Laub🍃

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2020.02.27
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カテゴリ: .1次長
「……これから貴方はどうする気なんですか、地の魔女。金の国を再び地上に戻すおつもりですか。それとも、木の国を支配するおつもりですか。ーーーもし、水の国や金の国や火の国を、元の豊かな土地に戻すおつもりなら……木の国の奥地の人々との折衝を緩めるおつもりなら、こんな姿にされずとも僕は手伝いますが」
 するすると、全く敵対者らしくない調子で……行商の取引でもするかのように、木の犬が喋る。
 私は隣で寝ている大事な狗を撫でながら、「やりたいこと、ねぇ」と目線を明後日の方向に向けた。

「……特にねえんだよな~~~~……別に私がアンタらに恨み持ってるわけでもないし、こうしてケルベロスも取り戻したし。ケルベロスがなんかやりてえんなら私も付き合うってとこだな」
「……俺お前のそういうとこほんと嫌い……」

 夢現でも聞こえていたのだろう、ケルベロスが答える。
 ふふ、と目が勝手に微笑む。

 そう、確かに哀れではあるのだ。
 流刑され生き残ってしまった水も。
 薄暗い地下で燻らざるを得ぬ金も。
 熱砂の異形と化し生き延びた火も。
 奪われ奥深くに追いやられた木も。

 だが特に誰に対しても何に対しても執着の湧かない私からすればどうでもいいことだった。
 少し面白そうであれば困って訪ねてくる者に手を貸してきたし、あらゆる場所で自分以外の端末が体験する物事を疑似体験することで長い長い退屈を満たしてきた。
 今ではこうして可愛い飼い犬も持っている。
 だから別に特段、私自身は何もしたいとは思わない。

「今まで通り、困って訪ねてくる奴が居たら協力するまでよ。
 それが誰であろうとな」

 困りごとーーーーー楽しみに貴賤なし。それが私の信条だ。

「要するに暇なんですね。……それなら、話が早い。貴方には各国の復興を手伝って頂きます」
「……見返りは?」
「木の国の解呪のノウハウと火の国の兵器の記録、それと水の国に蓄えられていた魔力水を横流しします」
「ほう」
「少しは金の国の復活に近付くでしょう?……そうすれば、あなたも門番の任から解放されますよね。そうしたら今度こそどこへでも冒険に出て、退屈を紛らわせればいいのです」

 なるほど。悪くない。

「……乗った」
「取引成立ですね」

 ぱちん、と指を鳴らす。目の前の泥人形を元の姿に戻してやる。

「……これはなんですか」
「結構大きな危ない橋だからな、保険だ保険」

 ただし、首輪付きだ。

「お前の自由意志は基本的には尊重してやる。……ついでだ、お前の素体も解放してやるよ。
 人格が分かれて暫く経ってるから、統合するよりかは親子兄弟として扱えばいい」
「……僕の素体……」

 呆然と呟く元犬ーーーーロガスに胸が空く。

「木の国の西の王は金の一族の出身だ。私に以前使い勝手のいい兵士を増やそうって時に相談してきたのさ。だからお前の素体と木の国の作物とを生贄にして、そっから生物情報やら性格やら引っ張ってきた泥人形どもを生産させてもらった。……最も、減っちまって一体しか残ってねえようだがな」
「……では、僕にとっては親のようなものなのですね」
「そうだな。いけすかねえところもそっくりな親子だ」
「……会ってみたいです。彼はいつ解放してもらえますか」
「望むなら今でも構わねえぞ。エネルギーが丁度ありあまってるとこだ」

 そう、丁度さっき取り込んだ勇者からのエネルギーがな。


【四天王の憂鬱】





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最終更新日  2021.05.10 02:01:37
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