Atelier Mashenka

Atelier Mashenka

2005.07.30
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
ミラン・クンデラとかチェコのこととか、ぜんぜん知らないけど
映画のタイトルとして「存在の耐えられない軽さ」は知っていたし
シュールなエロティックな映画なのだろう、と想像していた。

少し前に M.Saitoさん がおすすめしてたと思うんだけど
(違ってたらゴメンナサイ!)
とても興味がわいたので、ミラン・クンデラ 「存在の耐えられない軽さ」を
買ってきて一気に読んだ。
最初は入りにくく、読みにくく感じて進みが遅かったけど、
だんだん面白く興味深くなってきて、
夜を徹して朝までに読み続けてしまった。

哲学的恋愛小説、とある。
確かに表面の事柄だけでも、劇的に緊張感があり
恋愛小説としてじゅうぶん面白いし(たぶんにエロティックだけど)
チェコの歴史的背景に翻弄される3人の男女、
さらにその親や愛人などの人生も描かれ、興味深いが
それだけにとどまらないところが、いい。

重さと軽さ、自己と他者、体と心、愛と性、言葉と理解、などが
ニーチェから始まりパルメニデス、ベートーベン、フロイト、カフカなど
哲学や芸術によるエッセンスをからめて、さまざまに考察されている。

細かく読み返したり、考えたり、言葉を咀嚼したり共感したりしながら
じっくり読み進めていき、ときどき「はあ~そうかぁ~」などと
ため息つきながらのめりこんでしまっている自分がいる。

恋愛だから、とか
政治的に厳しい不安定な時代だから、とかは
表面的なことであって
常にその向こう側を見つめて描かれているのが印象的だ。
つまり1回の生を生きて、自身を見つめ、考え、行動し、周囲と関係している、
そのことに常に焦点が当てられている。

そして小説としては珍しく、言葉や思考や感覚の違いを
分析して列挙したりしている。
時間軸もさまざまに行き来し、複数の登場人物の視点から
もう一度同じ時期のことが語られたりして、
物語の筋そのものが問題ではないということがわかる。
語り手の思考・分析が全体を覆っていて、物語に酔うような話ではないのである。

この点、映画ではきっと時間軸が一方向だろうと思うし
分析の部分などは描きにくいと思うので、
そういった特長がだいぶそがれているのではないかと想像する。
(その分、物語としては美しく緊張感あふれ面白くなっているかも)

3人の男女の中では、
主人公の男の妻の苦しみもひどく迫ってくるものがあるが
男の愛人で、「裏切りは前進だ」と考える、画家の女が一番魅力的だった。

味わい深い一冊である。
しかし、すぐ全部を読み返すには、重い一冊である。
私の中に沈殿した何かが浮かび上がってきて
無性にこれを欲するときまでは、しばらく放置されるであろう・・・

存在の耐えられない軽さ
「存在の耐えられない軽さ」



存在の耐えられない軽さ
DVD版「存在の耐えられない軽さ」


映像になってしまうとかなり違ってくるのでは、と思うけど
でも、ジュリエット・ビノシュ(妻?)とレナ・オリン(画家?)かあ・・豪華だ。
映像なりに面白いかもしれない、今度見てみよう。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005.08.01 01:12:49
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

mashenka

mashenka

Favorite Blog

はにわ  東京国立… New! 一村雨さん

ブログは移動しまし… コヨーテ3377さん
happy-happy happy-tamachanさん
take it easy!! 【masashi】さん
松峰な世界 松峰さん
ロルファーサイトウ… M Saitoさん
reichel!の美味しい… reichel!さん
地方暮らしが変える1… かじけいこさん
お気楽! 幸せの種… れおなるど21さん
クサノタヨリ すもも5970さん

Comments

mashenka @ Re[1]:生誕120年 棟方志功展(11/12) 一村雨さんへ お久しぶりです! 私もうな…
一村雨 @ Re:生誕120年 棟方志功展(11/12) お久しぶりです。 この展覧会、棟方志功の…
mashenka @ Re[1]:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 一村雨さんへ 素晴らしい障壁画でしたね…
一村雨 @ Re:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 安部龍太郎の「等伯」を読んで、この親子…
mashenka @ Re[1]:横山操「ウォール街」(10/31) 一村雨さんへ 横山操の手にかかるとNYの…

Freepage List

Calendar

Archives

2024.12
2024.11
2024.10
2024.09
2024.08

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: