでしょうか。 一般的には「デルタ・テールはトラッドが更なる改良を加えられて作出された」と言う説が支配的ですが、「元々、アメリカでロングフィンが作出された時からデルタ・テールであり、このタイプがベタの本家本元であるタイに逆輸入された後、トラッドの尾ビレの形状になった」と言う説を唱える人もいるようです。ロングフィンタイプ作出初期のアメリカのベタのモノクロ写真を見る限りでは、すでにデルタ・テールの様な気がしますし、個人的には後者の説の方は真実なんじゃないかなって思います。まぁ、いずれにしてもこのデルタとトラッドの関係は、グッピーで言う所のデルタとベールテールの関係みたいなもんじゃないでしょうか。 よく、トラッドを一段低く見る人がいますが、私個人はそうは思いません。バリバリの血統書つきの猫とその辺にたむろしている、尻尾がカタツムリ状にグルグルの野良猫と、可愛さに差があるとは思いません。所詮趣味なんですから、いつも言うように「本人が気にいっていればそれでよしっ!」だと思います。ただ、コンテストでは「ベタの尾ビレは開けば開くほど良い」と言う「共通認識」の下で互いに競い合うものなんですから、そこにお気に入りのトラッド持ち込んで、「なんで俺のトラッドの方が評価が低いっ!」って駄々をこねるのは恥ずかしいのでやめましょう・・・って、いないかそんな奴(笑)。 それと、この「トラディショナル」の血は余程強力らしく、最高レベルのハーフムーン個体であっても、このトラッドと交配すると、次世代は見事な程尾開きが悪くなり、しかも後々後世まで影響を受けます。ちょうど「坊主を殺せば七代たたる」みたいなもんです。どんなに優れたカラーリングの個体であっても、コンテストを目指す人はトラッドの血を導入するのは避けた方が無難です。それなら、プラカットを交配した方がはるかにましです。
2012/02/09
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形状による区分 プラカット バランス悪し 最近バンコクのプラカットの中に妙な個体を良く見かけます。今日の画像の様な個体で、どこが変かと言うと尻ビレだけが妙に伸長しちゃってます。最初は「プラカット×ショーベタで生じた、ヒレの伸び具合の今一なショーベタ」って考えていましたが、念のため入手した個体を数ヶ月飼い込んで見ましたが、尻ビレ以外のヒレはいつまでたってもプラカットそのものでした。つまり尻ビレだけが伸長する系統って事なんでしょう。 どこか特定のヒレだけが通常よりも伸長するのは他の観賞魚でも良く見かけます。セイルフィン・プラティとかね。この尻ビレだけが伸長するプラカットがどの様な経路で出現したのかは判りませんが、かなり頻繁に目にする以上、遺伝形質と考えてよさそうです。でも、セイルフィンとかの場合は、なんだか素敵なフォルムになるのに、なぜか尻ビレだとアンバランスに見えちゃうもんです。少なくとも私は好みません。 サンプル的な購入以外は、意識して仕入れないよう心がけているので、逸品堂でこの系統が出回る事はほとんどありません。・・・ほとんどって書いたのは、若い個体等では通常のプラカットと区別が付きにくい為、稀に仕入れてきちゃうことがあるからです。もちろん、気が付いた際は販売しない様にしていますが、どうもこの「尻ビレ伸長」は、その程度に幅があるようで、通常よりもちょっとだけ長いって言う個体もいるので、判断に苦しみます。まぁ、このフォルムの是非は飼育者個々が判断すればよい事であって、闇雲に否定するべきではないとは思いますけどね・・・ この特徴はオスだけではなくメス個体でも見られるので、おそらくは常染色体上の遺伝なんでしょうね。さらに驚くべき事に、この特徴はショーベタにも出現するようです。最近のショーベタの中には尻ビレだけが通常よりもさらに伸長する個体が結構良く見られます。「ショーベタ=ロングフィン」だから、ヒレが長い方がよいかと言うとどうもそうでもない様で、全体のバランスが悪く美しいフォルムにならないので、あまり好まれない傾向にあるようです。ただ、バンコクのベタブリーダーの多くは、尻ビレだけが特に伸長する事について特に問題視していないようなので、これからもこの系統は増え続ける気がします。
2012/02/07
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形状による区分 プラカット スペードテール プラカットの尾ビレは通常は半円形。つまり縁が円を描くように丸みを帯びているものです。これは、改良の元になったスプレンデンス種(Betta splendens)がそうなんですから、当たり前と言えば当たり前の事です。しかし、今日の画像のように、後縁中央付近が突起したスペード型の尾ビレを有するプラカットをバンコクでは時折目にする事があります。 10年ほど前から、ほぼ毎月の様にバンコク入りし、その度に数百尾のベタを持ち帰ってすべての個体を撮影している訳なので、手元には数千個体分の画像のストックがあります。改めて確認してみると、この様なスペードテールのプラカットは圧倒的に黒~黒褐色の地色の上にメタリックな輝点が散在するカラーパターンの品種が多いようです。また、大部分の個体は通常のプラカットに比べてやや細身の体型をしているようです。その理由として一番妥当なものは、「ブラックボディにメタリックなスポットと言うパターンを非常に好むブリーダーの所でたまたまその様な尾ビレを有する系統を維持しているから」って言うものでしょう。 ・・・でも、これじゃあ夢がないって言うか、つまんないんですよね~。これが研究者だとうっかり推測で物を言えない訳ですが、私ってば「単なる一愛好家だもんね~」(笑)。あくまでも根拠レスの個人的見解に過ぎないのですが、このスペードテールを有するプラカットの作出には品種改良のある時点で、スプレンデンス種以外の血が導入されているんじゃないでしょうか。 本来、異種間交雑をするとDNAの相違などから様々な障害が生じ子供世代は取れても、孫世代は生まれてこない(生殖的隔離)って言うのが通説です。ライオンとトラの合い子であるライガーとか、ロバとウマの交配種であるラバとかみたいに。そうする事で、自然界で異種間交雑が万が一発生しても、その度に新たな種が生じないような仕組みになっているんですね~。自然の摂理って奴なんでしょうか。 じゃあ、「スプレンデンス種×近縁種のベタ=スペードテールって言うのも品種としては成立しないじゃん!」って言う事になっちゃうんですが、なぜかスプレンデンス種とその近縁と考えられているインベリス種やスマラグディナ種との交雑は、異種間交雑にもかかわらずその後も累代繁殖できる事が判っています。・・・って、これって別種じゃないってことなんじゃあ?まぁ、常識的に考えればこの3種のベタは別種ではなく、亜種レベルの相違と考えるのが妥当だと思います。外見の違いなんて種の区別には何の役にも立ちませんからね~。ダックスとセントバーナードが犬と言う同一種だなんて外見からは絶対に判らないのと同じです。 でも、一応この3種のベタは「別種」と言う事になっています。まぁ、当然研究者の方々が外見的特長・遺伝的特徴・地理的条件などあらゆる角度から検討し下した判断なんでしょう。別種ならば、それぞれの記載者の名前が種小名の後に記載されるけど、亜種だとその亜種記載した研究者の名前は後世に残らないから別種の方がいいっ!とか言う、事情じゃないって事を信じたいもんです。 それでもって、本題に戻ると「スペードテールのプラカット」を作出する際にうってつけと思われる、スプレンデンス種の近縁ベタがいるんですよっ!バンコク近郊の都市マハチャイ周辺に生息する「ベタ sp. マハチャイ」って奴です。ちなみ「sp.=(speciesの略)」って言うのは未記載種って言う事です。つまり、「まだ新種なのかどうか正体ははっきりしないけど、ひとまずこんな奴がいましたぁ!それでもって一番最初に発見したのは俺だからねっ!!」と言う、研究者の学会に対するお手柄の自己申告みたいなもんです。もっとも一般的には「カラシンsp.」みたいに、未記載種かどうかではなく単純に扱う側が学名判らない時に使っちゃったりしてますけどね。ショップで販売する際に「なんちゃらsp.」って言った方が高く売れるしね(笑)。 この「sp.マハチャイ」って奴はなんとスペード型の尾ビレ持ってますし体型もスレンダーなんです。しかも、私の知る限りでも数人のブリーダーが日常的にプラカットとの交配してますから、こいつが「スペードテール・プラカット」の先祖の片割れである可能性は否定できないと思います。
2012/02/04
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形状による区分 プラカット 理想の体型 仕事柄(本業じゃないですが)、プラカットを常時大量に扱っている為でしょう、よく他の人から「理想的なプラカットってどんな個体の事を言うんでしょう?」と言う質問を頂戴します。前から「自分の好みで選べばいいんじゃないですか」って答えて来たのですが、ある方から「あまりにも不親切」と言うご指摘を頂戴しちゃいました。いつも書いている様に、趣味なんですからベタホビーに関してあまり型にはめたくないのが正直な所ですが、それでも一応の目安位は設定しておかないと駄目みたいです。 一応、プラカットの本場と言われるバンコクでは、今日の画像のような個体を理想型としているようです。つまり、プラカットらしい頑丈そうなボディと十分に開いた各ヒレを持つ個体って事です。たしかに、ショーベタ(ロングフィン)に比べると、プラカットではボディががっしりとしていて、背中が盛り上がる位の個体が好まれるようです。もっとも、いくら精悍さが好まれるからと言って闘魚用みたいにタラコ唇になっちゃうと駄目らしいです。 各ヒレに関しても、もちろんロングフィンタイプの様にはいきませんが、それでも思い切りヒレが開くのが良個体とされています。原種や闘魚用のプラカットのヒレは思い切りミニサイズなのですが、観賞用のプラカットでは画像の個体の様に短いながらも見事なヒレの開きを見せてくれます。バンコクのブリーダー達は、並レベルのプラカットと区別する意味で、今日の画像のような個体を「ハーフムーン・プラカット」と呼称しています。実際、良質の個体では尾ビレは180度かそれ以上に大きく開きます。また、いくらヒレが大きく開くのが理想と言っても、必要以上にヒレが伸長し、ロングフィンタイプとの中間的な個体はランクが下がるとされています。 もっとも、個人的には「細長いボディでも、タラコ唇でも、尻ビレばかりやたらと伸長していようとも、飼育する本人の好みならばそれはそれで良しっ!」って思いますけど。一応、逸品堂ではバンコクの先達達に敬意を表して、「ハーフムーン・プラカット」をプラカットの理想型という事にして、仕入れの際には可能な限り理想体型に近い個体を仕入れるよう心がけています。・・・でも、カラーリングが物凄い個体に限って、体型の方はスタンダードからかけ離れてたりするんですよね~。
2012/01/31
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形状による区分 シングルテールとダブルテール 尾ビレの形状でベタを分けると、大きくシングルテール(ST)とダブルテール(DT)に区分する事が出来ます。シングルテールの方は、所謂ノーマルな形状で、尾ビレが1枚の団扇状に広がるタイプです。これに対してダブルテールと言うのは、尾ビレが上下2枚に分かれ、ハート型になっている個体の事です。 このダブルテールと言うのは、本来尻ビレであったものが背ビレ部分もくっ付いてしまっている構造をしている突然変異個体を固定したものである事が、研究者によって確認されています。同様の現象は、日本のメダカのヒカリメダカにも見られます。人間に例えてみれば、両腕の部分から足が生えてしまっているような感じとでも言えばよいでしょうか?・・・って違うか。 本来尻ビレであるものが背ビレ部分から生えてきちゃっているものですから、ノーマルな個体の背ビレに比べて一段と幅の広い背ビレになっているのがダブルテールのもう一つの大きな特徴です。結果、全体的なフォルムがショーベタの理想型と言われている円型により近くなっています。 以前はダブルテールの尾ビレは2枚の葉が貧弱であったり、上下葉の分岐が十分ではなくハート型になった個体が多く、尾ビレの観賞価値という点ではシングルテールに劣るものでしたが、最近のダブルテールは尾ビレ上下葉が共によく発達し、ほぼシングルテールに見える個体が作出されています。 ・・・って、ここまで読んでくると「おおっ、ダブルテールってシングルテールより素晴らしいんだね!」ってなってしまいそうですが、長所ばかりではありません。ダブルテールは、その特異な体構造のせいで脊椎骨に異常が認められます・・・って言うか、基本的に100%異常です。市場に出回る個体は一見すると何の異常も認められませんが、その兄弟達の脊椎骨はグニャグニャに折れ曲がっているんです。鑑賞に堪えうる個体の出現率が低いと言う事から、ブリーダーとしては生産効率の悪い品種と言う事が出来ると思います。 遺伝的にダブルテールはシングルテールに対して劣性遺伝です。シングルテールの遺伝子をS、ダブルテールの遺伝子をsとすると、SSもしくはSsと言う遺伝子型の個体はシングルテール、ssの個体のみがダブルテールになる訳です。したがって、外見はシングルテールであってもSs型のヘテロタイプの両親であれば、子供に理論上は25%の割合でダブルテールが出現すると言う事になります。またダブルテール同士の交配では劣性ホモ同士の交配ですから100%ダブルテールの子供が生まれてきます。 ただ、ダブルテール同士の交配では、脊椎骨がそれこそクルクルに捻じ曲がった個体が多数出現してしまう事から、ブリーダー達はダブルテール同士の交配を好みません。また、脊椎骨異常の為ボディが通常よりも短めな個体が多く、特にオスは繁殖の際にうまくメスに体を巻きつける事が出来ない個体もいますので、繁殖の際はメスにダブルテールを用いた方が無難です。 その場合、繁殖に用いるオスがホモタイプ(SS)ならばF1世代はすべてへテロタイプ(Ss)のシングルテール。そしてF1同士の交配で得られるF2世代で25%のダブルテールが出現すると言う事になります。また、オスがヘテロタイプ(Ss)のシングルテールであった場合は、F1世代から50%の割合でダブルテールが出現する事になります。 えっ?どうやって繁殖に用いるシングルテールのオスがホモかヘテロか見分けるかですって??・・・外見からは判りません(笑)。自家産のダブルテール作出したいのなら、初めからF2世代まで行く覚悟でどうぞ。ただ、ヘテロタイプ(Ss)のシングルテールのオスは、ホモタイプのオスに比べて背ビレの幅が広めである事が多いので、繁殖に用いる事が出来るオス個体を多数保有しているのならば、出来るだけ背ビレの幅が太いオスをチョイスすれば、それだけヘテロタイプ(Ss)に当たる確率は高まります。
2012/01/28
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形状による区分 プラカットとロングフィン 改良ベタはヒレの長さに着目すると、原種と同じようにヒレの短いショートフィンタイプと、そこから派生したロングフィンタイプの2つに分類する事が出来ます。このうちショートフィンタイプを一般的に「プラ・カット」と呼んでいますが、これはタイで原種のスプレンデンス種が「プラー(=魚)・カッ(=咬む)」と呼ばれている事から来ている名称です。そんなショートフィンタイプが観賞用としてアメリカに輸出され、かの地で突然変異的に出現したのがロングフィンタイプのベタで、1900年代初旬の事とされています。 この様に、プラカットもロングフィン・ベタも元は同じ原種であるベタ・スプレンデンス(Betta splendens)の改良品種だけに、見た目は異なっても同一種に過ぎませんから自由に交配できますし、その子孫にも遺伝的な障害は生じません。従って、プロブリーダー達は結構自由にこの圧の異なる品種を交配し、さらなる品種改良をしています。 一般的に「ロングフィンはショートフィンに対して優性」と言われています。つまロングフィンの遺伝子をL、ショートフィンの遺伝子をlとすると、LLはロングフィン・Llもロングフィン、llと言う遺伝子型を有する個体のみがショートフィン、つまりはプラカットになると言う事です。また、Llと言うヘテロ型のロングフィンの個体同士を交配すると、生まれてくる子供はLL:Ll:ll=1:2:1となり、理論上ではロングフィンが75%、そして25%はプラカットタイプが生まれてくる事になります。よく「ショーベタ同士で子供を採ったのにプラカットも混じって出てきた」と言うのは、両親がLlと言うヘテロ型のロングフィンだった事に由来します。 ・・・って言うのが、ベタホビー界での一般常識です。・・・がぁっ!本当か??と言うのも、もし通説の通りならば、なぜロングフィンともプラカットともつかない個体が存在するのでしょうか?今日の画像の個体は、一応プラカットなんですが妙に各ヒレが伸長しています。また、ロングフィンタイプである事は確実なのに、いくら育成してもヒレはある程度までしか伸長しない個体も存在します。まったくの個人的見解ではありますが、ベタのヒレの長さは「不完全優性」と考えた方が正しいのではないでしょうか。つまりLL型はロングフィン。Ll型は中位のロングフィンそしてllがプラカット(ショートフィン)と言う訳です。実際にはもう少し複雑な遺伝的要素がある様な気もしますが、研究機関でもないとその辺の検証は不可能と言ってよいでしょうし、個人的にもあまり深く突っ込みたくありません(笑)。 我々アマチュアがベタの繁殖を楽しむ場合、オスの方はロングフィンタイプとプラカットを見間違える心配はないでしょうから左程気にする必要はありませんが、問題はメス個体の方です。オスに比べて元々ヒレの伸長の度合いの少ないメスでは、ロングフィンタイプとプラカットタイプの差異があまり明確ではありません。数世代に渡って自家繁殖している系統でない限りは、外見からメス個体の遺伝子型がLL・Ll・llのどれなのかは判別困難です。逸品堂で販売しているメス個体も、バンコクのブリーダーの「これはショーベタのメス、こっちはプラカット」って言うのをそのまま信用しているに過ぎません・・・って言うか信用したくなくっても、判らないんだからしょうがありません(苦笑)。でも、バンコク郊外のベタファームで、ショーベタのメスとプラカットのメスを同じ池の中から掬ってるの見てるんですよね~(笑)。彼ら自身もあんまり明確に両者を区分していないと思われます。我々も所詮は趣味なんですから、「同腹の子供にショーベタとプラカットと両方出てきたっ!」って楽しむ位のおおらかな気持ちが必要なのかもしれません。・・・それがどうしても許せないって言う方は、ご自身で数世代系統維持なされるのがよろしいかと思われます。
2012/01/26
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各国のベタ状況 その4 日本 さて、それでは我が国におけるベタホビーの現状は・・・と言うとうーん正直言ってあまり芳しくありませんね~。ショーベタの花形であるハーフムーンの系統が作出されたからずいぶんと経ちましたが、まったくと言ってよいほど盛り上がりません(涙)。いまだに、「ベタ=コップで飼える魚」のイメージから脱却できないでいます。実は私も20年以上前にショーベタの愛好会の立ち上げに参加したんですが、主催者側が力を入れても盛んになるのは内部の人間関係の問題ばかりって言う状態でした。どうして日本人って奴は、群れになると内部で権力闘争みたいなもんが勃発するんでしょう?まぁ、政治家見てりゃ「ああ、これが日本人の本質なんだな」って言う気がしますけどね。とにかく、みんなが派閥のドンになりたがるようです。昔から協調性に欠け、一人が大好き人間の私はその状況に耐え切れず、いち早くその愛好会から逃げ出したって訳です。元々ショーベタではなくワイルドベタの方に興味がありましたからね。ただでさえ仕事でシビアな世界に生きているんですから、趣味の時間くらい平和でホワ~ンとした世界に浸かりたいもんです。 我が国にもいくつかベタ愛好会は存在するようですが、そんな日本人気質が災いしてか、なかなか全国規模のベタ愛好会の発足までは至らないようです。正直、愛好会を主催している方のご苦労は並大抵のものではないとお察し申し上げます。まぁ、もし全国規模のベタ愛好会が発足した暁には、私も20数年ぶりに表の世界に参加させていただこうと思っております。えっ?お前なんて要らないって??(涙) もう一つ、我が国にベタホビーが定着しない要因は、何かと小うるさい奴らの存在ではないかと思います。「ショーベタはハーフムーンじゃなきゃいけない」「ショーベタは純系であるべき」・・・たしかに、彼らの言う事は間違っていません。ただそれは、ハイレベルの人間の話であって、入門者や初心者にはまったく関係のないことだと思います。金魚すくいの金魚を飼育しようとしている人間に対して「リュウキンってやつは・・・」「白い金魚は本来ハネ」とか言うでしょうか?ランチュウや土佐金じゃないんだから。飼育する本人が気にいればすべてОKじゃないの?どうも日本人は型にはめて物事の価値観を計り、すべての事柄を「道」にしたがる傾向があるような気がします。「野球道」みたいに。さしずめ「ベタ道」みたいなもんでしょうか。 まずは「いやぁ~、ショーベタなんて楽勝楽勝!色だって尾開きだって好きな奴選べばいいんですよ!」「繁殖なんて、その場の雰囲気でいろんな品種交配しちゃってぜんぜんОKですよ」とか甘い言葉で、ベタホビー界に引きずり込んで、獲物が見事に濱って身動き取れなくなってからおもむろに態度を豹変!「馬鹿もんっ!どこの世界にソリッドブルーとレッド交配する奴がおるかっ!!」とか「「こんなスーパーデルタの個体ばかり作りおってからに」とか言うのが正しい道ってもんでしょ?
2012/01/14
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各国のベタ状況 その3 ヨーロッパ ヨーロッパは正直言ってベタ(ここでは改良ベタ)に関しては後進国という事が出来ます。仕事柄、毎月の様にヨーロッパ入りしますが、アクアリウム先進国のドイツでさえも、私の知る限りベタ専門店は1件だけ。その店も、一度行ってみましたが置いてある魚は「はぁ~??」って言うレベルでした。その店の如何にもオタク顔した若者の店主に、たまたま仕事帰りだったためもっていたモバイルPCの中にあったお魚逸品堂で販売したベタの画像見せたら、欲しがるの何のって(笑)。要するに、クオリティの高いベタが入ってこないらしいです。その結果、愛好家もベタと言う魚に興味を示さないと言う悪循環。 そう言えば、以前ヨーロッパでも有数の観賞魚輸入業者グラーザー(書籍部門でも有名です)の社長が、「お前バンコクに毎月行ってるなら、ベタを見繕ってドイツに送るビジネスやってくれないか?」って持ち掛けてきた事がありました。その時、「他の熱帯魚と一緒に、メールでバンコクのシッパーに注文すればいいじゃないですか」と言うと。「奴らは、注文した通りに送ってこない」と嘆いてました。さすがタイ人です(笑)。要するにドイツ側で「赤いベタを100尾」って注文しても、たまたまバンコクのシッパーが100尾集められなかった時、基本的に彼らは別の色のベタ混ぜて送ってきますから。やたらと規則正しいドイツ人には許しがたい事でしょうが、そんなドイツ人は自由奔放な愛すべき我らがタイ人には小うるさくてうっとおしいだけの存在なんでしょう。嘘か誠か、グラーザーの温室管理者によると、輸入したショーベタで売り物になるのは半数以下だと言うことでした。まぁ、少しだけタイ人の肩を持つならば、温室管理者のベタの取り扱いもどうかと思いました。「おいっ!トラベタじゃないんだから、ショーベタをコップで管理するのはヤメレッ!!」。 そんなヨーロッパではベタと言えばもっぱらワイルドつまり原種ベタを指す事が多いようです。こちらの方もメジャーとは言えませんが、コアなマニアが存在し一つのカテゴリーを形成しています。ちょうど我が国の卵生メダカやアピスト愛好家みたいな感じです。ずいぶん前になりますが私が某出版社から出させていただいたワイルドベタに関する本が名刺代わりになって、ヨーロッパにおける本業の際にずいぶんと役立ってくれました。「おーッ、こいつがあのベタの本書いた男か。じゃあ、アクアリストとしては一人前なんだな」って言う事なんでしょうか、まったくの初見でも旧友の様に扱ってくれる事がしばしばでした。もっとも、あの本の写真担当したのはプロカメラマンのY氏であって、私は文章だけ。しかも、ドイツ人には日本語の文章なんて読めませんから、彼らの評価はY氏に送られるべきものなんですけどね(笑)。まぁ、典型的なおこぼれ頂戴っ!です。
2012/01/12
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各国のベタ状況 その2 東南アジア 趣味の側面からのベタの中心地がアメリカであるならば、東南アジアは間違いなく生産側から見たベタのメッカという事が出来ます。まぁ、元々ベタの原産国なんですから当たり前と言えば当たり前ですが。安い労働賃金・保温の必要がない気候・むやみやたらと豊富で入手容易な生き餌・・・と、ベタの商業的生産には申し分のない環境がそろってます。主な生産地としては、タイ・シンガポールそして最近ではインドネシアも結構力を入れて生産しているようです。もちろん、これら東南アジア諸国にも純粋なアマチュア愛好家は存在しますが、ほとんどの場合はプロもしくはセミプロ的存在な様です。 これらの国では、盛んにベタコンテストが開かれています。規模の大きな大会になると1000尾以上のベタが出品され実に壮観です。その出品者の多くは「コンテストで上位入賞して名を売る」事を目的としたプロブリーダーであり、コンテスト会場に来る客の中にも多くの業者がいるのが特徴です。これがアメリカの大会だと、ほとんどの人が愛好家なんですけどね。東南アジアのコンテストでは、ベタを収容した容器に何やら長ったらしい番号が書いてある事がありますが、これはブリーダーの電話番号で、要するに「この魚が気にいったら電話してくれ!販売するぜっ!!」って言うサインです。 かつては「東南アジアのショーベタはクオリティが低い」と言う方が、特に我が国の愛好家の中にいましたが、大きな間違いか、少々厳しい表現になりますが負け惜しみです。正直、いまやクオリティでは世界一レベルと言って間違いないでしょう。ただ、クオリティは均質ではなく、それこそピンキリなのがこの東南アジア産のベタの特徴です。要するに、安い生産コストを生かしてとにかく大量生産!って言うスタイルですから。その点、国産のベタの場合、ブリーダーの方が選別淘汰してますからクオリティは平均して高いのが特徴と言えるでしょう。ただ、1万尾の中から1尾選ぶのと、100尾程度の中から1尾選ぶんじゃ、どっちが凄い個体をチョイス出来る可能性が高いかは・・・。その証拠に、私の所を初めとする国内のベタショップそして本家本元であるはずのアメリカの業者が毎週のように東南アジアから大量にベタを仕入れていますから。 もっとも、我が国のベタブリーダが東南アジアのブリーダーより技術的に劣るとは少しも思いません。むしろ、勤勉で細部にまで気の利く我が国のブリーダーの方が、間違いなく技術は上でしょう。生産する個体の平均的なクオリティと言う点では、圧倒的に我が国のブリーダーの方が上だと思います、ただ、人海戦術でアレだけの数を生産しアレだけの値段で販売されちゃあ、商売的に勝ち目はありません。もし、自分が日本国内でベタブリーダーやるなら手間隙考えると今の販売価格の少なくとも数倍の値段じゃないと売れませんからね~。クオリティに差がなくて値段が段違いに安いんじゃ、お客さんも東南アジア産を選ぶってもんです。 残念ながら、我が国やアメリカのブリーダーは、商業ブリーダとしてではなく、ベタの品質を採算度外視で徹底的に追求する純粋なアマチュアブリーダーとしてしか生き残れないのではないかと思います。まぁ、日用品なんかを見てみれば当たり前の流れで、国内生産業者は安い労働賃金のアジア諸国の製品に太刀打ちできなくなっているのと同じ事です。これが、技術力で製品に大きな差の出る精密機械や自動車の心臓部分とかだと話は別なんですけど、ベタではそこまでの精度は要求されませんから。
2012/01/10
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各国のベタ状況 その1 アメリカ 現在、ヒレの長いショーベタに限ってみれば、間違いなく一番盛んなのはアメリカでしょう。ビロビロとしたロングドレスの様な長いヒレや鮮やか過ぎるほどの原色カラーがアメリカ人好みだったんでしょうね~。仕事柄アメリカ人ともずいぶん接する機会がありますが、全般的に言って彼らの本質はストレートでダイナミック、日本人的な侘びさびの対極にある気がします。野球だって我が国ではカーブだのシュートだのサインプレーだの送りバントだの、実に繊細できめ細かいですが、大リーグだととにかくピッチャーはど真ん中めがけて全力でストレートを投げ込む!そして対する打者は1番から9番まで、とにかくバットが砕けるかボールがひしゃげ飛ぶかって言う勢いでブンブンバットを振り回すって感じですから。 まぁ、ロングフィンのベタは、そんなアメリカ人気質にとってはど真ん中のストライクだったんでしょうね。最近では以前に比べやや沈静化したとは言うものの、アメリカにおけるショーベタの人気は絶大です。I.B.C.と言う世界最大のベタ協会を中心に、上は研究者やトップブリーダーからビギナーまで本当に幅広くベタを愛好しています。我が国でもショーベタをとことん極めたいと思っているのなら、このI.B.C.に入会して、情報収集に努めるべきでしょう。残念ながら今の我が国には、全国のベタ愛好家を束ねるようなベタクラブは存在しませんから。また、ベタに関する学術論文などもI.B.C.は豊富に所有しているので、その辺りがお目当ての方もI.B.C.は見逃せない存在です。・・・とか言いながら、本人は所属していないんですけどね(笑)。私の場合、プラカットメインだし・・・ 個人的にはコンテストを中心としたショーベタ界から遠ざかって久しいので今更あの世界に戻りたいとは思いませんが、ベタと言う魚を愛好家だけではなく研究者も加わって、みんなでとことん極めて行こうって言うI.B.C.の様な存在には心底敬服しますし、我が国でもそんな組織が誕生すればなぁ~って願ってます。
2012/01/07
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ベタって何? その2 さて、そんな父ちゃんのいじましい努力からスタートしたベタの改良ですが、正直外見の美しさとかは二の次です。現在でもこの闘魚用のベタ存在しますが、可愛くないの何のって(笑)。見た目なんて泥のついたゴボウだしヒレは当然極短小、唇に至っては相手に噛み付きやすいように思い切りタラコ唇!!正直、外見上は原種に比べ改良ではなく間違いなく改悪です。まぁ、外見は確かにものすごく強そうですけど。 それでも、中には外見にこだわる洒落者もいたんでしょう。また、タイやカンボジアでは今は判りませんが、かつては王室もベタを保持していたと言われています。もちろん、王室なんですから賭けベタなんてやらないでしょうから、王室付きのベタ飼育係は少しでも美しい外見のベタを作り出そうと日夜努力したでしょう。これもまた真偽のほどは定かではありませんが、世界で初めて金色のベタ(たぶんイエローだと思う)を作り出したのは、当時のタイ王室だとの噂もあるようです。 時が移り、ベタなどの熱帯魚が欧米諸国に対する重要な輸出品になり始めた東南アジア諸国では、当然の事ながら如何にして美しい外見のベタを作り出すかに改良のシフトが移り、様々なカラーバリエーションやヒレの長いタイプ、クラウンテールなどがそこから派生してきたと言われています。 また、見た目がゴージャスなロングフィンタイプは特にアメリカで愛好され、アメリカでショーベタと呼ばれる、現在改良ベタの主流である長いヒレが大きく扇状に開くタイプまで作出されるようになり今に至っていると言うわけです。
2012/01/05
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ベタって何? その1 さて、今まで散々薀蓄たれてきたくせに、そんな事はサラッと水に流して、新たにスタートする「ここから始まるベタのお話です。このコーナーでは、主に改良ベタについて、思いつくままにそして無責任に書きなぐってしまおうと考えています。この新企画で書いた内容と、以前「さかなおやじ1号が書いた記事の内容が異なる場合は、当然の事ながらこのコーナーの記事の内容が優先いたしますですハイッ! まずは、このコーナーで言う所の「ベタ」っていったい何者なのか説明しておきましょう。本来ベタと言うのはベタ属Bettaに属する魚の総称です。このベタ属には現在70種前後が記載されていますが、そのうちのベタ・スプレンデンス(Betta splendens Regan,1910)と言う、1910年にReganと言う研究者によって新種記載されたベタの一種を長年にわたり改良した改良品種を、このコーナーでは「ベタ」と言う事にします。また、その他のベタ属の魚種を呼ぶときは「ワイルドベタ」と言う、我が国のアクアホビー界に定着した呼称を用いる事とします。 今日の画像はそんなワイルドベタの1種で、ベタ・・・つまりはスプレンデンス種の改良品種と非常に近縁と言われているスマラグディナ種(Betta smaragdia)のものですが、本来ベタ属の多くは「ワイルドベタ」」の状態ですでにかなりキレイです。無理に改良しなくてもと言うほどの完成度だと個人的には思います。 もっとも、通説によれば元々は観賞用として改良された訳ではないとされています。ベタは闘争心が旺盛で、特にオス同士は激しくバトルします。東南アジア諸国でその習性を生かして賭け事に用いていた・・・って言うか、今でもやってますが(苦笑)、のが改良の始まりのようです。 要するに、賭けベタに負ければ大切な銭を失い、家族を養っていけませんからお父ちゃんも必死です。始めのうちは、ジャングル内やその辺の田んぼの中を這いずり回って、少しでも強そうなベタを探していたんでしょう。そして、自宅兼トレーニングジムで飼育容器に入れ、十分な餌を与え英気を養ってからバトルに出品って思うのは人の常でしょう。そのうち、中でも建設的な思考の持ち主が「強い系統の子供を自分の所で繁殖させていけば、より強い個体が出来るんじゃないだろうか?」って言う考えに行き着いたのは当然と言えば当然過ぎる事です。 そうやって人為的に累代繁殖させていれば、その副産物として遺伝的形質の固定化が起こるのもこれまた自明の理です。例えば、たまたま元親が赤みの強い個体であったのならば、その子孫はその形質をより強く表現するようになるが普通です。そうやって家族からハブられない為に必死に行った父ちゃんの行為が、ベタの改良のスタートだったと考えられています。 ・・・まぁ、個人的にはそこまでの熱意があるんなら、まっとうな仕事に精を出せっ!っていう気がしないでもありませんけど(苦笑)。
2012/01/03
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