マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.06.27
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カテゴリ: 俳句


    月橘の香れる闇の仄白き      山田静水


 沖縄に行って驚くことは多いが、植物の多様性もその一つだろう。亜熱帯の島だから本土と植生が違うのは当然なのだが、那覇空港に降り立ち艶やかなランの歓迎を受けた時から「異国」に来たことを感じる。そして空港ビルの外に出ると、沖縄独特の匂いが風に乗って届く。「ああ沖縄に来たな」と思う瞬間だ。

 バスの車中でもモノレールでも、いかにも南国らしい樹木が目に飛び込んで来る。ワシントンヤシ、ソテツ、ガジュマル、モクマオウ、ナンヨウスギ、クロトンなどがそれ。そして住宅街などを歩けばゴムの木、タマモモ、フクギなどが植えられ、ハイビスカスやブーゲンビレアなどの花々が四季を通じて咲き乱れている。

 樹木の大きさや形にも驚く。ガジュマルはイチジクの仲間だが、「気根」と呼ばれるヒゲを垂らしている。これが地上に達すると直ぐに太くなり、今度は「支柱根」となって台風でも倒れないほどの頑丈な支えとなる。名護のヒンプンガジュマルには「キジムナー」が棲むとの伝説がある。小人の妖精だ。シダも内地と違って巨大。ヘゴシダはまるで植木のようだ。

 柑橘類も内地のものとは違う。シークワーサーは「ひらみレモン」の別名を持つが、小型のミカンみたいで、ミカンの原種に近いのではないか。このジュースが格別に美味しい。見かけは悪いが食べて美味しいのがタンカンで、オレンジよりも甘い。皮が堅い「カーブチャー」と言うのもあるが、これは「皮を剥いて食べるもの」の意味か。

 月橘(ゲッキツ)はその柑橘類の仲間で、果実は1cmほどの小さなものらしい。そして色はオレンジ色ではなく赤で、もちろん食用になる。英語名はオレンジジャスミンまたはシルクジャスミン。その名の通りジャスミンに良く似た香りを放つ由。不思議なことに月夜には特に香りが強まるとか。月の光を浴びて咲く月橘。白い花から放たれる強い香りは、周囲の暗闇へと広がって行く。

 沖縄のお茶も一風変わっている。サンピン茶はジャスミンティーのことで、非常に爽やかな味がするお茶。バンシルー茶はグァバティーのことで、体に良い薬のような味。それらも庭の一角に植えられており、句中の月橘もきっと生け垣になってるのだと思う。月の夜に良い香りに魅かれてそぞろ歩くのも一興。南国の夜は闇までも甘い。





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Last updated  2011.06.27 19:55:45
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