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さあ、このお店に水城とマリと私を入れて3人で食べに行きます。
因みにこのお店「代一元」は大衆食堂のような所謂「街中華」と言われる気軽に楽しめる
中華屋さんです。
3人は「代一元」の暖簾の前に立った。
リョウが暖簾をくぐろうとすると、水城が首を振って押しとどめる。
「何だよ・・・」
「レディファーストでしょ、マリさんどうぞ」
と暖簾を手の甲で押し広げてマリをくぐらせた。
「ありがとう水城君・・・先に入ろうとした誰かさんと違って優しい・・・」
マリは俺の顔を見て柄にもなく品を作りながら入っていく。
俺は水城に一言くれてやろうかとしたが、視界ギリギリのところで脚を組むのが見えた。
「リョウさん、ホント好きねタイトスカート」
ここは何も反応しないでおくのが正しい選択だろう。
リョウはマリの隣りに座り水城がその
横に座った。
「さて今日は・・・」とメニューに目をやる
「フンフン、今のは賢い。無反応なのが大人って感じよ」
「・・・・・・」
「大将、僕は餃子とビールください」
「あいよっ」
「水城昼間からビールか・・大将彼が未成年かどうか確かめなくていいの?」
「大丈夫、彼は高校生の頃から来てるから、あれからもう5~6年は経つよね」
水城は嬉しそうに「はい」と元気よく返事をした。
ほう、ここの大将がこんなに愛想よく接客するとは知らなかった・・・。
「じゃあ私は天津飯をお願い、あと、リョウも餃子食べるでしょ?」
頷く
「餃子も・・二つください」
「はい」
最後かよ俺が・・・
その時例の音がした。カラッと揚げた太麺の入った斗缶のふたを開ける音だ!
「五目堅揚げそば」がリョウの好物だと覚えてからここの大将は斗缶のふたを開けて
用意するようになったのだ。
そして悔しいけどその魅力に負けて「五目堅揚げそば」を注文すると勝ち誇ったよう
に無言で白い歯を見せるのである。
なのに今日もまた「五目堅揚げそば」と言ってしまった。どこまで好きなんだ。
そして嬉しそうな大将の声が
「あいよっ」 おまけにニヤついてるし・・・
「どうしたの
?
悔しそうな顔してるわね」マリが心配そうに顔を覗き込む
「悔しいさ、でも仕方がないんだ」
「・・・・・」
やがてリョウの前に降りてきた「五目堅揚げそば」は気のせいじゃなく大盛りだ。
勝者による敗者に対する余裕の慰めか!
でもやっぱり美味しいし大盛りにも無言で感謝した。
やがて3人は「ごちそうさま」を言い店を出た。
「リョウさんごちそうさまでした」と二人が言い、「スカートのスリットは前じゃ
なきゃだめなのか」と言うリョウに、
「リョウが嫌ならやめるけど嫌じゃないでしょ?」
とからかうマリ
「いいっすねえお二人は仲が良くって・・夕子どうしてるかなあ」
水城がつぶやき
リョウとマリは吹き出してしまった。
腹を満たし、軽口を叩きながら歩いていたら水道道路に出た。右を向いて、つまり東 の方に行けば新宿の都心に出るが、それよりずっと手前であの事件が待っていることを この時、誰一人予想できる者などいるはずもなかった。
(写真の代一元は 2022 年 7 月時点営業中でしたが、残念ながらその後閉店してしまったそうです。残念!)
いつも応援頂きありがとうございます。今日もよろしくお願いします。
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