今野國雄『ヨーロッパ中世の心』
~日本放送出版協会、 1997
年~
著者の今野國雄先生 (1923-2001)
本ブログでは、昔の記事なのできわめて拙いですが、次の著作を紹介したことがあります。
・今野國雄『西欧中世の社会と教会』岩波書店、 1973
年
さて、本書は、NHKで 1996
年 10
がつから 1997
年3月に放送された「ヨーロッパ中世の心」(ガイドブックは 1996
年 10
月発行)をもとにした1冊ということで、読みやすいです。
本書の構成は次のとおりです。
―――
序章 ヨーロッパ中世を見る目
第1章 聖像と偶像~イメージに寄せる思い
第2章 正統と異端~始まりを同じくするものの対立
第3章 戦争と平和~「神の平和」と十字軍
第4章 個と普遍~先立つものは個々のもの
第5章 天国と地獄~死者は救われるのか
第6章 自然と人間~美しさの再発見
第7章 貧困と富裕~貧しい者は幸いである
第8章 正者と死者~「死」とどう向き合ったか
参考文献
あとがき
―――
構成からもうかがえるように、中世ヨーロッパの主要な8つのテーマに焦点をあて、その特徴を浮き彫りにします。
やや概説的なので章ごとの紹介は省略しますが、特徴的な点をメモしておきます。
まず、それぞれの章が、現在日本の課題や状況から説き起こされ、比較検討の材料として中世ヨーロッパが取り上げられる、という形式となっています。
たとえば、第4章は、現在日本の個人主義について、「ヨーロッパ的な個人意識は今もって日本には根付いていないような気がする。そこにあるのは形式的な個人の平等主義だけで、そのなかで個人は普遍的全体との対立意識も持たず、あたりかまわぬ粗暴なエゴイズムとなったり、仲間の陰に隠れた責任のがれの利己主義になっている。近代科学の技術や方法は学び取ったかもしれないが、その根底にある創造的な個性意識まではなかなか身に付いていない」 (178
頁 )
といいます。そこで、ヨーロッパでも個人主義は変わってきているとしつつ、「ヨーロッパ的な個性の源」を探るため、中世における説教活動、愛のかたち、哲学をみていきます。
次に、印象的なのは、上に書いたように一般向けで読みやすいのですが、史料の引用もふんだんにあり、よりイメージがつかみやすいことです。注はありませんが、引用文献は適宜紹介されます。
学生時分に読んでとても興味深かったのを覚えていますが、今あらためて読み返してみると、自分が勉強しているテーマに関する記述がふんだんにあって、ある種、自分の勉強の出発点の1つだったのかもしれないと思いました。
30
年近く前の著作ですが、中世ヨーロッパの主要なテーマの概観を得るのに分かりやすい1冊です。
(2026.03.08 読了 )
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