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風吹く寒い場所で
空をずっと眺めていたから
指先まで凍えてしまったけれど
体全部が悴(かじか)んでしまったからこそ
知ることもある
氷点まで冷えたガラスの私に
心という温かい飲み物を
君がそっと手渡す
暖かさに慣れなくて
躊躇う私に
もう 冬は過ぎたよと
君が柔かな声で
一つだけうなずいて
凍えた唇をそっとカップに当てて
一口含んで
「こくり」
喉を鳴らして飲み込む
凍えて細く狭まった喉を
あたたかさが押し広げながら
温度差でできたクラックが
ぱりぱりと広がり
ひび割れた部分は
大きく小さく
さまざまな形に砕けて
あたたかさと一緒に
喉の奥に滑り落ちる
その飲み物は
初めて口にする味で
どこにも二つとない味がして
あたたかくて
ただ あたたかくて
まだ寒い冬だと思い込んでいた
ほんの薄い薄い
薄氷(うすらひ)のむこう
割れた先には
あたたかな春が
静かに佇んでいて
もう 冷たいガラスではない
体温を持つ私が
割れた破片の隙間から
春めいた
空を見上げて
こんどは
からになったカップに
私と言う名前の
飲み物を満たして
君に差し出そう
あたたかな
春の訪れを
報せてくれた
感謝をこめて
ネット詩誌 MY DEAR
今月の新作掲載作品
主催者・島様に感謝
ライブ-音の水に棲む魚たち- 2011.01.28 コメント(2)
贈り物 2011.01.24
家族 2011.01.23