のぽねこミステリ館

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2005.06.27
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日曜の夜は出たくないA
倉知淳『日曜の夜は出たくない』
~創元推理文庫~

「空中散歩者の最期」その死体は、周囲に20メートル以上の高さの建物はないのに、およそ20メートルくらいの高さから落ちたと推定された。「僕」は、この「空中散歩者」の事件のことについて、猫丸先輩と後輩の八木沢くんと話をした。
 感想。島田荘司さんの『御手洗潔のダンス』に収録されている「山高帽のイカロス」という話を連想した(必然といってもよいかと思う)。さて、猫丸先輩は独特の口調。正直、トリックの解明がよく分からなかった…。そうなるのかな。
「約束」麻由が公園でそのおじちゃんに会ったのは、二月のことだった。両親の帰りが遅いため、麻由はそれから、図書館が閉館になってから、おじちゃんと話して過ごしていた。おじちゃんは、麻由に大事な話をした後で、約束をしてくれた。
 感想。タイトルと、1ページ目だけで、「あ、これは泣くな」と予感した。予感的中。泣いた。切ない物語。
「海に棲む河童」二人の大学生が、GW前に海へ行く-が、そこは土左衛門が流れ着くことで有名で、彼らが期待していた水着ギャルなんていなかった…。しかし二人は、遊覧船(?)があることを知り、それに乗る。ところが船は流されてしまい、島へ漂着する。ここで学生が、祖父から聞いたという昔話をする。山の村から海の村へきた二人の男。彼らは船で海へ出たものの、島へ流されてしまった。しばらくして、一人だけが、海の村の浜辺で見つかった。もう一人は、河童に殺されてしまったというのである。
 感想。この脈絡のない短編の並び順は何なんだ、と感じる。「約束」は泣ける話だったのに…。今回は笑わされたあとに待っていたのは、かなりのホラーだった。研究室で読んでいたのだが、ちょっと怖い描写のところを読んでいたところでドアがノックされ、私はびくっとしてしまった。
「一六三人の目撃者」帝政ロシア時代末期が舞台の芝居の劇場。舞台監督の「俺」は、そでから舞台を見守っていた。クライマックス。労働運動に身を投じていた男が、恋人のもとへ帰ってくる。そして恋人がついだ酒を飲んだ直後-その俳優は、不自然に倒れてしまった。
 感想。舞台上で俳優が死ぬ-有栖川有栖さんの『ペルシャ猫の謎』収録の「切り裂きジャックを待ちながら」もそういう設定だった覚えがある。エラリー・クイーンの『ローマ帽子の謎』も連想したが、あちらは観客が被害者だったな。とまれ、オーソドックスなミステリだと感じた。
「寄生虫館の殺人」寄生虫博物館に取材に行くことになったフリーライターである壇原。二階の展示を見ていると、小柄な男がやってきて、なにやら熱心にメモをとっている。同業者かと思い声をかけたが、ライターではなかった。二人が三階の展示室に移ると、一階で受け付けをしていた女性が殺されていた。
 感想。見事に、どの短編も作風というか、手法が違っている。今回は、三人称の地の文と、壇原さんのルポが並ぶという構成。私はミステリを推理しながら読みはしないけれど、量だけは読んできているから、この作品の大体の真相は分かった。分かっても別に嬉しくないけど。
「生首幽霊」NHKの受信料を取りに行った八郎は、アケミに灰皿を投げつけられ、それが原因で怪我をしてしまった。その夜、酒を飲みながらそのことをぐちっている内に、復讐したい気持ちになり、アケミがNHKとともに嫌いなものとして名を挙げていたへび(ゴム)をアケミのアパートに置こうとした。たまたまドアに鍵がかかっておらず、八郎が入ると、そこには女の生首があり、そして、声が聞こえた。
 感想。事件は陰惨だけれど、文体から漂う雰囲気はどこかユーモラス。短いけれどこのあたりで。
「日曜の夜は出たくない」「私」の恋人が人殺しかもしれない-。「私」と彼は、日曜日にデートをする。彼は「私」をアパートまで送ってくれた後、45分後に電話をくれる。ある日曜日の夜、「私」の近所で傷害事件が起こった。私は、45分後の彼からの電話が、彼がアパートに帰ってからしているものではないと、気づき始めた…。
 感想。ミステリだし、人が傷つけられたり殺されたりしてしまっているけれど、素敵な話だと思った。

 全体を通して。「寄生虫館」のところで、私はバラバラ感について言及しましたが、そんなことはお見通しのようでした(当然ですかね)。奥の深い仕掛けがあって、こういうのいいですね。
 倉知さんの作品は、これではじめて読了したのですが(『星降り山荘の殺人』は途中で挫折したので)、面白かったです。少なくとも、猫丸先輩シリーズは他のも読みたいと思います(こうして、買いたい本が増えていくのです…)。
 一時期は、ずいぶん未読の本を減らしたのですが、最近また増えてきました。漫画すらなかなか読めません…。





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Last updated  2005.06.27 21:52:31
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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