考え中 0
全109件 (109件中 1-50件目)
今日の日記(恐怖の嫁姑ドラマ「となりの芝生(新番組)」感想と息子の乳歯☆)<あとがきのようなもの>金曜に髪を切ってきました。そこの美容師のお兄さんとはいつも他愛無い会話してます。その時に話の流れから、お兄さんは何歳だったかな?って話になりました。25歳になりますね~。髪は派手だけど、しゃべると硬派な感じのお兄さんが答える。25歳かぁ~戻ったらどうするかねぇ。そんな話になる。何しますか?そう聞かれて、そうだなぁ~と考える。やりたいことは一つしかないけど、重い話になるので軽い話に切り替える。とりあえず「合コン」やってみたいな。私が答える。自分が主催じゃない合コン。いつも集める立場だったから~。周りが大人しい真面目タイプの友達が多かったんですよ。私も付き合ってた人がいたんで、そういうのなかったんで。声をかける方。だから、彼氏がいなくて、そういうの呼ばれてみたかったな~。よそで話聞くと楽しそうだから。美容師のおにーさんが答える。え~、そうなんですか?そうですよ。みんな相手が来るの待ってるの。「りらっくちゃんみたいに性格が悪い子に彼氏がいて、何で私にいないかなぁ~?」って、言われてたよ。ひっどいなぁ~。笑いながらおにいさんが私の髪を切っていく。でも、よっぽど仲のイイ友達なんですね。そんなこと言えるのって。あ、わかります?わかりますよ~。仲良くなきゃ、そこまで言えないですって。そんな会話をした。たった一言で、私と彼女の仲ってわかっちゃうんだ?そんなことを思った。で、その友達は今は結婚したんですか?思いもしない質問に言葉が詰まる。ううん、してないよ。この「ひっどい」と言われた言葉をかけてくれた彼女は、27歳の時に悪性腫瘍ってやつで亡くなった。9月半ばに入院して11月14日に。本当に二ヶ月も無い。人生ってあっけないんだな。私のイイところどころか、悪いところも知っている、私の大切な友達だ。もしも25歳に戻れるなら、本当は、やりたいことはたった一つしかない。「身体検査は欠かさずにやってね。バリウム嫌なんて言ってちゃダメだよ。それで、未来で私と思い出を沢山作らないといけないからね。」そう言いたいなぁ。戻れることがあればだけど。それ以外に25歳でやり直したいことなんて、多分何も無い。今も私は、彼女が見るはずだった世界を見ている。グダグダ言いながらね。あ~あ。それでも、貴女がいない世界は何だか物足りないよ。だから勝手な物語作っちゃった。(笑) 今日は結婚記念日。りらっくちゃんにしては、よく奥さんやってるよね~って、あの甘ったるい優しい声で、笑いながら言ってくれてるかもしれないな。2007年 11月 ハッシー 最初から読む目次最近、ギターを始めた。教えてくれることになった先生と顔合わせに飲むことになった。先生と先生の友達は若くて、会話も、まるで昔の私と彼女のようだった。先生と話していたら、驚いたことに私の出身校の後輩だと言うことがわかった。ってことは、彼女の後輩にもなるワケだ。先生と話してるとナゼだか彼女のことを思い出す。先生が親友の話なんかするからかもしれない。ねえ、私も多分貴女がいたらさ、こんな偶然の驚きを真っ先に報告したんだろうね。そんなことを心の中でつぶやく。こういうことがある度、彼女の不在にガックリする。淋しい。それでも普段いなくても、やっぱりまだ彼女が私の中にいる。2009年 7月 ハッシー
2009年07月02日
コメント(5)
今日の日記( 「MW-ムウ-第0章 ~悪魔のゲーム~」感想とお疲れ?な私☆)「オレとボク」(最終)赤木くんが逝ってしまってから3年経った。カリナは二人目を妊娠していて、もうすぐ生まれる。もしもこの子も娘だったら、生きていたらオマエはどうするのかな?イグチくんは、やっぱり地元で家族とがんばっていくことになった。ボクは相変わらず、今の仕事を続けている。役職がリーダーと言う肩書きになったけど、やってることはほぼ変わらない。「青山くん~、待ってたよ!」「こんにちは!待ってたなんて、大げさじゃないですか?」あの妖怪みたいな老人ホームの園長が猫撫で声でボクを迎える。この人は人によって対応を変えるらしい。ボクが、半年前に、他の会社のソフトを利用して、ボクの会社のソフトを応用することを担当者に教えたら、そのことが伝わったんだか?何か便利だったのか?劇的にというか、手の平を返したように態度が変わった。「いや、ダメだな。青山くんみたいな人じゃないと。キミって、ボクが何言っても、何もなかったようにやってきてくれる。そういう人って、ありがたいんだよなぁ。」温かいコーヒーを出されて、白髪でマシュルームカットをした、このジジイ…いや、園長がニコニコして言う。この園長からこんな言葉が聞けるようになるなんて…。ボクは苦笑いをして、心の中でアイツに語りかける。おい、こんなこともあるんだな?赤木くんが笑ってるような気がする。相手は妖怪だぞ?まだ何があるかわからねぇじゃん?気をつけておけよ。時間が経つにつれて、忘れていくものだと言われていた。忘れたくないけど、そういうものなのだと。それが何だか淋しいけど、当たり前のことだと。ボクもそう思っていた。でもそうは、なっていない。何かの拍子にふと思い出す。生きて遠くで過ごしている友達のように。そして、心の中で話す。でも、これから先の未来が作れない。それが無性に淋しいのだ。今、オマエと話したいことが沢山あるのにな。おばさんから、アイツの形見に本をもらった。分厚いハードカバーの本だ。中にハガキが一枚、しおりのように入っていた。おい、この女の人、誰なんだよ?もしかして、オマエが好きだったらしい派遣社員の人か?メアドがハガキにもあったし、本にはどこかの住所が書いてあったけど、ボクはそのままにしておいた。好奇心がうずいたけど、関わったら、赤木くんのことを話さなければいけなくなる。この人の中で、赤木くんが生きたままでいるといいなと思った。それとも連絡して欲しいかい?どうしたらいいかな?そう思っても、アイツからの返事は無い。本は、ボクの本棚の奥で、最後に撮った写真といっしょに深く眠っている。携帯の音が鳴る。「え?どこ?あ~、わかったよ。今終わったから、そっち回って直帰します。」またトラブルだ。ボクは言われた幼稚園へ向かう。「どうもわざわざ来てもらって、スミマセン~、青山さん。」ベテランの先生が迎えてくれる。「事務の補助の人が変わっちゃったんで、ちょっとやり方がわからなくなっちゃったらしいんですよ。新しい人が引き継ぎしたんですけど、家の事情とか言ってすぐ辞めちゃったんで、ちゃんと今の人に引き継げてなかったみたいで…」「あ、そうなんですか?そろそろメンテに来るつもりだったんで、かえって良かったんですよ。」ボクは営業用のスマイルをする。先生も営業用のスマイルを返す。相変わらず、ここの幼稚園は先生の雰囲気が良くて、居心地の良さが変わらない。事務室に入ると予言園長が座っていた。「あら~、何か久しぶりじゃないかしら?元気にしてました?」かん高くて人懐こい声で園長が言った。「元気ですよ。園長先生はいつも忙しそうですね。」「そうなのよ~。」「体調は充分気をつけて下さいね。」あれ以来ボクは、人がちょっと不調を訴えると、つい過敏になってしまうようになった。本人もだけど、残された人たちのことをつい考えてしまう。園長が言っていた、「何か起こる」は、ある意味、起こったのかもしれない。それとも違うのか、単なるきまぐれだったのか?いずれにしても赤木くんの死は、ボクにとって、かなり大きな出来事だった。でも、園長は言った予言は忘れるらしく、その話題は二度とのぼったことがない。それでも、赤木くんが亡くなった後、ここに来た時には、園長はボクをいきなりジッと眺めて、「大丈夫よ。大丈夫。」と、肩をポンポンと軽く叩いて笑顔を向け、去って行った。何が大丈夫なのかよくわからなかったけど、多分大丈夫なんだろうな。叩かれた後は、妙にスッキリした気分になったのを今でも覚えている。園長先生と、新しいソフトの導入の話をして、隣の部屋のパソコンルームに入った。「もう一台、パソコンを置いてね、それで、そのソフトの購入を検討しようかと思ってるんだけど。お金のことはわかっても、使い勝手は私はほら、無理だから。」園長が早速仕事の話をする。中では女性の事務員さんらしき人がパソコンに何か入力しているようだった。その人が振り向く。「こちら、ヨシカワさん。事務員の補助で入ってもらったの。」ボクは、一瞬顔が固まる。相手の女性の顔も固まる。が、我に返って、名刺を取り出して渡す。「宜しくお願いします。青山です。」「ヨシカワです。」お互いにお辞儀をする。園長は微笑みながら、「いろいろ教えてもらってね。」と、ヨシカワさんに向かって言った。「宜しくお願いします。」そう言って、ヨシカワさんは作ったような笑いを浮かべた。ボクも営業スマイルを返す。顔は笑顔を作っているのに、心臓はバクバク音をたてていた。ずっと園長が側にいて、ボクがヨシカワさんにレクチャーしている様子をいっしょになって聞いている。そして、パソコンルームを出た。園長が、ボクの肩を軽くポンポンと叩いて笑顔で言う。「大丈夫よ。大丈夫。」ボクは一瞬固まってしまって、それから苦笑いを浮かべた。今度はスッキリした気分にならなかった。「では失礼します。」営業スマイルで、事務室兼職員室を出て、幼稚園の門を閉めた。まだ心臓がバクバクいっている。あれは…フジサワさんだった。「何も起こらないといいわね」園長のかん高い声が聞こえたような気がした。ねえ、赤木くん、ボクは今オマエに話したいことがあるんだよ。沢山伝えたいことがある。でもさ、もうオマエと未来を作ることはできないんだよな。それがとっても淋しいんだ。でも、オマエはボクの心の中にいる。ボクの心の中に棲んでるよ。ボクは生きてくよ。だから見守ってくれ。オマエの分まで、オマエの見るはずだった世界を、ボクは必ず最後まで見てやるからな。(end)「あとがき」を読む前の話を読む最初から読む目次
2009年07月01日
コメント(0)
今日の日記( 「婚カツ!(最終回)」感想と昨日のランチ♪)「アイツとボク53」翌日の日曜日の昼過ぎ、赤木くんのお母さんから電話が来た。夜中の2時頃、アイツが息をひきとったそうだ。苦しまずに、眠るように逝ったと…。入院してから、二ヶ月もなかった。ああ、ようやく苦しくなくなったんだな…。ボクはボンヤリとそう思った。涙が出てきた。寝室で一人で声を出して泣いた。カリナはボクが泣きやむまで、ずっと一人でいさせてくれた。月曜に通夜があった。ボクは、まだ信じられなかった。冷たい雨の降る夜だった。イグチくんとひたすら会場まで黙って歩いた。ボクは焼香を済ませると、ようやく現実感が出てきて、涙が止まらなくなったので、トイレに閉じこもって涙が出終わるのを待った。精進落としの席では、赤木くんとの思い出を面白可笑しく話した。泣いたらいけない。アイツは、悲しんでも喜ばない。そう思った。周りもそう思ってくれたらいい。ボクは自分でもオカシイんじゃないか?と思うくらい、バカな話を出してきて、赤木くんとの思い出に浸った。その空気の中にアイツがいる気がする。おい、聞いてるかよ?ボクはバカかな?泣いた方がいいのかな?帰り道、ボクはアイツの携帯に電話をかけた。「はい、赤木です。ただいま電話に出ることができません。御用の方はメッセージをどうぞ。」アイツの声が聞こえてくる。いつもと同じでよそ行きの声。「おい、オマエの葬式に行ってきたよ。何だか信じられないよ。オマエがもういないなんてさ。明日は告別式に行くからな。じゃあな。」自分でもバカかと思ったけど、どうせもう誰も聞かないだろうと思った。誰か聞いたとしても、もうどうでも良かった。息が白い冷たいはずの雨なのに、何かが麻痺してる。翌日の告別式は、ボクが弔辞を読むことになった。文を考えるけど、思い出が溢れて溢れて…。上手く言えるのだろうか?冷たい風が吹く晴天だった。黒と白の会場を見ると思ってしまう。何だかドラマみたいだなぁ…って。人の死ってあっけない。なぁ、やっぱりオマエは死んだのかな?ここはオマエにふさわしくない気がするんだよ。オマエが人を集めるのはライブの時だけでいいだろ?毎日ニュースが流れてるのに、オマエが死んだことは一部の人間しか知らないんだな。ボクにとっては一番のニュースなのに。おばさんに声をかけられて、アイツの魂が抜けた体を見た。安らかな顔をしていた。もう苦しくないんだな?大丈夫なんだな?何でココにいるんだろう?一瞬わからなくなった。アイツの体が焼かれた。ああ、もうボクを置いて行ってしまうんだな…そう思った。「置いてくなよ!」口から出ていた。イグチくんが驚いた顔をしていた。自分でもバカじゃないかと思った。自分に酔ってるのか?感情の起伏が激しい。狂ってしまいたい。それとも狂ってるのか?狂ってないよ。それが変だと思うんだ。こんな事態になってるのに。アイツの骨を見た。コレが喉仏です。仏みたいな形でしょう?手品みたいに骨をかき集めて、葬儀場の人が骨の説明をした。それを見ても何とも思わなかった。コレは本当にアイツの骨なんだろうか?拾っても、それはただの白い木の棒のようにしか見えなかった。それでも、アイツなんだと思うと、落とさないように注意した。焼き場を出て、精進落としの会場が結婚式場のようになっていた。花で飾られて美しい。丸テーブルに座った。美味しそうな料理が次々に出てくる。みんなでアイツの思い出話をする。舞台にアイツの写真が大きく飾られている。おい、今日はオマエの結婚式なんじゃないか?こんな葬式あるんだな。でもさ、何でオマエは写真なんだよ?舞台に出て弔辞の言葉を口から出す。周りがうるさい。赤木くんの親父さんの友達らしき席が、笑いながらくっちゃべってた。でもいい。赤木くんの職場の人たちが呆然とした顔をしていた。ダメだよ。笑顔で見送ってやんなきゃ。アイツが心配しちゃうじゃん?奥の方で、アイツの家族がボクを励ますように見ていた。それで、結婚式のスピーチかのようにボクの舌がだんだん滑らかになる。ボクは泣かない。だって、これはきっとアイツの結婚式だから。気付くと、みんながボクの話を聞いていた。アイツがどんなヤツかってこと。わかってくれるかな?アイツがどんなにステキなヤツかってこと。アイツはごめんなさいよりありがとうって言葉が好きなんだよ。ボクの娘と結婚するはずだったんだ。ボクがそれを反対するはずでさ。アイツはボクの親友なんだよ。アイツみたいなヤツ、どこにもいないんだ。ボクは生きてくよ。だから見守っててくれ。どんなに苦しいことが起きても、どんなにバカな失敗をやっても、オマエの分まで、絶対生き抜いて、オマエの見るはずだった世界を見てやる。見てやるからな。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月30日
コメント(0)
今日の日記(「ぼくの妹(最終回)」感想とラッキーなお出かけ♪)「アイツとオレ53」オレは入院を軽く考えていた。すぐに退院できるだろうと。でも、アオヤンの子供が生まれても、オレが退院できる目途はたたなかった。アオヤンがイグチといっしょに見舞いに来てくれる。その時は、出来物を取った後がまだ響いていて、オレはヒョコヒョコしながら歩いた。早く家に帰りたいな…とオレは思った。検査の結果、他の病院へ移ることになった。一時退院して、病院に持って行くものや、部屋を片付けた。幸い、一人暮らしする時にいらない物をほとんど捨てていたので、スッキリしたものだった。オレはタカダさんの年賀状をもらった本に挟んで、着替えといっしょにカバンに入れた。ギターを見て、早く戻りたいな…と思った。アオヤンが見舞いに来てくれた。オレの未来の嫁さんの写真を持ってきてくれた。小さいらしいけど、どの位の大きさかよくわからない。早く出て、ダッコしてみてぇな。アオヤンは、生まれたての子供って、そんなにカワイくないんだな~なんて言ってたけど、オレにはすっごくカワイく見えた。退院したらすぐに見に行こうと思った。それで、アオヤンより好かれないと。そう言ったら、冗談じゃないよ~!ボクのが好きに決まってる!と、本気で抗議してた。早速親バカなんだな、アオヤンは。でも、オレだって負けないぞ。そう思った。一日退院ができるはずだったけど、微熱のせいでできなくなった。ガッカリした。アオヤンが仕事帰りに来てくれた。オレは昨日見た夢の話をした。ようやく家に帰れて、オレは自由に歌を歌ってギターを弾いていた。でも、目が覚めたら、ベッドにいて、体が思うように動かないのが現実だなんて…。アオヤンならわかってくれるかと思ったのに、アオヤンには、その感覚はよくわからなかったらしい。何だか悲しかった。言ったことを後悔した。それで、つい八つ当たりして、せっかく来てくれたのに、すぐに帰れと言ってしまった。起きたら、アオヤンはもういなかった。悪いことしたと思った。しばらくしたら、アオヤンからオレのライブの時のテープと、オレの好きな曲のCDが送られてきた。母親が持ってきてくれた。オレは母親に頼んで、そのテープとCDを聴かせてもらった。涙が出た。早く治りたい。会って、アオヤンに謝りたい。体中についた、点滴や管が痛くてしょうがない。はずして楽になりたい。目を開けると、知った顔が入れ代わり立ち代わり来て、みんながオレを見て、悲しそうに泣く。姉も、父親も。心配そうな母親の顔。何だよ、オレは良くならないのか?アオヤンが来た。オレをジッと見ていた。真面目な顔をして。でも、大丈夫だって、落ち着いた目が言ってる気がした。そうか、オレは大丈夫なんだ?ありがとうな…。みんながオレを呼んでる。何だよ、うるさいな。せっかく眠ってるのに。あれ…今日は体が痛くないな。目を開けると、アオヤンがいた。「来てくれたんだ?」アオヤンが手を握ってる。何だよ、手なんか握って気持ち悪いな。でもいいや。友情友情。あ、こないだは悪かったな。来てくれてありがとうな。あれ?帰っちゃうのか?「まだいるよ。大丈夫だよ。」声が聞こえる。あ、でもマナちゃんが待ってるのか。早く帰ってやれよ。オレも治ったら行くからさ。退院したら、体鍛えるんだ。だって、オレ、オマエの娘と結婚するつもりなんだから。もう約束したんだからな。覚悟してろよ!でも、28歳も上なんて、犯罪だよな~。カワイそうか~。そうだ。タカダさんの故郷を見に行ってみよう。あの海を、本物はどんなところか眺めてみよう。サキ、オマエは本当に幸せなんだよな?ごめんな。約束たくさん守れなくて。やっぱり、子供のこと確認しようかな…。あ~歌も歌いたいな。またライブするんだ。新しい曲を沢山書いた。早くシュウに見せたいよ。腕がなまってるだろうから、沢山練習しないとな。でも、今なら何でも弾ける気がするんだよ。姉が泣いてる顔が見えた。勝気な姉。ああ、兄さんといっしょに来てるんだな。今度みんなでいっしょに旅行に行こうよ。父親が何か叫んでる。大丈夫だって。そんなに泣くなよ。もう大丈夫なんだからさ。母親も泣いていた。ダメだって、そんなに泣いちゃ。ほら、痛くないんだよ。先生呼んできてよ。オレ、今日は気分がいいんだよ。どこも痛くない。治ったんじゃないかな?目をつぶる。視界が白く光って見えた。あれ、これは何だ?ライブ会場?白いドレスを着た女が遠くで微笑んでいる。そうか、コレはオレの結婚式か?もしかして、この子はマナちゃん?みんなが笑顔でいる。マナちゃんが近寄ってきて、声なのか何なのかわからない音で、オレの耳元で囁く。みんなオレの歌を聴きたいんだって?ホントかよ?オレは思いきり歌う。声が思いきり出せるってやっぱり気持ちいいな。後ろでトモヤがドラムを思いきり叩いていて、シュウのギターがからんできた。観客席でアオヤンが手を振っている。良かった。来てくれてるんだな。いつもオマエはオレの近くにいるんだな。嬉しいよ。これからもいっしょにいような。みんな知った顔だ。みんなかけつけてくれたんだ?みんなが楽しそうに笑ってる。やっぱライブはいいな。このノリが好きなんだ。ずっと続けるぞ!これは夢じゃないよな?夢なら覚める必要は無いよ。もう覚めなくていい。永遠に…続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月29日
コメント(2)
今日の日記(「Mr.BRAIN(ミスター・ブレイン)」の感想とルクルーゼ鍋の使い心地☆ )「アイツとボク52」病室では、眠る赤木くんがいた。それを見て、イグチくんはまた泣きそうになり、病室を出て行った。ボクは赤木くんの様子をジッと眺めた。ぐっすりと深く眠っている。腕に薬なのか点滴をつけて、トイレにも行かなくていいようにチューブをつけたと言っていた。体中がチューブだらけだ。「アナタは、こんなに大きいのに、泣き虫なのね。」おばさんが病室の外で苦笑いしながらイグチくんに言う。イグチくんはこれ以上泣かないように、ハンカチで鼻を押さえて苦笑いした。ボクらは病院の屋上に連れていかれた。何か白い洗濯物がはためいている。ボクはぼんやりと、何だか本当にドラマみたいだな…なんて思った。そして、自分の現実を現実なのか疑いそうになった。一瞬笑ってしまいそうになる。「これはウソですよね?何か冗談ですよね?ドッキリカメラじゃないですか?」そう聞きたくなる。おばさんが赤木くんの症状をポツリポツリと話す。おばさんが言うには、薬をいろいろ変えてみたと。高価なものも試したけど、もう多分無理だと。赤木くんには何も話してないと言っていた。今は時々目を覚ます。開腹手術はしたけど、開いただけで閉じてしまったらしい。もうダメなんだ…。「おばさんもね…、信じられないのよ。」オバさんは、ポツリと言った。イグチくんはまた泣いていた。ボクはもらい泣きしそうになったけど、こらえた。アイツはまだ生きている。何で、他の誰でもなくて、ボクでもなくて、アイツなのだろう?どうして、初めて親友と呼べるヤツができたと思っていたのに、神様はアイツを連れて行く?おばさんは、いつでも連絡できるようにと、ボクとイグチくんの連絡先を聞いてきた。ボクとイグチくんはボンヤリとして、帰り道途中で飲んで帰った。でも、何を話しても空回りだった。やりきれない。どうして…。お互い多分そう思っていた。おばさんから連絡が来たのは数日後だった。そろそろマズいと。もし、知ってる赤木くんの友達がいたら、見舞いに声をかけてくれないかと、申し訳無さそうにお願いしてきた。ボクは、知ってる赤木くんの友達に連絡を入れた。言うのはすごくつらかったけど、いっしょに連れて行く約束をして。シュウくんは、バンドの友達数人を連れてきてくれた。みんな、赤木くんの状態を見て涙ぐんだ。アイツは、この前と同じように体中にチューブを通していて、口には酸素マスクがついていた。もうしゃべるのもツライらしい。ボクは泣かなかった。だって、アイツはまだ生きている。お願いだから、みんな泣かないでくれよ。たまたま、アイツが目を開けたので、ボクは、アイツの手を握って顔をジッと見た。大丈夫だと。アイツはボクの顔を見て、ホッとしたようにまた目をつぶった。それぞれが涙ぐみながら帰っていった。どれくらい、こんな時間を過ごすのだろう。ボクが寝室でボンヤリすると、マナを寝かせて、カリナがボクの背中を抱く。ボクは涙をぬぐう。翌週の土曜の午後だった。電話が鳴って取るとおばさんからだった。多分、今日がヤマだと…。ボクは慌ててすぐ向かうことを伝えた。カリナが頷いた。駅まで急いで走るのに、まるで砂漠を歩いているかのように前に進まないと感じた。電車がストップモーションのように、なかなか目的地に着かないことにイライラした。ここで、こうしているうちに、アイツは逝ってしまうかもしれない。ようやく病院に着く。病室へ向かう。いつもの赤木くんの病室と思われる場所に、カーテンから太いオヤジっぽい足が見えた。それで、ボクは病室を間違えたと思い、もう一つ先に進もうとする。まさか、病室を移ったんじゃ?!数歩歩く。でも…あそこであってるんじゃないか?ボクはその病室の表札を見る。合っている。その足は赤木くんの足だった。むくんで、太くなっていたアイツの足。信じられなかった。あんなに細くて、スンナリと長く伸びた足だったのに。そのことがボクを驚かせる。赤木くんの家族がベッドを取り囲んでいて、「しっかりして!」と叫んでいる。どうやら間に合ったらしい。でも、本当に峠だ。目の前にあるのは現実なのか?ボクに気付くと、家族の人が、赤木くんの側に寄らせてくれた。赤木くんは昏睡状態だった。顔は土色で、足とは逆に頬がこけていた。それはガイコツを思わせるような痩せ方だった。ウソだ…。ボクはそう思った。そして、もうこれが会える最後なんだろうと…。泣いてはいけない。泣いたら、アイツが不安になる。ボクはそう思った。そして、赤木くんの顔をじっくりと覗き込んだ。手を握る。アイツの目が覚めない。アレが最後の会話かと思うと、ボクは悲しくなってきた。あのケンカのような、気まずい会話。お願いだから、目を開けてくれよ…。それから30分くらい、そんな状態を見ていた。このままいていいのか、どうすべきか迷った。おばさんも、赤ちゃんがいるんだし、そろそろ帰った方がいいと言っていた。でも、でも…もう一度顔を見よう。そう思って、顔を覗き込んだ時、アイツがいきなりうっすらと目を開けた。「アオヤン…来てくれたんだ?」「来たよ。ここにいるよ。」すると、その目が白目を剥いてガクリとうなだれ、そしてまた意識が戻る。「もう、帰っちゃうのか…?」おばさんが赤木くんに優しく言う。「青山くんも赤ちゃんがいるから、そろそろね。」ボクが慌てて赤木くんの手を握って言う。「大丈夫だよ。まだいるよ。」赤木くんは安心したように、また目をつぶる。「シンヤ!シンヤ!」おじさんが叫ぶ。また昏睡状態に入ったらしい。赤木くんのお姉さんが泣いていた。お姉さんのダンナさんと思われる人の目も真っ赤だった。しばらくみんなで赤木くんを眺めた。そして、おばさんにそろそろ、と促される。おばさんはボクを病院の前まで送ってくれて、お金を握らせた。「これでタクシーで駅まで帰りなさい。今日はわざわざ本当にありがとう…」そう言って、タクシーを呼んで、ボクを強引にタクシーに乗せた。ボクは窓からいつまでも、おばさんにお辞儀をした。見えなくなるまで。すると何を思ったのか、タクシーの運転手がにこやかに言った。「今は不景気でタクシーを利用してくれる人がいないからありがたいよ。」「そうなんですか…。」ボクは人と話をする気分ではなかった。「もうあまりにも不景気だから、首くくって死にたくなっちゃうんだよなぁ。」のん気な感じでその運転手のオジサンは言った。ボクは、ボクは、その言葉にとても腹がたった。何言ってるんだ?一体?死にたいだって?何言ってるんだ?気付くと思ったことが声に出ていた。「何言ってるんですか…」バックミラーに見えるオジサンの顔をニラみつけた。「生きてたくても生きてられない人間だっているんだよ?!」そんなに死にたいなら、コイツの命を赤木くんと交換してやりたい!そんな粗末なこと言いやがって。ふざけんな!せっかくおばさんが乗せてくれたのに、乗ったことに後悔した。こんなタクシーに乗らなきゃ良かった。いきなりボクが大声で言ったので、オジサンは驚いたようだった。ボクは我に返って、付け足した。「だから…そんなこと言わないで下さいよ…」オジサンは苦笑いした感じで「あ…そ、そうだよね。」とだけ言った。ようやく何か察したらしい。駅に到着するまで沈黙は続き、ボクは金を払って、タクシーを降りた。やりきれない。でも…オマエは戻ってきてくれたんだな。ケンカみたいな最後じゃないように… 「きてくれたんだ?」 「もう帰っちゃうのか?」これがアイツから聞いた最期の言葉だった。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月28日
コメント(0)
今日の日記(「スマイル(最終回)」「夫婦道(最終回)」の感想 )「アイツとオレ52」アオヤンの家で目を覚ますとカリナちゃんが遅い朝飯を作ろうとしていた。「二日酔いだったりしない?」言われてみれば、ちょっと腹が重い。「う~ん、そう言われると、ちょっと腹が重い感じだな。オレコーヒーだけもらっていい?」「うん。でもストレートだと胃に悪いから、牛乳入れようか?」お願いしまーす!オレは返事をした。アオヤンはそれにパンを食べていた。カリナちゃんが胃薬をくれた。帰ろうかな~と思ったけど、何となく、あの部屋に一人で帰るのが嫌で、ついついズルズルとアオヤンと話すままにいてしまった。夕飯の材料を3人でスーパーに買いに行き、いっしょに作ることにした。お好み焼きを作る。カリナちゃんとアオヤンが何だかんだいいながら、楽しそうに材料を切っていた。本当にいい夫婦だな。オレまで混ぜてくれちゃって。食べ終わると、何だか腹がますます重くなった気がした。そんなに食べた感じはしなかったのに。また腸閉塞じゃないかと思うと、ちょっと嫌だった。カリナちゃんが胃薬をくれた。オレはその薬を飲むと、何となく、カリナちゃんの腹を見た。もしもサキがオレの子供を産んでいたとしたら、こんな感じだったんだろうか?どんな子供なんだろう?何だか不思議な気持ちだった。「ねぇ、そのオナカさ、触ってみてもいい?」オレは思わず聞いてみた。「いいわよ。オナカだけならね。」カリナちゃんが面白そうに言う。そりゃあ、胸も触らせてもらえれば嬉しいけどさ。…と思ったけど、オヤジっぽいので言わずに笑った。アオヤンにもいいのかな?と思って顔を見たら、嬉しそうにいいよって感じで頷いてくれた。触ると卵みたいにちょっと固かった。と、思うと、グリグリって感じで、いきなり腹が動いた!「わっ!」未知の体験に驚いた。本当に腹で動くんだ?本当に人が入ってるんだ?そう思うと何だか感動した。その時、ふと何か予感めいたものが頭に浮かんだ。「なぁ、この子女の子?そしたら、オレの嫁さんにしていい?」本当に女の子な気がした。呼びかけてみる。「お~い!オレの嫁さんになってよ!」すると、オナカが「いいよ!」って感じでグリグリって動いた。やった!と、オレは思った。アオヤンが露骨に嫌そうな顔をする。「え~、赤木くんがボクの息子になるの?勘弁してよ~。おーい、男でいいぞ~!」それには腹は反応しなかった。オレの勝ちだな!と、オレは意味もなく思った。「この子が女の子で、赤木くんのことすごく好きになったらいいわよ。でも、泣かせないって約束してね。」カリナちゃんは、そう言って笑った。やった!オレの未来は明るい!28歳も下の女かぁ~。頑張って好きになってもらわなきゃな~。オレはバカなことを考えた。でも、本当に何だかそうなるような気がして、嬉しかった。一人の部屋に帰っても、何だかその幸せ気分をひきずっていた。けど、腹はずっと異様に痛いままだった。これまでも微妙に痛かったけど、こんなに痛くなかった気がする。また胃薬を飲んだ。翌日、仕事帰りに実家に戻った。なぜだか、無償に親に会いたくなった。帰るとホッとした。夕食後、みんなでテレビを見ていた。風呂から出て、しばらくすると、ひどい吐き気と腹痛が起こって、オレは膝から崩れた。脂汗が出ている。痛い腹が痛い…母親が慌てているのが見える。自分に何が起こったのか、わからなかった。また腸閉塞か…?ボンヤリとオレは思った。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月27日
コメント(0)
今日の日記1(時々子供事件続きとマイケルが。。。)今日の日記2( 「BOSS(最終回)」の感想☆)「アイツとボク51」しばらくして、赤木くんから携帯に電話がかかってきた。病院を移ったらしい。「何か、今のとこより腕がいい医者がいるとかで、そっちで手術することになってさ。」「ふ~ん。そっか。んじゃ、また顔見に行くよ。」「いいよ~。オマエ子供のめんどう見なきゃいけないだろ?」「大丈夫だって。休みの少しの時間や、会社の帰りに少し寄るくらいはさ。」「はは。でも、そう言ってくれると、ちょっと嬉しかったりして。」「だろ?」ボクはカリナに赤木くんのことを話すと、カリナが心配そうに言った。「この前より長引いてるね。大丈夫なのかしら?」「うん、多分。とりあえず、どこの病院か見てくるよ。様子も見たいし。こないだ、出来物取ったとかで、痛がってたから。」「うん、そうね。あ!写真持って行ってあげるのは?マナの。」「ボクもそう思ってた。」ボクらの娘はマナと名づけた。二人でいろいろ考えた末だ。画数なんかこだわる気は無かったのに、ネットで見たら、苦労する…とか出ると、いいと思っていた名前が何となくつけられなくなってしまった。週末、ようやく見舞いに行けた。ボクがマナの写真を見せると、赤木くんは喜んで、その写真を眺めた。赤木くんのお母さんもいっしょになって見る。「アオヤンに子供なんて、変な感じだな~」と、赤木くんは言った。「今度焼き増しして持ってくるよ。」「いいよ、急がないで。実物退院したら、見に行くし~!」赤木くんは嬉しそうに言った。会社の人がローテーションで毎日来るから、ちょっと仕事が気になってしょうがない…と言うようなことを言っていた。あんまり毎日だと疲れちゃうかもな。まあ、ボクはほどほどに来るから、とボクが言うと、それで充分だよ。と、赤木くんは軽く笑った。次に赤木くんの見舞いに行ったのは会社の帰りだった。その日、赤木くんがポツリと言った。「昨日さ、夢を見たんだよ。家に帰れる夢。でも、目が覚めたらベッドに寝てるんだよ。やんなっちまった。」ボクは何て言ったらいいかわからなくて、言葉を探した。何か元気づけられる言葉は無いかと…。「でもさ、良かったじゃん。夢の中だけでも、家に帰れて。」するとアイツは本当に、本当にムキになって言った。「何言ってんだよ?目が覚めたら、家じゃないんだぜ?!病院なんだよ!ベッドで動けないんだよ!イイわけないじゃん!」ボクは絶句してしまった。その様子を見て、赤木くんが言った。「もう寝るから、帰れよ。」この態度にボクはムカついてしまい、でも、きっと、ボクが気に触るようなことを言ってしまったんだと思うと、何も言えなかった。「わかった。お大事に…。」来てすぐにそんな態度を取られて、ボクは何のためにココに来たのかわからなくなってしまった。生まれたばかりの子供を風呂に入れなきゃいけないのに。すぐに帰ってやりたいのに。でもアイツのことが心配だから来てるのに。でも、何もできないどころか怒らせて…ボクは何しにココに来てるんだ?そう思ったら、ちょっと悲しくなってきた。ボクが病室を出ると、赤木くんのお母さんがいて、「あら、もう帰るの?」と声をかけてくれた。「あ、はい。また来ます。」ボクはちょっと涙目だったのかもしれない。おばさんは、ちょっと心配そうな顔をしていた。たまたまイグチくんから、赤木くんの新しい病院に行ったか?と電話が夜にかかってきたので、アイツは今は何だか人が変わっちゃったみたいで変なんだ、と答えた。いつものアイツじゃないみたいなんだよ…と。イグチくんは、じゃあ自分も見舞いに行って様子見てくる。と言っていた。それで、ボクは仕事もあったし、家のこともあったので、何となく見舞いに行かなかった。でも、あんなケンカみたいな気まずい別れ方をしたのが気になって、小包をアイツの実家に送った。アイツのライブのテープをダビングしたものと、アイツの好きな曲のCD。 こないだはゴメン。 なかなか顔見に行けないけど、 こんなもんしか送れなくてごめんな。そんなことを書いて送った。しばらくして、イグチくんから夜電話がかかってきた。夕飯を食べたすぐ後だった。「よう。行ってみた?どうだった?」ボクは、気になっていたので、イグチくんに赤木くんのことを聞く。「ああ。うん。あのさ…。見てきたぞ。でさ…」風の音なんだろうか…雑音がザ、ザザーと聞こえる。「何?どうした?」イグチくんはようやく口を開いた。小さな声がボソボソと聞こえた。「ガン…。ガンなんだって…」「え?」ボクは聞こえたけど、何かイグチくんが冗談を言ってるんだと思っていた。だから、笑おうとした。とびきりの冗談なんだと思った。カリナがボクの様子がおかしいと思ったらしく、こっちを見ていて、目が合った。でも、受話器の向こうで、イグチくんの嗚咽が聞こえる。それで、ボクは冗談じゃないんだとわかる。わかってるんだけど、まるで恐竜みたいに頭になかなか伝わってこなくて、納得ができない。自分の表情が、笑い顔じゃなくなるのを感じた。「何…え…ウソ…」「ホントだ。あ、悪性腫瘍だって…。ガンって言わないけど、ガンみたいなやつだって…」受話器の向こう側でイグチくんは泣いていた。ボクは呆然とする。我に返って、ボクはイグチくんに言う。「明日、病院に行くよ…。」「オレも行くから…」「うん…。」電話を切る。涙が出てきて、顔を覆う。「どしたの…?」眠っているマナを抱いて、カリナが言った。カリナは何となく、電話の会話から何か察していたらしい。無言で、ボクの側に寄った。ボクの肩に手を置く。「赤木くんが…ガンだって…」ボクは、カリナとマナを抱き締めた。 「青春映画は友達が必ず死ぬんだよ。 それがセオリーだから。 死ぬことで感動を呼ばないと。」赤木くんがそんなことを言っていたのを思い出す。でも、ボクはそんなことで感動なんかしたくないんだよ。できるワケないじゃないか?冗談じゃないよ。なんだよ、これは一体?自分に起こったことが受け入れられない。感覚が麻痺した状態のままだった。ボクは…、アイツが帰れると思ってたんだ。夢だけじゃなく、必ず。必ず治るって信じてたんだよ。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月26日
コメント(0)
今日の日記( 「あたしんちの男子(最終回)」感想☆と、ときどき子供事件!)「アイツとオレ51」あの時、20歳の時、子供ができていたら、今オレの隣には、サキがいたんだろうか? 「あの時に戻れたら… あの時子供ができてれば、結婚してたのかな…」サキの酔った言葉が蘇る。サキのことがあって以来、オレは、ひどくタカダさんに会いたくなった。オレの気持ちをいつも助けてくれたあの女の人に。タカダさんのメールアドレスはわかっていた。今年来た年賀状に書いてあったから。海の写真が載っていた。彼女は幸せなんだろう。オレのところには来ない。 ありがとう。 私も元気です。そう書いてある年賀状が、年賀状を出した後に届いた。それから毎年年賀状のやり取りだけしている。奇妙な関係と言えばそれまでだけど。何やってるんだ一体?と、言われればそれまでだけど。オレは迎えに行くことはなかったし、彼女が来ることもなかった。年賀状だけが、唯一、あの出来事は夢ではなかったのだと確認させる。文章も毎年お互い同じだ。 元気ですか? オレは元気です。同じ文章をメールで出した。ため息をつく。自分に嫌気がさす。これじゃあ、淋しい時だけ、彼女に頼ってしまってないだろうか?思い出させて苦しめてないだろうか?数分たってから、彼女から返事が来る。 ありがとう。 私も元気です。まだ、彼女の中にオレは、いるらしい。返信の時間が短いことで、オレは安堵のため息をつく。悪いな…と思いながら。携帯を眺めていると、いきなり携帯が鳴った。またアオヤンだ。ホントすごいな、コイツは!「カリナがさ~、赤木くんに会いたいんだって。」「ホントかよ~?いいのか、行って?」カリナちゃんはもうすぐ子供を産む。あのアオヤンが親父になる。ビックリだ!カリナちゃんは、アイスやらクリーム系のものばかりを食べたがっているらしい。「ふーん、やっぱ味覚って変わるのかなぁ?」「うん。見てて何だか面白いよ。ドラマみたいなつわりで気持ち悪くなることも無かったしね。」「え?つわりって無かったのか?」オレはサキの話を思い出す。辛すぎて仕事を辞めた…と。「人によっていろいろみたいだよ。こないださ~、母親学級とか言うのに参加させられてさ、妊婦体験させられたよ。すっげー重たい、キャッチャーの防具みたいなのつけられてさ…」アオヤンはしゃべりたいことや報告したいことが山ほどあるらしい。「へえ~、おもしれーじゃん!」オレは、その報告に頷きながら笑っていた。赤ん坊の人形を湯船におっことしたとか言っていた。そりゃ真っ青だ!何だって、コイツとしゃべってると、こんなに幸せな気持ちになってくるんだろう。オレは腹を抱えて笑った。そして、週末にアオヤンの家を訪ねた。沢山買ったカップアイスを見て、カリナちゃんが嬉しそうな顔をした。久しぶりに見るカリナちゃんの腹は、今にもはちきれんばかりだった。すげえ。本当に生まれるんだな…。と、オレは思った。カリナちゃんがエイリアンが出てくるとか言っている。自分の子供なのに、そんなのが腹にいたとしたら怖くないか?オレからしてみたら、その腹が自分の腹で、その中に人間が入ってるって思うだけで、ビックリだよ。女はすげえな…と思うと、オレはゲラゲラ笑った。自分と違う生き物なんだと思った。その日は3人でカラオケに行き、思いきり歌って、帰るとカリナちゃんが布団を敷いてくれた。アオヤンが自分がやるとオロオロしてるのが可笑しかった。オマエ、ほんとにイイ父親になりそうだな。アオヤンと飲んでる時に、何となく、サキとのことを打ち明けたくなった。抱いてしまったことは言わなかったけど。アオヤンは、とても驚いていた。「ボクもさ、その…付き合ってた人いたじゃん?大丈夫だと思うけど、気になってるよ。どうしてるかな…って思うことある。」アオヤンがしみじみと言った。「幸せだといいよね…。」付き合っていた女のことなのか、それともサキのことなのか…。両方かもしれない。「そうだな…。」オレは同意した。それからタカダさんも…。いつかアオヤンに話すかもしれない。でも、オレの中でもっと風化してから話そうと思った。オレのことを助けてくれていた女のことを。オマエは軽蔑するかな。呆れるかな。でも、いつか必ず話すよ。だって、オマエはオレの友達だからな。アオヤンが眠るとオレはタカダさんにメールを送った。 オレは大丈夫です。 貴女が幸せだと嬉しい。キザだな…。そう思ったけど、送った。深夜だと言うのに、すぐに返事が来た。 私も貴方が幸せだと嬉しいです。参ったな…と思った。オレ幸せにならなきゃな。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月25日
コメント(0)
今日の日記(「白い春」感想と親子でハマって元気が出るロクデモナイ?もの☆ )「アイツとボク50」「また入院しちゃったよ。またやっちゃったらしいや。」外回りの帰りに赤木くんから携帯に電話があった。「え?!いつだよ?」「オマエと別れた翌日の夜~。」赤木くんは会社にいた時から腹の調子が悪かったらしく、その日は何となく実家に帰りたくなって帰ったらしい。あまりにも調子が悪いから泊まろうとしたら、ひどい腹痛になってしまって、救急車を呼んだそうだ。「うわ~。大丈夫かよ?」「うん。だいじょぶ、だいじょぶ。またこないだの病院にいるんだよ。でさ、ほら、もうすぐ生まれるって言ってたじゃんか?オレもしかしたら、見舞いに行けないかもしれなくてさ。ゴメンな~。」「自分が入院してるくせに何言ってんだよ?生まれるまでに退院すればいいだろ?」「まあ、そうなんだけどさ。」「今日、見舞いに行くよ。」赤木くんはワリィな~と言って笑っていた。カリナに会社の帰りに見舞いに寄って帰ると連絡を入れた。すぐに帰るから…と。カリナはまだ大丈夫だし、何かあったら携帯に入れておくね。と言って、赤木くんの心配をしていた。とりあえず、週末に自分も見舞いに行きたいと言っていた。「よう~!」病室に入ると元気そうなアイツがいた。「大丈夫なのかよ?」「まあ、またやっちゃったって感じだからな。検査したんだよ。そしたら、何か腹に白いのが大きいのと小さいのがあって、大きい方は大丈夫らしいんだけど、小さい方は気になるからまた検査しましょうってさ。」「検査って、いつ?」「二週間後」「え~?ずいぶん遅くね?」「だよなぁ~。まあ、たいしたもんじゃないからじゃないのか?」「まあ、そうだけどさ~。」「それより、オレの嫁さんはまだ出て来ないの?」「うん。まだ大丈夫だって、カリナが言ってたよ。週末の休みには、見舞いに来たいってさ。」「はは…。この姿は見られたくないなぁ~。」「今更、何言ってんだよ!」元気なアイツの姿を見てホッとした。週末はカリナと見舞いに行った。「病院だから、いきなり産気づいても、ココで産んで大丈夫じゃない?」「え?そんなことできるの?」「いや、無理でしょ~!まだ生まれないって!」そんなことを言い合って笑った。検査とかもあるから、しばらく見舞いに来なくて大丈夫だよ。と、赤木くんが言った。その翌週、カリナが産気づいた。いよいよだ。カリナは2日間微弱陣痛で苦しみ、3日目の朝に子供を産んだ。女の子だった。嬉しくて、親の報告の次にアイツの携帯にメールを入れた。 生まれたよ。 残念だけど、オマエの花嫁だ。 でも嬉しい!しばらくして、返事が入っていた。 おめでとう!!!!! やったな! すぐ見れなくて残念だ!入院中の休日、イグチくんがちょうどこっちに来ていて、見舞いに訪れてくれた。いっしょにガラス越しにボクの子供を眺める。ボクはちょっと残念だった。ホントだったら、多分真っ先にアイツもココにいただろうと…。時計を見ると、イグチくんは、カリナに断って、ボクを病院の外に連れ出した。ほら、と携帯を渡してくる。「赤木だ。」ボクは驚きながらも嬉しくて、携帯に出る。「よう。おめでとう!行けなくて、ごめんな!」ボクは二人のはからいにジンワリきてしまった。「ありがとう…。」「何だよ、泣いてんのか?」「泣いてないよ。ねぇ、イグチくん?」「いや、泣いてるぞ。感動してる。」参ったなぁ。ボクはとりあえず、夕方イグチくんとそっちへ見舞いに行くから、と言った。「大丈夫なのかよ?」「うん。カリナも休んでおかないといけないからってさ。自分の分と赤ん坊の分まで、見舞って欲しいんだって。イグチくんも来てるし。大部屋だから、結構入院を楽しんでるみたいだよ。」そうか~、と笑って赤木くんは電話を切った。夕方、ボクとイグチくんがアイツの病室へ行くと、嬉しそうに笑った。意味は無いけど、生まれたからとか何とか言って、子供を撮るために持って行ったカメラで記念写真を撮った。フィルムが終わり、これで現像に出せる…と。赤木くんはフラフラしながらトイレに行った。「シリのできもの取ってさ、まだ痛いの何のって。」「大丈夫かよ?もう立ち歩かないでいいって。」「そうか?ワリィな!」病院の外まで送ろうとするアイツを制止して、イグチくんと帰る。「オレ、しばらくこっちの親戚のとこにいるから。」と、イグチくんが言った。「え?何で?」「ちょっとこっちで転職考えててな。就職活動。」イグチくんはこのまま家業を継ぐことに疑問を感じてしまったらしい。みんないろいろあるんだな。 続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月24日
コメント(0)
今日の日記(「婚カツ!」とアウトレットバーゲンでお買物♪)「アイツとオレ50」「酔ってるか…?」「うん…。ちょっとね。」「今幸せなのか…?」何か、どっかの歌みたいなこと聞いてるな…と、オレはボンヤリ思った。「…うん。幸せよ。」サキが酒を一口飲む。「…想像したものとは違ったけどね。ちゃんと幸せ。」「オマエ、弱くなってないか?」あまり飲んでないと思ったのに、サキの体は赤くなってきていた。オレはこれ以上は、ヤバいと思った。「それが聞ければもういいよ。帰ろう。強引につき合わせて悪かったな。家どこ?近くまで送るよ。」何がしたかったのだろう?結婚してるサキに今更何を求めようとしてたんだ?ただ、どうしても、あのまま別れたくなかった。どうしても、今どうしているのか知りたかった。本当にそれだけだったのか。勘定を払って、エレベーターに乗る。フラフラしてるサキの体を支える。と、同時によろけたサキがオレに抱きついてきた。「どうして今頃現れるかなぁ…。ようやく吹っ切ったと思ったのに。」サキは泣いていた。気付いたら強く抱き締めていた。サキの唇を強く吸っていた。何でこんなことに…?頭は冷静に思うのに、体は言うことをきかなかった。エレベーターが下に下りた音がして、オレはサキを離した。肩を抱いたまま降りる。サキが言った言葉は、まんまオレの気持ちだった。タクシーを拾う。駅まで送る気なんて、さらさら無くなった。オレの家の住所を言った。「どこに行くの…?」「オレの家。」「遠くない?電車でいいよ…。」「料金気にしてるのか?大丈夫だよ。」今金使わないで、いつ使うんだよ。「帰らなきゃ…」「大丈夫、ちゃんと帰すから。」ホントに帰すのかな…。ボンヤリそんなことを考えた。サキは何も言わなかった。ただサキの手を逃げないように、ずっと固く握っていた。部屋に入ると、何も言わず、すぐにキスをした。お互いに強く抱き締めあった。お互いを強く求め合った。もう何も考えたくない。コレは何か都合のいい夢なのかもしれない。サキを抱きながら、いろんなことが頭に蘇る。サキと付き合う前、車でいっしょに好きな曲を聴いた。付き合ってた男に悩んでるサキに公園でキスをした。ライブに来てくれたサキ。駅でキスをした。あの時の驚いた顔。いつまでも手を振った。いっしょに行った花火。土手でいつか暮らすと約束をした。子供ができたんじゃないかって、学校を辞めなきゃいけないかもしれないって真剣に思った。離れたくなくて、帰したくなくて、いっしょに暮らした。笑った顔泣いた顔怒った顔全部見た。全部全部必ず、コイツを幸せにするって思った。いつかプロポーズをするって…。何で別れたんだろう?何で手放した?何で何で何で…部屋の天井を見ながらオレが言う。「オレのとこに…来る?」サキが首を振る。オレはそれを悲しい気持ちで眺める。「シンちゃんと別れた時にね…ボロボロになっちゃってたの。私…。その時に側にいてくれたのが、今の夫なの…」サキの目から涙がどんどん溢れて落ちる。サキは、すぐに泣く。知ってる。「相変わらず、すぐ泣くんだな…」「ごめんね…ごめん…」もう、何も言えなかった。オレたちは終わったんだ。あの時に終わったんだ。「家まで送るよ。」「ううん、タクシー拾う。このままここにいると、帰れなくなりそうで怖いから。」帰す必要なんか無い。そう思うのに、オレの中で何かが納得していて、サキの肩を抱いた。もうあの頃には戻れない。帰すことにしたのは、子供がいるって聞いてしまったからかもしれない。タクシーを拾う通りまで出て、タクシーを拾う。タクシー代を無理やり握らせて。「さよなら。連絡すんなよ。オレ、期待しちゃうから…」無理やり笑顔を作った。「シンちゃん…」「謝ったりすんなよ?今日会えて良かったよ。ありがとう。」タクシーに乗ったサキが、ドアから離れようとしたオレに言った。「私も。ありがとう…」タクシーの後ろの窓から、サキがずっとこっちを眺めているのが見える。オレは手を振る。角を曲がるまでずっと手を振り続ける。こんな別れを、また繰り返すことになるなんて…。手を離したのは、オレの方なんだ。胸が締め付けられる。それでも、あの時の別れより、ずっと良かったよ。あの、歯切れの悪い、23歳の別れよりずっと。オレの中で何かが吹っ切れた。ハネムーンで休みを取っていた先輩が土産をくれながら言った。「赤木、カミサンの友達と知り合いだったんだってな~!」オレはちょっとドキリとしながら答えた。「ああ、そうなんですよ~。」「でも、結婚してるぞ~。残念だったな~!まさか手出さなかっただろうな?」先輩がニヤニヤしながら聞いてくる。あの後どうしたんだ?と聞きたいのだろう。「知ってますよ。4歳の男の子がいるんでしょ?」オレは子供のことで話を逸らした。「そうそう、子供…って、あれ?5歳じゃなかったっけ?今年七五三がどうこうって話してたから。カミサンの甥っこが同じ歳なんだよ。違ったっけかなぁ?早い結婚だから、デキちゃったのかもしれないな。」ま、子供の歳なんかどうでもいいかぁ~!最近の母親は若くて、見た目独身みたいだよな~!なんて言って笑った。結婚したばかりの男は幸せなようで、オレの様子が変だなんて気付かなかったらしい。オレは先輩の言葉が気になって、相槌もそこそこだったのに。5歳…。 シンちゃんの子供。男の子よ。まさか…な。 想像したものとは違ったけどね。 ちゃんと幸せ。もしも万が一そうだとしても、それがサキの出した答えなのだろう。でも…気になっても、もうサキからの連絡は無い。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月23日
コメント(0)
今日の日記( 「ぼくの妹」と毎日のメニューって悩むよね☆)「アイツとボク49」翌日の夕飯は、3人でいっしょに作った。「友達がいると、作ってくれるのね?」カリナが皮肉混じりに言った。ボクは笑って誤魔化した。作ったのはお好み焼きだった。「あ~、飲み過ぎで食いすぎたのかな?腹が痛ぇ~。」「大丈夫かよ?そんなに食った?」赤木くんは胃薬をもらって飲む。「産まれたら、病院まで見に行くよ。あ~でも、その前にオレが病院だ。ケツになんかデキものができちゃったみたいでさ、この前入院した病院じゃなくて、もっと小さいとこに通院することにしたんだよ。」「そうなの?大丈夫かよ?」「あ~、何とかな。ようやく有休消化できるようになったから、早いとこ行ってくるわ。」そして、カリナが台所から戻ってくると、カリナに言った。「ねぇ、そのオナカさ、触ってみてもいい?」「いいわよ。オナカだけならね。」赤木くんがクスクス笑う。そしてボクのことを、いいのか?って感じで見る。ボクもいいよ、と頷く。そして、カリナのオナカに手を当てた。「うわ~。ホント卵みたいだな。わっ!」慌てて手を引っ込める。「どうした!?」「今、グルグルって動いたぞ!すっげぇ~!」ボクとカリナは赤木くんのその様子を顔を見合わせて笑った。「なぁ、この子女の子?そしたら、オレの嫁さんにしていい?お~い!オレの嫁さんになってよ!」赤木くんが手を当てながら言う。「え~、赤木くんがボクの息子になるの?勘弁してよ~。年だって違い過ぎるって!おーい、男でいいぞ~!」ボクが笑いながら言った。ボクもカリナも、子供の性別は生まれるまで聞く気はなかった。生まれるまでのお楽しみってやつだ。「この子が女の子で、赤木くんのことすごく好きになったらいいわよ。でも、泣かせないって約束してね。」カリナが笑いながら言った。「約束しますよ。お母さん。」赤木くんは真面目な顔で言うと、堪えられないように笑った。「やっぱりヤダなぁ。同じ歳の息子なんて。でも、まあいいか。そうなったら長生きしてよ。」モチロンでしょ~と赤木くんは嬉しそうだった。「体鍛えて、ちゃんと惚れさせないとな!」赤木くんの中では、女の子だと決まったらしい。そうして赤木くんは帰って行った。倒れたと聞いたのは、その3日後だ。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月22日
コメント(0)
今日の日記( 「Mr.Brain(ミスターブレイン)」「ザ・クイズショウ(最終回)」の感想☆)「アイツとオレ49」オレは先輩としゃべりながら、サキの方を横目で見た。誰か友達と来ているのだろうか?それとも、ダンナがいっしょだろうか?オレは飲みながら観察する。側には、男が来たり、女が来たりしているが、サキとずっといっしょにいるワケではない。どうする?声をかけてみようか、どうしようか。でも、どのタイミングで…。今を逃したら、もう話すことも無いかもしれない…。迷っていたら、ハラが痛くなってきた。とりあえず、トイレに行くことにした。トイレを出てすぐ、顔を上げるとサキがこっちに歩いてくるところだった。視線が合う。「シンちゃん…」「よう…」オレは手を上げて、挨拶をした。何ともマヌケな再会だ。あんなに探しまくった相手に、こんな偶然にバッタリ会えてしまうなんて、拍子抜けもいいところだ。「どうしたんだよ。新婦の知り合い?」とりあえず、無難な言葉をひねり出した。「そうよ。幼馴染なの。シンちゃんは?」「オレは、会社の先輩…」「って、聞くこともなかったかな。知ってたの。同じ会社だってこと。でも、シンちゃんとこの会社大きいし、もしかしたらと思ったけど、まさか会えるとは…ね」オレはどうしていいのかわからずに、軽く額を掻いた。「シンちゃん、あまり変わってないね。」「オマエも変わらないな…。」ホントにそう思ったので、そう言った。「そう?そんなことないよ。太っちゃった。口が上手いのね。」「脱がなきゃわかんないよ。きっと。」バカじゃないの!と、サキが笑う。相変わらずのやり取りで、まるで昔みたいだ…と思った。こんなやり取りができるのも、きっと時間が経ったんだな。「ここは?誰かと来てるのか?」「ううん。一人よ。だから、彼女の兄妹が気を遣っちゃってね。さっきから、来てくれるの。まあ、子供の頃からの付き合いだから…」「じゃあ、オレと行動する?」サキがオレの顔を意外な感じで見る。「でも、会社の人沢山いるでしょ?」「別に構わないよ。オレ独身だし、女といたって何てことないよ。それに、オレの部署男ばっかだし、女が来たら喜ぶよ。」「でも、オバちゃんが来たってねぇ…」「同じ歳じゃん。それならオレだってオヤジだよ。」「結婚してるし…ね。」「知ってる…」サキが黙った。オレは左手の薬指につい目が行く。「あの後、腸閉塞になってすぐ入院しちゃったんだ。退院してから、バカみたいに探しまくっちゃってさ。ほら、フリーターの山口いただろ?アイツがさ、アネゴにバッタリ会ったとかって言って教えてくれたんだよ。オマエ仲良かったじゃん。」「探したって…私のこと?」「うん…。」「そう…、そうだったんだ…。」サキが下を向いて黙ってしまった。オレは次の言葉を探す。「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるから。先に行っていいよ。」サキはトイレに入ってしまった。あ~タイミング悪い。待ってようか、先に行ってようか迷う。悪いかと思ったけど、待ってることにした。このまま、会場で声をかけられないと、もう会えないような気がしてしまった。オレは思い立って名刺を取り出す。裏に携帯の番号を書いた。でも、渡したところでどうなんだろう?かけてくる保障は無い。「あれ?まだいたの?」サキが出てきた。「オマエ、こっち来ないつもりだっただろ?」「よくわかるね。」サキがクスクス笑った。「終わったら、どっか飲みに行けるか?」「難しい…かな。」「そうか…。」サキがまた黙り込んだ。オレは、名刺を渡す。「ここに、連絡くれる?」サキが受け取る。「連絡しないかもよ。できないかも。」思った通りのことを言う。「そしたら、ここから、腕ひっぱって、どっか連れてく。後つける。ストーカーする。」サキが軽く笑ってため息をつく。「連絡するって約束したらいいわけ?」「やっぱり、それじゃあ嫌だな。アテにならない。終わるまでしか時間が無いなら、今すぐ出られないのか?」「そうは、行かないわよ…」「そっか…。」コレはもう諦めるしかないと思った。どうしても、このまま別れたくはなかったけど。神様がそう言ってるらしい。会場では、ビンゴを始めるとかで、配ったカードを出すよう指示があった。オレは、何となくサキの隣にいた。サキが小声で言う。「いいわよ、友達のとこ戻って。」オレも小声で言う。「嫌だね。戻らない。別にいいだろ、ここにいたって。」「相変わらず、ワガママね。子供みたい。」「オマエだって、相変わらず素直じゃないな。人の厚意は黙って受けてりゃいいだろ。」お互いが相変わらずなことが何だか可笑しくて、顔を見合わせて笑った。ビンゴで景品をもらって戻ってくると、サキが言った。「いいよ。」「え?何が?」「終わったら、飲みに行きたいんでしょ?どこに行く?」オレたちはとりあえず駅近くの居酒屋に適当に入っていた。でも、連れてきたものの、何から話していいんだか…。オレもサキも酒をグイグイ飲んだ。「相変わらず強引よね、シンちゃんは。」「相変わらず、気が強そうだな、オマエは。」そしてオレの嫌な部分を引っ張り出す。と、オレは思った。「オレだからいいけど、その調子じゃ、誤解されるんじゃないか?」「よくわかるわね。お陰様で、幼稚園のお母さんたちにつまはじきよ。」子供?子供がいるのか?「え?子供いるのか?何歳?」「5歳」「5歳…」結婚してすぐに生まれたってことか?え…?「シンちゃんの子供。男の子よ。最後、避妊しなかったでしょ。」いきなり思いがけないことを言われたので、オレは固まってしまった。サキがその様子を見てクックと笑い出す。「ウソよ。冗談。4歳よ。」「オマエ…やめろよな~。」オレは大きく安堵の息を吐く。サキが可笑しそうに笑う。そしてため息を大きくついた。「オマエ、人相で損するって自分で言ってたじゃないか。学んでないのか?」「うん、学んだはずなんだけどね、やっぱりね。親の付き合いはもうめんどくさいから、子供は幼稚園に預けっぱなしよ。延長保育。いっそ、仕事続けて保育園に入れれば良かった。」「仕事辞めたのか…?」あんなに頑張ってたのに…。それが顔に出ていたらしく、サキが言う。「うん。子供できちゃったら、つわりとか重くてね。とてもじゃないけど、産休を取れるまで、いられなくなっちゃったの。で、今は働こうとしても、保育園の受け入れ先もなければ、雇ってくれるところも、幼稚園だと時間が合わなくて無いのよ。まあ、仕事選ばなきゃいいから、今はようやくパートで働いてるわ。」「そうか…。」本当に皮肉な話だ。そんなことなら、どうしてオレと結婚しなかったんだよ…って気持ちになる。「オマエ、誤解されやすいんだから、気をつけろよ。強がりだし。」「うん…。」長い間がある。サキは何を考えている?「あの頃に戻れたら…」サキの言葉にオレが顔を上げる。「あの時に戻れたら、もっと早く、シンちゃんと結婚したいって言ってれば、何か違ったかしらね?あの時子供ができてれば、結婚してたのかな…」トロンとした目でサキが言った。その質問には何て答えたらいいのかわからない。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月21日
コメント(0)
今日の日記( 「スマイル」「名探偵の掟(最終回)」感想と社長の人種傾向☆ )「アイツとボク48」結婚してから一年経とうとしていた頃、カリナが妊娠していることがわかった。ボクは自分が親になるなんて何だか実感がわかなかったけど、カリナの大きくなるオナカを見ているうちに、しっかりしようと言う気持ちになってきた。でも、内心はとても不安だった。自分が親になんてなれるんだろうか…。妊娠8ヶ月になり、カリナは産休と育休を取ることになった。毎日家にいられることがこんなに楽だったなんて、嬉しい~!と、彼女は家でゆっくり休んでいた。「だから、早く辞めちゃえば良かったのにさ。」「だって、家にいて何してればいいかわからないじゃない?働いてた方が家事してるより、お金もらえるし~!人に会えて楽しいし~。」「まあ、いいんだけどね。無事にここまでになったから。ホントは気が気じゃなかったよ。そんなオナカで通勤してるなんてさ。」「そうよね、ホント…。つわりが無かったから、ちょっと甘くみてたのかもね。」カリナはいわゆる食べつわりとかってやつで、食べてから気持ち悪くなると言う、ワケのわからないつわりだった。(ボクにとっては。)お陰で、最初は妊娠したことさえわからなかった。もうすぐ予定日だと言うのに、家にいてもつまらないと言うカリナの要望で、ボクは赤木くんを家に招いた。…と言うか、赤木くんも一人暮らしだし、誘えば月一くらいで遊びに来ていたけど、カリナが妊娠したと知ってから気を遣ってるようだったので、調度良かった。いいのか~?と喜んで週末遊びに来た。「うわ~、しばらく見ない間にこんなに大きくなったんだ?」カリナのオナカを見ながら、赤木くんがしみじみと言う。「大きな卵がハラに入ってるみたいじゃん?スゴイなぁ~!」「そうでしょ?これから、エイリアンみたいにオナカから出てきたらどうしよう?って感じよ。」赤木くんが上等のジョークを聞いたかのようにゲラゲラ笑った。彼はブラックジョークが大好きだ。「エイリアンに食べられないように気をつけてね。はい、これ土産~。」高級アイスだったらしい。渡されたカリナがはしゃぐ。最近カリナはアイスが無性に食べたいとかって、バクバク食べてると、ボクが赤木くんに話してあったからだろう。「わぁ~!嬉しい!ありがとう~!赤木くん、ステキ~!」カリナが上機嫌で冷凍庫に入れる。「カリナちゃんに好かれるのは楽でいいなぁ~。」「え~?そう?何で?」「物をあげるとステキな人だったりしない?」「え?そう?…あ、ヤバ!そうかもしれない!ヤダ!気付かなかった!」本気で気付いたらしいカリナの様子に、ボクと赤木くんが笑う。3人で、夕食を食べに行き、カラオケを思いきり歌った。そんなにデカい声出して、力んだら生まれちゃうんじゃないか?と、赤木くんが心配したので、ボクも心配になった。「大丈夫よ~。そんなんで簡単に生まれるなら楽でいいんじゃない?大体、男が二人いれば、アナタ一人でいるより心強いでしょ?」カリナがそんなこと言うので、そう言われればそうかなぁ?と、ボクらは意味も無くホッとする。女って強いんだな…って、ささいなことで思う。その夜、カリナがよっぽど赤木くんがいるのが楽しいらしくて、泊まっていけばいいよ、と引き止めた。「二人でそっちで寝ていいよ~。私はベッドを占領させてもらうから。ゆっくり飲んでいってね。」そう言って、寝室に眠りに行ってしまった。ボクらが一応、いつでも雑魚寝できるように、布団を敷いておいてくれた。そんなことするのさえ、ボクはハラハラするんだけど…。「大学の時みたいだな。こんなふうに、新婚家庭に邪魔できるとは思ってもみなかったよ。」「赤木くんはボクらのキューピッドってやつだからね。」「ふうん。じゃ、大切に扱われておこう。」赤木くんは上機嫌で酒を飲んだ。そこで、酔った赤木くんは、サキちゃんと会った時の話をしてくれた。それは、ボクにとっては、かなり驚く内容だった。「どう思う?冗談だと思うか?」「…どうだろうな。わからないよ。確かめられないの?」「いや…。確かめようと思えば、確かめられるかもしれないけど…。」赤木くんはカラカラとグラスの中の氷を回した。何かを考えるみたいに。「でももう、サキが幸せだって言ってるから…。」そう言って、赤木くんは黙った。「そうだね…。」ボクも赤木くんに同意して黙った。気付くと話は逸らされていて、いつの間にか眠っていた。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月20日
コメント(0)
今日の日記(「BOSS」「夜光の階段(最終回)」(ネタバレ)の感想☆)「アイツとオレ48」「ごめん、こんな時間に、ボクだけど。」「ああ、アオヤンだろ?わかってるよ。表示出るから。」「いや、何でもないんだけどさ…。どうしてるかな~って思って。起きてたか?」「起きてた。起きてた。オマエ…なんか、すげーなぁ…」オレは軽く笑ってしまった。「すげーって、何が?」アオヤンは、何もわからない状態で、逆に不思議がっているらしい。その様子が想像できて、可笑しくなってきた。でも、オレはオマエの声を聞けただけで、何だか元気になっちゃったんだよ。変だよな?だから、理由は話さなかった。こんな時間にかけてくるってことは、アイツにも何かあったんだろう。「どしたんだよ?こんな時間に何でもないってことないだろ?言ってみ?何でも聞くし~!」オレは愉快なノリになって言ってみた。そのノリに乗って、アオヤンが自分の悩みや本音をぶっちゃけ出す。相変わらず、コイツは人がいいんだか何だか、抱え込み過ぎて疲れている。そして、本人がその疲れにほとほと参ってるくせに、誰にも寄りかかれなくて、迷子になってることに誰も気付かないみたいだ。オレはそれにイラつく。周りのヤツらにイラつく。真面目なんだよな~。オレなんかより、よっぽど。取引先のジジイなんか妖怪みてーじゃねえか?ババアはアオヤンに気でもあるのか?それに真面目に対応してるアオヤンを想像すると可笑しくなってきた。しかも、彼女のグチまでウンウン聞いてるって言うんだから、オマエほんとに大丈夫かよ?女なんて、泣いたら口塞いで抱き締めて、いっしょに寝てりゃいーんだよ!…って、他人事だから、こんなこと言えるんだろうなぁ。本気の相手には、オレだって上手くたちまわれないよ。オマエの気持ちはよくわかる。何だって上手くたちまわれれば、人生苦労は無いよなぁ。悩みも無いよなぁ。そんな世界に行きたいよなぁ!オレたちは、つまんないこと言って爆笑して、それで電話を切った。切った後は、楽しさの余韻が残っていて、このまま幸せな気持ちで眠ろうと思った。大丈夫だ。オレは大丈夫。そうして、オレは少しずつ物件を見るようになり、寮を出て、一人暮らしをし始めた。最初のうちは、狭いながらも楽しい我が家~って、感じで、いろいろ、家具や小物にこだわってみて、好きな感じの物を探したりして、自分の城を作っていった。落ち着いてくると、自分って、こんなヤツだったんだ?って、ちょっと可笑しくなった。いろいろオレってこだわりあったんだな~と。本読んだり、DVD観たり、ギター弾いたり、友達を時々呼んだりしているうちに、すっかり一人暮らしにも慣れてしまった。時々、女と知り合って、家に来たがることもあったけど、なぜか家に呼ぶ気は全く起きなかった。男と遊んでる方が楽しくなってしまったなんて、大学以来だと思った。本来のオレをようやく取り戻せたのかもしれない…。年末にオレはタカダさんに新住所を書いた年賀状を出した。 お元気ですか?オレは元気です。新居に男から年賀状なんて来たら、モメるかな?心配した気持ちが浮かんだ。…まあ、いいか、モメても。モメたらオレのとこ来ればいいんだしな!人生なるようにしかならない。何かあったら、その時に考えよう。悲しいことも、つらいことも、楽しいことも、可笑しいことも、オレは全部、曲作りに使った。そんなある日、先輩の一人が結婚することになり、オレはその二次会に呼ばれて出かけた。そこで、思ってもみなかったことが起こった。その会場に見たことのある女がいた。サキだった。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月19日
コメント(0)
今日の日記(「アイシテル~海容~(最終回)」感想☆と息子)「アイツとボク47」ボクらはこうして結婚することになった。ちゃんと仕切り直しに、いつものイタリアンレストランに行って、きちんとプロポーズの言葉を言った。(言わされた。)結婚指輪を買いに行き、あれでも無い、コレでも無いと、たかが指輪一つに悩み、満足した物を買った。そんな調子で、結婚式の準備が始まった。変な話、お互いの趣味が一致してるっていい。ボクがどーでもいいことは、彼女が勝手に決めたし、彼女がどーでもいいことは、ボクが決めた。仕事は相変わらず忙しかったけど、結婚っていう仕事の目標が出来たので、ボクは、ちょっとはりきってしまった。カリナの仕事の悩みは、結婚ですっかり吹っ飛んでしまったのか、聞くことがだんだん無くなって行った。今は穏やかでたのもしいオバちゃんグループに入って、和気アイアイと結婚についてレクチャーされているらしい。「もっと早く結婚決めちゃえば良かった。」カリナが結婚間近になってそんなことを呟く。その代わりに、結婚式をどこでやるかとか、引き出物やら、ウェディングドレスやら、親戚の座る位置だの、お金がいくらかかるだの、そういった雑事に追われていった。そのことの悩みなら、ボクは聞いてるだけじゃなく、協力できることは協力した。ある意味、仕事の悩みを聞くより、こっちの方がボクが解決できることもあって、共同で仕事しているかのように、楽しかった。カリナの親は、標準的に普通の家族のようだ。だが、これからヒトクセもフタクセも出てくるかもしれない。ボクはそれをちょっと覚悟した。新居も決めて、ボクが先に引越すことになった。ちょっとだけ一人暮らし気分だ。カリナは荷物だけ運んで、結婚式後に引越す。その前に、ボクは独身最後の男旅行をすることにした。赤木くんといっしょに、 車で2時間半の場所へ一泊。そこにはイグチくんの家がある。イグチくんの奥さんと子供が実家に帰ってるとかで、ボクらはそこに泊めてもらえることになった。「イグっちゃん、まさか別居じゃねーよな?」「それは無い!心配するな。」イグチくんは、笑いながら断言した。ボクらは、近所の居酒屋で昔話や、近況報告をし、学生の頃に返って、ゲラゲラと笑った。店が閉店になるとカラオケに行き、バカみたいに歌ってからイグチくんちでそのまま飲み直し、気付くとみんなでガーガー寝ていた。朝になり、コンビニで適当に食料を買いに行って食べると、近場の温泉に行くことにした。「イグチくん、相変わらずスゴイ体してるね!」「おう!鍛えているからな。赤木、オマエも鍛えろ!まだ20代なのに、ハラがオヤジみてぇじゃねえか!」「あ~、気になってるんだけどな~。最近すげー出てきたんだよ。」「一人暮らしになると、食生活メチャクチャなんじゃないの~?ハラだけが出てきてるじゃん。」「まーソレもあるかな。気をつけようと思ってるんだけど、つい…な。そのうちジムにでも通うよ。」「いいな。独身貴族ってヤツだな。」「オレは結婚してーんだよ。生活縛られてみたい~!」「そんなプレイはしてない!」どうしてソッチの話に行くんだよ~!とみんなで笑った。こうしてみんなで湯に浸かったりしてると、本当に昔に戻ったようだった。こんな友達ができるなんて、こんなに長く続くなんて、高校に入学した時も、大学に入った時も、考えてもみなかった…。自分から作ろうとしたワケじゃない。正直、友達なんてその場にいて、適当に付き合ってればいいと思っていた。でも、気付いたら彼らがいてくれた。ボクは、露天風呂から見える山々を眺めながら思う。気分が落ち着く。いいところに住んでいるんだな、イグチくんは。こんなふうに、何年離れていても、会ったらあの頃に返って、バカできる付き合いが続けていられたらいいな…何年かしたら、こんなふうに温泉に浸かって、お互いの体を見て、歳をお互い取ったな~と笑い合えたらいいな…でも、そんなこと、想像するだけで奇妙だな。今度いっしょに入る時には、ボクのハラも出てくるんだろうか?イグチくんの筋肉が衰えるんだろうか?赤木くんの体型はどうなっているんだろうか?そんなことが楽しみになったりする。歳を取ることが楽しみになるなんて、考えもしなかった。面白いもんだな。ボクは、そんなことを考えていた。先に待っている未来も知らずに…。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月18日
コメント(0)
今日の日記(「白い春」感想♪と父親考)「アイツとオレ47」帰ってからは、現実感が湧かないでいた。まるでドラマのような別れ方をしてしまったせいかもしれない。もっと駄々でもこねれば良かったのだろうか?相手によってはそうなったかもしれない。でも、彼女とはそうならなかった。そんな関係もあるんだと思った。オレのいい面を引き出してくれる人間。だから何年もメールのやりとりができたのかもしれない。だから、こんなに、失ったとは思えないのかもしれない。週明け、会社に出ると、タカダさんが最後に送ってくれたと思われるメールが来ていた。 赤木くんがいなかったら、私はここで空っぽでした。 今までどうもありがとう。これだけだった。これだけだけど、彼女がオレと同じように、何か空っぽな何かをお互いで埋めていたことがわかった。オレは、心に何かジンワリしたものがきてしまって、涙が出てしまいそうになったけど、こらえた。こらえて、いつもの平和な日常を続けた。今、目には見えないけど、どこかに彼女がいて、同じ空をきっと見ている。オレと同じように。そう思った。新しい派遣社員の女子は、若くて、みんなが鼻を伸ばすような可愛らしさだった。でも、いっしょに仕事をすることになったオレは、タカダさんの仕事ぶりとつい比べてしまって、ため息をつきそうになってしまった。使えねぇ…。 こらこら!赤木くんは正直だねぇ~。 まさか本人に言ってないでしょうね? 誰でも最初はそうだったでしょ? 私も、赤木くんもそうだったじゃない? ゆっくり、長い目で見てあげるのよ~! でも、そんな正直なキミが好き! ガンバレよ~♪きっとオレがグチのメールなんて送ったら、こんな返事が返ってくるんだろうな…。そんなことを想像する。オレの中に彼女がいる。そんな恋もあるんだと思った。そうして、オレの中にはいつも彼女が何となくいるような気がして、毎日が過ぎていった。オレは時間の合間に、タカダさんからもらった分厚い本を読む。何となく、早く読み終わってしまうのが嫌で、じっくり、ゆっくりと読んで行く。どちらにしても、この作家の作品は、一度読んでスッキリするような話では無い。多分、最後まで読んだら、また読み返すだろうな…。と、オレは思っていた。そんな本を、寝る前に、ようやく最後のページまで読み終わると、何だかもの足りなくなってしまった。でも、パラパラとめくった一番最後の白紙の部分に、何か書かれているのをみつけた。それは、彼女の新しい住所だった。その時、こらえていた涙が、ようやく出てきた。バカみたいに出てきた。会いたい。会いたい。誰か助けてくれ。カッコつけてるオレを助けてくれ。その時、携帯電話が鳴った。表示を見る。アオヤンだった。ウソだろう…?とオレは思った。何でオマエは、オレのピンチにいつも助けに来るんだよ?続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月17日
コメント(0)
今日の日記(パソコン初心者サクラ体験☆と「婚カツ!」「魔女裁判」の感想)「アイツとボク46」「お、おはよ…」ボクは寝惚けながら言った。「あ!まだ寝てた?ごめんね。11時ならもう大丈夫かと思っちゃって。」ボクは時計を見る。本当だ!もう11時だった!「いや、いいよ。助かった。これ以上寝たら、夜眠れなくなるとこだった!」「返事をちゃんとしたいと思って。会って話したいんだけど、今日、どう?電話の方がいい?」「会おう!今すぐ支度するから!」「それなら良かった。実は、アオヤンちの駅前の喫茶店にいるの。暇つぶしの道具持ってきてるし、慌てなくていいから。待ってるね。」電話を切る。寝惚けながらも、ボクはカリナからの電話に心が弾んでいるのがわかった。連絡が来たことにホッとしていた。でも、次に不安がやってくる。まさか、断られるってことは無いよな…。ボクは、ちょっと考えた。最後か?そんなこともアリか?そうじゃなくてもモメたりとか…駅前の喫茶店か…。駅を使う度に思い出しそうだ…。つまらないことが、ボクの頭を回る。それに、駅前でプロポーズの返事なんて、近所の目もありそうだ。どこに母親の知り合いがいるかわからない。ボクは車を出すことにした。喫茶店の近くに車を止めて、カリナの携帯に電話を入れた。カリナがすぐに車にやってきて乗り込む。ボクはすぐに車を発進させて、とりあえず、待っている間に考えた近場の高台に行くことにした。その間、カリナは無言だった。ボクも、何だか返事のことだと思うと緊張して、ドキドキしてしまって、何も話せなかった。でも、高台の人気の無いところに車を止めると、もう、どうしようもない位、自分の気持ちが抑えられなくて、カリナを思いきり抱き締めた。いきなりのことだったから、カリナが硬直してるのがわかる。「ごめん!あんなこと言って。やっぱり、ボク、ダメだ…。カリナがいてくれないと、休まんないんだよ!カリナがボクに必要なんだよ!結婚なんて、してもしなくてもいいよ。とにかく、ボクの側にいてくれれば、もうどうでもいいんだ。」あ~、やっぱりボクはダメダメだ!でももう決めたんだ。疲れようが、ぶっ倒れようが、カリナが側にいてくれれば、ボクはもう構わない!「結婚しなくていいの…?」カリナが落ち着いた、ぼんやりした声で言った。「しなくてもいいよ!こうして会えさえすれば!」「でも、そしたら、倒れちゃうんでしょ?」「倒れたっていいんだ!」「何か私からも欲しいんでしょ?私、何もアオヤンにあげてないんでしょ?」「側にいてくれれば、満足だよ。今まで通りでいいんだ。だからもう、結婚とか、考えなくていいんだよ。」「ふーん…」カリナはちょっと黙って、こう付け加えた。「せっかく、結婚して下さいって言おうと思ってたのに。」ボクは驚いて、カリナの顔を見た。「どうする?やめておく?」想像してなかった返事が来たので、ボクは咄嗟に返事が出てこなかった。我に返る。そうだ…。カリナはちょっと天邪鬼な女なんだ。今更ながら、彼女の性格を思い出したような気分になった。今まで、すっかりしおれて、弱弱しくなっていたから忘れていたけど、彼女は本来、こんな女の子だった。「いや…、やめない。やめないよ!やめないって!」ボクはカリナを思いきり抱き締めた。「仕事、辞めた方がいい?」「どっちでもいいよ。カリナが好きな方で。」「仕事しちゃうと、疲れてご飯作れないかもしれないよ。」「金があれば弁当でも買えばいいよ。」「無かったらどうするの?」「その時は作るしかない。」「やりくり下手かもしれないよ?」「じゃあ、ボクが監視する!…って言ってもボクも自信ないから、いっしょに考えよう。」「料理、あんまり上手じゃないよ。」「これから上手になればいいじゃん。ボクも上手じゃないし、作れないけど手伝うから。」「ホント?ホントに手伝うの?」「いや…多分。できれば。なるべく…。」「自分で作るとは言わないのね。」カリナがクックと笑い始めた。ボクも何だか可笑しくなってきた。「結婚する条件が一つあるの。」何だ?恐ろしい額の指輪か?マイホームを買えとか?子供は作らないとか?妄想がこれ以上膨らまないうちに聞いた。「何?叶えられる範囲にしてくれなきゃ無理だよ。」カリナがイジワルっぽく言った。「もう一回、今度はケンカっぽくない、ステキなプロポーズして。」ボクはほぅ~っと息を吐いた。「お安い御用です。」ペコリとお辞儀をする。カリナが笑顔で抱きついてきて、ボクも思いきりカリナを抱き締めた。ボクのハラが安心したようにグゥ~と鳴った。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月16日
コメント(0)
今日の日記(大恐竜展の御報告(写真多数)☆と「Mr.BRAIN」「ザ・クイズショウ」の内容&感想)「アイツとオレ46」タカダさんに最後に会ったあの日。オレたちは昼間からホテルに入って、貪るようにお互いの体の存在を確認した。相手の体を忘れないように、何度も何度も抱き合った。動物みたいだと思った。ベッドで、ずっと彼女を抱き締めていた。「このままずっといっしょにいたい…」小さな声が聞こえた。「…今、何て言った?」オレの胸に顔をうずめている彼女の顔を見ようとしたけど、彼女は顔をあげようとしなかった。そしてもう一度同じことを言うことはなかった。オレは彼女をキツク抱き締めた。大きく息を吸って、吐き出した。「タカダさんの故郷はどんなとこ?」タカダさんはようやく顔をあげた。多分また泣いてたんだと思う。涙を拭いてやったら、ポツリポツリと話し出した。「のんびりしたところ。駅がある街の方に行けば買い物もできるし映画も見れるけど。私は自転車に乗って、川を見に行くのが好きだったな。土手から川を眺めてると、時間を忘れちゃうの…。海も、ちょっと遠いけどあるよ。赤木くんが言ってたみたいな感じに、夏になると賑わう海。秋と冬はね、淋しそうなの。ほとんど誰もいなくて。でも、そこにいて、生きてるって感じで、波だけが元気にザンッザンッって、鳴ってるの。」そこに海の情景が見えた。タカダさんと見たあの海が、タカダさんの故郷の海に変わったような気がした。「いいとこなんだな…。」「いなかだよ。うん、でも、ぼんやりできて、私は好き。」オレはずっと考えていた。今すぐ寮を出れば、タカダさんをひきとめられるのか。この、ゴミゴミした街にタカダさんを小さなアパートに押し込めて、以前のダンナさんみたいに毎日オレが帰るまで待たせて、それでいいのかな…って。彼女はようやく、そののんびりした故郷にダンナさんと帰っていく。それをひきとめていいのか…。かといって、オレがそんな街で働くことは、何だかオレの現実から離れていて、夢物語みたいに思えた。「変なこと言ってごめんね。」タカダさんがオレの顔を見て言った。「変なこと…?」「ううん、何でもないよ。」何となくさっき言ったことじゃないかと思った。 このままずっといっしょにいたい あなたといっしょにいちゃ ダメ?引き止めて欲しいって言っている。でも、彼女も迷っているんだ。すべてを捨てること。オレも迷っている。すべてを捨てさせること。彼女を家の前まで送った。深夜だったから、道が真っ暗だった。車を止めても、お互い無言でそのまま中にいた。お互い手を握り合っていて、このまま朝になってしまうんじゃないかと思った。しばらくして、彼女はうっかりしていたと言う感じで、バッグの中から紙袋をオレに渡した。「これ、良かったら受け取ってくれる?」「何?開けていい?」中にはオレとタカダさんが好きな作家の本が入っていた。辞典みたいな大きさのハードカバー。コレがオレとタカダさんの共通の話題で、仲良くさせてくれたきっかけだったんだな…オレは本の表紙をしみじみと眺めた。「ありがとう。大事にするよ。」オレは迷っていたけど、自分も彼女に買っていた物を渡した。開けるよう促す。「え…。ありがとう。ピアス?」彼女は早速つけてくれた。「ホントは、物なんか渡さない方がいいかと思ったんだけど…。やっぱり渡したくなった。」「貴方は本当に女心をくすぐるのが上手なのね。」「気に入ったんだ?」「うん。すごく…。」「そんなイイ男ふって行くんだから、幸せになってよ。」「…私がふったの?」「そう。だからその分幸せにならなきゃいけない。貴女の好きな、のんびりした故郷で、家族に囲まれて、ゆっくりと過ごすんだよ。」彼女は何か言おうとして、オレの顔を見ていて、ジワジワと涙で目が潤んできているのがわかった。これ以上泣かせていいのかな?とオレは思った。カッコつけすぎじゃないか?傍から見たら、ただの不倫カップルだよ。自分らに酔ってるようなもんだよ。でも、そんなのどうでもいい。お互いわかってて、こんなことしてるんだ。オレはタカダさんを抱き寄せた。「でもさ、もしも帰ってみて、貴女が幸せだって感じられなかったら、オレのとこに来てよ。そしたら、オレはその頃にはもう寮を出ていて、貴女を迎えられると思うからさ。」「不幸にならなきゃ、赤木くんのとこに行っちゃいけないの?」「幸せにならなくちゃいけないんだよ。」タカダさんの涙はあふれていて、こぼれた。そして、うん。うん。と頷いた。「どこにいても、貴女が幸せな方がオレは嬉しいから…」クサいセリフしか言えない。陳腐だけど、本当の気持ちだからしょうがない。「赤木くん、カッコ良すぎ…」オレの胸の中で泣きながら笑って、タカダさんがそう言った。「カッコくらいつけさせてよ。今そーいうこと言わないで、いつ言うんだよ?」タカダさんがオレを抱き締めて、強く、強く抱き締めて、同じようにオレも抱き締めて、最後のキスをした。カッコつけんなよ。それでいいのかよ?もう一人のオレが言っていた。オマエばかなんじゃないか?もう一人のオレが呆れて言っていた。赤木くんって、意外と真面目なんだよね?アオヤンもそう言っていた。バカだな、真面目だったらこんなことしてねーよ。オレは言い訳をする。ホントは、このまま帰したりなんかしたくねーんだよ。でもしょうがないじゃん。現実、彼女を今すぐ迎え入れる場所が無いんだから。彼女がようやく車を降りて、オレの方に笑顔で手を振った。でも、彼女の目から涙がずっと出ていた。お互い、もう何も言わなかった。ただ、笑顔で手を振った。オレは決心して車を出す。何かの歌みたいにハザードを5回点滅させてみる。窓から手を出して振る。バックミラーから見える彼女が、オレにずっと手を振って見送っていて、オレが曲がるまでずっとそこに立っていたのが、最後に見えた。涙が出そうになる。彼女はもう戻らないだろう…それでも、お互い、さよならとは言わなかった。言いたくなかった。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月15日
コメント(0)
今日の日記1(お出かけしてきまっす♪)今日の日記2(大恐竜展の実況 )「アイツとボク45」飲み会に行くと、事務の女の子が上手く言っておいてくれたらしい、すぐに輪の中へ入れた。ボクは頃合を見計らって、事務の女の子にさっきのことを謝りに行った。「さっきは、スミマセン。何て言っておいてくれたの?」「取引先の電話につかまっちゃったみたいです。って。それより青山さん、彼女大丈夫ですか?」「あ~、うん、まあ、ねぇ…。」ボクの様子を見て、気遣ったのか、彼女から話題をふってくる。「カワイイ人ですね~。結婚するんですか?」「え?なんで?」ボクはさっきのこともあったので、動揺しながら返事する。「だって、だから私にさっきあんな質問したんですよね?」あ~、参ったな。もう、あんなとこも見られてしまったし、取り繕いようもない。「うん、まあ。実はそうなんだ。でも、内緒だよ。まだ返事もらってないんだ。断られたらカッコ悪いじゃない?」「信用して下さいよ~。さっきのこと、誰にも話してないんですよ。でも、会社まで来たりするのに、断るってことは無いんじゃないですか?」「そう?そんなもの?」「そうですよ。よっぽどのことでもあったんじゃないんですか?何か聞きました?」「いや、ちょっと慌てちゃったから、聞かなかったな。出張の帰りに寄ったとは言ってたけど。ボクが定時だって言ってあったもんだから…」「じゃあ、すごく会いたかったんですね~。ラブラブじゃないですか!そんな人が断ったりしないですよ!」「そうかな…」ボクはさっきのやり取りで、ボクらはもうダメなんじゃないかと思っていた。「まあ、でも、結婚するとなると、女っていろいろあるんですよね。今までの生活が男性と違って一変しちゃうじゃないですか。友達も言ってましたよ。自分の部屋が無くなるし、仕事から帰っても家事が待ってるし、仕事してないと自分のお金じゃないみたいで、自分の物買いにくいし、自分の自由がきかなくなりそう…ってね。」「それでもキミは結婚するんでしょ?」「ええ。だって…」彼女はオナカを指さした。ああ!と、ボクは頷いた。彼女が小声で言う。「まだ、内緒ですよ。さっき内緒の話を打ち明けてくれたからです。まぁ、どっかから漏れていくとは思いますけど…。来月の結婚式で発表しますから。」「もちろん、言わないよ。」「でも、ちょっといいかな~って、そういう生活も。文句でも言いながら、とりあえず、やってみます。」彼女はボクより年下なのに、よっぽどしっかりしてると思った。肝っ玉母さんになりそうだ。彼女の話を聞いていて、ボクは、現実結婚ってそんなものなんだろうと思った。ボクが迷ったのと同じ以上に、自宅のカリナの生活は変わってしまうだろう。側にとにかくいっしょにいたいから…それだけの理由で結婚するのは馬鹿げているんだろうか。でも、それしか理由が無いんだよ。それだけ言えば良かったんだ、きっと。子供みたいな理由かもしれないけど、それだけなんだ。子供がオモチャをねだるように駄々をこねたようなプロポーズ。もう一度どこかでやり直したい。ちゃんと、自分の気持ちを伝えたい…。その日、カリナから連絡は無かった。当然だろうとボクは思った。よっぽどのことがあったんじゃ…事務の女の子が言ったことが頭に蘇る。自分で突き放したくせに、仕事が忙しいはずなのに、ボクの頭の中は、どこかカリナのことを考えていて、時々仕事をミスりそうになった。何てボクはダメなヤツなんだろう…。それで気がついた。ボクが彼女を支えたいんじゃなくて、ボクが彼女を必要としてるんだ…と。今まで、携帯に毎日短くても、何かカリナからメールが入っていた。それが、たった一日無いだけで、妙に淋しい。でも、あんなことを言ってしまったからには、連絡を待つしかない。でも、連絡が無かったりした時には、ボクらはもう終わりなんだろうか?それでいいのか?本当に?現実、たった一日でコレだぞ?週末に連絡は来るんだろうか?自分から連絡すればいいんだろうか?カリナに連絡を取りそうになる気持ちを抑えて、ボクは仕事に向かう。ここを乗り越えないと、ボクはダメなヤツになってしまうような気がした。だから、仕事に頭を切り替える努力をした。それでも、仕事の合間に時間がぽっかり空いた時は、弱気になって、カリナに連絡したくなる。今、どうしてるかな…。そんなことを考える。金曜の夜、連絡が無かった。その日も遅くなって、すごく眠りたかったはずなのに、気になって何だか寝付けなかった。土曜の朝は早く目が覚めた。連絡が無いことにガッカリして、ゴロゴロしてみたものの、気持ちが落ち着かなかった。何だか休んだ気にならない。母親がいつまでも寝巻きでいるなと文句を言っていた。そして、遅い昼ご飯を出してくれる。家にいるの珍しいわね、夕飯どうするの?なんて聞いてくる。あ~、多分コレが結婚なんだろうな。母親がカリナになった姿を思い浮かべる。何だか笑えた。こんな生活してみたいかもしれないな…。ぼんやりそう思った。夜も連絡は無くて、ボクはいよいよ不安になってきた。やることが無くて、夕飯を作る母を見て、何か手伝おうか?って聞いたら、仕事で疲れてるんだから、休んでていいわよ。って言われた。そんなこと言われると、珍しくて気持ち悪いって付け加えられた。ボクは何となく、箸を出したり、テーブルを拭いたりした。子供の頃はこんなこと自分からやってたんだよな…と思い出した。いつから当然みたいにやらなくなったんだろう?明日、連絡が来なかったら連絡しようかな。いや、でも、カリナはボクを必要じゃなかったのかもしれない。だから連絡が来ないのかもしれない。そんなこと思いながら、聴きたかった音楽を聴いたせいで、曲が全く頭に入ってこなかった。休みたかったはずなのに、これなら休日出勤でもすれば良かったと思った。もう、ダメになったらダメになったで、赤木くん誘って釣りにでも行こう。来週まで連絡が無かったら、カリナに連絡して、白黒はっきりさせてもらおう。ボクはそう思った。そう思ったら気分も和んできて、いつの間にか寝てしまった。携帯の音で目が覚める。「おはよう。ゆっくり休めた?」カリナだった。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月14日
コメント(0)
今日の日記(「スマイル」と映画「花より男子 ファイナル」の感想~☆)「アイツとオレ45」窓の外に見える木が、葉の色を変えているのを見て、オレはすっかり秋なんだと思った。もしも、あの時、彼女に行くなと言っていたら、ここに彼女はいてくれたのだろうか?オレは、海の写真を見ながら思う。多分、彼女の故郷、近場の海なのだろう。隅にメールアドレスが書いてある。彼女タカダさんと初めて寝た日、結局離れられなくて、翌日の夜に彼女を送った。車の中では、ずっと彼女の手を握っていた。満たされたと思った心は、離れた途端に彼女を思うようになり、すぐに会いたくてたまらなくなった。ありがたいことに翌日が会社だったので、彼女の顔を見て、いつもと同じように仕事ができてホッとした。今日もメールが入っている。 赤木くんの歌、聴きました。 スゴイね! どうしてプロになろうと思わなかったの?オレは返事を書く。 なりたいと思った時期もあったし、イイ線いきそうなこともあったけど、 オレの中ではどうしても家族が欲しかったし、 音楽一本で養っていくほどの才能があるとも思えなかったから。あ…、何か暗いな…。 でも、まだこれから、ライブやってって、 どうするか考えるよ。 気楽な独り者だしね! ジジイになってもバンドやってやる! って、オレは思ってる。そう書いて、返事を出した。特に、今日会おうとか書かなかった。タカダさんからも返事は来なかった。仕事が終わると、やっぱり会いたいと思ったけど、もう彼女は会社にいなかったし、家に電話するのも気後れした。明日は会えるか聞いてみようかな…。オレはそう思いながら、ふと思いついて、タカダさんといつも待ち合わせるバーレストランで飯を食べて帰ろうと思った。中に入って驚いた。タカダさんがカウンターにいたからだ。「あれ?どしたの?」驚いた顔をしたタカダさんは笑顔になった。「まさか来ると思ってなかったよ。今日も夕飯作らなくていいの。そしたら、足が自然にココに向いちゃったのよね。」「オレもそうだよ…。なんだ。じゃあ、誘えば良かったな。どうしようか迷ってた。」「ホントに?」「うん。」オレも注文をして隣に座った。「あ、そうだ!」タカダさんはゴソゴソとバッグから何か取り出した。「はい、これテープ。どうもありがとう!」「ああ、サンキュ。あれ?コレ何だ?」「まだ読んでないって言ってたから、本。」「ああ~、アレかぁ!ありがとう!」「でね、もし良かったら、このテープ、ダビングさせてもらっちゃダメ?」オレは本を見て、思い立ってテープをタカダさんの前に置く。「あげるよ。」「え?いいの?大事なものでしょ?」「だいじょぶ。コレのマスターをバンドの友達が多分持ってるから。」タカダさんは嬉しそうに、テープをバッグに入れた。「ありがとう。すっごい嬉しいな~。有名になってね!大事にしておくから!レアテープになりますよ~に!」「はは!そうなるといいな~!」「がんばってね!楽しみにしてるから。」翌日も、約束はしなかった。ずっと約束はしなかった。それでも、その店に行くと、タカダさんがそこにいた。オレが先に来ている時もあったし、タカダさんんが、すぐに帰らなきゃいけない時もあった。オレが残業で、閉店間際に行った時も、彼女はそこにいた。オレを待っていた。彼女が会社を辞める日まで、それは毎日続いた。飲むだけの日もあったし、食事だけの日もあったし、寝た日もあった。オレたちは、ワザとこれからの話を避けて、ただ、そこに、お互いの存在があることを確認した。会えた時は、これが二人きりでいられる最後になるんじゃないかと思うのに、今の状況が永遠に続くような錯覚をしそうになった。そうして、会社最後の送別会の日があって、流石に、その日はもう会えないだろうと思った。前日、会った時に何か約束すれば良かったのに、もう最後だと認めたくなかったのかもしれない。オレたちは、いつものように別れていた。彼女の、送別会での挨拶の話だと、今、家には一人で残っていて、後片付けをしたら、行ってしまうらしい。タカダさんに酌をしに行って、隣に座った時に、小声で耳打ちした。「明日会おう。会える?」それを見て、先輩が「赤木、オマエどさくさに紛れて、何、内緒話してんだよ!」と、騒いだ。「愛の告白しようとしてんですから、邪魔しないで下さいよ!」と、オレが言うと、「じゃあ、オレも混ぜろよ!」と、訳のわからないことになってしまって、オレは押しのけられ、みんなが一人一人、タカダさんとしんみりしゃべっていた。タカダさんが主役だから仕方無い。もう、会えないのかもしれない…。そんな不安が送別会の間、ずっと心にあった。終電ギリギリまで騒いで、お開きになって、タカダさんは、先輩たちに囲まれていて、同じ方面の帰る人たちとタクシーに乗って行ってしまった。残った人間は週末だからと、他へ流れた。オレは終電組といっしょに帰った。帰ったら、家に電話してみようと決心していた。飲んでも何だか酔えない。頭の中が妙にハッキリしていた。寮に向かう道で携帯の音が響いた。タカダさんからだった。「明日、会おう。」「うん。迎えに行く。」アレがタカダさんに会った最後の日だったんだな。オレは思い返す。この手に抱き締めたぬくもりも、彼女の体も、まだ昨日のことのように覚えている。もしも、あの時、オレがもう寮を出ていて、一人暮らしをしていたら、ひきとめられたのだろうか?もしも、あの時、あの場所に戻れたら、強引に連れ去ってしまえたら、何か変わっていただろうか?でも、これで良かったんだと思う。やっぱりひきとめなくて、良かったんだ。貴女はそこで幸せでいて…オレの分まで幸せになっていて欲しい。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月13日
コメント(0)
今日の日記(「BOSS」と私のパソコン講師体験☆ )「アイツとボク44」カリナが目を見開いて、ボクを見ている。何か言おうとしてるのに、声が出ないかのように、口を開けたり閉めたりした。こういうのが口をパクパクさせるってことなのかな…とボクは他人事のように思った。「ボクは今仕事でとっても疲れてる。今だって、ようやく仕事に一段落したら、部署の飲み会だ。あの女の子は遅いから呼びに来たんだよ。先輩の婚約者だ。でさ、こんなふうに、カリナが突然来ても、ボクはカリナを追ってしまう。そんなんでいいと思う?どっちも大事だから、今までだって無理してたんだ。本当は、会社の休みは寝ていたい。でも、カリナの側で寝てたいんだよ。わかる?カリナがボクを嫌いなら嫌いでいいよ。結局ボクがカリナを好きってことなんだ。このままこんなこと続けてたら、ボクはぶっ倒れる。仕事とキミに挟まれて、確実に倒れる。ボクのことが嫌いなら、もう手を離してくれ。でも、ボクが好きなら結婚しろ。ボクのためにいっしょにいて、側で怒ったり泣いたりしてよ。」何かもうヤケクソみたいだな。もう一人のボクがボクを見て、そう言っていた。「いますぐ返事しろなんて言わないから、帰ってよく考えてよ。ボクはこれから部の飲み会がある。戻らなきゃいけない。ほら、行くよ。」呆然としてるカリナの手を引っ張った。「ちゃんと考えて、週末にでも返事聞かせて。」ボクは歩きながら言った。いいのか?それで?いいんだよ、もう。手を離して来なくなったら、それまでのものなんだ。「どうして…?そんな急に焦るの?」カリナがポツリと言った。「急でもないし、焦ってもないよ。気付かなかっただけじゃないの?ちょっとはボクのこと考える時間ある?カリナは自分でいっぱいいっぱいでしょ?」「そんなふうに思ってたの?」「違うの?」そのまま二人で無言で歩いて、駅に着いた。「じゃあ、ボク行くね。」行こうとするボクの後ろからカリナの声が聞こえた。「行っちゃうの…?」「連絡待ってるから。」「結婚するか、しないか…しかないの?」「もうそうするしかない。」「脅しみたいだね。」「そう思ってもいいよ。それ位、疲れてるんだ。いっしょに暮らして欲しい。じゃないと、側にいられそうもない。」「結婚って…そんなふうに決めるものなの?」「結婚は形式じゃないだろ。じゃあ、ただいっしょに暮らす?ボクは家を出たっていいよ。」「それは…無理だと思う。親が許さない。」「だったら手を離せよ。ボクは何のために必要なの?ボクを必要だとしても、側にいるしかできない。でも、ボクにだって何か与えてよ。ギブアンドテイクだ。」「取引みたいだね。」「そうかな?ボクはカリナのこと、ずっと大事にしてきたつもりだよ。伝わらなかった?」カリナはもう何も言わなかった。何だか滅茶苦茶で最低だな…とボクは思った。でも本心だ。結局自分がかわいかったんだ。「何か起こる気がするんだけど…」何かってコレかよ?園長の声がこだまする。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月12日
コメント(0)
昨日の日記( 「アイシテル~海容~」ネタバレ内容&感想と親の気持ち)「アイツとオレ44」「オレが遊びで誘ったと思ってんの?」「…遊びでも何でもいい。」「一日だけって言わなきゃ出てこなかったでしょ?」タカダさんは何か言おうとした感じで、オレの顔を見た。ちょっと間があって、ようやく口を開く。「私ってズルい人みたいだね。」「そうなるように仕向けたんだよ。」「…優しいんだね、赤木くんは。そうじゃないよ。ほんとにズルいんだよ。」「どうしてそんなこと言うの?」「好きじゃない人と寝れない…。寝たから好きになった訳じゃない。」「…」そんなことを言われると、どうしていいのかわからなくなった。今日だけのことだと自分に言い聞かせてきたのに、もっと、もっと欲が出る。「そんなこと言って、もっと本気になったらどうすんだよ。困るのはそっちだろ?」「今だって困ってるよ…。こっちだって、ずっとブレーキかけてたんだから。ずっと、いい関係でいたいって…。はずすつもりなんてなかったんだよ。本当に…」「だから、タカダさんのせいじゃないって言ってるじゃん。オレが、こうなりたかったんだよ。オレが誘惑したの。いい?罪悪感感じる必要無いから。オレのワガママに付き合ってやったと思えばいいんだよ。タカダさんがいい関係のままでいたいって言うなら、このこと忘れたっていいんだよ。」「忘れちゃうの?」「タカダさんが忘れればいいんだよ。それでいいじゃん。会社を辞めるまで、今まで通りで。」「そんなことできない。忘れたくないよ。」「じゃあ、忘れないでよ。オレも忘れないから。」「どうしてそんなこと言うの?どうしてそんな優しいことばっか言ってくれるの?貴方は悪くない。ワガママなんか言ってないよ。私の意思で、ここに来たの。」「別に優しくなんかないよ。本当にそう思ってるだけでさ。タカダさんが、こんなことになって、嫌な思いすんの、オレ嫌なんだよ。」「私だって、赤木くんが嫌な思いするのは嫌だよ。だから…」タカダさんは下を向いて黙ってしまった。よく見たら、タカダさんが声を出さずに泣いてるのがわかった。「だから、こうならないようにしたかったのに…。だって、私結婚してるじゃん。どうにもならないじゃん。もう、どうしていいのかわからなかったよ。でも、貴方が待ってるかと思うと、行きたかった。どうしても、会いたかった。私と同じように思ってくれたのかと思ったら、気持ちが止まらなかった…。最低だよね?だって、今すごくこうしてられると嬉しいんだよ?罪悪感でいっぱいなのに、赤木くんといっしょにいたいの。もっといっしょにいたいの。」オレは、タカダさんを引き寄せて、強く強く抱き締めた。「もういいよ…。何も、言わないでも。わかるから…」本気になったら、本気の人しか残らない。本当だ。もう、それだけで、オレの心は充分満たされたんだよ。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月12日
コメント(0)
今日の日記(「白い春」感想と餃子作ったよ♪)「アイツとボク43」カリナは、ボクと目が合って驚いたらしい。その場で固まっている感じだった。「ゴメン!せっかく呼びに来てもらったのに。何か、適当に言っておいてもらっていいかな?」ボクは、カリナを見つつ、慌てて事務の女の子に言ってカリナの方へ向かおうとした。道路反対側。信号がなかなか変わらない。カリナはボクが来るのを見ると、反対方向へ足早に歩いて行く。信号が変わる。「待てよ!カリナ!」ボクは走ってカリナに追いつく。カリナはそれでも歩みを弱めず、早足で歩く。「どこに行くつもりだよ?」「わかんない。わかんないけど…」「とりあえず止まってよ。」「嫌よ。」「何で?」カリナは答えず、ズンズン歩いて行く。ボクは、その隣を無言で並んで歩く。あ~、もう!めんどくさいな!ボクは公園が見えたので、カリナの手を掴んで公園に引っ張って行った。「離してよ!どこ行くのよ!」「どこだっていいだろ別に。道路で言い合いするよりマシだ。」公園の中に入ると、ボクが手をゆるめた隙に、カリナが手を無理やりほどいた。「痛いってば!」「ごめん…。」お互いしばらく無言になって足元を見ていた。「何だよ、一体。急に来て、何怒ってる訳?」「怒ってないよ。別に。」「怒ってるじゃないか。」カリナはしばらく黙っていた。ボクは返事を待った。「よくわかんないよ。定時だって言うから、私今日、出張で直帰だったから、会社の前で待ってたら出てくるかな…って思っただけ。驚くかなって思っただけ。」「充分驚いたよ。」「そしたら、女の子とイチャイチャしながら出てくるじゃない?どうしていいか、わからなくなっちゃったのよ。」「そしたら逃げるんだ?」「逃げたんじゃないわ。足が勝手に動いたのよ。」「怒ってるんじゃないの?」「わかんないわよ。何だか、楽しそうにしてるアオヤンたち見たら、イライラしちゃって…。」何だ、ヤキモチ焼いてるんだ…。ボクは内心ホッとした。顔にそれが出たらしい。「何よ。何が可笑しいワケ?」カリナが口を尖らせた。「そんなにボクが好きなんだ?」カリナが真っ赤になって言った。「もういいわよ!帰る!」「帰るの?」「そうよ!もうアオヤンなんか嫌い!」カリナはボクに背を向けて、歩いて行こうとする。子供みたいだな。ボクは思った。「そうか。いいよ。わかった。」ボクが言うと、カリナが振り返った。「ボクのこと、嫌いなんだね?」「そうよ。大嫌い。」「ほんと?」「ほんとよ。」ボクは大きく深呼吸をして、言った。「じゃあ、カリナ、ボクと結婚してよ。」続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月10日
コメント(0)
今日の日記(「婚カツ!」って…)「アイツとオレ43」オレがタカダさんを抱き締めると、彼女もオレを強く抱き締めてきた。オレだけが彼女を欲しい訳じゃないと思った。ブレーキはこうしてはずれて行くんだと思った。いくらでも彼女に逃げ道は用意しておいた。それは同時にオレへの逃げ道でもあった。怖かったのは、自分の心が制御できなくなることだ。サキと別れた時、心の空洞を埋めたくて、オレは何人かの女と付き合ってみた。でも、どこかで本気になることを避けていた。自分にまた空洞ができるのが怖かった。矛盾しながらも、次々と表面的な穴埋めをして、気付くと何も残らない付き合いをした。それでいいと思った。空洞は空洞のままでいいと思った。もう満たされることはない、もう一度満たされたら、また失う恐怖から逃げたかった。なのに…本当は欲しかったことに気付いてしまった。埋めてくれるだろう相手に、ずっと目を背けていたのに…。今、この腕の中にいる人が、オレの空洞を満たしていく。部屋に入ると、お互いがお互いを待てないようにキスをした。服を脱がせて、体中にキスをして、キツく腕を握った。彼女の柔らかい肌が、オレの体にからんでくる。ずっと、ずっと、欲しかったのかもしれない。この人を、抱き締めたくて、触れたくて…。彼女がここにいる感触を、口で、手で、指で、体で、全てで感じる。好きだ…好きだ…離れたくない。離したくない…。ぼんやりと、ベッドの上で天井を眺めていた。タカダさんも無言で、オレの胸に頭を乗せて、腕をからませていた。「何してるの?」「ん…赤木くんの心臓の音が聞こえる…。赤木くんは何考えてるの?」「このままオレのとこにタカダさんが来ないかな~って、思ってた…」タカダさんが無言になった。「本気か遊びか見極めたかったら、本気になるといいんだって。」オレが言った。「何…それ?」「遊びの人は、相手が本気になると怖くなって逃げるから、自分に本気になった人しか残らないんだってさ。」「誰が言ったの?」「ねーちゃんの友達。初めて付き合った相手とうまくいかなくてさ、たまたま、ねーちゃんが帰るの待ってる時に、恋愛相談みたいな話の流れになっちゃって。そしたら、そんなこと教えてくれた。」タカダさんはクスクス笑った。「何歳の時?その人、赤木くんの初めての人だったりして。」「いや…、二人目。初めての女は高校の時で中学の同級生。お互い初めてだった。”痛い!何すんの!ヘタっ!”って、蹴られた。ショックだったな~。で、それを慰めてくれたのがその人。でも、浮かれてたら、ねーちゃんが彼氏いるよって。家に来ても、避けてたな。」それで、処女と彼氏がいる女は避けるようになってたのにな…。オレは、やっぱりそういう運命なのかもしれない。目の前にいる女も男がいる。「その人、彼氏と別れたかもしれないのに?」「あの頃はそんなこと考えもしなかったよ。年下だったしね。遊びだったんだろうと思った。オレが落ち込んでるから、同情したんだろうな~ってね。思い込みで生きてたから、相手の気持ちを確かめる余裕もなかったよ。」「苦いね~。」「うん、苦い。も~、トラウマ。」「下手…か。すごいこと言うね、その女の子。」「上手い人は痛くないって友達が言ってた!って、すごい怒ってたよ。それ位、痛かったのかもしれないけどね。」「初めてで、しょうがないじゃないねぇ?それとも経験豊富に見えたのかな?その歳で、今くらい上手だったら怖いよね?」「今、上手いの?ホント?」タカダさんは、しまった!って感じで赤くなった。「わからないけど、私はすごく良かったです…。私だって、百戦錬磨って訳じゃないんだから、判別つかないよ。」「ふーん、そうなんだ?」「何?その言い方?イジワルだね!赤木くんの方が経験豊富でしょ?」「そんなことないよ~。」「ウソだね。私だって、会社で女の子たちから話聞くことあるんだよ。」「どうせ、遊んでるとかだろ?知ってるよ、その位。しょうがないじゃん、本気になれなかったんだから。」「ひどい言い方。女は寝ると情が出ちゃうんだよ。好きになっちゃうの。泣いてた子だっていたの知ってるんだよ。」オレはタカダさんから目を逸らして、天井を眺めて言った。「じゃあ、貴女はどうなの…?」タカダさんはしばらくオレを見て黙った。言っていいのか迷うように口を開く。「だって、一日だけのつもりなんでしょ?」続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月09日
コメント(0)
今日の日記1(梅雨が来た感じだね~☆)今日の日記2(「ぼくの妹」感想と美容院に行きました♪「アイツとボク42」家にクタクタになって帰り、シャワーを浴びて、寝る支度をする。その時、なぜかわからないけど、むしょうに、アイツの声が聞きたくなった。仕事で忙しくて連絡してない。アイツも多分そうなのかもしれないけど…。一瞬どうしようかと思ったけど、電話をしたら、アイツがすぐに出た。「ごめん、こんな時間に、ボクだけど。」「ああ、アオヤンだろ。わかってるよ、表示出るから。」「いや、何でもないんだけどさ、どうしてるかな~って思って。起きてたか?」「起きてた、起きてた。はは…、オマエなんかすげーなぁ。」「すげーって何が?」「いや、何もないけど…、どしたんだよ?こんな時間に何でもないってことないだろ?言ってみ?何でも聞くし~。」アイツの軽いノリに思わずポロポロと本音が出る。外回りしてるジジイが偉そうで、ちょっとでも機嫌を損ねると、担当を替えるだの、契約を切るだのとネチネチ言うこと。ババアが知ったかぶりするくせに、結局何にもわかってなくて、何度も呼び出されること。ボクが白熱して言えば言うほど、アイツはクックと、まるでとんでもなく面白い笑い話でも聞くかのように笑った。それで、ぼくも何だか、自分が面白いことでも話してるかのような気分になってきて、もう、最後はネタみたいになってきた。「んじゃ、その妖怪ネチネチジジイは今度何言い出しそうなの?」「そうだな~、次はソフトが起動しないって、呪われたコンピューターに塩でもまくんじゃないの?」「砂かけジジイだな!やってるとこ、見てえ~!!!」一通り笑った後、アイツはこう言った。「おい、オマエさ、大丈夫なのかよ?ホントはカリナちゃんとこういう話したいんじゃねぇの?なのに、出来ない。」「まあ、いいよ。オマエがいるから。」「そうかもしれない。でもさ、それでいいのか?オマエは優し過ぎる。優しいから、相手がつい寄りかかってくる。オマエもそれを許す。相手がそれが普通と思う。オマエだって、相手に寄りかかりたい時だってあるだろ?」ボクは何て返事していいのかわからなくなって、口ごもってしまう。「大学のノートの時も同じだ。相手は、オマエの優しさを感謝しない。そういうヤツだと思っている。でも、オレはそういうのイヤなんだよ。カリナちゃんにもそうなって欲しくない。オマエらは、いっぱいいっぱいだ。カリナちゃんは、自分でいっぱいだし、オマエは仕事でいっぱいだ。でも、オマエは彼女を失いたくなくて、寄りかからせている。」「そうかもしれない…。」ようやく出た言葉がそれだった。「赤木くんはボクのノート、コピーしなかったよね。」ボクは思い出して言った。「当たり前だろ。オマエが自分でとったノートなんだから、必要があるのはこっちだから、ありがた~く自分で書きうつさせてもらったんだよ。コピーしたとしても、それが当然とは思わない。」だから今、オマエとは友達なんだろうな…。ボクはぼんやりと思った。「オレは思うんだけど…」アイツが、言っていいのか迷うようにそこで無言になった。「いいよ。言ってよ。」「オマエの優しさが、カリナちゃんにとって、あまりいいこととは思えない。同情する方が相手にとっては居心地いいよ。でもさ、相手が弱ってるからって遠慮して、自分の弱い部分見せられなかったり、突き放して、それでいなくなっちゃうようなら、結婚しても、オマエが疲れてくだけじゃないのか?」はぁ~っとボクはため息をついた。「そうかもしれない…。」「まあ、そうため息つくなよ。息抜きがオレでも構わないけどな。オレだって、オマエの話聞いてると面白いしさ。」「面白いって、ボクは面白くないよ~。」「そりゃそうだ。ゴメンゴメン!んじゃ、明日も妖怪退治がんばってくれよ。」「ああ、やっつけられたら報告する~。」ボクは電話を切ると、急激な眠気に襲われた。自分の本心を話せる人間がいるのは、いいな…と思った。アイツが言った言葉は、ボクも思っていたことだった。妖怪退治をした、外回りの帰り、携帯を見ると、カリナからメールが来ていた。 今日は早いの?ボクは返事を書く。 今日は定時だよ。そのメールにカリナからの返事は無く、ボクも次の仕事が詰まっていたので、急いでとりかかった。「おい、青山~、今日部署で飲みに行くぞ!」「え?!いきなりですね~!」「何でも、部長からのいきなりの声かけだから!みんな逆らわないよ。」「はいはーい。」ボクは仕事を区切りいいところで終わらせるのに必死だった。でも、その区切りがなかなか終わらない。「青山さん、そろそろ行かないとマズイですよ。」事務の女の子が声をかけてきた。「え?あ、ボクたちが最後?」「そうです。呼んでくるよう、言われました。」彼女は一回りも年上の、今日ボクに声をかけてくれた先輩と結婚することになっている。薬指にダイヤがキラリと光っていた。会社を出る支度をしながら、ボクは聞く。「それって、婚約指輪だよね?」「ええ、そうですよ~。」「あのさ…、ちゃんとプロポーズとかってされた?」「え~、何でそんなこと聞くんですかぁ?」彼女が照れ臭そうに笑った。ボクは、自分の恋愛事を一つ話すと、今日の飲み会が冷やかしのタネになることがわかっていたので、「え~、独身の男は参考にしたいんだよ~!」と、彼女の口調を真似て笑った。「あ、何真似してんですか!」彼女はボクの肩を怒ったように叩いた。「ごめん、ごめん。あの先輩がどんなふうにプロポーズしたのか聞きたかっただけ。」お互い笑う。笑った時に、何となく視線のようなものを感じて、ふっと見た先にカリナがいた。え?何でココに?!続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月08日
コメント(0)
今日の日記( 「Mr.BRAIN(ミスター・ブレイン)」「ザ・クイズショウ」の感想と最近のご飯☆)「アイツとオレ42」この心理テストを教えてもらった時、サキやバイトのみんなにもやってみた。今でも覚えてる。サキの答え。「私はね~、砂浜を歩いているの。波打ち際ってやつかな。娘と手を繋いで歩いてるの。海の中には、夫になる人がいて、私たちに手を振ってるの。波はちょっと遊べる程度ね。海は海外みたいに、そんなにキレイじゃなくて、海水浴ができればいいの。でも、私達家族しかいないのよ。」「へぇ~、オレたちの子供って娘なんだ?」二人きりになった時に言った。「だって、そういう情景が浮かんだんだから、しょうがないじゃない?シンちゃん、娘より息子がいいの?」「そうだな~。どっちでもいいや。両方産めば?」「も~、人が産むと思って、簡単に言うよね!でも、シンちゃんは、女の子喜ばせるのが上手だね。」「え…何が?」「だって、”オレたちの子供”なんでしょ?いつか本当にしてね。」そう言ってサキは笑った。オレはサキを抱き寄せて、キスをした。遠い記憶。今は別の女がオレの前にいて、同じ質問に答えている。不思議なもんだな。「え~っとね、珊瑚礁のキレイな海。そこでスキューバーダイビングしてるの。魚とかといっしょに泳いで、キレイな感じ。」「へぇ~。波は?天気とか、時間とか。」「波はね、あまり無いかな。天気はすっごい良い天気。真っ青で昼間。」「誰か人とかいる?」「そうね、…好きな人と二人きり。」ははっとオレが笑う。人によって違うもんだな。「何何~?早く結果教えて!答えは?」「そこって、実際に行った場所でしょ?」「うん、そうよ。オーストラリア。すっごいキレイだったの。」多分、新婚旅行とかだな…とオレは思った。敢えて口には出さなかった。「答えはね、コレはその人の心の海。波は人生の荒波。だから、タカダさんは、平穏無事に生きていきたい…ってことかな。天気が良かったり、海水がキレイなのは、その人の心の状態が幸せってこと。朝とか午前中なら尚イイって聞いたかな。夕暮れや珊瑚礁とかで海に色があるのはロマンチスト。海との距離は社交性。中にいる程社交的。」「へぇ~!そうなんだ?いいじゃーん、私!人は?」「周りにあるのは、その人の人生で必要と思ってるもの。タカダさんは、愛する人ってことかな?魚は小道具とか?雰囲気を盛り立てるものとか?コレがペットとかだと、自分と対等じゃない、従順なものが好きってことだって、先生が言ってた。」「先生?何?そういう学校でも言ってたの?」タカダさんが笑う。「心理テスト教えてくれる学校?あったら面白いけどね~。学校の授業でもう卒業って時に先生が教えてくれたんだよ。当たってる?」「結構、当たってる。でも、社交性はどうかな?自分からあまり行かないと思うんだけど。」「そうだね。でも、飲みに行こうとか言ってくれたじゃん。」「ああ…そっか。ねえ、赤木くんは?どんな海?」オレはちょっと驚いた。聞いたことはあるけど、オレに聞き返してきたヤツはいない。「オレ?オレはね、ここが真夏になった時みたいな、人混みの海。オレは家族といっしょでその海を眺めてる。泳ごうかな~って。」「それって、どういう分析されたの?」「ああ…。淋しがり屋なんだね!って真っ先に言われたよ。しょうがないじゃんかなぁ?そういう海しか知らない頃の質問なんだから。子供の頃、家族旅行した時の海なんだよ。うちは、夏は必ず家族で近場の海に行くんだ。オレだって、今とか、海外や沖縄とかのキレイな海を見てからだったら、タカダさんみたいなこと答えたよ。」タカダさんが笑った。「波はあるの?」「あるある。遊べる波がドブンドブン来るんだ。波に乗れちゃうような。オレ浮き輪に浮かんで、波に乗るの好きだったから。でもさ、友達とかは海外やキレイな海見てなくても、そういうこと言うヤツいたよ。思い出の海じゃないんだよな。空想の海だから~とか何とか。恋人といっしょに夕日を眺めている、秋の海とか、犬と散歩してるとか、絶壁にフンドシで立ってるとか…ね。オレは想像力が無いんだな、きっと。」「そんなこと言ったら、私もじゃない?いろんな人がいるんだね~。面白いね!でも、私の子供の頃の思い出の海だったら、赤木くんと同じだよ。沢山人がいる、夏の海。ふふ…、でも赤木くん淋しがり屋か。もしかして当たってるの?」「かもね~。一番仲イイ奴に、それでからかわれた。授業で隣にいたんだ。いまだに、ボクが結婚したら、赤木くん一人で大丈夫?とか言われるよ。」オレはアオヤンの言ってたことを思い出した。「友達思いな子だね。で、大丈夫なの?」「嫌なこと言うね~。淋しくても生きていけるよ。二度と会えないワケじゃあるまいし。」「周りに人がたくさんいるのが、赤木くんには普通ってことかもしれないね。でも、家族は必要ってことなのかもね。で、人生遊びたくてウズウズしている…と。」「何か浮気者みたいじゃん。心理学者になれるよ。あ、心理テスト学者か。」オレたちは笑う。話をしなくても、オレたちの代わりに海だけは騒いでいてくれた。波が寄せては返して、しぶきのザザンっと言う音が、心地良く響いていて、いつの間にか夕日がオレンジ色に海の色を照らしていた。ロマンチスト…なるほどね。オレはタカダさんの手を握った。夕暮れの海はそんなことを自然にさせてくれた。心が開放されているような、不思議な気持ちになる。このままずっとこうしていられたらいい。でも、海の色がオレンジから藍色、黒へと変わって行きそうになると、流石に時間の流れを感じて、風の冷たさが堪えてくる。タカダさんの冷たくなった肩を抱く。「あったかいね、赤木くん。」「タカダさんは冷たいよ。車に戻ろうか?」「そうだね、顔が見えなくなりそうだね。」「顔、見せてよ。もっと…」オレは、タカダさんを抱き寄せてキスをした。完全に暗くならないうちに。まだ、タカダさんの顔が見えているうちに。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月07日
コメント(0)
今日の日記(「スマイル」感想と学生時代の友達とのランチ☆)「アイツとボク41」ところが、思ってもみないことが起こった。同じ部署の先輩が精神的にキてしまったとかで、会社を休みだしたのだ。いきなりのことで、みんなビックリしていた。先輩が持っていた得意先が、ボクの得意先と近いことから、仕事の分担がボクにもまわってきた。一気に押し寄せてきた仕事。要領のいい同期や先輩は、適当に断ったらしいのに、上司の疲れた顔を見たら、つい引き受けてしまった…。もし、ボクが引き受けなかったら、あの仕事のしわ寄せが上司に全て行くかと思うと、放っておけなかった。上司は、人が良くて、面倒見が良くて、弱音を吐かない人だけど、ボクには時々弱い面を見せてくれた。それは、ボクだから見せるような気がしていた。新しい得意先を回るうちに、先輩が精神的に病んだのが、何となくわかってきた。一人は気難しいジイサンの老人ホーム園長、一人は何だかつかめないバアサンの幼稚園園長。特に、ジイサンには閉口した。ワンマンで、とにかく偉そう。製品を使う前から文句ばかりだった。バアサンは、わかってるんだかわかってないんだか。その場はうなずくけど、帰ってから、やっぱりわからないと何度も呼び出された。カリナは相変わらずで、ボクは彼女の話に終始頷いている。触れば泣き出しそうな彼女にできるのはそれ位で、もちろん結婚話も保留のままだ…。「ごめん…、カリナ。明日早くて…。新しい得意先がちょっと慣れないんだよ。」「そう…。うん、いいの。また週末会えるもんね。ごめんね。」そう言って電話を淋しそうに切るカリナに申し訳ないと思いつつ、ボクは疲れきっていた。は~。誰か助けてくれよ。あの状態のカリナに仕事のことを話せる訳も無く、かと言って、暗い顔してると親が心配するだろうし、部屋にこもって、好きな曲でもボンヤリ聴いていたい。でも、そんな暇も無い程、帰りも遅くなっていった。とりあえず、カリナに短いメールだけは打っていたけど。毎日、オヤスミ…と。どんなに遅くなっても、コレが来ていると安心するから…とカリナが言っていたからだ。正直休みも家で寝ていたかった。でも、そんなことをカリナに言い出せなかった。彼女にとって、ボクと会えることだけが、唯一の心の息抜きになってることがわかっていたからだ。カリナの状況は、聞けば聞くほど悪くなる。負けたくない一心で、仕事をやればやる程誤解が生じているらしい。この前は、「そんなに頑張る必要はないから。」と、言われたそうだ。でも、彼女は辞めない。こんなことで負けたくないと言う。わかってくれる人はわかってくれてるから…と。お互い疲れて、このままボクらはダメになってしまうのだろうか?いや、せめてボクだけでも、何とか気力を出さないと。例え、あのジジイがボクの言うことなんか聞かなくても。あのババアに何度呼び出されようと。そんなある日、いつも行く、馴染みの幼稚園の園長が、ボクを見て言った。「青山くん、疲れてるでしょ?」「え?そう見えますか?ヤダなぁ、顔に出てます?」「ううん、多分顔には出てないわね。アナタ、いつもニコニコ笑ってるから。でもね、ちょっとマズいわ。どこかで、抜かないと、アナタだめになるわ。」キビキビしたお婆ちゃん園長ならではの、断言口調で言われる。「あら園長?それは、いつもの予言ですか?」「園長先生のは当たるんだよね~。」職員が、先生の顔を脱いだ気安さでしゃべる。「え?園長先生はそういうのがわかるんですか?」ボクは驚いて聞いた。「ううん、何だかちょっと伝わってくるだけ。ナゼか知らないけど、そういう人がいるとわかるのよ。若い頃は気のせいだと思ってたんだけどね。何となく声をかけると、とんでもない問題抱えてたりね…。だから、こうしてココにいられるのかしらね?」「私も園長のお陰でココにいますしね~。」他の職員が過去何かあり気に言った。園長がボクの顔をマジマジと見る。ボクはギョッとしながらも、見られたままでいる。「ああ…、でもアナタは大丈夫よ。何かがアナタのこと支えてるみたい。アナタの周り、イイ人が集まるみたいよ。ちょっと大変でも、辛抱が実るわ。でも…その辛抱が問題ね。いつか息を抜くようになる。心当たりある?」「検討もつかないです…。」しまった。これじゃあ、疲れてるって言ってるようなものだ。「じゃあ、とりあえずコレでも飲んで、少し休んで帰るといいわよ。」園長が直々に淹れてくれたお茶をもらう。「多少のことは、自分を許していいのよ。それと、これから、何か起こる気がするんだけど…。何も無いといいわね。」園長はお茶を持つボクに言った。「怖いなぁ~。やめて下さいよ~。」園長はニッコリと笑って、子供たちの様子を見に行った。お茶は温かく、ボクの喉をゆっくりと通って行き、体がホカホカと温かくなった。心が落ち着く。何かって何だろう…?いつもなら世間話ってことで流してしまうとこだけど、妙に心にひっかかった。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月06日
コメント(0)
今日の日記(「BOSS」「夫婦道」感想とお出かけ☆)「アイツとオレ41」ファミレスは、ちょっと混んでいた。「混んでるね。」「土曜だからね。」待っている間が妙に落ち着かない。「こんなふうに、ここにいるのが変。」「変なの?」「うん。赤木くんと昼間いるのは、会社なんだって思ってたから。」「そうだね。休みにいっしょにいるなんて、オレも考えもしなかった。」家族連れが、タカダさんを押しのけるように詰めてきたので、オレはタカダさんの肩を押して、俺の方へ引き寄せた。タカダさんが微妙な距離でオレに触れる。昨夜、彼女を抱き締めたことが蘇る。オレは、タカダさんの手を握った。周りの騒々しい日常的な風景の中で、オレとタカダさんだけが静かに浮いているような気がした。そのうち、店員が案内しに来たので、手を離す。お互いパスタ系を注文した。ドリンクバーで、飲物を持ってきたら、少し落ち着いた。「スパゲティ好きなの?」タカダさんが聞いた。「うん。自分でもたまに作る。」「それは初耳。」「たま~にだよ。茹でて何かかけるか、炒めるだけじゃん。」「そういえば、チャーハン作れるんだよね?」タカダさんが思い出したように笑った。「そう、グチャグチャの。卵が焦げたやつ!」「で、もう二度と作らないって書いてなかった?」「タカダさんが作り方書いたから、もう一度やったらマシになったよ。」「そうだったの?あれから作って食べてるの?」「後片付けがめんどうだから~。」「怪しいなぁ。美味しいの?」「美味しいよ。作って食べさせたい位ね。」「食べてみたいもんだね。」そんなことできることは無いだろうな。そう思っていたら、オーダーしたものが運ばれてきた。「やっぱ、ちょっと二日酔いなのかな…。あまり入らないや。」「オレも…。まあ、ゆっくり食べましょう。」「そうね。」「食べたら、どっか行きたいとこある?」「う~ん、そうだな…」お互いちょっと考える。ただ、こうして、いっしょにいるだけで、何だか新鮮なんだけど。ダラダラしてたら、少しずつつまんでいたせいか、何となく食べ終わってしまった。「人混みが嫌だよね。何となく気ダルいし。」「オレも同じだな。じゃ、ホテルでも行って寝てる?」「え…?」「冗談だよ。どっか遠く行かない?遅くなっていいの?」「うん…大丈夫だよ。」どこに行こうかな…と考える。自然のあるとこ?歩くの、かったるいかもな~。ファミレスでダラダラしててもいいような気になってきた。オレは正直怖いのだ。二人きりになるシチュエーションが怖い。まだ心にどこか迷いがある。目的もなく、車って密室にいるのはヤバい気がした。多分、冗談で言ったことをホントにしそうな気がする。今日せっかく連れ出したのに、そんなんでいいのかな?…って気がした。そりゃあ、彼女が欲しいことは確かだけど。ただ、いっしょにいられるだけで、今は嬉しい。焦りたくない。「海でも見に行く?」オレがポツリと言ってみた。「うん。行ってみたい!」タカダさんが嬉しそうに言った。そう決まると、すぐにファミレスを出て、一番近場の海を目指して車を走らせる。シーズンの終わった海なんて、人はいないだろうと思った。でも、道はちょっと渋滞していた。「進まないね~。」タカダさんが言った。「行くの嫌になっちゃった?」「ううん。赤木くんが運転疲れないか気になる。」「大丈夫だよ。」「変わろうか?運転上手くないけど。」「マジで?運転できんの?」「時々乗ってる。運転させてみる?オートマだし、何とかなると思う。…けど?」「う~ん…。まあいっか。代わりましょう。」オレはちょっと眠気を感じていたので、交代することにした。彼女が運転する。「何か、女の運転で助手席に乗るのは新鮮だな…。」「何で?女に運転させない主義なの?」「いや、運転する子と付き合ったことなかったし。そんなこと言う子いなかったし。」「そうなんだ?じゃあ遠出すると疲れちゃうでしょ?」「はは…。そうかもね。代わってもらうなんて、考えもしなかった。」とはいえ、自分の運転じゃないと、結構ヒヤヒヤするもんだ。ブレーキをかけるタイミングが違うせいかもしれない。それでも、渋滞のせいで、前の車のブレーキの赤いランプを見ていたら、気付くとウトウトして眠っていたらしい。「赤木くん!赤木くん!」と、タカダさんが呼ぶ声で目が覚めた。気付くと道が流れている。「どうしよう?!この先右?左?」「え~っと…」いきなり言われてもここがどこだかわからない。ちょっと慌てる。道が突き当たりまで来たようだ。「待って、えっと、この先の突き当たりを、左!まだ曲がっちゃダメだよ!」アタフタしながら、説明する。「ここね?あの青い看板の先だよね?」左折するとお互い、ほ~っとため息をついた。「どっかコンビニみつけたら、代わろう。」幸い、道は合っていた。コンビニで小休止。飲物を買って、外で飲む。「あ~、焦った。ゴメン、オレ寝ちゃってたみたいで。」「うん、いいの。ちょっと役にたてたようで嬉しいし。寝てたの知ってたから。寝かしてあげたかったの。でも、わかんなくて起こしちゃった。ごめんね。」タカダさんは、ホントにそうしたかったみたいだった。それがちょっと嬉しかった。「ありがと…。もう、大丈夫そうだから、オレが運転するよ。今度はタカダさん寝ていいよ。」「私は朝方寝ちゃったせいか、目が冴えてるのよ~。でも、眠かったら寝ちゃうかも。その間、寝ないでね?」「有りえる…。起きたのはぶつかった後だったりしてね?」「そんなこと言われたら寝れないじゃない~!!!」お互い笑って車に乗り込んだ。海が見えるとタカダさんがはしゃいだ。「お疲れ様~!」飲物で乾杯する。遠くで、サーフィンしてる人たちと、ウィンドサーフィンしてる人たちが見えた。「寒くないのかな?」「ボディスーツ着てるから大丈夫なんじゃない?いいな~。楽しそう!」砂浜に座って、海を眺めていると、何も言わなくても、何だか落ち着いた。オレはあることを思い出して、タカダさんに質問してみた。「海って言うと、どんな海を思い浮かべる?」「何…?心理テストか何か?」「そう。」「う~ん、そうだな…。」タカダさんが考える。「浮かんだ?状況を詳しく教えないとダメだよ。自分のいる位置とか、波とか、時間とかさ。」「うん、浮かんだ!」タカダさんが、ワクワクした感じで、オレの顔を見た。この質問をしたのは学生の時以来だ。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月05日
コメント(0)
今日の日記(「アイシテル~海容~」感想☆ )「アイツとボク40」「え?まだ言ってないの?」赤木くんが、意外って顔をして言った。「いや、言ったんだけどさ、タイミングが悪かったんだよ。何か…別れ話を言い出そうとしてると思ったらしくて…。」「何だソレ~?!オマエ、どうしてそうなっちゃうんだよ?」「ボクもそう思う…。は~あ、やっぱ指輪でも買っていけば良かったかな?プロポーズしようと思ってたって言っても、なだめるためのウソだって言って、聞いてくれそうもない雰囲気だったんだよね。」「指輪って、オマエ…。んなの、結婚するか決まってからだろうが~!給料の3か月分、ドブに捨てることになったらどーすんだ?」「不吉なことを…。でも、やっぱ3か月分の買うの?」「いや、それは相手との相談…って、オレの話しじゃないだろ?オマエの話なんだからさ~。」ボクは力無く笑った。赤木くんがクックと笑う。「何?何が可笑しいの?」「いや、もう10年近くオマエと付き合ってんのにさ、オマエが指輪にこだわるヤツだなんて、知らなかったな~なんて思ってさ。」「いや、でも、なんかイメージじゃない?プロポーズする時の。」「映画の前によくCMやってるからか~?オマエ、それはダイヤモンド会社の思うツボだろう!」「言えてる~。」ボクらは笑って、いつもの店で、いつもの酒を飲む。もうボトルまで入れてしまった。学生の頃から馴染みになってしまった、中華のつまみが出る居酒屋。「そうか…、もうすぐ会ってから10年近くなるんだな。」ボクはしみじみ言った。制服姿のボクらが、今は遠いことのように思えた。ほんの少し前のことだったように感じるのに。酔ってきたボクらは、思うがままにしゃべる。「ねぇ、赤木くんさぁ~、どうしたらいいと思うよ?参ったなぁ~。」「オマエ、押しが足りないんじゃねーの?どうせ、もうダメだとかってあきらめたんだろ?そんなの、本気だってこと見せりゃーいいじゃん!」「え?どうやって?それを悩んでるんだけど~。」「えー???やってる時に言っちゃえば~?結婚しようってさ~。もう離れたくないとかさ~。」「赤木くん、そんなこと言ってんの?」ボクがニヤニヤしながら言う。「オマエ~!もう、考えねーぞ!」照れたらしい赤木くんが、面白い。ごめんごめん、とボクが謝る。「じゃあ、オレに教えたイタリアンの店に行って言うとか?店員に言っておいて、外国映画みたいに、シャンパンに指輪でも入れれば~?」赤木くんがテキトーって感じで言った。「オマエ、ボクよりキザなこと思いつくんだな~?オマエがそんなヤツだとは知らなかったよ~。」大声で二人で笑う。「そう考えるとやっぱり指輪が必要なのかなぁ~?」「もう指輪のことは考えるのやめろ~!ちゃんと言葉で表せよ~。」「だ~か~ら~、何てだよ~。」「オマエが考えなきゃ意味ないだろ~!あ!そうだ、これどうだ?もー、店に引きずりこんじゃえ!で、どれがいいのか聞け!ほら、それでプロポーズ完成~!!!」「まだ、指輪にこだわってるよぉ~、赤木くん。せっかく言葉を考えようと思ったのにさぁ~。」「形式にこだわるから、プロポーズの言葉だの、指輪だのって話になるんだよ。」「あ~、そうかもね~。」「まー、あんま形式にこだわんなよ。いっそ、家出ちゃって、連れ込め!んで、暮らしちゃえばいーじゃん!」「ヤダよ~。そんなの、カリナの親に顔会わせらんないじゃん~。一応、好青年で通ってるのにさー。」「好青年は、大変だな~♪オレなんて、何でもアリだけどな~。」「オマエはいーよ。あーもう、頭いてーなぁ!酔ってんのかなぁ?」「いーじゃん、もう酔おうぜ!狭いけど、寮来たっていいし。」「ボクんちだっていいぞー!」もう、ベロベロになってきた。でも、楽しくて気分いい。結婚したら、こんなふうに、思いきり酔って帰ることもできないかもしれない。だけどさ、ずっとずっと、じーさんになっても飲みに行こうよ。結婚しても、子供ができても。そんなこと、約束した。ボクは果たすよ。そのつもりでいる。さて、カリナに再チャレンジだ。何だか最近、それがボクの生活の目標みたいになってきたぞ!続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月04日
コメント(0)
今日の日記(今期ドラマの中間ランキング&感想と昨日の私☆)「アイツとオレ40」タカダさんの言っていたコンビニの駐車場に車を止める。中に入って、とりあえず、雑誌のコーナーに行って、情報誌をめくる。会って、どこに行ったらいいんだろう?こんなに会いたいのは、オレだけなんだろうか?雑誌をめくっても頭に何も入って来なかった。会うまで落ち着かないかもしれない。その雑誌と飲物とガムを買って車に戻った。シートにもたれて、大きくため息をついた。何か、音楽でも聴いてようかと思って、ダッシュボードを探る。懐かしい物が出てきた。高校の時のライヴのテープ。最近のライヴテープもある。そのうち聴こうと思って、車の中に入れておいたんだった。かけてみると、笑っちゃうくらいずいぶん幼いオレが歌っていた。最近のと比べてみる。まあマシになったか。みんなもスゲー上手くなってんな。あの頃のオレに、今のこのオレの状況が想像できただろうか?もう10年も前のオレ。参ったな…。つまらないことばかりしてたのに、あまり面白くない平凡な日常だと思ってたのに、すごく楽しかったように思える。でも、もう戻らなくていい。あの頃は充分堪能した。窓をトントンと叩く音で我に返って外を見た。タカダさんだった。「車だったんだね。中入っていい?」オレは頷いて、タカダさんが助手席に座る。エンジンをかけて、とりあえず車を出す。「これ誰の曲?」ヤベ!いきなりで、忘れてた。オレは、自分のライヴの曲をかけっぱなしだった。うわ~、スッゲー恥ずかしい!「ごめん、他のにして!わかる?」運転しながら、慌ててEJECTボタンだけ押す。「え?何?何?気になる~!いいじゃん、聴かせてよ!」タカダさんがテープを入れてしまう。恥ずかしくて死にそうだった。「これ、誰?ねえ、もしかして…」「…オレ。聴いたことなかったから聴いてた。ライヴの時のテープ。MDに落とさなきゃなって思ってたんだけど、車の中入れてて忘れてたんだ。もういいだろ?」オレが運転しながらEJECTを押すと、またタカダさんが入れる。「ううん。上手だよ。オリジナルなの?聴いてていい?」「事故るから。やめよーよ。オレ、マジ死ぬ…。」ハンドルに突っ伏したい気分だった。「ふーん。残念。わかった。じゃあ、適当に何か…ね。ねえ、でもこれ聴きたいなぁ。借りてもいい?」「行くまでに返してくれる?」「うん。」「じゃあ、持ってっていいよ。」「ありがと~。」タカダさんは、テープを出して、自分のバッグにしまってしまった。あ~あ…って、オレは思った。ま、いいか。最悪、マスターはシュウが持ってるだろうし、ライヴはまたやるし。「音楽の好みって、その人が出るよね~。」タカダさんが、オレの聴く曲を物色している。そう言われると恥ずかしくて、ホントに死にそうな気分だった。自分の中を探索されてるような。まあいいや。「CDも聴けるけど?」一応、言ってみた。「う~ん、最近あまり音楽聴かないからな…。」そう言いながら、タカダさんは、オレが好きなテープを選んで入れた。助かったと思った。もしかして、音楽の好みが合う?「後で、赤木くんの好きな曲入れて~。」タカダさんが言った。余裕があるんだな。自分一人が緊張してるような気持ちになってきた。今日は上着の下にジーンズとTシャツ、薄い化粧をしたタカダさんがいた。「今日は今日で雰囲気が違うんだね。」オレが言った。「よく眠れなくて…。ウトウトしたと思って、起きたら昼前だったの。慌てて支度しちゃったから。ごめんね、変?」「ううん、そういうのも似合ってる。そういうカッコ、好きだよ。」「え?何?もう一回言って?」「だから、そういう格好も好きだって…」タカダさんがクスクス笑い出した。「何が面白いの~?」「ううん、赤木くんに”好きだよ”って言わせたかったの。」オレは恥ずかしくなった。「ほんっとうに嫌なヤツだね、タカダさんは。」「そうだよ。嫌いになった?」「いや、好きだけど…。」また言わされた。タカダさんが嬉しそうに笑う。この女、悪い女だ。絶対そうだ。どうしてやろうかな。年下だからって、向こうにばかり主導権を握られたくない。信号が赤になった。手を握ってみる。「こうされるのは好き?」「え…」タカダさんが照れたようにうつむいた。「…うん。」ヤバイ。こういうの弱い。オレは、中学生のカップルでもあるまいし、手を握っただけで緊張してきた。「どこ行く?飯食った?」「ううん、まだ。赤木くんは?」「オレもまだ…。ハラ減らなくて…。ファミレスでも入る?」「うん、私もなんだけど、そうしようか。」しばらく無言でいたら、またタカダさんが笑っている。「今度は何がおかしいの~?」「だって、さっきから変だな~って思ってたら、赤木くん、いきなりタメ語なんだもの。」言われてみたら、そうだった。「じゃあ、いつも通りに直しましょうか?」「もういいよ~。」二人で笑った。手のぬくもりが伝わってくる。やっぱり、今日会えて良かったと思った。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月03日
コメント(0)
今日の日記( 「婚カツ!」「スマスマ」と今日はバタバタ☆)「アイツとボク39」カリナはボクから目を逸らした。そして、沈んでいく夕日でも見てるようだった。言うなら今かも…そう思っていた時だった。「別れたいんでしょ?大丈夫だよ。覚悟してたから。」あまりにも間逆のことをカリナが言い出したので、ビックリしてしまって言葉が咄嗟に出ない。カリナが畳み掛けるように言う。「最近、私グチばっかりだもんね。うんざりするのも無理ないよ。私なんて、みんなから嫌われちゃうような人間だし、ホント、最低だよ。いいんだよ、もう付き合わなくても。ごめんね、言い出しにくかったよね。」「待てよ!何言ってんの?何だよ、みんなが嫌うって?」カリナの様子がまたおかしい。それがすぐにわかった。「だって、だってそう言われたんだもの。アンタなんかみんなが嫌ってるのに、それにも気付いてないでしょ?って。アンタなんかと付き合ってる人いるの?友達いるの?って。そんな人がいるとは思えないって。よっぽど見る目が無い人なんだって。私みたいに人のことに無神経な人間に付き合う人がいるとは思えないって…」まだまだ続きそうだった。怒りとも悲しみともつかないような、諦めに満ちたような言葉がカリナから溢れていく。「私、悔しかったよ!そんなこと言われて。私と付き合ってることで、アオヤンまでそんなふうに言われて…。謝って欲しかった。その人に謝って欲しかったよ!だから、言い返したのに、ずっと付き合ってる人いるって。そしたら、そんなの信じられないような顔されて…。ウソつきみたいに言われて…。ねぇ、もういいのよ?私となんか付き合ってると、アオヤンのためにもならないし、こんなことしょっちゅう聞かされて、もううんざりでしょ?疲れたでしょ?」「そんなこと無いよ!カリナ、違う、違うから!ボクはカリナのこと好きだよ!そんなこと言うヤツがおかしいんだ!世界中のヤツらがカリナを嫌いって言ったって、ボクはカリナを好きなんだよ!」ボクの必死さが伝わったのか、カリナが黙る。「もう、そんな会社は辞めちまえよ!」ボクの目をカリナがしばらく見ていた。ボクもカリナから目を逸らさなかった。しばらくすると、カリナの視線はボクから下へ逸らされて、そして、何言ってるの?って感じでつぶやいた。「辞めてどうするのよ…?」「結婚しよう、ボクと。」とうとう言った。でも、こんなふうに言うつもりじゃなかった。カリナがまたボクをジッと見ている。一瞬だったかもしれない。それとも長い時間だったのか。みるみるうちに、カリナの目から涙がこぼれる。「私がこんなこと言い出したから、そんなこと言うの?」ぼんやりとカリナがつぶやく。「違うよ。そんなんじゃない。」「イヤだよ、やめて。そんなつもりでこんなこと言ってるんじゃないよ。どうして?どうしてそんなこと言うの?今日だって上の空だったじゃない?それなのに、何でそんなこと言い出すの?」「だから、それはカリナの勘違いなんだって。ボクは今日、カリナに結婚しようと言おうと思ってて…」「ウソよ、そんなの!私がこんなこと言い出したから、そう言ってるだけでしょ?そう言えば、とりあえず大丈夫って思ってるんでしょ?」「違うって、どう言えばわかってくれるんだよ?本当に、そう思ってたのに。」完全にタイミングを逃した…。ボクは失敗と、この状況をどうくつがえしたらいいのか、全くわからなくなってしまって途方に暮れる。カリナは泣くのをこらえながら言った。「ゴメン…。ゴメンなさい…。そんなつもりじゃなかったのに…。いいの。アオヤンが別れるつもりじゃないってことはわかったから…。もう私最低…。こんな…アオヤンのこと困らせて…。そんな、結婚なんて、言い出さなくても、本当に大丈夫だから…。私もアオヤンのこと大好きだから、お願い、嫌いにならないで…」カリナがボクにもたれかかってきた。ボクはカリナを壊さないように、力をセーブして抱える。ハンカチを渡して、髪を撫でた。参ったな…。どうすればいいんだろう…。このままじゃ、今結婚の話をしても信じてもらえそうも無い。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月02日
コメント(0)
今日の日記(「ぼくの妹」と映画「メゾン・ド・ヒミコ」「容疑者Xの献身」の感想☆)「アイツとオレ39」「今何て言ったの…?」聞こえなかったのか?結構覚悟決めて言ったんだけどな…。体を離して、タカダさんの顔を見る。「聞こえなかったよ。もう一回言って。」オレは恥ずかしくなってしまって、下を見る。「意地悪ぃ~な、タカダさん。」タカダさんが抱き締め返してきた。驚いて固まってしまう。「ごめんね。ウソ。聞こえた。カッコ良すぎ…。」「え…そう?」「うん…。そんなこと言うの反則だよ…」オレも抱き締める。参った。このまま、帰りたくなくなる。離したくなくなる。オレの心臓の音?タカダさんの音?聞こえてくる。言ったことは本心だ。だから、理性でブレーキをかける。「明日、昼頃迎えに来るから…嫌ならやめていいから。」「うん…」それでも抑えられなくて、タカダさんにキスをする。離れたくない。このまま時が止まればいい。怖かった。本当は、欲しくて欲しくてたまらないのに、明日になったら、消えてしまう魔法かもしれないのに。オレは、本当の何かが欲しかった。抱き締めた手をゆっくりお互い離して、後ろ手でドアを閉めて、タカダさんの家を後にする。もう電車が無くて、また駅でタクシーを拾うと、ため息が出た。この前は手だった。だけど、今度は彼女の体のぬくもりが残る。そして唇。胸が締めつけられる。こんなはずじゃなかったと思うのに、ずっとこうしたかったんだとも思う。酔ってるのかもしれない。引き返すなら今だ。彼女も同じ気持ちでいるんだろうと思った。オレよりも深い罪悪感を持っているかもしれない。明日は来ないかもしれないな…。オレは、最悪、その覚悟だけをしておいた。寮に帰って、水をガブガブ飲む。シャワーを浴びて、ベッドに横になった。さっきの残像ばかりが頭に浮かんで、グルグルとオレの気持ちをかき回した。来て欲しい。どうしても会いたい。帰るべきじゃなかった。どこかに連れて行ってしまえば良かった。酔ってても良かった。軽い後悔が残る。帰ってきちゃったんだから仕方ないのに。もう自分の腕の中にタカダさんを抱く事は無いかもしれないな…淋しさとやりきれなさばかりが残った。でも、もういい。今日のことは今日のこと。明日ダメならその時嘆こう。目覚ましの音で目が覚めた。セーブしながら飲んでいたせいか、酒は残ってないようだ。でも、ぼんやりと薄く眠った感じだったので、ちょっと疲れが残っている。なのに、気持ちだけは妙に高ぶっているようだ。どうする?行くのか?自分に聞いてみる。もしかしたら、もう向こうの魔法は覚めているかもしれない。でもオレは…。車をゆっくり運転した。来てくれるかわからない相手を迎えに行くなんて、オレはどうかしているんだろうな。タカダさんの家の近くに車を止めて電話を入れる。心臓がバクバク音を立てていた。コール音が3回。「はい。」「オレです…。」「うん。」「来ますか?」しばらく返事が無かった。沈黙が長く感じる。「今どこ?」「タカダさんちの脇の道。」また沈黙があった。帰るべきかもしれない。「もう少し先、駅と反対方向にコンビニがあるの。わかる?」「うん。」「そこで待っててもらっていい?あと30分かかってもいい?」「うん。」電話を切った。もう多分、自分を止められない。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年06月01日
コメント(0)
今日の日記( 「MR.BRAIN (ミスターブレイン)」「ザ・クイズショウ」「サマヨイザクラ」感想☆)「アイツとボク38」今日はカリナに会ったら、プロポーズをしよう!そう心に決めたら、何だかどう言おうか?とか、いろいろ考えちゃって、眠れなくなってしまった。考えてみたら、誕生日に言うとか、何か特別な日に言うとか、いろいろあるんじゃないかな?…と。しまったなぁ~。赤木くんに具体的にどうすべきか、参考に話を聞いておけば良かった!いや、待てよ、イグチくんのがいいのか?結婚したんだし。でも、メールでわざわざ聞くのも何だかなぁ…。よくテレビドラマで指輪を買って渡すって言うのを見たことがある。でも、会社の女の先輩が、「指輪はいっしょに見に行きたいよね~。」って言ってた。欲しい指輪じゃないのが来たら、ちょっと悲しいと。許せて、代々伝わる指輪でも、リフォームとか言っていた。「でも、要は、気持ちなんだろうけどさ。」と、その先輩は締めくくっていた。独身社員の男達は、へぇぇ~って、トリビアみたいに頷いて、女子社員は、そうだよね~!って声が多数で、「私はこうしたいな~!」って理想を語りだす子まで出てきた。既婚の男の先輩は、「オレなんか、そう思っていっしょに行ったら予算オーバーだったよ。」とか、「買って行ったら、サイズが合ってなくて、誰にあげようとしてたの?って疑われたよ…。」って人もいた。「あ、オレ、そういえば、プロポーズしなかった。」なんて人まで出てきて、みんなそれぞれって言葉で締めくくられると、たのむから、もっといろんな話を聞かせて下さいって気分になった。でも、顔には出さずに、「そうなんですか~。」って、ニコニコしながら聞いていたけど。じゃなきゃ、つっこまれるだろうし、その後どうした?って話がずっと続くんだろうしな…。あ~!でも、ボクはどう切り出せばいいんだよ!赤木くん、オマエならどう言うんだい?長く付き合ってきたせいか、今更何て言い出せばいいのかがわからない。そういう話の流れの時は、大体、遠い未来のこととして、お互い流してきてしまったのだから。お陰で寝坊してしまった。ダメじゃん、ボク…。まずはそこでトーンダウンしてしまった。待ち合わせ場所に着くと、会う度に何だか顔色が悪いカリナが、ボクに会うとホッとしたような笑顔を向ける。車に乗ったカリナが言う。「珍しいね、アオヤンの遅刻って。」「ごめん!昨日何だか寝つきが悪くてさ。」「じゃあお昼はアオヤンのオゴリね!」「そんなこと言うと、ボクがまるでいつもオゴって無いみたいじゃん!」カリナが笑った。今日は泊まりでデートしようって言ったから、どこか遠出して、雰囲気を作ろうと思っていた。あ~、ついにボクにもこんな日が!先輩みたいにズルズル行くかと思っていたのに。車をパーキングに入れて、カリナが行きたいと言っていた店に入る。海が見えて眺めがいいオープンテラス。「ヴュッフェって食べすぎちゃうね~!」なんて、カリナが楽しそうにいろんな物を運んできた。よし、笑顔だぞ。今でもいいかも。カリナがテーブルに着いたら、言おう!なんて思って、でもいきなり言うのも変かな?なんて戸惑っていたら、無口になって黙々と食べていたらしい。「アオヤン、オナカ減ってたの?今日はよく食べるね~!かぶりついてない?」「え!?あ、ほんとだ!いや、美味しくてさ!早く取りに行こうかな~って!」「ふ~ん。」いつもと違う空気でも流れているみたいで、ボクは焦ってしまう。「あのさ…」「お客様、ランチヴッフェは、3時までですので、よろしくお願いします。」店員が笑顔で隣のテーブルへ同じ声をかけていく。ああ、せっかく言おうと思ったのに…。ちょっと気持ちがくじけてしまって、ボクはガッカリして、気を持ち直すために料理を取りに行く。やっぱり、いつも行くイタリアンにでもすれば良かったかな。あの店の方が気持ちも和んだし。そんなことをぼんやり考える。なんだか料理の味もよくわからない。美味しいんだか、何なんだか…。カリナはデザートを山盛り盛ってきた。「すごっ!コレ全部食べるの?」「うん!もう全部食べちゃう~!!!」カリナがストレスのせいで、体調を壊すんじゃないか心配になってきた。もしかすると食べたら全部吐いてるのかもしれない。妙に痩せてきてたし。ムードも何も無いな…。でも、それがボクたちの付き合いのいいとこなのかもしれない。ボクは肩の力を抜いた。ボクたちは映画を見て、海が見えるデッキから夕日を見ていた。「ねぇ…」カリナがポツリと言った。「アオヤン、私に話したいことがあるんじゃない?」 続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月31日
コメント(0)
今日の日記(「スマイル」感想☆とエコポイントとテレビ)「アイツとオレ38」タカダさんは、寄りかからせることを特に拒まなかった。ぼんやりと酔った頭で考える。この感じだと、酔ったなりゆきで、ホテルにお持ち帰りできちゃうかもしれないな。試してみる?でも、それはしたくない。してしまいたいけど、したくない。寝た後が怖い。本気になってしまいそうで怖い。オレは独身だからいいけど、彼女は結婚してる。本気になった時、つらいのはこっちじゃないだろうか?家庭を壊すほど、彼女がオレを好きになるだろうか?そんな自信はオレにはなかった。そこまで彼女に好きになってもらう自信。でももしも来たら?それは自分にとって重くないだろうか?でもこれは言い訳だ。こうして現実的な理由を並べて、自分の心を抑える。本当は、抱きたくて抱きたくてたまらないのに。本能に従って、思いのままに彼女を抱いてしまいたいのに。酔っているんだから、後で言い訳をお互いするのは簡単なはずだ。 アレハヨッタウエノマチガイデス後のことは寝てから考えればいいんじゃないか?嫌がられるか、それとも抱き寄せてみるか、彼女の体のぬくもりが伝わってくる。オレはため息をついて、時計を見た。「そろそろ帰らないと、電車がなくなりますよ。」「うん…。ごめんね。」ぼんやりとした声でタカダさんが言う。かなり酔ってるんだと思った。彼女を支えながら、何とか電車に乗った。「あ~カッコ悪い。ごめんね、赤木くん。」「いいですよ。大丈夫ですか?」「うん…。」ようやく座れた席で、彼女はオレにもたれかかって眠ってしまった。よほど気を許しているのか、安心されているのか…。誘惑されてる訳じゃないよな…?自分に都合のいいことを、つい考えてしまう。タカダさんの駅に着いたものの、彼女は完全に泥酔状態だった。しょうがないので、半分かかえた状態で家に連れて行く。マズイよな、ダンナさんがいるだろうし…。「タカダさん、もうすぐ家なんですけど、一人で家に入れますか?ダンナさんいるだろうし、マズイでしょう?」家の前でオレはタカダさんに呼びかけた。「…ん。いない。夫は今週いないの。」は~っとオレはため息をついた。それでも、家に行くのはマズイ気がして。「鍵、ありますか?自分で開けられますか?」「ん…。ここに入ってます…。」タカダさんはゴソゴソとバッグを開けるけど、一向に鍵が出てこない。仕方がないので、オレがバッグの中を探して、鍵を出した。オレは一体何をしてるんだろう?酔ってるせいなのか、半分覚めてるからか、現実感が無かった。中は真っ暗で、玄関にタカダさんを一旦置く。電気を手探りでつける。「すみません、ここで大丈夫ですか?自分で鍵を閉められますか?」「うん…。ありがとう。大丈夫よ~。」すっかり足が立たずに、半分寝ている状態のタカダさんを置いていっていいのか迷った。タカダさんじゃなければ、簡単に抱けるんだけどな…。「すいませんでした、こんなに飲ませちゃって。でも、向こうに行ったら、男の前でこんなに飲まないで下さいね。オレだからいいけど、襲われちゃいますよ。」「いいよ~、赤木くんなら。」いつものメールでの冗談のように、タカダさんが言う。「はは…。冗談でも、そういうこと酔っていうのダメですよ。男は本気にするんですから。」「だって、酔わなきゃそんなこと言えないじゃない。」オレが固まった。そんなオレを見て、酔いが覚めたのか、タカダさんが言う。「うそ。ごめん。何言ってんだろ。ごめんね、送ってくれてありがとう。もう、帰って。ホントに大丈夫だから。」オレはかがんで、タカダさんの顔をジッと見た。ホント?ウソ?でも、もうそんなことはどうでもいい。タカダさんの頬に手を当てる。やわらかくて、少し熱を帯びている。彼女の唇に軽くキスをした。彼女がオレをジッと見る。「明日、会える?」オレが聞いてみた。「え?」「酔ってなんて、嫌だよ、オレ。ホントにタカダさんのこと好きだから。これきりだとしても、ちゃんと酔ってない時にしてほしい…」タカダさんを思いきり抱き締める。「一日でいいから、オレのものになってよ。」続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月30日
コメント(0)
今日の日記(「BOSS」「夫婦道」の感想☆と仕事状況w )「アイツとボク37」「赤木くんさ、一人暮らしって今できる状態?」久しぶりに赤木くんと飲みに行って、ボクは本題に入った。久しぶりって行っても、2週に一度は飲みに行ってるんだけど。それ位、気が置けないし、ちょうど帰りに会えるとこに住んでいるからかもしれない。「う~ん、まあ大丈夫じゃないか?もうすぐ寮から出なきゃいけないから、覚悟してるけどな。」「結婚とかもできる状態?」ボクの質問に赤木くんの表情が変わった。「え?!オマエもう結婚するの?」「ちょっと考えてる…。」「まあ、結婚しても不思議じゃないよな。もうカリナちゃんと付き合って何年だっけ?」「3…4年になるかな?」「ふーん。変だな。早く結婚したいと思ってたオレが独身のままで、結婚なんて言葉も出さなかったオマエが先に結婚しちゃうんだ?面白いな。」「ボクだって、この歳で結婚は考えてなかったよ。でも、今は…」ボクはちょっと話していいものか考える。結婚しようかと思った経緯を。でも、赤木くんには話してもいいと思った。「カリナが会社でツライ目に遭ってる。ボクが側にいることで、カリナを助けたいと思ったんだよ。いっしょに暮らすってことを考えたんだけど、それは、お互い自宅にいる状態だから、いきなりは無理だよね。」「そりゃそうだ。結婚ってことの方が、親は安心だろうな。同棲よりは。」「でも、ボクの経済力で、やっていけるのか不安なんだよ。それに…つまんないこと言っちゃうと、今ようやく一人の部屋もらえて、自由にやってるだろ?貯金ももう少ししたかったしさ。自宅じゃないと、金ってなかなか貯まらないだろ?」「まあ…、確かにな。」「まだ仕事もそんなに一人前でもないし、子供が欲しい訳でもないし、欲しいモノもあるし、一人の時間も欲しいし…」ボクは、自分でも、しゃべりながら、自分の気持ちが何だかよくわからなくなってきて、酒をゴクリと飲んだ。ボクはホントに結婚したいんだろうか?「だけど、オマエは、それでもいっしょにいたいんだ?」赤木くんが言ったことは、ボクの核心をついたんだと思う。「そうだと思う…ただ、そんな理由でいいのか不安になる。」赤木くんは、ちょっと考えてるようだった。酒を一口飲んで、グラスを見ながら言った。「自分が大事に思ってる人間が、自分を必要としてるっていいよな…」ボクもそう思った。「オレは、その理由だけで結婚するのは充分だと思うよ。多分、お互いにその気持ちがあれば、やっていけると思う。実際、いっしょに暮らせば、経済的なことは二人で考えれば何とかなると思うし。経済的に豊かなら幸せってわけでもないしな。それに、いっしょに暮らしていても、一人になろうと思えば、なれるもんだよ。」サキちゃんと半同棲していたアイツの言うことは、何となく説得力を感じさせた。「そう思える相手と巡り会えることは稀だよ。貴重だ。アオヤンがそう思ったなら、行動してみるといいんじゃないか?うまくいくかどうかとか、不安なんて挙げたらキリがないだろ?何でも、やってみなきゃわかんないよ。」ボクは、話してみて良かったと思った。心の不安が落ち着いていくのがわかる。「うん。そうだよな…。参ったよ。一人で考えちゃってたからさ。」「はは…。オレも考えたよ。特に経済面はな。でも、これから大変だ!娘さんを下さい!ってやるワケだろ?ガンバレよ~!」赤木くんは、ボクのグラスにカチンとグラスを当てた。「うわ~。やなこと言うなぁ!せっかく悩みが一つ減ったと思ったのに!」「いーじゃん!どうやって切り抜けるのか、また一つ楽しみができたよ!プロポーズはクリアしたのか?」「ボクはロールプレイングゲームじゃないってーの!」「余興、何するか考えなきゃな~。」「変なスピーチするなら、やらせないよ!」「え?それって、変なこと言ってくれってこと~?」「うわっ!マジで怖くなってきた~!赤木くん気が早いよ!」「大丈夫だろ?アオヤン、好青年って感じだからさ!」「だといいんだけどね~。」アイツに話していたら、ボクの決意は固まってきたように思えた。ボクはカリナと結婚したい。でも、まずはお父さんより、カリナに申し込まなければいけない。 続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月29日
コメント(0)
今日の日記(「アイシテル~海容~」感想と息子の無くし物)「アイツとオレ37」オレの顔を見て、タカダさんが慌てたように自分の服を見て言った。「どうしたの?私何か変?!」「あ、いや…、違いますよ!ちょっと普段と違ったんで…。」「ふふ…、こんなこともう無いだろうから、おめかししちゃいました~!」「すっごくイイですよ!惚れちゃいますね!」オレがおどけて言ったら、タカダさんが嬉しそうな笑顔になった。本気で言ったんだけど、多分、お世辞だとでも思ってるんだろうな。「じゃあ、行きますか。」オレはまずは、アオヤンが美味いって言ってた、イタリアンレストランに連れていった。ここで、カリナちゃんと良い雰囲気になったらしい。苦い思い出を、良い思い出に変えた店とか言っていた。値段が手頃で、楽しい雰囲気の店。暗めの照明のせいか、打ち解けやすい雰囲気があった。「うん、美味しい~!すっごい嬉しい!ありがとう、赤木くん~!」いつの間にか、アオヤンと同じように「くん」付けでオレを呼んでいたんだな…なんて、ぼんやりと考える。タカダさんは、ワインを飲んで、少し顔が赤くなっていた。化粧の感じがいつもと違うせいか、ちょっとドキリとする。「私ね、女子校だったの。だから、会社で赤木くんと、毎日メールで話せたり、ちょっと飲みに連れてってもらえたりして、ホントに嬉しかったよ。共学気分が味わえたって言うか、男友達ができたって言うか。変だよね、共学に行ってた時は、そういうのできなかったのに。社会人になってから、そういう付き合いができる人ができたのって、何だかすごく嬉しかったんだよ。」タカダさんは酔っているのか、そんな自分の思いをペラペラとしゃべりだした。「赤木くんは、女友達とかいるんでしょ?」「うん…、まぁ…、いますね。」「じゃあ、私もその中の一人に入れて下さいね~!」オレは何て返事していいのかわからなくなって、笑って誤魔化して、ワインのボトルを自分のグラスに注いだ。友達…オレはタカダさんのことを女として見てるような気がする。でも、相手がそれを望んでいるなら、友達になるしかないんだろうな…。あれ…、以前もそう思ったことがあったな。いつだったろう?酔ってるかもしれない。手なんか出すつもりないのに…。最後まで、理性が保てるか、不安になってきた。タカダさんが美味しそうにデザートを食べていた。オレはコーヒーを飲んで、ちょっと酔いを醒ました。時計を見る。「どうしたの?もう帰らないとダメ?」オレはつい笑ってしまう。「それはこっちが言うことですよ~。いや、この後、良かったら、ちょっと連れて行きたいとこがあるんですよ。」「何だろ?楽しみ!」オレは、会計を済ませて、高層ビル街にタカダさんを連れて行った。そのビルの一つに、夜景を見ながら飲めるバーレストランがあった。予約しておいたので、窓際の席に上手く座ることが出来た。「うわ~、すっごくキレイ!」思った以上に、タカダさんが喜んでくれたのが嬉しかった。いろいろ計画しておいて良かった。「はは、良かった…。」「どうしたの?」「いや、喜んでもらえるかどうかわからなかったから、気が抜けちゃったんですよ。」「大満足です!こんな都会っぽいとこ連れて来てもらえて~!うわ~。本当に嬉しい!本当にありがとう!」嬉しそうなタカダさんを見ていると、本当に連れて来て良かったと思った。今日、ここに来て良かったと思った。「いい思い出ができました~。参ったなぁ~。」タカダさんが夜景をジッと眺めて、カクテルを飲む。オレはそんなタカダさんと夜景とを見る。「ここは、母親が連れて来てくれたんですよ。ハタチのお祝いにね。息子と二人で飲みたかったそうです。」「へぇ~。お洒落なお母さんですね!」「母親も働いてるから、こういう景色見て、明日からもガンバるぞ~!って言ってましたよ。妙にその言葉を覚えてるんですよね。」「うん…。その気持ち、何となくわかるなぁ…。」「オレもです…。」しばらく無言で夜景を二人で眺めた。これで最後。二人きりの、本当に最後の別れなんだな…。隣に座っている距離が近いせいか、オレの膝が、タカダさんの膝に当たっていて、温かい。もっと触れたいと思ってしまうと、ため息をつきたくなった。友達…女の友達…。そんなふうには見れないって言ったのは、そうだ、サキにそう言ったんだったな。あの時もそう言えば、サキには彼氏がいたんだっけ。で、今タカダさんにはダンナさんがいるわけだ。何だコレ?オレはそういう運命なのか?でも一つだけわかる。今のオレは、もうそんなこと言わないだろうってことだ。白黒はっきりさせなくなった。それが大人になったってことなのか?オレは酔ってるのか、そんなことをグルグルと考えた。タカダさんも、酔ってしまったのか、机に頬杖をついていた。「酔っちゃったんですか?」「うん、今日はちょっと飲み過ぎちゃったね…。」「寄りかかっていいですよ。」オレはつい自分の方にタカダさんを引き寄せた。あれ?何やってんだ、オレ?オレは酔っている。確実に酔っている。自分を冷静に見る自分がいた。本当はこうしたかったんだろ?自分で自分に墓穴を掘ってしまったようなもんだ。理性が吹っ飛びそうだ。或いは、もう吹っ飛んでいるのかもしれない。もう一人のオレが、オレをかろうじて止めている。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月28日
コメント(0)
今日の日記(「白い春」感想と生きること:「ヘルタースケルター」川村カオリ )「アイツとボク36」寝ようと思っていたら、カリナから携帯にメールが来た。 会いたい。すごく会いたいよ。 でも明日も会社なんだよね。 オヤスミなさい。何だか嫌な予感がした…。急いで返事を書く。 どうしたの? 何かあったの?返事が来る。 何でもないよ。 ちょっと疲れちゃったの。 ごめんね。コレは変だ。何だかおかしいと思った。放っておくべきなんだろうか?でも、放っておいていいのか? 電話して大丈夫?待ってる間も気が気じゃない。もう、聞かないで電話しちゃえば良かったと思って、カリナの番号を押そうとした時に携帯が鳴った。「ごめんね…」いきなり元気が無いカリナの声がした。「何かあったの?」「…」カリナは返事をしてくれない。「言えないことでもあったの?」「…ううん。声が聞けて嬉しい…」ホントにそれだけなんだろうか?言葉にしてもらえないことがもどかしい。話を逸らされてる気がする。ボクはため息をついた。「ボクはそんなに頼りにならないのかな?」「そんなことないよ。そんなことないけど…。」ボクは返事を待った。「一つ言い出したら、止まらなくなっちゃいそうなの。そしたら、嫌な人になっちゃいそうで嫌なの。自分を嫌いになっちゃいそうなの…」ボクは時計を見て、ちょっと考えた。「今から会う?そっちに行こうか?」「え…?!」カリナが驚いてるのが声でわかった。本気で会いたい訳じゃないのかもしれない。「本当に会いたいのなら、そっちに行くよ。」ボクは念を押してみた。「ううん、いいよ。そう言ってくれるだけで充分だから。ごめんね、本当に。つまらないことで…困らせてるよね。」「別につまらないことじゃないし、困ってもないよ。」ボクは即答した。「会社のこと?」カリナが何も言わないので、多分そうなんだろうな…と思った。「大丈夫、ホントに。ちょっと元気出たよ。何やってるんだろうね、私…。疲れてるみたい。」本当に疲れた声を出したかと思うと、今度は泣いてる声が聞こえる。かなり情緒不安定じゃないか?こんな時は、お互いが親といっしょに住んでいることが煩わしい。「カリナ、明日会える?何時になってもいいから。会おうよ。ホントは今だって、ホントにそっち行ってもいいんだから。明日、会社休んでもいいよ。」カリナの泣き声が止まって、ボクは返事を待った。「…ダメだよ、そんなことしちゃ。仕事に響くでしょ?」「そうだよ。でも、それより大事なことな気がする。」「ダメだよ、…男は、稼がなきゃ!」ボクはちょっと笑う。「稼がなきゃダメなの?」「そうよ。それで、女の子にプレゼントしてくれるものなの。」「そしたら、女の子は元気になる?」「そうね…。ちょっと慰められるかも。」「女の子は現金なんだな。何が欲しいんだと思う?」「そうね…、高級バッグとか、アクセサリー!」「バカじゃん!」「ホントだね。」カリナが軽く笑った声がしたので、ちょっとホッとした。「ホントに大丈夫だから。うん、明日やっぱり会いたいよ…。少しでもいいの。」「じゃあ、泊まりの支度してきてよ。」「え…?本気で言ってるの?」「カリナ次第ではね。」カリナはちょっと考えてるようだった。親の手前や仕事を考えると、平日泊まるのは難しいのかもしれないな。と、ボクは思った。でも、ちょっと会うのでは済まないかもしれない。泣きだすことは覚悟しておかないと…。それくらい、カリナが情緒不安定になってきている気がした。「考えておく…ね。」それから少し話して、電話を切った。周りが聞いたら呆れちゃうような、好きとか、会いたいとか、そういうことをお互い言って。いつもなら、切った後は、そんなことを言ってた自分が恥ずかしくて、笑ってしまいそうになるけど、今日は違った。明日の仕事のことが頭に浮かんだ。会うためにはどうするか…。とにかく眠らなくちゃいけない。仕事を早く終わらせないと…。カリナが笑ってくれなかったら、ボクは安心して眠れなかったと思う。カリナが泣いてる顔が目に浮かんでくる。遠い。抱き締めたくても、なだめたくても、何もできない。カリナが無理をして笑っているのは明らかだった。こうして家にいるのが、とてもジレったいことのように思えた。早く明日になるといい。そして、顔を見て安心したい。だけど…。もっともっといっしょにいる為には、家をでなきゃいけないんだろうな…。カリナがボクをとても必要としてるのがわかる。でも、それには現実が重くのしかかってくる。一人暮らし?結婚?今がその時期なんだろうか?ボクは考える。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月27日
コメント(0)
今日の日記(「婚カツ!」と映画「ラヂオの時間」の感想と今日の通勤状況☆)「アイツとオレ36」かなりどこに行くか迷ったし、本当は最後とは言っても、自分の中で葛藤があった。オレは、淋しい時は結構何も考えずに、女と付き合える人間なんだな…って、自分のことを思ったけど、今回は、ちょっとそれとは違う。タカダさんが喜ぶ顔が見たいと思って、どこに行くか考えたり、いっしょに過ごせるんだと思うと、ちょっとワクワクしたけど、彼女は奥さんなんだし、もう会えなくなるんだと思うと、そんな思い出は作らない方がいいんじゃないか?と、思ったりした。やっぱり意外とオレは真面目なのか?先輩では人妻なんかと平気で付き合ってたりする人もいるのに。相手が本気になったから、怖くなって逃げたよ。なんて、笑いながら言ってた。でも、オレの場合はどうだろう?一応、そういうのは避けてたし、恋愛対象外だった。でも、割り切って付き合えていいとかって言う人もいる。それは恋愛とは違うんじゃないだろうか?よくわからない。って言うか、人妻と恋愛?マズイだろう、それは。アオヤンはどうだったんだろう?アイツは苦しかったって言ってた。そしてちゃんと自分だけで終わらせていた。でも、ただの食事だよ。深い意味なんか無いはずだ。そう自分に言い聞かせて、で、やっぱり言い出したものの、やめようかなって思ったりするのに、翌日は、やっぱり最後くらい、楽しい思い出が欲しいと思ったりした。タカダさんから今日もメールが来ている。オレは誘ったものの、特にいつにするか連絡をしていない。 今日は、係長が「タカダさん仕事できたから、後任が心配だよ」 って言ってくれました。 そんなこと、あの係長が言うとは思ってなかったから、 ちょっとウルウルきそうになりました…。 いろんな思い出ができて、 本当にこの会社で働けて良かったな~って。 今更ながら思ってます。 ツライ時も、我慢して良かったって…。 こんなメールをもらえるオレだって嬉しいですよ。少しずつ、お互いの本音を出せるようになっていったメール…。コレも、もう終わり。 オレも、そう思ってますよ。 タカダさんは、すごく頑張っていたし、抜けたらその穴は大きいです。 それにしても、あの係長が…。 タカダさんスゴイじゃないですか! ところで、以前言っていた話ですが、 いつなら大丈夫ですか?結局迷ったものの、オレはいつもの世間話の最後にこうメールに書いた。タカダさんから返事はなかなか来なかった。もしかしたら、オレと同じように迷ってるのかもしれない。でも、それならそれでいいかもしれない。無理に作るような思い出なんて、作っちゃいけない気がした。なのに、どこかガックリ来てたりして、オレは一体何なんだろう…。さて、今日はもう帰ろう。そう思って、帰りにメールをチェックしたら、タカダさんから返事が来ていた。今日はもうあきらめていたのでビックリした。 すみません!今日は引き継ぎのこと等で、忙しくて全くメールが開けなくて~。 最後の日以外の週末ならいつでも空いてます。 楽しみにしてますね!読んでいて、それなら良かったと思うと同時に、向こうは大して意識していないんだろうと思った。そうだよな、単なる食事。オレがおかしい。気を持ち直して、今週の金曜で約束をする。終わったら、携帯に連絡して下さいと。金曜日。その日は研修出張で一人だった。オレは昼飯を食べ終わり、携帯を見てみると、見慣れない電話番号が表示されていた。自宅番号のようだった。携帯番号なら、無視するところだったけど、何となく気になって、折り返し電話をしてみる。通話音の後に出たのはタカダさんだった。「あ、ビックリした~!」「こっちこそ、ビックリしましたよ!」「ゴメンね、今日は有休消化しちゃったの。派遣でも、何年も勤めるとあるんですよ。でね、どこに行けばいいんだろう?って、聞いておこうかと思ったけど、やっぱり夕方まで待ってようかな~って、電話かけたものの、すぐ切っちゃったの。履歴残っちゃったんだね。仕事中、スミマセン。」「いや、今は大丈夫ですよ。昼休みなんです。じゃあ、せっかくだから、こっちの近くまで来てもらおうかな。実は、そうしてもらおうかと思ってたんで。早目になって良かったですよ。」オレは待ち合わせ場所と時間を指定した。一応、オレが遅れた時を考えて、まずは喫茶店にした。それまでは、会う実感がなくて、何だかソワソワしていたけど、今度はワクワクしてきた。退屈な研修の話も、これが終わると会えるんだと思うと、ちょっと気合が入った。あ~、オレは単純だな。ただの食事だっていうのに。終わると、とりあえず自分の気持ちを落ち着けるために、周りに合わせて研修場所を後にしたけど、駅が見えるとつい足が速くなった。電車に乗る前に、一応、予約しておいた店に電話をして、時間を早くさせてもらう。電車の中では、とにかく落ち着きたくて、何かをしていたくて、タカダさんを待つ間、本でも読んでようかと持ってきた小説を開いたけど、何だか頭に入らなかった。まあいいや、ほんの何駅か。待ち合わせの店に入る。中にはタカダさんが待っていた。見て、ちょっと驚いた。いつもならシンプルなスーツを着ているのに、今日は女性らしいワンピースだった。化粧も。キレイだった。ホントに。心臓が高鳴る。誘って良かったと思った。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月26日
コメント(0)
今日の日記(「ぼくの妹」「魔女裁判」の感想~☆ )「アイツとボク35」イグチくんの結婚式の翌週、カリナに会った。海が見えるオープンカフェだった。ボクがどんな感じだったかカリナに話すと、カリナがポツリと言った。「いいなぁ…結婚。私も寿退社しちゃいたいなぁ。」そんなことカリナが言うと思ってなかったので、ボクはちょっと焦った。飲物を飲んで、返事を何て言うものか考えてしまう。「あ、ごめん。おねだりじゃないよ?ただ、ちょっと仕事嫌になっちゃっただけ。」話が仕事に移ったので、ボクはちょっとホッとして聞いてみる。「仕事?嫌なの?何で?」「たいしたことじゃないのよ。私が今仕事で組んでる男の人がいてね、その人が、女の先輩の前で、どうやら私のことを誉めちゃったらしいの。よく、わからないんだけど、それが原因なのか、何なのか、その先輩の私への仕事の対応が最近変で…。私がチェックしなきゃいけない伝票がまわってきてなかったり、処理してなかったことで、上司からチェックが入って、もう一度見直ししなきゃいけなかったり、いっしょに組んでる人も、何だかよそよそしくなって、ちょっと疲れてる。」そんなことがカリナに起こってるなんて知らなかった。ボクの会社でも、時々何かしらトラブルは起こっているようだけど、外回りしているボクには、ちょっとした噂しかまわってきていない。今まで他人事だと思っていたけど、カリナにそんな話があるとなると、どうも心配になってしまう。「そうだったの?大丈夫?」ボクがそう言うと、カリナはちょっと笑顔を作った。「うん、大丈夫。つまんないことで逃げようとしちゃダメね。」ボクはカリナの頭をなでた。「やだ、大丈夫だってば!」カリナは笑ったけど、それからいきなり顔がくずれて泣き出した。それからずっと涙を出していたので、ボクは落ち着くまで、隣に移って、カリナの肩を抱いていた。周りの人がジロジロとボクらを見ていたけど、別に別れ話をしている訳じゃないし、最初はどうしようかと思ったけど、あまり気にならなくなってきた。「落ち着いた?」「うん。」カリナが泣いている間、ずっと考えていたことがある。こんな時、結婚していたらどうなんだろうと。いっしょに暮らしていたら、すぐに仕事を辞めていいよって言えるのだろうか?どちらにしても、彼女が悩んでいることにはすぐに気がつけたような気がする。その日は映画を観ることになっていた。前売りを買ってあった。でも、何だかどうしても二人きりになりたくて、ボクがホテルに誘ったら、カリナはスンナリ頷いた。いつもは、「ヤダ!昼間から、エッチだね~!」とか言うのに、今日に限っては、そんな言葉さえ言い出さなかった。抱き合って、時間が来たら出て、夕食を食べて…。その間のカリナは、いつもよりどうも弱々しく見えた。いつも元気なのに、今日は、元気に振舞うほど、ワザと笑ってるみたいで、弱々しく見えた。帰りの電車は無言だった。カリナがボクの手をいじる。ボクの手を見て、手相をなぞったり、指を触ったりする。ボクの手を握ったり離したり。その仕草が好きで、もっとずっと、いっしょにいたいと思う。カリナの駅に着いた。カリナが淋しそうな顔をしていた。「そんな顔すると帰れなくなるんだけど…。」ボクがそう言って、カリナの頬に触れたら、カリナがその手を握って、頬をすり寄せた。そして笑顔を作った。いつも別れる家の側まで来ても、ボクが帰ろうとしないので、カリナが聞いてきた。「どうしたの?」「いや、大丈夫かな~と思って。」「大丈夫よ。元気もらったから。アオヤンこそ大丈夫?私元気さっき吸い取っちゃったよ。」「うわっ!気付かなかった!」ボクもおどけて言って、カリナが家の前から手を振る。ボクも振り返りながら手を振る。ずっと、いっしょにいた時のことを考えながら、家に帰った。帰したくなかった。会社さえなければ、ホントはもっとずっといっしょにいたかった。「ただいま~」「ご飯食べてきてあるよね?」家に入ったボクに、母親が真っ先に言った。「うん、食べたよ。」「なら良かった。さっさとお風呂に入っちゃってよ。」「ん~、わかった~。」兄が結婚して部屋を独り占めできて間も無い。ようやく一人で広々と部屋を使えるようになっていた。自分で稼いだ金の、一部だけ食費を入れれば、後は自由にお金を使っていい生活。洗濯もやってもらえるし、食事も出てくる。やりたいことがあれば部屋に行けばいいし、一人になりたくなれば、ここでぼんやりしていていい。カリナと結婚したら、こうはいかなくなるんだろうな。ボクはまだ、この生活ペースが気に入っていたので、しばらく崩すつもりはなかった。でも…。部屋で一人でいると、ちょっと考えてしまう。結婚か…。まだ現実的にできないような気がした。二人で生活するには、お金はいくらかかるのだろう?今までのように、実家で暮らすようなワケには…いかないよな、やっぱり。でも、きっかけとして、これがカリナとの結婚を意識した始まりだったと思う。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月25日
コメント(0)
今日の日記(「MR.BRAIN (ミスターブレイン)」(「ザ・クイズショウ」)感想☆)「アイツとオレ35」帰りは終電になってしまったから、タカダさんの家がオレの寮の二つ先の駅だってわかっていたので、送ることにした。考えてみたら、前はサキのアパートに行ってたから、こんなことしなかったんだな…と、オレは、当時のことを思い出した。サキのことは少しオレの中で思い出になってきていたけど、久しぶりに思い出すと、少し胸がまだ痛むことに呆れてしまう。タカダさんが辞めるまで、あと一ヶ月。何だかすごく淋しかった。この人を失うのが淋しかった。こうして暗い住宅地を二人で歩いていると、彼女に触れてみたくなる。でも、そんなこと強引にして、残りの一ヶ月を避けられたりしたら…そう思ったら何もできなかった。ガキみてぇ~だな。自分で自分が可笑しくなった。「どうしたの?」いきなり笑ってしまったオレを見て、タカダさんが言った。「いや、こんなの初めてだな~と思って。タカダさんとは、ずいぶん話した気がしたのに、家も知らなかったんだな…って。」「知ってたら怖いよね?ストーカー?」二人で笑った。「あ、ここだから。」タカダさんが家を指す。暗い部屋の窓が見えた。どの家も寝てしまってるのか、真っ暗だった。来る道も暗かったし、こんなとこに一人でいて、大丈夫なんだろうか?「気をつけて過ごして下さいね。ちゃんと戸締りしなきゃダメですよ!」オレがそう言うと、タカダさんは笑って、オレに手を出した。「今までどうもありがとう。」お別れの挨拶に握手しようってことなんだろう。オレはいきなりのことに一瞬頭が真っ白になってしまった。それでも何とか手をだして、彼女の手を握った。柔らかくて、温かい手。本当にお別れなんだと思った。「ありがとうございました…。」それだけ言うのがやっとだった。手を離すと、タカダさんも何も言わずにオレの足元をジッと見ていた。「じゃあ…。もう遅いし、危ないから、中に入って下さい。」「うん。」タカダさんが階段を登って行こうとする。時々振り向いて、オレに手を振る。オレも手を振って、彼女が見えなくなると、駅まで歩いた。そこでタクシーを拾う。彼女の手のぬくもりが、まだオレの手に残っている。参ったな…いっそ、もう会えないなら、強引なことをしてしまいたかった。でも、そうしなくて良かった。嫌われたくないなんて思ったのは、何年ぶりだろう。そう思った相手が人妻なんて、オレは本当についてない。まあいいか…。多分食事なんてすること無いだろうけど、今日はすごくいい思い出になった。あと一ヶ月、楽しくメールでもできたらいい。週末は、アオヤンと釣りに行った。カリナちゃんもいっしょに来た。こうしてると彼女欲しいな~なんて、すごく思うけど、この空気はそれはそれで気楽で楽しかった。タカダさんのことを思い出す。まだ握った手の感触を手が覚えている。今頃どうしてるんだろうか…。驚いたことに、その日一番釣れたのはカリナちゃんだった。ありがたく、その魚を塩焼きにしてもらって、その場で食べたら美味かった!「あ~美味しかった!会社行きたくないなぁ」カリナちゃんが言った。「うわ~!会社のこと思い出させないでくれ!」アオヤンが言った。「またいっしょに来ようや。」オレが言うと、二人とも笑顔で頷いた。次の楽しみができたって感じで。こう週末が楽しかったりすると、会社に行くのがかったるい。しかも、タカダさんが辞めちゃうと思うと、より一層、行くのがめんどうになった。でも、行かなきゃ彼女に会えない。生活に金も必要だしな。オレは渋々、支度をする。会社に着いてメールをチェックする。タカダさんからメールが来ていた。心臓が、少しドキリとする。 おはようございます! 先週はありがとうございました。 御提案の件なのですが、 ありがたく、お受けしようかと思います。 でも、高級じゃなくて大丈夫です。 オススメがあったらヨロシクお願いします。 ではでは。その日は、嬉しくてたまらず、仕事の顔を作るのに苦労した。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月24日
コメント(0)
今日の日記(「スマイル」感想と、気になる小学生国語の恋愛テク?!)「アイツとボク34」次は赤木くんが運転をした。「まだ、あの女の子と付き合ってるの?」ボクは、以前会った女の子を指して言った。「え?誰?ナナコ?ミカ?」はぁ~、とボクはため息をついた。「いや、ボクだって名前は覚えてないんだけどさ。」「今はテキトーに付き合ってんのが楽しいんだよ。」相変わらずのことをアイツは言った。「なんでオマエに女が行くのかなぁ。おっかしーよな。」「オマエにはカリナちゃんがいるからいーじゃねぇか。にしても早くね?まだ24だろ?浮気とかしねーのかな?」「したとしても、イグチくんじゃ、わからないよ。顔に出ないし、教えてくれなそう…。何かやっても、ボクらは知らずに事後報告だしね。」「そりゃそうだ!」赤木くんが笑った。しばらく車の中でBGMを聴きながら、いきなり赤木くんがポツリと言った。「まあ、あの結婚式のイグチ見たら…ちょっと羨ましいけどな…。」赤木くんの気持ちが何となく伝わってきて、ボクは無言になる。「何、黙ってんだよ?やめろよ、そういうの。」アクセルを踏んでスピードを少しあげた赤木くんが、イラついた口調で言う。「別に何でもないよ。どうして、そんなにピリピリした言い方すんの?」「ピリピリなんてしてねーよ。何だか腫れ物に触るみたいなオマエの態度がムカつくんだ。」ああ、やっぱりそうだったんだな。だから、ボクを遠ざけてたんだ。だけど、どうして心配しちゃいけないんだよ。腫れ物だなんて思ってないのに。「もう、オマエいい加減にしろよ!ボクがどんなに気を遣ってるかわかんないの?!」いい加減、ハラがたってきて、つい声を荒らげてしまった。驚いたアイツがボクを一瞬見て黙っている。「オマエに、気なんか遣われたくねーよ。」赤木くんがボソリと言った。「気なんか遣うなよ!何でも言えばいーじゃねぇか!オレはオマエのこと何でも話せるヤツだと思ってんだからよ!気を遣うような関係にするなよ!」ボクは彼の剣幕に驚いたけど、言ってることは妙に嬉しかった。うまく、自分の気持ちを言い出せなくて、ようやく一言だけ言葉が出た。「ゴメン…。そうだよな。」流れていく高速の風景を眺めながら、ボクは思ったことを言った。「気なんか遣うべきじゃないよな。言いたいこと言ってやる。オマエ、女と付き合いすぎ。ってか、遊び過ぎだろ?ちょっとは控えろよ。じゃなきゃ、もう遊んでやらねーぞ。それに…」ちょっと迷ってから、やっぱり言った。「サキちゃん位、本気にならないと、結婚なんて相手と巡り会えないぞ。」ははっと赤木くんが笑った。ボクは更に付け足す。「ボクも、オマエのこと何でも話せるヤツだと思ってるよ。」赤木くんが運転しながら、まっすぐ前を向いて言った。「さんきゅー。」覚えてるかよ、この時のこと。ボクが、オマエに声を荒らげたのは、あの時くらいじゃないかな?ケンカって呼べるのも、あれ位なのか?もう一度、そんなことがあったよな。でも、オマエ、また仲直りしてくれた。ボクのために戻ってきてくれたんだよな?でも、今はそのことだけが、ボクの中で、オマエに最高に感謝したい出来事なんだよ。続きを読む 前の話を読む最初から読む目次
2009年05月23日
コメント(0)
今日の日記(「BOSS#6」感想と公開授業☆)「アイツとオレ34」オレがいつものようにメールをチェックしていると、タカダさんから珍しく二通目のメールが届いた。 良かったら、仕事が終わってから、 以前連れていってくれたお店で、会えませんか?何だろう?そう思ったのと同時に、今までそういったことがなかったので、嬉しいような気持ちと嫌な予感と、両方が頭の中に浮かんだ。 いいですよ。 でも、今日残業をしないとマズイんです。オレは返事を書いて、仕事を早く終わらせるよう、努力した。合間にメールが届いていた。 大丈夫です。 突然、ごめんなさい。 お店で待ってます。オレは9時頃には行けると思うことと、念の為に自分の携帯番号をメールに書いて、そのまま仕事に向かった。結局仕事が長引いてしまった。10時。もうタカダさんはいないかもしれないと思った。店の中に入ると、タカダさんは本を読んでカクテルを飲んで待っていた。「すみません、遅くなっちゃって。」ホッとしたオレは、飲物を注文してとりあえず座った。「ううん、大丈夫よ。こっちが呼び出したんだから。でも、もう来れないかと思っちゃった。」「すみません。もう明日から取引先が休みになっちゃうんで。時間大丈夫ですか?」「うん、大丈夫よ。今日は何時でも大丈夫。夫は今週は泊まりで地元に行ったから。」そう言って、カクテルを一口飲んだタカダさんは、一呼吸置いて言った。「話はそのことなの。夫が地元の会社に戻れることになったの。それで、地元に帰ることになったの。」「え…?」いきなりの本題に驚いてしまった。オレは、とりあえず、その場に運ばれた飲物をゴクリと飲んだ。何も言えなかった。タカダさんの地元は、車ですぐに行ける距離ではない。飛行機?フェリー?いずれにしても、もう会えることは、ほぼ無いだろう。「今月いっぱいで会社をやめることになったから、赤木くんに挨拶したくて。あ、送別会は、最後の日に開いてくれるって、今日、報告した時に言われたんだけど、一応赤木くんだけは、みんなより前に直接お別れがしたかったの。だから、今日は奢っちゃうよ!」「あ…、いや!いいですよ!オレが奢ります!待たせちゃったし、ぜひ奢らせて下さい!」「え~、こっちが呼び出したのに~。それで奢らせるのも悪いよ。」「いや、こっちがお礼したいんで。でも、この店でいいんですか?こんな時間だし、もう食べたいもの無いですか?」オレはメニューを開いた。「良かったら、日を改めて今度どこか連れて行きますよ。」言ったものの、よくそんなこと思いついたもんだと自分で自分を感心してしまった。これじゃあ、誘ってるみたいじゃないか?変なふうに取られないだろうか?「じゃあ、フレンチのフルコースをお願いね!」タカダさんは冗談なのか、本気なのか、笑いながら、あっさりとオレの言葉をかわす。それを本気に変えたくなって、オレが言う。「わかりました。ホントにいいですよ。御馳走しますよ。」「え…」一瞬、タカダさんがホントに驚いたのがわかった。「じゃあね~、高級ホテルのお願いしちゃおうかな。」「いいですよ。」「高いよ~。すっごい!ビュッフェじゃなくて、コースがいいな。運んでくるやつ。」「いいですよ。」「最上階で、ラウンジでカクテル付きで…」「いいよ。」本気で、最後なのかと思ったら、そういうのもいいかと思った。それくらい、この人には精神的にいろいろ助けてもらった。新人の頃からずっと。本人はわかってないだろうけど…。「ううん、ホントにそんなつもりで言ったんじゃないのよ。じゃあ、ここのお店のね~、カクテル飲みたいな~。どれが美味しいの?」「タカダさんさえ大丈夫なら、ホントにそういう店に連れて行きますよ。調べておきますから。最後なんだし、それくらいさせて下さい。」タカダさんは、オレがそんなことを言い出すとは思ってなかったらしい。カクテルをチビチビと飲みながら、ちょっと考えてるようだった。「タカダさん、うちの会社には何年いたんですか?」「え~っと、赤木くんが来る半年くらい前からだから、…3年?4年になるかな?ずいぶん更新してもらえたよね。すごくありがたかったな~。」タカダさんと出会った時の電話の仕事を思い出す。お互い、その時の話をして笑う。帰りは、タカダさんが席を立った時に会計を済ませておいた。タカダさんがお金を渡そうとする。「ここで、このお金もらったら、高級フレンチに行ってもらえなかった時にお礼できないから。」オレが笑ってそう言ったら、タカダさんがお金をひっこめた。やっぱ、二人でそんな食事なんてしないか。オレはちょっとガッカリする。「さっきの話、冗談じゃなくて、考えておいて下さい。最後じゃなきゃ、こんなこと言わないです。嫌なら、断ってもいいです。とりあえず、連絡待ってますから。」タカダさんは、オレの顔を見る。それから目を逸らして言った。「うん…」続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月22日
コメント(0)
今日の日記(「アイシテル~海容~」感想と仕事とインフルエンザ☆ )「アイツとボク33」ボクと赤木くんは、久しぶりに二人でボクの車に乗っていた。イグチくんが故郷で結婚したのだ。相手は大学の時から付き合っていた故郷の彼女。彼女がいるって聞いた時もビックリだったけど、こっちで就職したのに、故郷に戻って家業を継ぐことにしたのもビックリしたし、いきなり彼女と結婚するって聞いた時もビックリした。ボクらは、イグチくんの故郷まで車で行くことにして、向こうで一泊してきた。約4時間のドライブ。ボクらは交代交代で運転をした。「イグチはビックリ箱みて~だな。」赤木くんが言った。「ほんとだよ。いつも事後報告なんだもの。驚かされちゃうよ。」「にしても、アイツがあんなに泣くやつとは思わなかったな~。」「ボクも、ビックリしたよ!いつも落ち着いてて、そんなに感情を出すタイプじゃないもんね。」「悪ぃ、アオヤン、次のパーキング寄って。オレ便所いきてー。ハラ痛くなるとヤバいし。また入院したくないからさ。オナラ出たら、窓開けてくれよ~。」「げっ!マジで?まーでも、したくなったらしてもいーけどね。」「勘弁!なるべくトイレ行かせてくれ!オマエが良くてもオレは嫌だ!」「ボクだってヤダよ~!そういう趣味じゃないよ!」赤木くんは入院以来、ちょっとでも腹痛が起こると心配になるようだ。ボクも、ちょっと気になる。でも、赤木くんが気にしないようにしたかった。ボクらはパーキングに寄って、トイレを済ませて、少し混んできた高速にまた乗る。赤木くんは、サキちゃんと別れてしまった理由を、ぼくにポツリポツリと話してくれていたけど、まだ好きなんだろうな…ってことは、時々感じていた。ボクは初めて、人がヤケになるとどうなるのかを目の当たりにした。赤木くんは、わかりやすほど、それを表現したからだ。赤木くんは、手当たり次第、女の子を口説くようになり、いろんなことに投げやりになった。退院後も、落ち着いてからは、酒は潰れるまで必ず飲んでいたし、ボクの知らないところで、どうやらいろんな女の子と寝ているようで、本当に見ていて危なっかしい。みんなでバーベキューしてみたり、遊びに行ったりすると、必ず知らない女の子を連れてきた。しかもその場だけが多い。お陰で、名前なんて、いちいち覚えなくなった。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たるんだよ。」そう言って、ケラケラと笑った。ヤバイな…そう思った。カリナは、赤木くん、変わったね…と、言って、心配しているようだった。それでも唯一の救いは、ライブの時の歌。その時だけは、何もかもを忘れるらしくて、練習してる時の話をするのは、とても楽しそうだった。でも、二人で飲みに行ったり、いっしょに釣りに行ったりした時には、時々フッと、ぼんやりどこか遠くを眺めていて、ちょっと淋しそうな顔をする。「どうしたんだよ?」ボクがそう言うと、軽く笑顔を見せて、「何?何がだよ?何でもないよ。」と、言った。この感じが女の子を惹き付けてるのかもしれないな…。男ながらにボクはそんなことを思った。痛々しいよ、オマエ。そう思った途端に、フザケて、冗談を言い出す。みんなはそれに誤魔化されてるみたいだけど、ボクはわかるんだよ。そういうの、嫌なんだろうな…。だから、赤木くんがしばらくの間、ボクを遠ざけていた時があったのも、何となくわかっていた。なので、イグチくんの結婚式をきっかけに、また電話がかかってくるようになったのは嬉しかった。 続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月21日
コメント(0)
今日の日記1(「白い春」と子供と楽しむ映画♪「WALL・E/ウォーリー」「カンフー・パンダ」「河童のクゥと夏休み」)今日の日記2(ヤバイ…)「アイツとオレ33」オレは腸閉塞ってやつで入院してしまった。病院にいる間、頭の中に浮かぶのは、別れてしまった時のサキの泣き顔ばかりだった。あの、別れる最後に会った時の…。サキは最初は本気にしてなくて、いつものケンカだと思っていたみたいだった。オレが別れたいから、本当にゴメンと言って電話を切ると、翌日の夜、携帯に電話がかかってきた。「本気なの?」「…うん。そのうち荷物取りに行くから。オマエがいない時にするから。」そう言ったら、今すぐ来て欲しいと言われた。顔を見て、ちゃんと話したいと。当たり前か。でも、オレは顔を見ると、別れられなくなる気がして、行く気がしなかった。でも、案外あっさり終わるかもしれないとも思っていた。それくらい、サキはオレに無関心だと思っていた。オレが本気だとわかったサキは、しばらく無言だった。驚いたことに、いきなりサキはオレにキスをしてきて、服を脱がせ始めた。こんなことは初めてだった。何でこんなこと、今更…オレが抱いてるんじゃない。サキがオレを抱いている。体を使って繋ぎ留めたいのか?よくわからない。でも、体だけは反応してしまう…。こんなに女を抱いて淋しかったことは無い。しかも、好きな女なのに。こんなことさせたのは、オレが悪いんだと思った。「ごめん…」オレが言うと、サキはポロポロと涙を流していた。「私が悪いの…。シンちゃんの気持ち知ってたのに、甘えてた…。」サキが小声で言った。「ダメなの?今すぐ結婚してもいいから、別れたくないから!」オレは戸惑っていた。こんなことをサキが言い出すと思ってなかった。でも、こんなこと言って欲しい訳じゃなかった。ワガママを言って、オモチャを手に入れたがっている子供だと思われているように感じた。「そんなの…オマエじゃないだろ…。オマエ、自分曲げてまでオレと結婚したいのかよ?!」「それでもいいよ!」「オレはヤダよ!!!」サキは目を見開いて、オレの顔をジッと見ていた。「そんなサキ見たくないよ…。」サキはもう何も言わなかった。退院したオレは、サキの家と携帯に電話をかけた。携帯のメールに、サキからの最後のメッセージが残っていた。「今までどうもありがとう。さようなら。」どうしても、もう一度、サキに会いたいと思った。やっぱりサキに会いたいと思った。「お客様のおかけになった電話番号は 現在使われておりません…」電話から機械的な女の声が聞こえる。メールがハジかれて戻ってくる。オレは有休を全て使ってしまっていたので、ようやく来た休みに、サキの住んでいたアパートに行ってみた。が、そこは空き部屋になっていた。ウソだろう…?と、オレは思った。こんなの、ドラマみてぇじゃねーかよ?バカなオレは自分に酔ってたのか、サキの連絡先を残していた紙の類を全て捨ててしまっていた。別れてから3ヶ月は経っている。会社の代表番号に電話したが、どこの部署かがわからず、取り次いでもらえなかった。サキの苗字がありふれていたからだ。思い立って、昔いたバイト先に顔を出してみた。店に残っていたメンバーはフリーターだけだった。そろそろ辞めると言う。オレは近況報告を装い、昔、みんなでサークル化してた時の名簿を持ってるか聞いたら、どこかにしまってあるかもしれないと言う。オレはアテにできるかわからないけど、自分の連絡先を教えて、その場を去った。その日の夜、連絡が来て、やっぱりどこにやったかわからないと言われた。サキの連絡先がわかったら、教えて欲しいと、オレは今度はハッキリと言って、礼をしてから電話を切った。もう手詰まりだった。それでも、どこかに、サキに繋がることは無いかと、しばらくアテを探したけど、もうあきらめるより仕方ない状態だった。ストーカーみたいだな…オレは自分のことをそう思うようになり、忘れるように自分に言い聞かせて過ごした。口説き落とせそうな女に手を出すようになったのは、それからだ。変な話、なぜか女が勝手に近づいてきて、勝手に去って行く。タカダさんからは、心配したメールが来ていた。オレにとっては、そのメールだけが、自分を唯一保てる、心の支えになっていた。それから更に四ヶ月経って、フリーターからまた連絡が来た。どう考えてもサキの話としか思えなかったので、オレの気持ちは高ぶった。フリーターは、サキと仲良くしていた女と偶然会ったと言う。ちょっと言いづらそうにフリーターが言った。サキは、結婚していた。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月20日
コメント(0)
今日の日記1(初出勤)今日の日記2(ただいま~♪と「婚カツ!」感想☆)「アイツとボク32」その日、調度仕事のキリがいい時に、携帯のバイブ音が聞こえた。「よお、アオヤン。」「よおっ!どしたよ~?」「実はさ、入院しちゃったんだよ~。腸閉塞だってさ。退屈してんだ。見舞いに来てくんねぇ?」「マジかよ?!大丈夫なのか?いつから?」「ははっ、自分から見舞いに来て欲しいなんて、カッコ悪ぃ~!まあいいよな?オレとオマエの仲だしな?」赤木くんは、照れてるのか、そんなことを笑いながら言った。「そうだよ、オマエあってのオレですから~!」最近、コレがボクらの合言葉になっていた。電話を切ると、会社の同僚が、「何今の?彼女?」と聞いてきた。「違いますよ~。赤木くんです。」と言ったら、「ああ、大学の友達ね。」と、つまんないように言われた。うちの会社はアットホームな職場なせいか、しょっちゅう電話がかかってくる相手などを、みんなが知ってたりする。「入院しちゃったらしくて。」「え?何で?」「腸閉塞だって。」「うわっ、心配だね~!で?それ何?」周りで聞いてた同僚が笑った。「とりあえず、そんなに大変なものでは無いみたいなんですけど、帰り様子見てきますよ。」ボクは、早速、その日の仕事帰りに、言われた病院まで見舞いに行った。北風が冷たい夜だった。「まさか、今日電話して、すぐ来るとは思わなかったな~。早くて週末だと思ってた。」「赤木くんがヘバってる姿なんて、早く見ておかないともったいないじゃん!」赤木くんは、かなり喜んでくれた。手術とかって言うのでは無くて、薬で何とかなるらしい。「オレはまだ平気だったらしいんだけどさ、切った人の話でさ、しいたけがそのままの状態で出てきたらしい!」「うへっ!そーいう感じなんだ?赤木くんは切ったら何が出てくるんだろうね?」「やめろよ~、オマエ!そう言うこと言うのは~!とにかく、よく噛んで食べないといけないってさ~。」「気をつけろよ~。あ!そうそう…」ボクは、退屈だろうから…と、本屋で買ってきた本やマンガを渡した。「サンキュー!すっげー嬉しい!今さ~、仕事休んでんじゃん?何もしないと気になってしょうがねーんだよ。会社のやつが見舞いに来ると、特に気になるしな。とりあえず、キリがいいとこまで終わってて良かったけど。」「はは。休まんないね~、それは。」赤木くんは冷蔵庫から飲物を出した。「これ、飲むか?」そして、点滴を持ちながら、話せるベンチに移動した。病院の中は適度に温かかった。窓から見える、丸坊主の木が寒々しい。それを見なければ、外の寒さを忘れてしまいそうだ。「ま、でも、もう来週には退院だって言うからさ。天罰でもくだったんじゃねーの。メチャクチャやってたから。退院したら、実家にしばらく戻って、大人しくするわ。」「ホントかぁ~?でも良かったよ、すぐ退院できるなら!とりあえず、今は休めってことだよ。週末、また来るからさ。」「カリナちゃんは連れて来なくていいぞ。こんな格好、オマエだから見せるんだからな!」「今更、何言ってんだよ!見せて幻滅させないとな!」ボクたちは笑った。「アオヤン…」「ん?」「オレ、サキと別れた」ボクが赤木くんの顔を見ると、赤木くんはちょっとボクの顔を見て、照れ臭そうに笑った。「そっか…」お互い無言になった。理由を聞いていいものか迷った。でも、何となくわかるような気もして…赤木くんなら、そのうち話してくれるような気もして…秋にカリナと赤木くんたちとでバーベキューに行った。アレがサキちゃんと会った最後なんだと思った。それ以降、赤木くんとは、よく二人で釣りに行ったり、ライブで忙しそうにしてたけど、まさか別れるとは思ってなかった。「赤木くん、意外と真面目だからなぁ~」ボクがポツリとつぶやいた。「ははっ、そうだよな。意外と真面目なんだよな、オレって…。」自分で言うなよ~、と、昔の合言葉を言い出した赤木くんをこづく。「あれ?でもさ、週末ってホワイトデー近いな?いいのか?」「さすが赤木くんだね。そんなこと覚えてるんだ?いいよ、いいよ。何かカリナには埋め合わせしとくから。それに、入院なんて聞いたら、多分心配して来たがるだろうし。」「悪ぃな。カリナちゃんに謝っておいてくれよ。は~あ。オレも誰か、オレあっての誰かが欲しいなぁ~」病室のベッドに横たわりながら、赤木くんが言う。「別れたばっかで、何言ってんだよ。まあ、退院してから探そう。とりあえず、ボクで我慢してくれ!」「カリナちゃんに怒られそう~」赤木くんが笑った。「でも、しばらくマジで付き合うのはもういいや~。」ボソリと付け加えた。こっちが多分本音なんだろう。でも、ボクが知っている限り、赤木くんがちゃんと付き合ったのは、サキちゃんくらいだと思う。オマエ、真面目なんだよな…意外と。バカだよ、もっとルーズに過ごしてれば良かったのに。いろいろ思い詰めるのが悪かったんだ。それを人に見せないのが悪かったんだ。ボクは、病院を後にしながら、そんなことを思った。軽そうに見えながら、真面目で優しいボクの友達。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月19日
コメント(0)
今日の日記( 「ゴッドハンド輝(最終回)」「ザ・クイズショウ」「ぼくの妹」の感想☆)「アイツとオレ32」タカダさん、おはよーございます。朝っぱらからこんなメール読ませてしまってるかも。スミマセン。書いたのは、昨日休出した帰りだから、夜なんですけどね。だから、変なこと書いてるかもしれません。実は、オレ彼女と別れました。やっぱり無理でした。オレ、彼女といっしょにいると、すごく淋しかったです。タカダさん夫婦みたいな、温かい空気、オレ作ってやれなかったです。ここんとこきて、オレ、だんだん自分だけで過ごしてる方が楽になっちゃって、友達と釣りに行ったり、バンド仲間とつるんだりしてました。寮で一人で寝転んでいると、こうしている方がいいんじゃないかな…って思ってたんです。連絡しなくなったオレに心配した彼女が、ようやく連絡をしてきた時には、何で今更連絡してきたんだろう?って気持ちになったくらいです。オレってひどいやつですね。彼女が泣きながら、別れるくらいなら、今すぐ結婚してもいいからって言うんです。でも、オレはそうじゃなくて、そこまでして結婚したかったわけじゃなくて、アイツとただいっしょにいたかっただけで、その一つの方法を結婚だと思っていただけなんです。でも、今はそうじゃない。いっしょに過ごしていても、お互い見ている方向が全然違うことに気付いてしまいました。彼女が求めるものと、オレが求めるものは、何となく違う。でも、彼女に会うと、オレは彼女にいろいろ要求してしまうんです。もっとオレのこと見てくれって。でも、要求して、はいはいって見てもらうことに、一体何の意味があるんだろう?って思いました。このままじゃ、オレはダメになってしまうと思いました。彼女もダメにしてしまう。そのうち、彼女を裏切って、他の誰かに救いを求め出す前に、別れることにしました。本当にバカですよね。何がしたいんですかね。あんな彼女を見たくなかったです。でも、あんなこと言わせたのはオレです。ホントは今だって、彼女に会いたいです。会って、もう一度やり直せたらどんなにいいだろうと思います。でも、もう一度同じことを繰り返す予感がしていて、今は仕事に打ち込むことで気を紛らわせてる感じです。本当にオレはバカです。バカで何贅沢なこと言ってんだろうって思います。気持ちをぶつければケンカになるし、大人になろうと我慢すれば淋しくなるし。もう、こうするしか方法がなかった。長々とすみませんでした。いろいろ心配させてしまったようで、メールを沢山もらってしまったので、タカダさんになら話してもいいかと思いました。甘えてしまってすみません。メールありがとうございました。オレは大丈夫です。それでは。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月18日
コメント(0)
「アイツとボク31」長期の夏休み、ボクとカリナ、赤木くんとサキちゃんとで、遊園地のプールに行った。お互いの彼女とダブルデートをするのは初めてで、ボクはちょっと緊張していた。お互いに車を出して、目的地に向かう。「ねぇ、アオヤン、あの人、駅で私達がみかけた人だよね。」前を走る赤木くんの車の助手席の方を見ながら、カリナが言う。カリナは昔、赤木くんが駅でサキちゃんとキスしたのを覚えていたらしい。「そうだよ。よく覚えてるね。」「うん。だって、何だかステキだったんだもの。お互いがお互いしか見てなくて、あんな恋したいな~なんて、思ったんだよね。」「そうだね。」ボクは頷きながらも、赤木くんが悩んでることなんかを思い出していた。人の恋は素敵に見えて、カップルになれば幸せそうに見えるのかもしれない。「ボクらもステキに見えるかもよ?」ボクがおどけて言ったら、「そうかな~?何か違う気がする。」とカリナが笑いながら言った。「こんにちは。サキです。」駐車場で、車から降りてきたサキちゃんが言った。サキちゃんは、気が強そうなキレイな雰囲気の女の子で、ハキハキとしゃべる。3人で飲んだことがあるけど、自分とは付き合わないタイプの子だな~って思う。「カリナです~!」「青山です~!」ボクがカリナの口調をマネしたら、カリナに肩を叩かれた。それを見て、サキちゃんが笑う。「アオヤンとは飲んだことあるんだよな?カリナちゃんは初めてだけど。」「いつもシンちゃんから、話を聞いてたから、何だか初めて会った気がしないの。青山くんからも聞いてるしね。」サキちゃんが、ボクらを見ながらいった。えへへ、と、カリナと笑った。初対面でプールなんてどうかと思ったけど、意外と楽しかった。みんなでウォータースライダーに並びながら、話をする時なんかは、小学生の時に女子と話をする感覚に似ている。ボクらは大人の歳に近づくようになってから、意識しすぎて、うまく異性と接することができなかった子供の時間を、今更ながら埋めているようだ。話をして思ったけど、どうやら、サキちゃんは赤木くんに聞いていた通り、更にバリバリに働いているらしい。まだ新入社員のボクらからしたら、本当に先輩っぽい雰囲気の話を沢山してくれた。これじゃあ、いくらしっかりしている赤木くんでも、タジタジかもしれないな…。赤木くんが飲物を買ってきてくれる間、カリナが質問した。ボクはぼんやりと寝転んで聞いていた。赤木くんといっしょに行けば良かったと思った。「ねぇ、サキちゃんは、赤木くんと結婚とか考えてる?」「うん~。私は、あんまり結婚とかって、そんなにすぐじゃなくていいかな…って。今は、仕事がようやく面白くなってきたし、それに、子供産むとなったら、貯金もたくさんしておきたいし、仕事が順調になってから結婚しないと。子供を生んでからも仕事続けたいしね。せっかく内勤になったんだし。」「そっかぁ~。私もまだ入社したてなせいか、まだ先かな~って思ってるんだけどね。でも、サキちゃんみたいに、しっかり考えてないなぁ。」「結婚したら、自分の時間無くなっちゃうと思うし、今のうち、いろいろしておいたほうがいいよね。特に子供産むと、時間無くなっちゃうと思わない?」あ~、サキちゃんってしっかりしてる。「そうね~。今って、恥ずかしいけど、家事をみんなお母さんがやってくれてるの。それと仕事…って考えると、ちょっと大変かも…。サキちゃんはエライね。ちゃんと、一人暮らししてて。」「そうでもないよ~。大変かもしれないけど、一人暮らしって楽しい。やってみると、結構親のありがたみもわかるし、料理も、自分の好みの味で作れるし、誰も口出しされない生活もなかなかいいわよ。いくらでも寝れるしね!」ボクはどちらかと言うとカリナ寄りだ…。どうしよう…、ボクら、すっごい子供じゃないか?「私はまだ家出てないし、子供のままだから、結婚が考えられないのね、きっと…」「何の話をしてるんだ~?」赤木くんが、トレーに飲物乗せて戻ってきた。「二人とも、すごい現実的な話してんだよ。結婚の話。」ボクは、ようやく助けが来たような気分で言った。「ふ~ん。」赤木くんが興味無さそうに返事をした。「サキは結婚に興味無いようなこと、言ってたんじゃないの?」「そうでもないよ、ね~?」カリナがサキちゃんを見て言った。「現実的に、まだ先の話ってだけよ。」サキちゃんが言った。「まあ、オレも就職したてだしな。もう少し給料上がらないと養えないし。養うために就職したようなモンだから…」赤木くんまで現実的なことを言い出す…。「あら、私養ってもらおうなんて思ってないわよ。」「出た!男女同権!」赤木くんがサキちゃんに向かって言うと、サキちゃんがちょっとムキになる。「当たり前じゃない?ちゃんと私が働いてる時は、シンちゃんも家事するのよ?ねぇ、当然だと思わない?」「そうね~。子供産んだり、会社辞めるまではそうしてもらおうかな。」カリナがサキちゃんに同調する。もうやめようよ、現実的な話は…。「シンちゃんなんか、何にも作ったりしないのよ。何もしてくれないし。うちに来ても寝転んでばっかで…」「うわっ!もう、耳が痛ぇ~!アオヤン泳ぎに行こうぜ!」女子は女子で話が盛り上がってそうだ…。ボクと赤木くんはビーチボールを持ってプールに行った。もう、そこで何も考えずにボールで「アタッ~ク!!!」だのやってたら、オバちゃんに当たって嫌な顔された。ボクらはペコペコ謝り、それを期にチャプチャプ浮かぶ。結婚なんて、まだまだ先の話だよ。ボクはそう思っていた。「ねぇ、赤木くんさ、やっぱりもう結婚とか考えてるの?」「まぁな。何かあった時には、すぐ結婚する。ってか、今すぐしてぇ!」「何そんなに焦ってるのさ。」ボクがそう言うと、赤木くんは黙り込んだ。何か考えてるような感じ。「よくわかんねーけど、一人でいるのがつまんねーから。」「淋しい病だな。」ボクが言うと赤木くんは笑った。「オマエも家出てみろよ。」「まあ一人になりたいけどね。」「羨ましいよ。」赤木くんはボクめがけていきなりビーチボールを投げた。ボクがそれを慌てて受け止める。笑ってる彼の、何がそんなに彼を淋しくさせているのか、ボクにはよくわからなかった。こんなに近くにいるのに、あんなにいろいろ話していたのに、やっぱりよくわからなかった。ねぇ、今ならちょっとわかるような気がするんだよ。ボクの話を聞いてもらいたい。オマエにいろいろ聞いてもらいたいんだよ。 続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月17日
コメント(0)
今日の日記(「スマイル」「LOVE GAME」と子供の自転車教習☆)「アイツとオレ31」サキは、傘をさして、車に向かってお辞儀をすると、自分の家の方へ歩いていった。サキが見えなくなると、その車がUターンをしてゆっくり走って、オレの前に止まった。何でオレのところに?いきなりのことでビックリした。窓が開いた。男が地図を見せる。「すみません。この駅の方角はこっちの方であってますか?コンビニって近くにありますかね?」聞いてきたのは、スーツを着た、オレよりちょっと年上らしい、落ち着いた感じのする男性だった。オレが道を教えると礼を言って、去っていった。何だ、ただ道が聞きたかったらしい。わざわざサキを送って、道に詳しくない、ここまで来たのだろうと思った。オレがサキの家に着くと、サキは洗面所にいた。「私の方が早かったんだね。」サキがオレに言った。ちょっと、機嫌が良くみえた。「うん。会社の人と飲んでたから。サキは?」「私も食べてきちゃった。会社の人たちと。」人たち…か。車の中には男性一人しかいなかった。他にも誰かいたのだろうか?「なぁ、サキ…」「あ!お風呂沸いた。どうする?入る?」「…いっしょに入る?」「う~ん、今日は、ちょっと疲れちゃったから、ゆっくり入りたいな。シンちゃん先に入っていいよ。」「そうだな。オレ飲んでるから、すぐ出るわ。悪いな。」オレはそのまま軽く風呂に入って出てくる。化粧を落としたサキが入れ替わりに風呂に入って行く。オレは冷蔵庫から、ビールのストックを開けて飲んだ。テレビをつける。頭の中に、あの車の男の顔が蘇る。「あ~、気持ち良かった。」サキは冷蔵庫からお茶を出して飲んだ。「またビール飲んでるの?お酒好きだね~。」サキが言った。「サキは、今日は飲まなかったの?」「少しだけ飲んだよ。」男は車だったし、飲んでたようには見えなかったと思った。サキも飲んでたように見えなかった。「大勢で行ったのか?出張…」「うん、四人で。電車疲れちゃった。」「車じゃないのか?」「うん、電車だよ~。直行直帰。」オレは、さっきサキをみかけたことを話そうか迷った。でも、それを言ってどうするんだろう?確認してどうなる?ウソを言ってるんだろうか?だとしたら何で…。「サキは男と二人で飯食うことないの?」「え?無いよ。」「さっき、車から出てくるの見たんだけどな…。」オレがそう言うと、サキが絶句した。そして、見る間に顔が赤くなった。「何?聞きたいことがあるなら、そんな遠まわしじゃなくて、ちゃんと聞いたら?」もう、サキは最初からケンカ腰だった。「別に、何でもないよ。電車って言うから、何でかな?って思っただけだし。」「ごめん、悪かったよ。上司と二人だったの。でも、車で男の人と二人だったって言ったら、シンちゃん気にすると思って…。」「仕事だろ?そういうこともあるんじゃないの?」オレは、自分もタカダさんと食べてきていたせいか、そんなこと気にしなくてもいいのに…と思いながら言った。でも、サキにはそう聞こえなかったらしい。「何か、やな言い方だよ、シンちゃん。何か疑ってるの?」「やめろよ。オレだってもう仕事してるんだから、そういうことがあること位わかってるって。」オレはつい、突き放すように言った。いつまでも、働いてなかった学生の頃のことを持ち出されるのは、たまらない。子供みたいにヤキモチ焼いてると思われている。それが何だか悔しかった。「でも、何だか怒ってるじゃない?」「怒ってないよ。そっちこそ、ムキになるなよな。」「ムキになってなんかないわよ。いい加減にしてよ!」「何をいい加減にすんだよ。ウソついたのはそっちだろ?オレは何も責めてないじゃん。仕事なんだから堂々と言えばいいじゃねーか。」「そうよね。私が悪かったんだもんね。ごめんなさいね!」サキは歯を磨くとさっさとベッドに入った。「寝るの?」「…」オレはビールを飲んでため息をついた。どうしてこうなるんだよ…。オレは、コイツのこと、どうして安らいだ気分にさせてやれないんだ?オレの器は、そんなに狭いのか?オレってそういうヤツなのか?悲しくて、やりきれないような気持ちになった。オレだって、女と飯食ってきたよ。オマエ、そんなこと疑いもしないのかよ。オレだって、別に男と女の仲にあるのが、下心ばっかだなんて思ってねーよ。今日だって、別に、男と飯食ってきたって、それが裏切りになるなんて思ってねーよ。オマエがオレのこと好きだって、オレはオマエのこと信用してるからさ。でもさ、何なんだよ。オマエはそうじゃないんだな。オレが、オマエのこと信じてないって、頭から思ってるんだな。オマエ、オレのこと何もわかってないじゃないか。最近、オレのこと、何も見てないじゃないか。「サキ…。オレ怒ったりしてねーから。今度は、つまんないウソつくなよ…。」そう言いながらも、心の中では、嘘つくなら、バレない嘘をついてくれ…そう思っていた。もうこれ以上、嫌なオレを引き出さないで欲しい。サキは泣いてた。ケンカするとすぐに泣く。解決なんて何も無い。結局、どこからが嘘で、何がホントかもわからなかった。泣かれたら、それ以上聞いても仕方無い。以前なら聞いていたんだろうけど。もう今は聞く気も起きない。ケンカになることが目に見えている。私のこと信用してないの?そんな無言の圧力がのしかかる。これからもずっとこうなのだろう。オレはサキの涙を拭いて、彼女を抱いた。でも、何だか淋しい。淋しくて何も心が伝わってこないようなそんな体の交わりに一体何の意味があるんだろう?サキ、オマエこんなんで、満足なのか?オマエは淋しくないのか?もうこのままじゃダメなんだろうな…。オレはそう思った。多分、温かい、優しい気持ちなんか、この女に与えてやれないだろう。サキがオレのことを、今のままの目で見ている限り。苦しい。悔しい。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月16日
コメント(0)
今日の日記(「BOSS」「夫婦道」に見る女性の美しさ♪と、ちょっと夫に言えない話☆)「アイツとボク30」「よおアオヤン?今いい?」「ちょうど今昼休みだよ。どしたの?」「夜空いてるようなら、飲みにいかねー?」最近、赤木くんが飲みに誘ってくるのは、珍しくない。またか~と思った。「いいよ。今日なら8時に終わる。いつもの店でいい?」「よっしゃ!じゃあ、オレ先に行ってるわ。じゃあ、店でな~!」携帯が切れた。前は何とも思わなかったけど、こう頻繁だと何だか気になる。アイツはサキちゃんと一体どうなってるんだろう?ボクはちょっと心配になる。まあ、ボクと違って、何とか一人で解決しちゃうんだろうけど…。店に行くと赤木くんがカウンターで飲んでた。「お疲れ~。」ボクが隣に座る。「仕事はどうよ?」「まあ、何とか慣れてきたかな~。みんなボクの顔覚えてきてくれたしさ。こないだは、東北まで日帰り出張だったから、流石にバテたよ。」まずは仕事の話をお互い報告しあった。もう、お互いがどんな仕事をしていて、どんな人間関係なのか、ちょっとわかってたりする。「そういえば、もう電話は競争しなくなった?プロの人より早く取れるようになったって言ってたじゃん。」「ああ、アレかぁ~。残念ながら、もう電話の仕事どころじゃなくなっちゃったよ。でも、まだまだオレって使えないけどな。」そう言ってから赤木くんは酒をグイッと飲んだ。「そういえば、アオヤン、昔バイトで年上の女いいって言ってたよな。覚えてるか?」ボクは昔よりは少し飲めるようになった酒をチビチビ飲んでいたけど、ムセそうになった。平気な顔して答える。「よく覚えてるね、そんなこと。」「いや、その電話のプロみたいな人がさ、やっぱり年上なんだけど、すごいイイ人なんだよ。あ、好きとかって言うんじゃないよ?いや、でも人として好きか…。う~ん、今更アオヤンが言ってたことがわかったりしてさ。」「え?そうなの?サキちゃんじゃなくて、そっちに気が行ってんじゃないの~?」「そういうワケじゃないけどさ。確かに、タイプだったりするんだけど、結婚しててさ、その家庭を壊したいほど好きとかって言うんじゃないんだ。なんつーか、オレ、今、サキに待たされ状態じゃん?で、向こうもダンナに待たされ状態なんだよ。それで、お互いの気持ちがちょっとわかっちゃったりするんだよな。時々、フッと、この人がサキだったら、待たせたりしないんだけどな…って思ったりする。」赤木くんが、その人に惹かれ始めてる感じがした。でも、赤木くんなら手を出したりしないんだろうな…。何となくそんな気がした。「赤木くん、その人と…してないよね?」思ったことがつい口に出てしまう。赤木くんはムセそうになっていた。「ばっかオマエ、してねーよ!オレの話聞いてるかぁ~?」「聞いてるよ。でも、今にも淋しくて寝ちゃいそうじゃん。」「言うなよな~、そういうこと。オレ、サキはサキでちゃんと好きなんだからさ~。」赤木くんはガブガブと酒を飲み始めた。「やっちゃったら、楽になれんのかな~。アオヤンは、そんなこと全くしなそうだな。オレのこと軽蔑したんじゃないか?オマエ、かわいがられそうだけど、人妻になんか、手出さないだろ~。」ボクは酒を今度はグイッと飲んだ。「そうでもないよ。寝たことあるし。」もう時効かな…そう思った。赤木くんが表情を止めてボクを見ている。「さっき言ってた人と、寝ちゃったんだよ。なりゆきでね。半年くらいかな…。付き合ってた。楽しかったけど、結構、きつかったよ。後ろめたくてさ。ボクも軽蔑されるんじゃないかと思うと、言えなかった。」「オマエ…マジで?」「うん。」ボクは、赤木くんの次の反応が怖かった。やっちゃいけないことをしてたんだから…。「オマエ…ヤルなぁ~!!!」赤木くんは、よくやったとでも言わんばかりに、ボクの肩をバンバンたたいた。「そうか…。アオヤンがねぇ~。何だよ?大学んとき?うっわ。マジで?なんだよ~、タイムリーに話せよ~!」赤木くんは楽しそうだった。ボクはヘニャヘニャと力が抜けてしまった。結構覚悟して言ったんだけどなぁ~。と、同時に、もっと早く赤木くんに打ち明けてれば良かったと思った。「ごめん、イグチくんには、話の流れから言っちゃってたんだけどさ…」「何だよ、二人して、早く言えよ~。まあ、いいよ。一人で抱え込んでなくて良かった。イグチは何て言ってたんだよ?」「忘れろって。でも、つい付き合ってた。」「イグチらしいな~!」そう笑いながら赤木くんは言うと、ボクを見て驚いているのがわかった。ボクは涙が出ていたらしい。「あ、ヤベ…。ごめん。」自分でもビックリした。あの頃の記憶が、さっきのことのように蘇ってしまったからだ。もう、ボクにはカリナが側にいて、フジサワさんのことは過去になっていたはずなのに、あの頃、誰にも話せなくて、イグチくんに言った後も、結局付き合っていて、時々思い出すと、胸がしめつけられそうで…。誰かにずっと…ずっと言いたかったのかもしれない。苦しかったんだって。ホントはどうしたらいいのかわからなくて、ずっと苦しかったんだって。「オレだって、寝るチャンスがあったら、寝てたかもしれないよ。ただ、止められたってだけで。でも、寝たくなる気持ちはわかる。止められなかったんだろ?しょうがないじゃん。」ボクは、頷いた。「悪い…。さんきゅ。」「終わらせたんだろ?オマエ、一人で対処したんだな。スゴイな。ほんと。」肩をポンポンと赤木くんが叩く。参ったな…。また泣きそうだよ。「で、赤木くんは、その人とは大丈夫なの?サキちゃんとは大丈夫なの?」「ああ…うん。何とか大丈夫だよ。こうして、一人の時は、アオヤンに付き合ってもらえるしな~。」ボクは、自分の体制を立て直して、おどけて言った。「赤木くん、ボクが結婚しちゃったら、一人でご飯食べられる?大丈夫?そういう女の人に手出しちゃわない?」「何だよ、もう結婚すんのかよ、カリナちゃんと。」「まだしないけど、例えば…だよ!」「今度さ、4人でどっか行かねぇ?カリナちゃんどうかな?」「いいよ~!言っておくよ。カリナ喜ぶよ。赤木くんのファンだからさ。あ、言っとくけど、取るなよ!」「取らねーよ。ばーか!オレにはサキがいるし、女より、オマエとの関係のが大事~!」「マジかよ?!」ボクらは笑いあった。ねぇ、赤木くん。あの時さ、ボクは本当に感謝したんだよ。オマエに出会えたこと。一人で抱えなくて良かったって、言ってくれたよね?今だってずっと、その言葉はボクの中に残ってるよ。軽蔑したりしないって言ってくれたこと。オマエとの関係の方が大事って言ってくれたこと。ずっとずっと忘れない。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月15日
コメント(0)
今日の日記(「アイシテル~海容~」と遠足弁当☆)「アイツとオレ30」「遊び人だったんだ?」タカダさんが聞いた。「そんなことないですよ~。高校の時遊んでたのが、そんなヤツばっかだったんで。大学生は真面目してました。普通逆ですよね。」「そうかもね。付き合う友達によって変わるかも…。」飲物が運ばれてきて、お疲れ様~!と、乾杯をした。「タカダさんは、いつからこっちに住んでるんですか?」オレはちょっとタカダさんのプライベートに関わることを聞いてみた。聞いても、メールでかなり親しくなったし、大丈夫かと思った。「私はね~、実は遠距離恋愛だったの。夫が、会社の都合でこっちで働くことになっちゃって、一年付き合ってから、結婚と同時にこっちに来たんだ。だから…そうねぇ…4年、になるかなぁ?」「そうなんですか?じゃあ、こっちに友達とかは?」「いないの。だからこうして働いてるんだ。時々、職場でできるけど、親しくならないね~。でも、一人で昼間家にいてもしょうがないし。働けるうちは、働かないとね~。」「淋しくなったりとか、しないですか?」オレは、彼女が家で一人で過ごしてることを想像してしまい、つい聞いてしまった。「う~ん、適当に過ごしてるから。私ね、待ってる時間は、勝手に過ごしてるの。オナカがすいたら食べるし、眠くなったら寝ちゃうし、夜のショッピングに勝手に行っちゃうし。」「ダンナさん怒らないんですか?」「うん。怒るなら怒るでもいいんだけどね~。怒らないよ。待たれるのって、お互いに疲れない?私だったら、相手が好きなことしててくれる方が、自分の気持ちが楽なのよね。だから、私からそうしてるの。そうじゃないと、夫も気を使っちゃうでしょ?お互いに、相手の機嫌とって縛るよりいいと思って。夫も、気楽でいいって言ってるよ。赤木さんも、待たせる立場だったら、そう思わない?」タカダさんの話を聞いていたら、自分の待ち方が、サキを不快にさせていたんじゃないかと思った。いつも、いつ帰るかと、イライラしているオレ。勝手に食べないで待っているのに、いっしょに食べなきゃ不機嫌になっているオレ。サキのこと、あまり考えてなかったように感じた。自分ばかりがサキを好きなんじゃないか?って気持ちばっかりで。「相手のこと考えてるんですね…。」オレは、ちょっと目からウロコな気分だった。同じ待つなら、こんな夫婦みたいなのがいいんじゃないか?そんなタカダさんの気持ちをダンナさんがわかってるんだ。いい夫婦だな…心からそう思った。「ダテに歳は取ってないでしょ?」タカダさんはニコッと笑った。「でもさ、時々やっぱり淋しくなることあるよ。けど、赤木さんがメールで仲間になってくれてるじゃない?待たされ仲間!」「あんま楽しくない仲間ですね~。」オレはグイッと杯を空けた。「でも、いいな~って思いましたよ。できれば、そんな夫婦になりたい…。オレ、ちょっと束縛ばっかしてたかも。まだまだ修行が足りないッスね!」「大丈夫だよ~。それに私もまだまだ修行中って感じ。それに、束縛するのも、好きだからでしょ?そういう情熱がなくなっちゃったんだよね。お互い、穏やかな気持ちになってっちゃうの。あ~、若さが減ってく感じ。」「それは若さなんですか~?」オレは笑った。オレは、サキなら、この人みたいに、楽しそうに待っててくれるような気がした。できれば、タカダさんのダンナさんみたいに、大らかな人間になりたいと思った。でも、オレが欲しい言葉を、どうしてサキじゃなくて、この人が言ってくれるんだろう?ホントはサキから欲しいのに…。オレが持ってる待つ淋しさを、この人が知ってるからだろうか…。タカダさんといると、心が穏やかな気持ちになれた。ダンナさんにも、こんな空気を与えているのかもしれない。帰ったら、オレもサキにこんな空気を与えられたらいいのにな…外に出ると、雨が降っていた。「私、折りたたみ持ってるよ。」タカダさんが傘を出した。そして、自分でオレにさしてくれる。「オレが持ちますよ。」オレが傘を持った。「そう?ありがとう!」でも、折りたたみは小さい。タカダさんが離れているので、オレはタカダさんの肩を抱いた。「濡れますよ。」タカダさんは笑って言った。「彼女にみつかったら大変!言いつけちゃうよ!」「誰がオレの彼女かわかるんですか?」オレも笑って言った。「うん!後ろに張り紙つけとくよ!」「その貼紙、自分についてないか見た方がいいですよ!」お互いに笑う。タカダさんのダンナさん、貴方の奥さん、魅力的ですよ。あまり放っておかないで下さいね!オレは心の中で思う。今だけ、自分たちの大切な人の代わりに、隣に同じ淋しさを持つ人がいる。それは、淋しいことなんだろうか?それは、いけないことなんだろうか?「ダンナさんにヨロシク!」「彼女さんにヨロシクね~!」オレとタカダさんは、お互いに声をかけあって別れた。心が温かい気持ちになっていた。駅に着くと、オレはコンビニに寄って、傘を買った。そのせいで、いつもと違う裏道から帰った。車が遠くに路上駐車してるのが見えた。その車から出てきたのはサキだった。続きを読む前の話を読む最初から読む目次
2009年05月14日
コメント(0)
全109件 (109件中 1-50件目)