2006.03.31
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「はー、くるしい。おなかいたい。もうやめてよ」


なんて言うものだから僕はもっとくだらないことをたくさん言って、そしたら彼女はもっと声が出なくなるくらい涙を流して笑った。それは僕の前でだけだって言うからもっと嬉しくなってたくさんバカみたいなことを言う。メールや電話でも僕は彼女を笑わせようとしてたから僕の中での彼女の記憶はほとんど笑っているところ。それも爆笑しているときの顔とおなかを抱えて顔をくしゃくしゃにしながら声も出せないくらいに涙を流して笑っているところ。普段は綺麗に着飾って丁寧に手入れされたネイルと大人なメイクをした彼女が子供みたいに笑い転げるところ。

「もうね、だいすき」

涙を拭いながら彼女は僕に言うからニッと笑って頭を撫でると「ふふ」って笑ってそのときの安心したような笑顔も僕は好きだった。

だから。

僕はただ彼女を笑わせているだけで良かったと思っていたし、そのために下らないことだけ言っていても良いと思っていたから、寂しいって言って電話をしてきたときに何て言えば良いのか、少しずつ彼女が笑わなくなっていった理由とか、分からなかった。

僕が望んでいたのは彼女の笑顔だけで、彼女の望んでいたのは笑うことだけじゃなかった。それだけのこと。考えてみれば僕は彼女の笑顔以外を見たことがほとんど無くて「さよなら」のときに初めて笑うとき以外の涙を見た気がする。「映画じゃ泣かない」って言った彼女が笑うとき以外に見せた最初で最後の涙だった。


僕の中での彼女の記憶はほとんど笑っているところ。
僕の言ったくだらない言葉で笑っているところ。


それしか無かった。


僕は下らない冗談以外に言葉を知らなかった。
















そして、それは今でも。
「ほんと、下らないこと言うね」って冷めた目で言われてる。





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Last updated  2006.03.31 19:11:00


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