マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2016.10.28
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カテゴリ: ランニング全般

         蔵王エコーラインの眺望

 還暦を少し過ぎたころから、リュックを背負って1人で走るようになった。いわゆるマラニック(マラソンとピクニックを兼ねたもの=合成語)だが、それもウルトラマラソンの練習だった。仙台の自宅から石巻市までの夜間マラニック(60km)は2晩寝ないで走る「佐渡島一周」対策の練習だった。それがいつしか峠を越えて隣県まで走ることに惹かれるようになった。

 自宅~二口峠~山形市山寺(53km)、自宅~関山トンネル~山形県天童市(56km)、自宅~笹谷峠~山形市(56km)、白石市~金山峠~山形県上山市(57km)、自宅~蔵王エコーライン~山形市蔵王温泉(77km)、自宅~国見峠~福島市(80km)などがそうだ。また海岸沿いに石巻市~気仙沼市(90km)なども走った。それがやがて沖縄本島単独一周(440km)走破につながった。


 太安万侶の墓(奈良県)

 走りながら見えるのは道路や景色だけとは限らない。平成16年の奈良市内マラニック(50km)では、奈良公園からスタートし、時計回りに東大寺転害門~忍辱(にんにく)山~柳生の里~新薬師寺~奈良公園と一周した。この時走りながら偶然見つけたのが太安万侶の墓の案内板。歴史好きな私は、もちろん苦労しながら探しに行った。

 太安万侶(おおのやすまろ)は稗田阿礼(ひえだのあれ)が記憶していた日本の歴史を「古事記」として編集した人。茶畑を開墾していて偶然に発見した墓だが、埋葬者が誰か分かったのは名前を刻んだ銅板があったため。このリュックを背負っての60歳の旅が47都道府県走破の記録を作り、同時に私の最初のマラニックになった記念すべき日となった。



      カラムシ(苧麻)            カラムシで織った布

 平成20年の「宮古島ワイドーマラソン」(100km)では、走っている途中にカラムシを栽培している植物園を見学した。前日、島のオバーが偶然カラムシを織る様子を見た。それでカラムシを栽培してる所を聞いていたのだ。オバーは織ってるものを「ぶー」と呼んでいた。これはきっと「布」(ふ)が訛ったものだろう。私はそう直感した。

 私がカラムシの名前を知ったのは考古学の専門書。縄文人がその茎の繊維を布の材料にしたようだ。だがどんな植物かは長い間分からないでいたのだ。どこにでもありそうな普通の草だったが、やがて近所の博物館で栽培しているのも知った。この日のレースでは、東平安名﨑でマミヤの墓も見た。琉球王朝時代、沖縄本島の首里から来た役人を好きになった宮古島随一の美人の墓だ。私はレース中にも歴史の勉強をしていたのだ。大笑い



                  佐渡島宿根木集落の北前船 

 206kmのレース「佐渡島一周」には3度出たが、その3回目の際に宿根木(しゅくねぎ)集落の博物館で見たのが、この北前船。博物館は閉まっていたが、偶然扉の隙間からこの巨大な船が見えたのだ。北前船は西廻り航路で蝦夷が島(北海道)や東北の産品を大坂まで運ぶ船。途中で山形の酒田港や福井県の敦賀港などにも寄港した。

 この船は帆船のため、風が吹かないと動けない。そこで各地に風待ち港があったのだ。佐渡島の宿根木は小さな港だが、波を避け風を待つのに好都合の深い入り江があった。この島には日蓮が流された集落や、流刑に遭った上皇の墓のある町もあった。私は走りながらそんな場所を見つけ、記憶していたのだ。




 これは宮城県の松島にある雄島の岩窟と稲荷社の祠。3年ほど前の「みちのくラン」の際にここに寄った時に小さな祠を見つけた。そこの説明板にこの小島の狐が都で正一位の称号を受けた帰り道、石巻まで帰る船に乗って、寒風沢島で下してもらったと書かれていた。

 この小島は松島の瑞巌寺の所領で、かつては多くの僧が修行していた聖地。江戸時代には松尾芭蕉が弟子の曽良と一緒にこの島を訪れている。だが、私はなぜ狐が船に乗るのか、この時は全く分からなかった。



       松島湾の有人島         寒風沢島の縛り地蔵(眼下に港が見える)

 松島湾に浮かぶ島のうち4つの島には人が住んでいる。昨年の「みちのくラン」では、塩釜港から市営のフェリーに乗ってこのうちの3つの有人島を訪れた。青い色の寒風沢島はかつて風待ち港だった所。伊達政宗が領内の沼地を干拓して米作を進め、余剰米を船で江戸に送った。米の積出港の一つが石巻。当時の北上川を改修して良港に変えていた。

 だが風が吹かないと船は出ない。この寒風沢島には江戸時代女郎屋があり、女郎衆は船乗りたちが船に乗り込めないよう、地蔵を紐で縛った。つまり船乗りたちは風が吹くのを祈願し、女郎衆は風が吹かないことを願い地蔵が自分たちの言うことを聞くよう、縛ると言う荒業に出たわけだ。これで松島雄島の狐の話も理解出来た。それはつい最近ようやく結びついたこと。走りながら、歩きながらでも歴史の勉強が出来る見本だ。




 ひょんなことから書き始めたこのシリーズ。1回で終わると思っていたのに、今日で4回にもなってしまった。私は老化で満足に走れなくなったが、ランニングやレースの思い出は数え切れないほどたくさん持っている。それほどランに打ち込んでいたのだ。これからは歩きが中心になるだろう。そうして東北や日本の古い歴史を学ぶ予定。走れなくなった私だが、まだ楽しみが少しは残されているようで嬉しい。ぽっ<完>





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Last updated  2016.10.28 06:18:08
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