イソタケル、ミヤには真実を全て話すことにしました。
「父も母も、何故私が弟を殺したか、理解していないのだ。」
「何故、強いあなたが、弟を殺したのです。」
これは、ミヤにもかねがね疑問だったものの、聞くに聞けなかったことでした。
イソタケルは、普段はとても優しく、気が弱いぐらいにさえ思えるのですが、戦いでは勇敢であり、危険を冒してでも自分が先頭に立ち、敵味方とも極力死なないように、相手の一番の勇者だけを倒すことによって威圧して済ませようとしていました。
ミヤには、そんな彼が、自分の弟を手にかけたことがどうしても信じられなかったのです。
「ハツセは、父と母を殺そうとしていたのだ。」
「何故。」
ミヤは、更にわけがわからなくなったので、聞き返しました。
「父はそれなりに名君だが、権力にこだわる余り、家族は省みなかった。それで、私とハツセの本当の母のイスミは、寂しくて自殺したと言う。」
「では、今のお妃様のサイ様は、あなたの母上様ではなかったのですね。」
ミヤは、そのことも初めて知りました。
「実は、義母のサイは、私よりも年下なのだ。」
それでは、自分と大して違わない歳である。
「えーっ、それは知らなかった。」
「そして、元はエタチバナと同じくハツセの恋人で、エタチバナが弟の正妃となって既に王子も生まれていたのに対し、サイと彼との恋人というよりも愛人としての関係は、ごく少数の者しか知らないことだった。」
ミヤには、ハツセノミコが反逆した理由が見えてきました。
「それなら、ハツセさまが恋人というよりも愛人だったと思われるサイさまを取り上げたお父上のハヤミ国王を憎む理由はわかります。しかし、何故元恋人のサイさままで殺そうとされたのかがわかりません。」
ミヤは、ハヤミ国王が、自分の息子の愛人を寝取ったこともどうかと思ったが、よくあることでもありましたから、ハツセが義母となった元愛人のサイを殺そうとした理由の方が理解できなかった。
「サイは、美女で有名だったが、ハツセには既に正式に妃と認められたエタチバナヒメがいたこともあって、彼女は、ミヤの言うように、恋人というよりは愛人だった。そこで、ハツセとの関係が表に出ていないのをいいことに、父が彼女を召し出したのだ。国王命とあっては逆らえなかったし、正妃としてもらえたのだから、ハツセの愛人よりは余程よい待遇でもあった。それでも彼女、ハツセとの仲を裂かれたことの意趣返しなのか何なのか、王妃となった後、筆頭大臣のコジマの大連と浮気していたのだ。ハツセは、余りに純粋過ぎて、実の母に冷たくした父のことも、元恋人で愛人でも、その父を裏切っている母のことも、許すことはできなかった。それで、自分が国王夫妻を殺すから、私が国王になれと勧めたのだ。そのことを持ちかけること自体が身の破滅であることを理解せずに。私は、今の話は聞かなかったことにするから思い止まれと説得したのだが、それなら俺が国王になるから、お前も死ね、と襲ってきた。ハツセは、自分の方が体が大きかったことに加えて、王宮一の剣術の名手との評判を取っていたこともあってか、実は私の方が剣術だけでなく武道全般に秀でていたことを知らなかったのだ。ただ、王宮一と言われただけのことはあって、かなりの腕前だったことが悲劇を招いた。ハツセがもう少し弱ければ、私も手加減できて何とかなったのだろうが、互角に近い強さだったため、本当に殺す気でかかってきた彼をうまくさばくことができず、止む無く手にかけることになってしまったのだった。」
理由は理解できましたが、その後の国王の措置が不可解でした。
特に、弟を殺した彼が、そのまま皇太子でいられたことが不思議でした。
「よくぞお咎めなしにいられましたね。」
彼は、寂しそうに笑いました。
「それは、大臣のコジマの大連に事実を話し、サイ王妃のことでは身に覚えがある彼を半ば脅して、ハツセが国王暗殺を図っており、反対した私を殺そうとしたから、私に殺されたことを証言させたのだ。それで、父も母サイのことで彼が自分を恨んでいたことは知っていたから納得してくれた。ついでにコジマを母と別れさせたから、母には余計に恨まれることになってしまったが。」
一つ謎が解けたところで、ミヤは、最も聞きたかったことを切り出しました。
「そうだったのですか。そこでもう一つ、エタチバナさまとのなれそめを教えてください。」
エタチバナの二人の王子の弟がイソタケルの子で、兄はハツセの子供らしいことは今までの話で理解できたのですが、どうして彼女を妃に加えることになったのかがわからなかったので、ミヤはずばりと確かめたのです。
「エタチバナとは、兄弟で姉妹と結婚していた関係だったから、一番の理由は、ハツセを殺してしまった責任を取って、彼女も妃にしろとの国王命令だった。彼女にしてみれば、夫を殺され、その犯人で、義兄でもある私の妃になれとはとんでもないことだったと思う。さすがに最初は受け入れてくれなかったが、実は彼女、サイとハツセの関係を全く知らなかったのだ。だから、事実を知ったら、むしろとんでもないことに巻き込まれた私への憐みの情からだったような気がするが、受け入れてくれるようになり、子供も産んでくれたのだった。」
画像は、母にまだお乳をねだる子猫2匹と、疲れてぐっすり寝ている母のカメです。

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