のぽねこミステリ館

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2005.01.03
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匣の中の失楽
竹本健治『匣の中の失落』
~講談社ノベルス~

 ファミリーの実名小説『いかにして密室はつくられたか』を書くというナイルズ。
   *
 倉野のアパートで、曳間が死んでいた。現場には不審な点が多く、倉野は「密室ならぬ密室」と感じた。この事件をめぐり、ファミリーのメンバーは集い、互いにアリバイを証言しあった後、推理合戦をすることになる。推理、犯人に関する十戒まで決めて。
   *
 そこまで書かれた『いかにして密室はつくられたか』をナイルズのそばで読んでいた曳間。そこに、甲斐から電話がかかってくる。布瀬の家で、事件が起こったという。真沼が密室から消えたのだ。
   *
 曳間の死をめぐる推理合戦が繰り広げられる。そんな中で、新たな事件が起こる。ホランドの死。
   *
 以上の『いかにして密室はつくられたか』を読んだメンバーたちは、真沼の消失についてさらなる検討をしていた。そこに、事件の報せが入る。倉野が殺されたというのだ。

 数年ぶりに再読。最初に読んだときは混乱したが、今回は整理しながら読んだので、それほどでもなかった。
 どこに記されていた記述であるか忘れてしまっており、私の怠慢のため調べてもいないが、日本四大ミステリと称される作品群がある。小栗虫太郎『黒死館殺人事件』中井英夫『虚無への供物』夢野久作『ドクラ・マグラ』、そして本書、竹本健治『匣の中の失落』である。
 小説とは、虚構である。読者はそれを前提として読んでいる。しかし、読者はリアリティを求める。虚構である小説を読みながら、小説の中ではそこで描かれた出来事、心情などは事実であると考えて読む。しかし本書は、いわば虚構中の現実と虚構中の虚構が交互に描かれており、どちらが虚構中の現実であるのか、分からなくなっていく。作中作がさらに作中作になっているというか。
 密室、密室、密室。清涼院流水の『コズミック』ではないが、この作品も実に密室に彩られているといってよいだろう。登場人物はみなミステリ好き。それぞれが探偵役を果たし、探偵たちの中に犯人がいるという構図。
 第一章を読み終えたとき、私は「完全に殺人事件の解明をゲームのように考えている人間たち」とメモをとった。現実の事件に、十戒もなにもないだろう、と。「ミステリに対するアンチ・テーゼだろうか」ともメモをしている。だから、登場人物たちが感情的な行動をとるとき、少し安心した、というか。
 これだけすごい作品がデビュー作というからすごい。竹本さん自身あとがきでおっしゃっているように、若いからこそこれだけの作品が書けた、ともいえるのかも知れないけど。
 それにしても、魔術や理系の知識には圧倒される。第二章に、鬼についての民俗学的な話、物理の話(ブラックホール、不確定性原理、トンネル効果など)が記されているが、とても興味深かった。光子の話、プルキニエ現象、カタストロフィー理論も章は違うが興味深い。もっとも、文系肌の私には理系の話は難しすぎたけど…。
 四大ミステリと称されるだけはある作品だと思う。
 なんか解説的な感想になっちゃった。ちょっと不本意。
 なお、私は未読だけれど、乾くるみさんがこの作品へのオマージュとして書いた『匣の中』という作品があることも付け加えておこう。

 大学二年生から四年生まで、正月には帰省していないので、今年は久々におせちが食べられた。昔は嫌いだったけど、数年食べずにいると懐かしいもので、いいもんだな、って思った。
 専門書は、『愛と結婚とセクシュアリテの歴史』を読了。多岐に渡るテーマについて、いろんな時代について述べられていて、とても有益な書物だった。ジャック・ル・ゴフの論文が収録されているのが嬉しかった。私はル・ゴフの研究大好きなので。ちょっと(かなり?)マニアック。てへ。

 講談社のメーリス「ミステリーの館」が届く。一月のノベルスは高田さんは絶対買うとして、『奥様はネットワーカ』を買おうかどうか迷い中。ハードカバー持ってるし、節約するか、森さんの講談社ノベルスは制覇してるから、欠落を作りたくないし買うか。ところで高田さんの新作は岡山が舞台。地元っ子としては嬉しいゾ。
 二月に西尾維新さんの『ネコソギラジカル(上)十三階段』が発売されるそうな。戯言シリーズ最終回という。残念!でも楽しみなのだ。
 あと、「挑戦者2005」というフェアをするそうなのだけど、ラインナップがすごい。浦賀和宏さん、舞城王太郎さん、佐藤友哉さん、西尾維新さん、北山猛邦さんというのだ。好きな作家ばかり!特に嬉しいのは佐藤さん。『クリスマス・テロル』が最終作とばかり思っていたから。佐藤さんの世界観は好きなのです。西尾さんの世界観も好きだけど。そんなこと言ってたら森さんのも好きだし、いくらでもあげられるのでこのあたりで。





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Last updated  2007.08.19 18:24:23
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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