マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2018.03.14
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カテゴリ: 文化論
~「童の蔵」と新館~



 「童の蔵」(登録有形文化財指定)は大正時代の建築物で、斎理屋敷の中で最も新しく、最も小さな蔵であることは以前も書いた通りだ。



 「童の蔵」の入り口にある看板。もっとも小さな蔵であることから、ここは子供の玩具を中心に配置したそうだ。この看板が「凧」の形をしていることに、皆さんは気づかれただろうか。



   これは「字凧」。天にも昇る勢いの「龍」の文字。



   こちらは絵凧。勇ましい武者が描かれている。川中島の上杉謙信と武田信玄のようだ。



   左の凧には「義経八艘跳」と書かれている。壇ノ浦の戦いの様子だ。右は「奴凧」。



 右の凧には「自来也」と書かれている。自来也(別名自雷也とも)は、江戸時代の怪奇小説に出て来る盗賊で妖術使い。義賊のようだが、その実態は知らない。子供時代の私は、あまり凧を上げたことがなかった。結局は凧を買うお金がなかったからだろう。野球、かくれんぼ、鬼ごっこ、木登り、チャンバラ、独楽回しなどが遊びの中心で、刀や「杉鉄砲」(杉の実を弾にする)なども全部自分で作った。



 竹で作った玩具。上の段には竹トンボ(左端)や剣玉(右端)が見える。竹製の剣玉は仙台では「チャカポコ」と呼んだ。遊ぶとそのような音がしたからで、木製の剣玉よりもずっと単純な構造で、面白味に欠ける。上段の真ん中の玩具には「ハンドル」がついている。下段の玩具同様用途が分からない。縄文時代の火きり棒にも似ている不思議な形だ。



 標準語で言う「めんこ」。仙台では円形の物を「パッタ」と呼び、大抵は武者絵が描かれていた。長方形のものは「スケッチ」と呼んだ。「パッタ」は打ちつける時の擬音から来たのだろうが、「スケッチ」は意味不明。この写真のような絵から来たのだろうか。ともあれ、私の少年時代は戦後間もなくの物が乏しい時代。食料にも事欠き、貧しかったが、案外楽しかった記憶が残っている。



 お手玉は女の子の遊び道具。食糧難の時代には、小豆の代わりに何を入れていたのだろう。残念ながら私はお手玉で遊んだことはない。ただあるとすれば小学校の運動会の玉入れ。あれは紅白の玉だったが、大き目のお手玉と言えなくもない。ウィンク



 遊ぶ子供たちの人形。真ん中に鬼はいないが、これは「かごめかごめ」だろうか。屋敷での暮らしを表現したオリジナルの人形が各蔵ごとに置かれている。その数は30にも上るだろう。具象的で優れた人形だが、今回はこの1枚だけ撮影した。撮影時の姿勢が苦しいのと時間がかかるためだ。いがぐり頭の少年におかっぱ頭の少女。この屋敷でもこんな小さな子供が働いていたのだ。



 新館。博物館事業を円滑化するため平成になって新築した建物。斎理屋敷が最も栄えていた大正時代の建築物を模した。2階には昭和初期の屋敷近辺の街並みがジオラマとして再現されていた。私は撮影しなかったが、古い街の様子を知る人たちが、懐かしそうに眺めていたのが印象的だった。



 歴代当主の中には珍しい物を収集する人がいたようで、蔵には色んなものがあった由。これもその中の一つでアワビの貝殻みたいだが、ひょっとしたら細工物かも知れない。



 これは真珠貝だろうか。真珠の養殖には普通アコヤガイ(阿古屋貝)を用いると聞くが、これにも貝の内側に真珠のような光沢がある。



 燦燦と早春の光が差し込む室内には、吊るし雛が飾られていた。どうやら椿の花のようだ。



 この日、新館の1階では講習会が開かれていた。どうやら地元のご婦人を対象にした、人形作りのようだ。斎理屋敷を全て見終えて「まるもりふるさと館」(博物館)に向かう途中、付近に「高齢者振興財団」のような名称の看板が見えた。恐らくは俗に言う「シルバーセンター」なのだろう。



  そして「ふるさと館」には大根の飾り物があった。「何だ何だ。福島県会津地方の大内宿でお土産として売っていた野菜の飾り物がなぜここにあるんだ」と、一瞬混乱した。だがその謎が解けた。先ほど通った「高齢者」云々の団体が、実はこれらの細工物を作っていたのではないか。高齢のご婦人でも出来る内職として。



 大内宿の土産店では「アルバイトに作らせています」と言っていたが、製造元の一つがここ丸森町だったのだろう。先ほど斎理屋敷の新館でやっていた「講習」も、ひょっとして土産物を作る技術の向上を図るものなのかも。そして吊るし雛はじめ各種の飾り物は全て、町の重要な収入源なのかも知れない。私の大胆な推理が、果たして当たっているかどうか。<続く>





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Last updated  2018.03.14 00:00:45
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