マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.07.03
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カテゴリ: 俳句



    黒南風やまなこ潰えて二十年      湧川新一


クール

 黒南風(くろばえ)は梅雨のころに吹く南風。南風は「はえ」と読むが、沖縄では訛って「べー」と発音する。じっとりと湿り気を帯びた風が体にまとわりつく沖縄の梅雨。赴任した当時は、あまりの蒸し暑さに驚いた。4月だと言うのにバスには既に冷房が入っていた。

 上司が関西出身の「いらち」(短気者)で、私は連日彼の部屋に呼ばれ、怒られてばかりいた。東北人にとって関西人は気持ちが通じない人種だと感じたが、今になって考えれば、彼も実績を上げるために必死だったのだろう。晴れない気持ち。そして鬱陶しい沖縄の梅雨。その重苦しさが20年ぶりに私に「詩」を書かせてくれた。

 結局私は3年間を沖縄で過ごした。最初の2年は家族5人で。そして最後の1年は高校3年の長男と一緒に。この間クーラーはなく、扇風機だけで我慢。妻や長女がいた2年間は、アパートが1階で物騒なため、網戸にすらしなかった。ひたすら我慢をし、大汗をかきながら寝ていたのだ。あの寝苦しい夜が忘れられない。

 内地とはまったく違う植物群。それに沖縄は歴史も文化も日本とは違う独自の世界だった。冷涼な土地に生まれた東北人にとっては厳しい3年間だったが、私は今でも沖縄に赴任したことに感謝している。

 驚くべき経験も今は懐かしい思い出。私が沖縄に惹かれるのは、かつての東北同様に貧しかったからだと思う。だが、貧しさは同時に豊かさでもある。旅人をもてなす篤い人情が沖縄には残っていたのだ。

 あれから沖縄関係のHPを幾つか見た。美しい観光写真、ある島の果樹園、子育て中の沖縄人(うちなんちゅ)などだった。だが、いずれもやがて観るのを止めた。どこか物足らなかったためだ。そして沖縄本島を自分の脚で1周することを思いついた。

 1年目は西海岸沿いの140kmを3日間で。2年目は東海岸の150kmを2日間で。そして3年目の昨年は知念半島1周32kmとNAHAマラソン42kmを2日間で。今年は最後に残った本部半島1周50kmを走る予定だが、東日本大震災後体調を崩したまま。果たして実行出来るかどうかはまだ分からない。

 私のお気に入りのブログの1つが「らんふぉにっき」。これは沖縄赴任時の走友であるらんふぉさんが、自慢の写真を毎日のように更新しているもの。美しく、珍しい沖縄の写真が満載され、私にとっては天国みたいな存在だ。それに同じランナーとして共感出来ることも多い。

 そして私の部屋を飾っているのが沖縄出身の版画家、名嘉睦稔(なか・ぼくねん)の版画。いかにも南国らしい色合いの版画が疲れた心を癒し、懐かしい南島の風景を思い出させてくれる。12回に亘って記したこのシリーズも今日が最終回。面白くもない企画に付き合って下さった読者に心から感謝したい。<完>





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Last updated  2011.07.03 19:32:32
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