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小説 「 scene clipper 」 Episode 16
「それでその後、夕子さんはどうなったんですか?」
「気になるか」
「そりゃそうですよ、自分とこの夕子と名前が同じなんですから」
「うん、あいつ頑張ったよ・・・ほんとはよ、元々勉強していろんな事を知るのが好きだったからな、親父さんがあんなことになってお袋さんのことを考えると進学したいとは言えなかったんだろうからな・・・
それが行けるようになってからは猛勉強して
大学をトップで卒業して大手の企業に就職出来て今は九州支社で頑張ってるらしい。・・・
」
「すごい、本当に頑張ったんですね!・・・・・あと夕子さんが大学に行くとなると、もしそれが遠くだったならお袋さんはどうなったんです?病気がちだって言ってましたよね」
「おう、それなんだがな・・・」
リョウはビール瓶を持ち上げて、中身のないのを確かめた。
「ビールは終わりだな、バランタインにするか」
水城は立ち上がりキッチンからトレイにのせた水割りのセットを持ってきた。
「あと氷を持ってきますから」
「水城、気が付くじゃん」
「さっきリョウさんがトイレに行ったときに用意しましたから」
「えらいなあ、どうしちゃったのかな」
「はいはい、自分が水割り作りますから、いいんでしょ?ビールの後は水割りで」
「うん、やっぱ気が利いてるよなあ今日の水城ちゃん」
「もう、分かりましたから、覚えてますか?次は夕子さんのお袋さんの話ですよ」
「そうそう、その事なんだよ俺の話は」
「・・・・・・・・・・・」
「まあ、あれだな・・・物事ってのはいい方に転び始めるといいことが続くってこともありなんだな、小さい頃から遊んでくれてた近所の内科医院のお嬢さんがな、院長してたお父さんが亡くなって代わりに医院を継いだんだ。そこで思い切って相談したらな」
「はい、・・・」 水城はまた膝を進めた。
「したらな『それは丁度よかったわ、炊事とか掃除をやってもらってた人が辞めてしまったから次の人を探していたのよ、山本君のお父さんの知り合いなら好都合だわ。さっそく明日からでも来てくれるように言ってくれる?』てな具合でさあ、ラッキーだったなあ」
「それは本当に超ラッキーでしたねー!」
「だろ?俺も少しは夕子の役に立てたからほっとしたなあ、あん時は・・・」
水城の奥さんになる夕子ちゃんからもらった、心づくしのビール瓶の蝶ネクタイが思い出させてくれた、もうあまり思い出すことが無くなっていたあの頃の事が、予想だにしない温かさで心を豊かにしてくれた・・・よく冷えたバランタインの水割りが何故だかいつもに増して美味しくて、美味しくて・・・
「お前さあ、この部屋禁煙だって言ったろう・・・目に沁みて・・・困るんだよ・・・」
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