離人症の器

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凪2401

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2012年07月21日
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カテゴリ: 映画。
久々に見た洋画です。
アカデミー賞を取ったりしてますので、一時話題になったりもしましたね。

史実に基づいた映画で、吃音症の英国王を主人公にした物語です。

昔のトラウマにより、吃音症となってしまった主人公は、
本来ならば王となっていた長男が、王位を放棄したために、
英国王として即位しなければならなくなります。

しかし、王といえば、国の代表として、
大事な局面で国民に語り掛けるスピーチをしなければならなくなる。

それまでも主人公は、吃音症を治すために様々な医師にかかってきましたが、
どれも効を奏さず、人前で話さなければならない場面では失敗を繰り返してきました。

そこで主人公の妻が最後の砦と訪れた場所が、
最新の言語療法を行っているとは銘打つものの、
その新しさ故に周囲からは理解されていなかったオーストラリアのセラピスト。

物語は主人公とセラピスト、二人の出会いから、
吃音症の治療や、王として即位しなければならなくなった主人公の苦悩などを軸に進みます。



非常に地味なんですけれども、すごくいい映画でした。

英国王というある種、尊い人間として一般人からは離れたところにいる公人を、
あえて一人の苦悩する等身大の人間として描いていたのが、印象的でした。

アカデミー賞というと、こう、ドラマチックでスペクタクルな内容や、
派手な演出等々思い浮かべてしまうのですが、
この映画はいい意味で地味で大げさな演出なく、
ひとりの人間が過去やコンプレックスを乗り越えて成長していく過程を見せてくれました。

ですから、何がよかった、どんなシーンがよかったと問われても、
とにかくよかった、としか説明できないのですが、本当、とにかくよかった。

アカデミー賞の中でも、こんな映画あるんだなあ、と思いながら見ていましたね。
俳優陣の誰も名前を知らないんですが、演技がすばらしいのは勿論として。


なんだか今の時代は、うまくしゃべれるということが、
頭がいいであるとか、成功していくであるとか、
そんな風にとらえられることが多いですよね。

それは、うまくしゃべれない人は、
うまくしゃべれる人にどうしたって言い負かされてしまうわけで、
仕方の無いことなのかもしれないけれど、
でもだからといって、うまくしゃべれない人の考えというか、
頭の中身とか経験の知というものが劣っているとか、
そういうわけでは決してないんですよね。

人は黙ってひとりでいる時間も、心の内側で何かしら言語的な思考をしているわけで、
その表面的には孤独であり無言であるところの時間が、
その人の深さを作っていくのだとしたら、表面的にぺらぺらしゃべられる言葉よりも、
うまくしゃべれない人の無言の語りの時間の方が、ずっと興味があります。

この、英国王のスピーチでもそうですよね。
主人公はうまくしゃべることはできないんだけれど、結局はすばらしい王様になります。

勿論、セラピストとの二人三脚で吃音症を克服したということもすばらしいんですが、
それまでのうまくしゃべれない時間の中で、
主人公が心の内側で考え、語ろうとしてきたことの蓄積があるから、
彼はすばらしい王様になれたのだと思います。

うまくしゃべれることは、確かにひとつの才能なのですが、
語られない言葉の方にも、耳を傾けられる人間でありたいですね。








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最終更新日  2012年07月21日 10時11分53秒
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