マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2010.10.12
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カテゴリ: スポーツ関係
 2つ目の失敗 

 笹をつかみ、灌木の枝をつかんで、繰り返し岩を乗り越える作業は結構きつい。ガイドさんが「歩く速さはこれくらいで大丈夫ですか?」と第4班に聞いた。「いや速過ぎます。もっとゆっくり進んでください」最初に音を上げたのは妻だった。普通でも大変な山道が、水が溢れて泥んこ状態だととても歩きにくくて疲れる。「分かりました。もっとゆっくり歩きましょう」。

 スピードは少し落ちたが、それでも私達は必死だった。滑ること、転ぶこと、水に濡れること、汚れること。初心者はそんなことを極端に恐れる。この朝、家を出る時に履いたのは、高校の山岳部に所属していた第1現場の若者からもらった革製の登山靴だった。だが、私には少し窮屈過ぎて歩くと足が痛んだ。それでは5時間半もの道程に耐えることは無理。そう判断して、慣れたキャラバンシューズに替えたのだった。

 ズック製だから軽くて履き易い代わり安定感が不足し、水が浸入する。出来れば可能な限り濡らしたくない心境だった。妻のことも忘れ、必死で前進。ある程度距離を稼ぐと、立ったままでの休憩が入る。「お父さん、水」。妻が慌てて私に催促。そしてお菓子も食べたいと言う。どうやら思いがけない運動量で、血糖値が下がったのだろう。私も水を飲み、お菓子を食べてエネルギーを補給。

 2度目の休憩時に、堪りかねてセーターを脱いだ。激しい運動でとても暑い。それ以上無駄な汗はかかない方が良い。1枚脱いだだけでもその効果は抜群。気持ちが良くなって再び歩き出す。300mほど進んだ時、目の前が何故だかスースーすることに気づいた。手で目を触ると眼鏡がない。先ほどセーターを脱いだ際に、外した眼鏡を忘れて置いて来てしまったようだ。

 これは一大事。眼鏡がないと不便極まりない。折角苦労して登った山道だが、ここは引き返すしかないだろう。慌てふためいて、滑る道を下る。最後尾の添乗員さんに、そのことを告げると、彼も一緒に付いて来ると言う。ツアー客に万が一のことがあれば、彼も責任を問われるからだろう。先頭のガイドに無線で事情を話し下山。

 「どの辺りですか?」。添乗員が何度も尋ねる。だが、どの場所と言われても識別できる特徴がある訳でもない。「少し広い草地です」。あまり慌て過ぎて、とうとう水に落ちた。ズブズブと靴の中に泥水が入る。ええい、もうこうなったらヤケクソだ。一旦濡れてしまえば怖いものはない。

 眼鏡はちゃんと元の場所にあった。「こんな地面に置いたんですか」。呆れたような添乗員の声。だが一体どこへ置けば良かったと言うのか。人に踏まれる場所ではないし、ちゃんとこうして覚えていたのだから。多分往復で600mは損したと思う。だが、そこはウルトラマラソンで鍛えた体。先頭のガイドに無事眼鏡発見を報告し、全速力で元の隊列に戻る。

 やがて登山道が途切れ、沢にぶつかった。ここは地震の際に駒の湯温泉を埋め尽くした泥流が発生した新湯沢の最上流部。普段なら細い流れなのだろうが、降り続いた雨で水かさが増し、流れも急。ところがガイドの姿が見えない。4、5人のグループで沢の右岸を登って行ったところ、後から呼ぶ声。どうやら途中で左岸に渡るようだ。慌ててガイドがいる場所まで戻ると、彼はロープを張って安全を確保していた。

 私は他に安全な経路はないか、岩を飛んでそこへ向かおうとした。だがその先はやはり渡れそうもない。引き返す途中、安全だと思えた岩が不安定。それでも無理に飛んだら、滑って川へ落ちた。幸い深さはさほどでもなく、膝から下が濡れた程度で済んだ。やはり勝手な判断だったと反省。これが2つ目の失敗だった。<続く>






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Last updated  2010.10.12 16:42:22
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