・ドイツのナチュラルワイン
ドイツワインといえば甘口、というイメージが日本では数年前までは根強かったが、ここ数年、辛口も認知されるようになってきた。一方、ドイツ産のナチュラルワインの存在感はまだ薄い。もともと 1990 年代にフランスのボージョレやジュラ、ロワールから台頭した、有機栽培のブドウを使い、一切の化学合成物質を添加せずに(瓶詰前のごく微量の亜硫酸の使用のみ容認されている)ブドウ果汁のみで醸造するナチュラルワインは、その柔らかで親しみやすい飲み口が日本人の嗜好にもあい、現在では世界的に見ても日本が重要な消費市場になっている。
10 年くらい前までは、一般的な亜硫酸を添加したワインは不安定で往々にして欠陥臭があり、産地の個性が表現されないキワモノワインといった批判にさらされることが多かった。しかし近年では、評価の高いファインワインの生産者の作り方は、栽培には農薬や化学合成肥料を使わず、醸造にも化学合成物質を使わない点で、ナチュラルワインとほとんど変わらないではないか、という指摘も出てきている。
ドイツでナチュラルワインが一部で認知されるようになったのは 2018
年頃のことだ。 2009
年にモーゼルで、 1970
年代末からバイオダイナミック農法を実践していたルドルフ・トロッセンが、顧客に依頼されて亜硫酸無添加で試験醸造したのが、そもそものはじまりだった。(醸造所のサイト: Weingut Rita & Rudolf Trossen (trossenwein.de)
)
2015 年になるとケルンでナチュラルワイン専門店「ラ・ヴァンカイラリー」 La Vincaillarie (ショップのサイト: Naturweinladen und onlineshop seit 2009 in Köln | La Vincaillerie (la-vincaillerie.de) )を営むスルッキ・シュラーデが — もう専門店まであるじゃないか、と思われるかもしれないが、彼女の店は例外中の例外で、ドイツでナチュラルワインはどこにも売っていないし知られてもいないから、スルッキが自分で輸入することにして 2009 年にオープンした店である—毎年 3 月にデュッセルドルフで開かれる大規模なワイン見本市プロヴァイン ProWein にあわせて、第一回のナチュラルワイン見本市「ヴァインサロン・ナチュレル」を開催 (2024 年は 3 月 9 ・ 10 日。イベントのサイト: Deutschlands größte Messe für Naturwein, in Köln (weinsalonnaturel.com) 。同年 11 月にはベルリンで、ロンドンが発祥の世界的なナチュラルワイン見本市 RAW Wine Fair が開催された( 2023 年 12 月開催時のサイト: Berlin 2023 | RAW WINE )。もっとも当時の反響は芳しいものばかりではなく、半分以上が飲めた代物じゃない、こんなワインが注目されるなんてどうかしている、という意見がどちらかといえば目立ったが、ともあれ、これらのイベントはドイツでもナチュラルワインが存在感を高める契機にはなったし、自分でも醸造してみよう、という気になった生産者もいたことだろう。
2018
Surkki Schrade, Nat
ürlich Wein. Ungefiltert, ungeklaert, ungeschoent - alles über Naturwein, Pet Nat und Co., 2021 Christian Verlag
)。もっとも、生産されるワイン全体からみれば 1%
にも満たないニッチで特殊なワインではあるが、その存在はわずかだが定着しつつある。とりわけフランケンとファルツ、ラインヘッセンでナチュラルワインに本腰を入れて取り組んでいる生産者の存在感があるが、近年はモーゼルでも増えてきている。まだほんの数えるほどではあるが。
(つづく)
ひさびさのモーゼル 2023年7月(10) 2024/01/07
ひさびさのモーゼル 2023年7月(9) 2024/01/07
ひさびさのモーゼル 2023年7月(8) 2024/01/07
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