鷺沢萠『愛してる』
~角川文庫、 1994
年~
「ファッサード」というナイトクラブにつどう人々を中心とした連作短編集。 16
物語は、「わたし」の一人称で語られます。
チーフDJのジュニアが「ファッサード」を辞めるときを描く「真夜中のタクシー」から始まり、友人たちの恋愛模様や、「わたし」自身の迷いや苦しさ、そしてそんなときに話ができる仲間たち、といった日常が語られます。冒頭の「真夜中のタクシー」もそうですが、「灯りの下に」など、タクシーを題材にした物語がいくつかあり、印象的でした。
北方謙三さんによる解説に引きずられた部分もありますが、たとえば「わたし」の職業は明らかにされず、友人たちの恋愛の状況から過去の「わたし」の出来事の回想がなされるなど、「心境小説」としての趣きがあります。ふとしたときの「わたし」の思いの描写が好みです。
(2021.08.18 読了 )
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