マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.10.31
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カテゴリ: 読書
北杜夫が死んだ。亨年84歳。死因はインフルエンザの予防接種後に引き起こした腸閉そくだったようだ。歌人で精神科医だった斉藤茂吉を父に持ち、精神科医でエッセイストだった斉藤茂太が兄。本人も東北大学医学部を卒業した精神科医だったが、あまりその方面で活躍した話は聞かない。

彼の名を高めたのは、ドクターとして乗り込んだ水産庁所有の船での経験をもとに書いた「どくとるマンボウ航海記」。これ以降「どくとるマンボウシリーズ」が大人気となった。ユーモア溢れる独特の文体に癒された読者が多かったのではないか。私もこのシリーズが大好きだった。その一方で、芥川賞を受賞した「夜と霧の隅で」のようなシリアスな作品や、自らの家系を描いた「楡家の人びと」のような作品もある。

晩年の彼が話題になったのは、躁うつ病の明確な症状だった。「うつ期」には自宅に引きこもり状態となり、「躁状態」の時は全財産を株の購入に充てるなど、ハチャメチャな行動を取ったようだ。だが、そんな時でも変わらずに愛された作家だったと思う。

彼の本名は宗吉。父茂吉は自分の名前のうち兄には「茂」の字、弟には「吉」の字を与えた。兄が最初に入学したのは明治大学文学部で、弟は松本高等学校(現在の信州大学人文学部)だったが、父は強引に自分と同じ道を進ませた。北はきっとそれが重荷に感じていたように思う。

娘の斉藤由香がエッセイストであることは、彼の死をきっかけに知った。これで思い出すのが幸田家のこと。幸田露伴は「五重塔」などを書いた明治の文豪だが、その娘の幸田文はエッセイストとして著名だった。孫の青木玉はその母の血を引き、ひ孫の青木奈緒もエッセイストと言う4世代にわたる文筆家の系譜に驚く。

 私は遠藤周作にも北杜夫と同じような感性を感じる。「狐狸庵シリーズ」のようなユーモア文学に傾倒する一方、「沈黙」のような重厚な作品もあるためだ。それは彼が敬虔なカトリック信者だったことと関係が深いのだろう。また井上ひさしのユーモア精神とも共通性が感じられる。井上が作品で人を笑わせながらも底辺に哀感が漂うのは、彼が孤児だったことと無縁ではないだろう。3者に共通するのは、深い人間性だ。

さて、最近司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズの何篇かを読んだ。人間に対する視点や歴史に対する視点は、彼独特のものと感じた。絶えず「日本人とは何か」、「歴史とは何か」を追求する姿勢が、常識を超えた英知として文脈に溢れている。文化勲章が授与されたのも、きっと彼の類まれな追及心に対してだろう。そして当然のことだが、作家の評価は彼らの死後もなお続くのだ。

< 10月のラン&ウォーク 

ウォーク距離:128km ラン回数:9回 ラン距離:122km 月間合計:250km 年間距離合計:2989km うちラン:1518km これまでの累計:77、669km





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Last updated  2011.10.31 17:05:51
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