日本語で話そう

August 8, 2011
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「あれは我が家の蝉。ミンミンはお隣の蝉」
居間の戸もキッチンの戸も開けてあるから、蝉がわんわん鳴いているのがロンドンまで聞こえたのだ。

ロンドンは寒くて蝉も鳴かないんだそうだ。

日本は毎日暑い。蝉も鳴き急いでいる。


さて今日のお題、「氷 その参」は実は「その壱とその弐」の前に書く予定だった。
だから1番最初に食べた氷の話。
コメダより前に。

コメダに最初に行って氷が無いと思い込んだ後、優しい私は夫のために氷の旗を探して歩いたのだった。

灯台元暮らし。

歩いて買い物に行く丘の上の我が街のスーパーの真ん前にその旗は揺らいでいた。

そう、風鈴のぶら下がったジャカランダの木のあるお宅の隣の隣。
知的障害者の働くお店。

「こんにちは」声をかけて店に入ると、女性と男性、2人の青年が一生懸命箒と塵取りを持って掃除をしていた。
男性の方が「来たよ来た」と厨房に声をかけると、奥から年配の女性が2人に向かって
「お客様だから掃除はやめにしましょう」と言っているのが聞こえる。
姿は見えない。

箒を片付けた2人、厨房の前に整列して
「いらっしゃいませ」

男性は腰の辺りで肘を曲げ握ったこぶしを引いて「よっしゃ」とでもいうように小さく気合を入れた。

それからおもむろに私の前に水を運んで来た。

「何にしますか」女性の方がわたしに注文を聞く。

「氷ください。なにが出来ますか」
 彼女、厨房に聞きに行く。

「メロンとイチゴです」
「じゃあ、イチゴください」

出て来た氷を食べていると、青年の方が伝票を書くためまた厨房に声を掛けた。
「氷はいくら?」
奥から
「150円」の答え。

青年は私の前に来て、ちょっと首をかしげる。
そして私に問うた。
「150円?150円かな」

私は答える
「150円です」

奥の声が聞こえていたもの。

ここでの時間はゆっくり流れる。
私は知っている。その流れる時間のスピードを。
以前何年か、障害者の作業所でボランティアをしたことがあるから。


氷を食べて店を出た時、私はにんまりと笑った。
氷もおいしかった。応対も気持ち良かった。ゆったりと待つ時間の流れも久しぶりで心地良かった。




自動ドアを背にして立つ、後ろを振り向かなくてもわかる。
きっと彼はさっきしたようにガッツポーズをしている事だろう。

ちゃんと仕事をし終えた達成感のガッツポーズを。

IMG_0508.jpg



写真は丘の上から見下ろす海辺の花火大会。
今宵はなぜかシーサーも花火を見ている。








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Last updated  August 8, 2011 10:20:38 PM
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