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フレーム・テトラ 養殖個体 今日紹介するのはフレーム・テトラ[ Hyphessobrycon flammeus Myers,1924 ]です。ブラジルのリオデジャネイロ郊外に生息する、この小型カラシンはかつては非常にポピュラーな観賞魚でした。その理由は簡単で、非常に繁殖が容易なので東南アジアで大量生産=安価って訳です。ただ、ここであえて「かつては」って言う書き方をしたのは、最近ではめっきりその姿を見かけることがなくなってきている為です。今ではそれほどポピュラーとは言えない、フレーム・テトラですがそのまるで「平家物語」を読むかのような「盛者必衰の理」を何回かに分けて紹介して行きたいと思います。この辺りのマイナーな魚で何回もブログ書くのは、おそらく偏屈さでは他に引けを取らないさかなおやじならではと思ってます・・・って自慢にならんか(苦笑)。 そうそう、フレーム・テトラは成長してもせいぜい全長3cm前後の小型でしかも非常に温和なテトラです。しかも、繁殖がしやすいって言ってんですから、当然のように飼育だってそれ以上に簡単です。フレーム・テトラがバシバシ死亡する環境って言うのは、物凄く劣悪と考えてまちがいありませんから。 フレーム・テトラの「フレーム=Flame」で炎って言う意味なんですが、画像の個体を見て「はぁ?どこが炎の様なテトラな訳?」って思うのが当然です。でも、種小名の「 flammeus」も同じく「炎の様な」って言う意味なんですよね~。しかも、この魚を初めて学会に報告した研究者のレポートでも、「私はその場所で炎のように真っ赤に染まった素晴らしい魚を採集することが出来た」って言ってるんですよ。 ・・・実は、フレーム・テトラって本当に真っ赤なんです。まぁ、オスだけの話でメスはせいぜい今日の画像レベルに過ぎませんが。我が国に輸入されてくるほぼすべてのフレーム・テトラは実は東南アジアブリードです。別に、東南アジアブリードのすべての魚種が劣化する訳ではありませんが、なぜかこのフレーム・テトラは色彩面で物凄い劣化しちゃいました。どうがんばっても、ブリード個体は今日の画像レベルに毛が生えた程度が関の山です。しかも、さらに悪い事にブリーダーの育成環境が劣悪なのか、脊椎骨の奇形個体もかなりの確率で混ざってます。まぁ、生産者も輸入業者も「だって、安いんだからしょうがないじゃんっ!」とか考えてるんでしょうが、とんでもない事です。こんなレベルの魚を観賞魚ですってアクアリストに販売してるから、いつまでたってもアクアホビーってマイナーな趣味にとどまってるんじゃないでしょうか。例えどんなに安かろうが、生き物を扱っていると言う事を常に考えていただきたいものです。こんな冴えない色彩で、しかも奇形だらけときたらそりゃアクアリストだって購入したいとは思わんでしょう。 それじゃあ、本来フレーム・テトラって奴はどんなカラーリングなんだっ!って思われている事でしょうから、次回はその噂の「ワイルド個体」をご紹介しましょう。
2012/02/20
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グローライト・テトラ 今日紹介するグローライト・テトラ Hemigrammus erythrozonus Dubrin,1909 も、ネオンやカージナルに負けず劣らずポピュラーな小型カラシンです。透明感のある体に、温かみのあるオレンジ色のラインと、特に今のような厳寒の季節には本当にぴったりのカラーリングだと思います。 原産地は南米のガイアナですが、現在ではほぼ100%、東南アジアブリードの個体が輸入されてきます。少なくとも、私はワイルドのグローライトを見た記憶がありません。温和で他の魚との協調性も良く、全長も3cm前後と観賞魚として申し分のないカラシンです。東南アジアブリードだけに非常に安価で販売されている為か、コミュニティタンクに他の魚種とごったに収容されている事が多いのですが、本来は水草の繁茂した水槽にこの魚だけを群れで泳がせると、その真価を発揮します。 水温や水質には神経質ではありませんので、25度前後の塩素中和した水道水で問題なく飼育できます。餌も、何でも良く食べてくれますが、どうも肥満しやすい傾向にあるように感じます。脂肪含有量の多い餌などを大量に与えていると、まるでブタのように肥えてしまいますのでご注意を。それと、夏場の高水温時期や劣悪な水質では、本来透明感のある体が白濁する事があります。その様な場合は、飼育環境に何らかの問題があるサインですから、早急に対策を講じましょう。また、東南アジアブリードの魚によくみられる事ですが、脊椎骨異常の認められる個体も結構いますので、入手の際はその辺りにも注意される事をお勧めいたします。 グローライト・テトラにはアルビノ個体も存在します。ただ、原種が既に完成された美しさですし、目の赤く透き通った点などが敬遠されるのか、市場では原種ほどの人気はないようです。
2012/02/17
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グリーン・ネオン ネオン、カージナルとくれば、どうしたって最後はグリーン・ネオンって言う事になるでしょう。それ位この3種は良く似ています。それなのに、この3種は以前は全部別の属に分類されていたんですから、ビックリです。グリーン・ネオン Paracheirodon simulans ( Gery,1963 ) は、カージナル・テトラと同じくネグロ川やオリノコ川流域に生息している小型カラシンの仲間ですが、生息場所はカージナルよりもやや上流域の様です。 外見はネオンテトラに良く似ていますが、ネオンテトラの特徴であるボディの下部後方のピュアレッドの部分が、ほんのりと赤らむ程度なので区別が付きます。また、体側部を走るメタリックブルーのラインも、ネオンでは途中で途切れているのに対して、グリーン・ネオンでは尾柄部までしっかり走っているので、その点からも区別は可能です。体型は、この近縁3種の中では一番細身です。 見た目はいかにも繊細そうではありますが、飼育難易度は他の近縁2種とほぼ同じレベルで、温和で飼育の容易なテトラと言う事が出来ます。単独で飼育するよりも、群生美を楽しむタイプの魚でしょうから、出来るだけ数多くを収容してやるとその美しさを堪能できます。他の近縁2種が、一種人工的な雰囲気さえ感じさせる艶やかさなのに対して、赤の発色がない分ナチュラルで清涼感のある雰囲気から、水草レイアウト水槽でよく飼育される魚でもあります。ただ、意外と水草をガジガジするのがお好きなようで、柔らかい新芽とかは齧られちゃう場合があるので注意しましょう。 おそらく現在輸入されてくるほぼ100%の個体が現地採集物、いわゆる「ワイルド」であると思われます。その為、グリーン・ネオンの水槽には他のテトラが混じっている事があり、「珍カラマニア」と言われる人達がショップに入荷直後のグリーン・ネオンの水槽に眼を走らせています。逆に、ショップで異様な熱意を持ってグリーン・ネオンの水槽覗き込んでいる人を見かけたら、かなりの確率でその人物は「珍カラマニア」でしょう(笑)。 ワイルド物ばかりという事で、改良品種は今の所見た事がありませんが、カージナル同様体内にバクテリアが寄生、鈍い金色や銀色に輝く「プラチナ」タイプが確認されています。これは結構まとまった数ノーマル個体に混ざってくるのか、プラチナ・グリーン・ネオンだけが販売されている場合もあります。もちろん、ノーマル個体よりはるかに高い値段が付けられているのが普通です。
2012/02/13
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ネオン・テトラその3 ニュー・ゴールデン・ネオン 今日の画像の個体は「ニュー・ゴールデン・ネオン」と言うネオン・テトラの改良品種の一つです。しかし、一体何が「ニュー」なんでしょう?・・・実は、以前香港で作出された「ゴールデン・ネオン」と言う品種が存在していまた。こちらは、前回紹介したプラチナ・ネオンの粗悪版みたいな感じだったので、あまり人気も高くなく、まもなく市場から姿を消してしまいました。でも、一応「ゴールデン・ネオン」と言う名前で流通していたものですから、画像の品種の名称を付ける際に「ニュー」って冒頭につけたんでしょうねぇ(笑)。 しかし、別にどう見ても「ゴールデン」ではないこの品種になぜあえて「ゴールデン」」と言う名前を付ける事にこだわったのか、さっぱり理解できません。どちらかと言えば、ボディは白いんですけど??そもそも「ニュー・なんちゃら」って言うネーミングのものにはあまりたいした物はない気がします。ホテルの名前とか・・・。一見すると、アルビノにも見えますがこちらはアルビノではなく「白化個体」、つまり普通種の中から黒並びに赤の色素胞の存在しない個体を選別して固定化したものです。したがって眼はアルビノの様に赤くはありません。また、アルビノの場合はメラニンを生成出来ないんですけど、「ニューゴールデン」の場合は、たまたま存在しないだけです。 しかも、こんな訳の判らない名前付けちゃうもんだから、後発の品種もこの影響を思い切り受けてます。「ニュー・ゴールデン」には原種の持つ、体後方下部の赤い発色がないんですが、ここが赤く発色する改良品種が作出され「ニュー・レッド・ゴールデン・ネオン」・・・って、このネーミング聞いてどんな改良品種かおおよそ想像出来る方を、別の意味で私は尊敬いたします。ここまで来ると、「このこっぱずかしい品種名つけた人間出て来いっ!」と言いたくなるレベルです(苦笑)。 ちなみに、ネオンテトラには「アルビノ・ネオン」も存在します。こちらの外見は「ニュー・レッド・ゴールデン・ネオン」そっくりですが、アルビノなので眼が赤くなっています。 どの改良品種も、元はネオンですから、飼育方法や繁殖方法は原種に準じます。ちなみに、ネオンの繁殖は結構難しいです。産卵させるだけならかなり簡単なのですが、孵化した稚魚が小さく初めから孵化したてのブラインシュリンプを摂取できないので、この時期を乗り切るのが大変です。商業的な繁殖でないのであれば、産卵床にウィローモスなどの水草を用いる事で餌となるインフゾリアの自然発生に期待し、初期の段階を乗り切るのが無難でしょう。この方法ならば、10尾前後であれば確実に稚魚を得る事が出来ます。 ペアの判別は容易で、成魚になればオスはほっそりでメスはでっぷり(笑)、さらにメスの腹部にはうっすらとオレンジ色に卵が詰まっている事が外見からも判断できるようになります、。30cmほどの小型容器に前述のウィローモスを適当にぶち込んだ産卵用水槽にペアを導入すれば、ペアはウィローモスの茂みに100個前後の卵を産み付けてくれます。ちなみに、ペアは産卵終了後自分たちの卵をパクパクいっちゃいますので、産卵終了した時点でペアは水槽から取り出しておきましょう。また、卵は強い光を嫌いますので、産卵後は照明は消しておきましょう。 水温にもよりますが36時間から48時間程度で孵化が始まり、その後数日で稚魚は遊泳・摂餌を開始します。もっとも、この時期の稚魚には水槽内に勝手に湧いてきたゾウムリシとかワムシを食べて貰う訳ですから、飼育者としては黙って観察しているだけの事です。ただ、ある程度の時期からは、極少量のパウダーフードを水槽内に投下したりした方が稚魚の歩留まりは良いようです。また、この様な手抜き繁殖方法の場合、給餌開始時点で1~2匹のレッド・ラムズホーン(巻貝)を水槽内に入れておくと、残餌を食べてくれますので水質管理に役立ちます。遊泳開始から10日もすればいくらなんでも稚魚達は孵化したてのブライン摂餌できるようになります。ただ、極少量のブラインシュリンプを毎日沸かすのは結構根気の要る作業です。めんどくさいと感じる方は、最後までパウダーフードで押し切るのがよろしいかと。 カラシンの仲間の繁殖に関しては、後の方で詳しく紹介する予定でおりますので、ここではざっとあらましを述べるに留めて置きます。
2012/02/06
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ネオン・テトラ その2 プラチナ・ネオン ネオン・テトラは観賞魚としての歴史が古く、また早くから人工繁殖が盛んに行われていた魚だけあって、様々な改良品種が存在します。今日登場のプラチナ・ネオンもその一つです。原種では、背中部分が黒褐色、中央部にメタリックブルーのライン、そして腹部前半がシルバー、後半がピュアレッドと言う配分でしたが、プラチナ・ネオンでは体の前半部分がブルーシルバー、そして後半がピュアレッドと言う様に、微妙にカラー配置が異なっています。改良品種と言うのは、往々にして「改良ではなく改悪」だったりする事が多い中では、結構キレイな「改良品種」だと思います。それでも、個人的には原種の方が好きですけどね。 このプラチナ・ネオンと言う品種がどの様にして作出されたのかはよく判りません。ただ、近縁種であるカージナル・テトラやグリーン・ネオンにも「プラチナ」の名の付く変異個体が存在しますが、これらとは根本的に違います。カージナルやグリーン・ネオンの場合は、体にある種のバクテリアが寄生しその部分が金属光沢を持つようになった物で、ゴールデン・テトラと同じく、あくまでも野生種です。ちなみに、このバクテリアの事を「発光バクテリア」としている文献を見ますが、実際には発光する訳ではなく、光を反射する事でキラキラしているだけです。一方、プラチナ・ネオンに関しては改良品種であり、当初はヨーロッパブリードでしたが、今では東南アジアで大量に繁殖されているようです。 飼育などに関しては、あくまでも「ネオン・テトラの改良品種」ですから、ノーマルタイプとまったく同様で構いません。原種と共に、温和で丈夫な理想的な観賞魚の一つだと思います。 実はこのプラチナ・ネオンにはかなり良く似た改良品種が以前存在しました。その名を「ゴールデン・ネオン」と言ったのですが、体前半部分のシルバーの輝きが鈍く、下手をするとネオン病に羅病した個体に見えかねないのであまり人気がなかったと見え、今ではまったくその姿を見る事はありません。 あっそうそう、ネオン・テトラや近縁種に特有の病気として「ネオン病」って言うのがあります。なんだか体の色彩が絵の具を混ぜ合わせるような感じでぼんやりと薄れていってしまう、実に不気味で奇怪な病気です。以前は結構良く見かけたのですが、最近ではほとんど見かけることはなくなりました。魚病薬で治療も可能とされていますが、ネオン・テトラのようにサイズが小さい魚は基礎体力がないのか、治療を施してもあえなく昇天って言うパタンがほとんどです。また、他の個体に感染する率も高いので、その様な個体が収容されている販売水槽からは、魚を購入しない方が無難です。ネオンはほぼ常時ショップで見かけることが出来る魚ですから、その様な場合は迷う事なくパス1です。
2012/02/03
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ネオン・テトラ ノーマル個体 ネオン・テトラ Paracheirodon innesi (Myers,1936) は近縁種のカージナル・テトラと並び、もっともポピュラーかつ人気の高い熱帯魚と言う事が出来るでしょう。体側部中央を走るメタリックブルーのラインと、その下部後方部分が真紅に染まる、誰が見ても文句なしの美麗魚です。しかも、サイズも全長で3cm程度と極小サイズ、しかもお値段も激安!と来ては、人気がない方がおかしいと言うくらいなものです。原産地はアマゾン河流域で、ブラックウォーターの流れる細流に生息していると言われています。本来、これだけど派手な体色をしてしかも小型と来ては、捕食者にとっては格好の獲物となっちゃいそうですが、赤褐色に染まった水中ではこのやたらと目立つ体色もそれほど目立たないそうです。 現在我々が購入する事が出来る個体のほとんどすべてがアジアでのブリード個体です。長年に渡りブリードされている割には色や体型にそれほど劣化が認められないのはうれしい限りです。非常に稀に輸入されてくるワイルド個体は、前述の様にブリード物の出来が良いだけに、完全なマニアアイテムと言えるでしょう。ワイルド個体は水質にもうるさいので、普通に飼育するならば断然ブリード個体がお勧めです。両者の区別は外見では困難ですが、お値段がワイルド物の方が圧倒的に高額なので、ネオンの相場をはるかに越えたお値段で販売されていたらワイルド物と思ってよいのでは(笑)。なお、ワイルド個体はやたらと水槽からジャンプしますので、水槽には蓋をお忘れなく。ブリード物はそれほど活発ではありません。 原産地では水温20~22℃、PH5~6位のかなり低水温(熱帯としては)の酸性の水だそうなので、ワイルド物はその辺りきちんと管理すべきです。ただ、香港やその他のアジアで生産されている個体は水温25℃前後のほぼ中性の水で累代飼育されていますので、一般的にネオン・テトラは水温25℃前後の塩素中和した水道水で飼育って言うのが正しい道ってもんでしょう。 餌は何でも良く食べてくれますが、口のサイズが小さい為小型魚用のフレークや粒の細かい顆粒フードがお勧めです。水槽内の水草を齧る様子もほとんど見られない事から、それほど植物性の餌は必要としないと思われます。一度、水槽内の環境に馴染んでしまえば、繊細な見掛けとは別に丈夫で飼育しやすい魚です。性格も非常に温和なので、ネオンが他の魚に害を及ぼす心配はありません。むしろ、テリトリー意識の強い魚種の格好のターゲットになりがちです。 上記の様に、基本的には丈夫な魚なのですが、輸入直後は結構バタバタ死んじゃいます。これは、海外のシッパーが一つの袋にやたらめったらネオンを詰め込んで輸出する事に問題があるのだと思います。つまり、日本に輸入されて来た時点ですでに袋の中の水質悪化によりエラや内臓にダメージ受けちゃってる訳で、そうなればいくら我々が購入後トリートメントしてやっても、回復は望めません。いつでも入手可能な魚だけに、ショップに入荷直後は購入を控え、1週間位してから購入するようにしましょう。・・・もっとも、敵もさるもので毎朝開店前に死んだ個体や体調の悪そうな個体は廃棄してますから注意深く観察を(笑)。 また、入手直後によく白点病に罹ります。白点病自体はマラカイトグリーンの含まれた魚病薬で簡単に治療できますが、羅病した個体が幼魚の場合体力的に持たない事があるので、腕に自身がない方はSサイズのネオン・テトラには手を出さない方が無難でしょう。
2012/01/27
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アカヒレ その5 アカヒレの繁殖 アカヒレという魚は飼育だけでなく、繁殖も実に容易です。元々価格の実に安い魚なので、その方面から繁殖を狙うのは労力の無駄ですからお勧めしませんが、実はアカヒレの稚魚は成魚とは少々趣が異なり、体側部のラインが妖しく虹色に輝きかなりキレイですから、ぜひ一度はアカヒレの繁殖にチャレンジして稚魚~幼魚期のアカヒレを実際にご覧いただければと思います。 繁殖方法は実に簡単!まぁ一言で言うならば、アカヒレだけを単独種飼育しなさいっ!って事です。アカヒレは卵を水草の茂みなどに産み付けるタイプなのですが、あまり親魚が自分たちの卵や稚魚を捕食する事がありません。したがって、アカヒレだけを状態よく飼育していると、ほぼ確実に稚魚たちがいつの間にかピロピロ泳ぎ回っているって言う事になる筈です。 ただ、「もう少しブリーダーっぽく繁殖させてみたい!」って言うのであれば、繁殖専用の小型水槽を用意しましょう。水槽内には塩素中和した水道水を満たし、中には水草(ウィローモス辺りがお勧め)かアクリル製の毛糸を一塊ぶちこんでおきます。そこに成熟したアカヒレをオス2、メス1尾収容します。ちなみに、アカヒレのメスはオスに比べて体色が淡く地味ですし、ヒレ先がオスのように金色にくっきりと縁取られていませんから判別できると思います。・・・って言うか、成熟したメスならば腹部は卵でパンパンになっている筈ですから、間違えようもありませんけどね。 ペアは繁殖水槽の環境に慣れてくると産卵行動を開始します。初めのうちは2尾のオスがメスにじゃれ付くようにしていますが、そのうち揃って水草や毛糸の茂みに突入し、産卵・受精を繰り返します。アカヒレは一時に繁殖行動を終えてしまうのではなく、数日間だらだらと行うタイプなので、初めの繁殖行動を確認してから2,3日はそのまま放置した方がいいかもしれません。その後、ペアを水槽から取り出して起きます。繁殖水槽の水底に底砂利を敷いていない場合、水底に物にうまく付着しなかった透明なアカヒレの卵が見つかるかもしれません。 水温にもよりますが、大体2日弱でアカヒレは孵化を開始します。孵化直後の稚魚はヨークサックと呼ばれる、いわばお弁当の様な物を腹部に持参しておりますので、当面餌は不要です。孵化後数日が経過し、自由遊泳を開始するようになった時点で、初めて稚魚達は外部の餌を探し始めます。アカヒレの稚魚はサイズが小さく初めから孵化したてのブラインシュリンプを食べる事が出来ません。ただ、その頃になれば繁殖用水槽内にも多数の微生物が発生しているでしょうから、稚魚たちがそれらを捕食して勝手に成長してくれるのを待ちましょう(笑)。なお、大量に繁殖させたいのであればゾウリムシなどのインフゾリアを自家培養し(これが臭いんだ)与える必要があります。 水槽内の微生物に頼る放任主義?だと、一度の繁殖で得られる稚魚の数は10尾程度ではないかと思われます。稚魚たちが明らかに肉眼で認められ水槽内部をピロピロ泳ぎ回るようになった時点で、稚魚様のパウダーフードを極少量ずつ与えるようにすれば、その後の成長も確実です。だいたい生後1、2ヶ月もすればアカヒレの幼魚たちは、噂の妖艶な輝きを披露してくれるようになります。このサイズのアカヒレは市場に出回る事はない為、この姿を拝見できるのはブリーダーの特権と言えるでしょう。思い切り優越感に浸ってください(笑) それと、本文とはまったく関係のない事ですが本日より海外出張に出てしまう為、出張中ブログの更新が出来るかどうかは定かではございません。可能であれば、今回の行き先である極寒のドイツより現地レポートでもお伝えできればと思っておりますが、あまり期待しないでください(苦笑)。何しろ語学能力の低い奴が無理やり外国語使って仕事するもんですから、仕事が終わるとドッと疲れが出ちゃって。
2012/01/16
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アカヒレ その4 ベトナムアカヒレ 長年に渡りアカヒレは一属一種、つまり近縁種は存在しないとされてきましたが、最近ではアカヒレ属は3種記載されているようです。今日の画像の個体はそのうちの1種でミカゲンマエ種(Tanichthys micagemmae Freyhof&Herder,2001)で、我が国では生息国にちなんでベトナム・アカヒレという名前で流通している様です。 本家アカヒレに比べると一回り小さ目のサイズで、せいぜい全長3cm程度と、これまた小型水槽のタンクメイトにもってこいのサイズです。アカヒレに比べれば、通常の熱帯魚並みの保温が必要と言う点で少々手間がかかりますが、それでも温和で丈夫なすばらしい観賞魚です。外見はアカヒレに良く似ていますが、体側部のブラックラインが太く明瞭な点でアカヒレと区別する事が出来ます。 撮影時にはまだ未成魚で色彩的にも地味ですが、以前ドイツのショップで見かけた個体は体がパープルに鈍く輝き、尾柄部のレッドスポットも燃えるような鮮やかな真紅でかなりの美麗魚でした。ちなみに、我が家では撮影後これらの個体は、友人たちが不要になった魚を勝手に入れに来る(苦笑)3本の120cm水槽(通称「タコ部屋水槽」)の中に収容され、まもなく姿が見えなくなってしまいました(涙)。副業のせいで、一般熱帯魚用小型水槽の確保がままならず、多くの小型魚はこれら大型水槽で混泳って事になっちゃうんですが、一応全長5cm前後の魚だけが収容してある120cm水槽に入れたんですけどね~。日常の水質管理などは手抜きなくやってましたし、丈夫な魚だけに簡単に死ぬとも思えません。気の荒い同居魚もいませんでしたから、むやみやたらに繁茂したミクロソリウムの間で人目につかないようひっそりと生きながらえ天寿をまっとうした、。・・・とここでは無理やり考えたいところではあります。 そして、アカヒレ第三の魚 Tanichthys thacbaensis Nguyen&Ngo,2001 に関してですが、この種もベトナムに生息しているようですが、実物を見たことがないのでどんな魚か判りません。ただ、最近我が国にラオス・アカヒレと言うアカヒレの一種が入荷しているようなので、これがこの種なのかもしれません。生息地はラオスじゃないけど、もともとラオスの魚なんて我が国にダイレクトに入ってきませんから、大方バンコク辺りのシッパーから輸出されたんでしょう。タイ人の気質から言って「ああ、この魚はベトナム産だけど、既にベトナム・アカヒレって言うのがいるからなぁ・・・。よしっ、ここはラオス・アカヒレって言うネーミングで行っちゃえ!」(笑)、って言うシチュエーションは十分に想像出来ます。
2012/01/13
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アカヒレ その3 アカヒレの改良品種 観賞魚としての歴史が長いだけに、アカヒレには改良品種が存在します。このシリーズの第1回目に登場したのがノーマル個体、前回2回目に登場したのがゴールデン、そして今日の画像の個体がロングフィンです。 ゴールデンタイプは、ノーマル個体の中で特に黄色みの強い個体を選別し累代繁殖させて作り出した改良品種で、アルビノではありません。アルビノは色素欠乏症個体なので、黒色色素(メラニン)を体内で作り出す事が出来ません。その為、眼球を含め全身から黒い色が抜け落ちて見えるのです。ゴールデンの場合は、メラニン生成が出来ない訳ではありません。したがって、アルビノ個体をノーマル個体と交配すると、次世代以降はアルビノかノーマルどちらかの形質を持ったアカヒレが出てきますが、ゴールデンとノーマルの交配では、両者の中間的な表現の個体が出現します。前回の画像のゴールデンも、体側部に黒褐色の斑紋を見ることが出来ます。まぁ、個人的にはノーマル個体の方が美しい気がしますが、ゴールデンもきちんと飼育していれば成魚になると、山吹色になり結構キレイです。 そして、もう一方の改良品種であるロングフィンですが、こちらは間違いなく「改良」と言えるレベルの代物です。同じロングフィンでもゼブラダニオの様に、成熟するとヒレが伸張しすぎてなんだかバサバサに見えてしまう事もなく、生涯美しい姿のままでいてくれます。実際のところは定かではありませんが、元々は旧東欧諸国がドル確保の為の国策として改良したなんて話もあります。ただ、初めはヨーロッパで出回るようになったのは確かです。その為か、今でもロングフィンの本家はヨーロッパブリードで、ヒレが十分に伸張しノーマル個体の時には各ヒレの先端部分が金色に縁取られていたものがなぜか赤く染まるのが特徴です。今日の画像の個体は一方がヒレ先の赤いドイツブリードの個体、そしてもう一方が東南アジアブリードの個体です。この画像では東南アジアブリードの個体も十分美しいのですが、ヒレ先はゴールドのままでヒレの伸長も今一歩の個体がほとんどです。また、このレベルの個体を東南アジアブリードから探すのは結構大変です。ちなみに、撮影は数年前で今はこの個体たちはお亡くなりになっておりますが、どちらも毎月の様に海外出張があると言う仕事上の特権を生かし、ドイツ&香港で自分でチョイスして入手したものです。・・・って、本業は熱帯魚の輸入業でもなんでもないんですけどね。まぁ、仕事が終わった後のプライベートタイムに各国のショップやファームなどを訪問しているとご理解ください(笑)。 ノーマル種を含めた3タイプのアカヒレは、元が同じ種類だけに各々を交配しても生物学的には何の支障もありませんが、それぞれの特徴がぼやけた個体が生まれて来るため、あまりお勧めできません。やはり、それぞれのタイプ毎に繁殖させるのが正しい道ってもんだと思います。あっ、繁殖については後日って事で。
2012/01/09
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アカヒレ その2 アカヒレの基本的な飼い方 まぁ、アカヒレに関してはとにかく一般的な観賞魚の飼育方法でOK!・・・って、これだと記事になりませんから、もう少し丁寧に解説いたしましょう。アカヒレは前回も書いたように、成長してもせいぜい全長4cmに満たない小型魚なので、飼育容器も大きい必要はありません。でも、コップはだめですからね。普通の飼い方ならば30cm水槽辺りで十分、水量10リットル位で4,5尾って言うのが妥当な線じゃないでしょうか。もちろん、収容可能尾数はフィルターの能力や水換えの頻度に大きく左右されますから、あくまでも目安って考えてください。 中国原産の魚ですから、標準的な日本の室内であれば保温なしでも冬を越す事はこれまた前回書きましたが、ベストのコンディションを保ちたいのであれば保温器具もあった方が良いと思います。丈夫な魚なので広範囲の水温に適応可能ですが、10~30℃位までの範囲に水温をキープしてあげましょう。これだと、1年中調子よく飼育できますし繁殖も容易です。 飼育容器の水量に対して収容緒数が少ない場合は特にフィルターなしでも十分ですが、やはりフィルターを利用した方が飼育水を清潔に保てますし、水換えの頻度も大幅に減らす事が出来ます。30cm前後の小型水槽となると、使用できるフィルターも限られてきますが、お勧めはテトラの外掛けフィルター AT-30、投げ込みフィルターの水作スリムエイト・ミニあたりです。また、飼育水槽内での自然繁殖も狙ってみたいなら、稚魚を吸い込む心配のないスドーのブリーディングフィルターMSもいいと思います。もちろん、小型水槽セットに初めから組み込まれていたフィルターでもまったく問題はありません。 上記の様なフィルターを設置した水槽で、適正尾数を飼育していれば水換えは1週間から10日に1回で十分でしょう。容量の1/3程度の水を交換してやります。この時に、水槽内に水温を合わせた水道水をドボドボぶっこんでも、丈夫なアカヒレの事ですからまず問題はないはずです。少なくとも、私の経験ではアカヒレの水換えに塩素中和しない水道水用いて、魚が死んだ事は有りません。・・・でも、やはり生き物を扱っているのですから、もう少しやさしくねっ・・・って事で、塩素中和剤をちゃんと使用することをここではお勧めしておきます。また、水槽の容量に対して飼育尾数が多い場合やフィルターなしで飼育している場合は、水換えの頻度を多くし、3、4日に一度位水換えを行うようにします。 ちなみに、丈夫な魚種なので水質には特にこだわる必要はありません。理想を言えばほぼ中性の清浄な水ですが、余程賛成やアルカリ性に傾いていない限りは問題はないはずですから、我が国の水道水のレベルであればどの地域であっても心配ありません。逆に、井戸水や天然水、雨水などを利用する場合は、はじめに市販の水質測定キットを用いるか、最寄の関係機関に問い合わせて、使用する水の水質を把握したほうが無難です。 餌に関しても、何でも良く食べてくれますので身近にあった餌をあげる・・・って言うスタンスでOK!ただ、アカヒレや金魚など温帯域の魚種は熱帯魚に比べて消費カロリー量が少なめですから、高カロリーである熱帯魚様フードをバシバシ与え続けると、ブタ一直線って事になるケースもあります。その点、金魚やメダカ用フードは、温帯魚の必要カロリー量考えて成分配合してますから、金魚のミニサイズの餌かメダカ専用フードがベストの選択だと思います。また、昨今では値段も高いですので無理に生き餌や冷凍餌を与える必要はないでしょう。 水槽内のレイアウトや底砂に関しては、それこそ好みの問題なのでここではあえて取り上げませんが、水草など何らか隠れ家的存在があれば、うまく自然繁殖に持っていけた際の稚魚の避難場所となりますから、いつの間にかアカヒレの稚魚が水槽内をチロチロって言ううれしい事が起こる可能性は高まります。・・・って回りくどい言い方してますが、要は水草を入れておけって事ですね(笑)。
2012/01/06
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アカヒレ その1 やっぱりお勧めはアカヒレ 今まで縁日の金魚すくいでゲットしてきた金魚位しか飼育経験がなく、しかもその金魚でさえ1週間後に死んじゃった・・・とか言う人が、新たに何か観賞魚を飼ってみたいと私が相談受けたら、一体どんな魚種を薦めるのかなぁ~って自問自答してみました。・・・そこから導き出された結論はアカヒレですね。しかも、思考時間2秒位でしたから、私の中ではも最も飼い易い観賞魚と言うイメージがあるんでしょう。 アカヒレがお奨めなのには当然理由があります。まず第一に、サイズが小型で丈夫!アカヒレは成魚になっても全長4cmに満たない位のサイズですから、小型水槽でも十分OKです。しかも、やたらと丈夫ですから、めったな事では死にません。その特性を生かして、花屋やホームセンターなどでコップやそれに類したガラス容器に入れられて「コッピー」とか言う名前で販売されている事があります。ひどいものでは、香港辺りの市場でキーホルダーの中身に、数十mlの水と一緒に閉じ込められている事も。ただ、いくら丈夫なアカヒレでも、この手の環境下で長生きする事はありません。せいぜい1週間ってとこでしょう。はっきり申して、動物虐待以外の何者でもありません!例えば、猫を輸送用のかごの中に入れておいても死なないから、「猫はかごの中でも飼育できる」ってなるでしょうか?人は車の中に長時間いる事が出来るからといって「人間は車の中で生涯を過ごせる」って考える人がいるでしょうか?アカヒレはコップでは短期間維持できますが、飼育はできません! 次にアカヒレの長所としては、原産国が中国(一部ベトナム)と言う事で比較的低水温にも対応できると言う事。通常の熱帯魚であれば、せめて20℃理想を言えば25℃程度の水温を維持する必要がありますが、アカヒレならば平均的な我が国の室温であれば、保温なし(もちろん部屋の加温はあり)で冬を越せるはずです。あっ、よほどの寒冷地とかご家庭を取り巻く様々な諸問題から冬の間も一切暖房なしっ!とか言うご家庭は対象外とさせていただきます。 次なるアカヒレの長所は、むやみやたらと安価なこと(笑)。安い時は1尾10円位で購入できる場合さえあります。大型魚の餌としてのメダカが不足した場合に、餌アカヒレとして扱われる事も(涙)。 ここでアカヒレの学問的な位置について少しご紹介しましょう。アカヒレの学名は Tanichthys albonubes Lin,1932です。1932年に中国の研究者Lin氏によって記載されてます。ちなみに属名のTanichthysのTan=タン少年、ichthys=魚、つまりは「タン少年の魚」と言う意味で、研究者のLin先生を生息地まで案内してくれた少年の名前がタンだと言われています。原産地は当初中国の一部地域のみとされていましたが、最近の報告では中国のその他の地域や国境を接するベトナムの一部地域でも生息が確認されたと言う事です。いやぁ~、良かったですね~。と言うのも、この魚が最初に発見された中国の白雲山一体は生息環境が崩壊し、今ではアカヒレの姿を見る事が出来ないと言われていますから。まぁ、繁殖も非常に容易な魚なので、原産地が消失してもアカヒレ自体がこの世から姿を消す心配はなさそうですけど。ちなみに、現在入手できるアカヒレはおそらく100%ブリード物です。 そうそう、このアカヒレの英名はWhite Cloud Mountain minnowつまり、「白雲山のミノー(北米に生息する小型コイ科魚類)」って事で、「なんだよ、さすがアメリカ人!直球勝負でヒネリがねえなぁ」・・・って、考えてみれば日本の呼び名なんて見た目そのまんまの「アカヒレ」、果ては「コッピー」」かよっ!(涙)。※次回はアカヒレについてもう少し掘り下げた薀蓄をばご披露いたしましょう!
2012/01/02
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