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魅惑の渚 (4)
昔から多くの男たちが克服してきた事とはいえ
自分の恋人に胸を焦がした男がいる。
男の胸の奥にあった微かだが確かな火種に
自らの手で水をかけ見えない炎を消した男がいる。
まったく見ず知らずの他人なら
「なんか悪いな」などと思うことも無かっただろうに
「お先に失礼しまーす」
そうやって明るく挨拶をくれながら撮影機材を抱えて
砂浜をあとにしてゆくスタッフたちの中に秋穂は居た。
昨日までは、大きく明るい声で
『佑さん、上がりますよー!』
そんなふうに声をかけてくれていたのに
今日はみんなと一緒に、しかもやっと聞き取れる声で
・・・・・
諦めさせた対象の片割れがこの俺だなんて・・・
しかし、こんな時でも女は、特にマキは強かった。
ただの男友達には軽く手を振って応え、もう一方の手は
惚れた男の手に置いて指先を絡めて、さらに男の心を読み取る
「仕方ないでしょ、あんたには彼を慰めてあげることなんて出来ない」
「わかってるって、そんなことくらい俺にだって・・・」
どうかしらね、と言いマキは俺の胸に預けていた頭を起こし振り返った。
「あたしがここへやって来たら、そして自分の気持ちに素直になったなら
あんたに甘えることになる。そしたらこんな事になるかも知れないって
分かってて、それでもあんたに会いたくて此処に来た!・・・ 」
ああ、マキ!
俺は身体を起してマキを後ろから抱きしめた。そして言った。
「マキ!もういい!相変わらず鈍感な俺のためにお前が
自分を責めることなんてないんだから!
ごめんよ!そして有難う、会いに来てくれて!」
いつの間にか太陽が海に隠れる準備を始めていて海辺の
鮮やで多彩な色は黄金色に染められつつあった。
マキが目を閉じているのは、眩しいからだけでは無かった。
彼女の幸せそうな表情で、そうだとわかる。
再びサングラスをつけると、マキは立ち上がり佑にむけて
手を差し出した。
ホテルへ戻り、シャワーを浴び、着替えを済ませ
みんなと共に夕食を摂っている間は普段どおり
会話に参加していたマキだったが、食べ終えると唐突に口を開いた。
「ごめんなさい、あたしなんだか眠くなっちゃったみたい
楽しくおしゃべりしてる時に悪いんだけど、先に部屋に戻るわ
ね。今日はお疲れ様、おやすみなさい」
って手を振って、もう歩き出している。
「じゃあ、悪い!俺もこの辺で・・・お疲れ様、お先です」
と佑も席を立った。
「お疲れ様でした~」
若干無理した挨拶を受けながら佑はマキを追う
今夜、彼の部屋に人の温もりが漂うことはまず無い
夜はマキの部屋から更けていった。
秋穂君はこの歌が好きになったそうです。
「少年時代」 井上揚水 Up主はnishiyan000さまです
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