Laub🍃

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2018.09.10
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カテゴリ: .1次題
データが好きだ。
統計学が好きだ。
数字に落とされた人間は好きだ。
生身の人間は気まぐれで嘘吐きですぐに約束を忘れるから嫌いだ。

言ったことを翻し、覚えてないと言い、都合の良いように事実を改変する。

人間は嫌いだ。冷たい数字や美しい文字が好きだ。

そう思いながら、鬼のように研究を続ける僕に部下が出来た。

人間もデータ化し型に当て嵌め適当に相手をしてしまえば大したことはないというのが僕の持論である。
女子に個人的にもらったクッキーは喜ぶ癖に甘いもの嫌いなんですよねと言って僕に押し付けるような彼の行動も以前そういった相手が周囲に居たと言うだけで分類の対象となり安堵できる。

彼が破天荒な行動を起こし続けても、以前そういった相手が居たと言うだけで落ち着いて対処できる。

「ナサケさんって、俺が何やらかしても落ち着いてますよねえ」
「君がお調子者で破天荒というのは把握しているからな」
「そんな見てくれてんの?うける、照れる~」
「うけるな。照れるな。以前そういう知り合いが居たからな、慣れているというだけの話だ」
「…は?」

そう言うと何故か彼、ムクイは妙な顔をした。
彼に似ていると言った知人にはなかった特徴だ。
これは新たな分類の予感、次に同様の相手と知り合った時に動揺せずに済むなと内心喜んでいるとムクイは近寄ってきた。

「…なあ。あんた、何したら、本当に驚いてくれんの?」



ムクイの伸ばした手から、好奇心その他の為逃げなかったのは最大の誤算だった。
今に至るまでずっと、『ムクイに似た別の人』と会えなくなったのだから。
このままいけば一生そうなるだろう。

監禁されて何十日目になるだろう。
これまで集めたデータも、築いた分析も意味がなくなってしまった。

観察し続けるほどムクイはより一層分類を避けるように歪な変化を遂げていく。

正直、ここまでさせていることに罪悪感がないわけではない。
だが私の中の好奇心が、未だにこう囁くのだ。
無茶な事に手を出してばかりの芸人に似ているなだとか言えば、こいつは今度はどこまで歪むのか。

そう考える私こそが、一番、この世界のデータベースに載せきれないのかもしれない。





【終?】
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ケサナサケ
袈裟 情 

イクムクイ
幾久 報





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最終更新日  2018.12.25 05:20:39
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