鷺沢萠『駆ける少年』
~文春文庫、 1995
年~
表題作を含め3作の短編(中編)が収録された作品集です。
「銀河の町」
行きつけの飲み屋「小雪」にある日訪れたタツオは、常連たちの様子がおかしいことに気づく。いつも一緒だった一人が、亡くなったというのだった。若い頃に一緒に野球をし、店のママ(タツオがオバチャンというと常連たちから叱られるが)も、彼らを応援していたとのこと。ある日、ご隠居の店で、ご隠居と言葉をかわしたタツオだったが…。
「駆ける少年」
焦燥感で駆ける少年の夢を見た。事業で一定の成功をしていた龍之は、事業に失敗し自分が高校生の頃に亡くなった父のことを調べていた。過去帳を取り寄せ、思い出の人を訪ね…。その中で、父、そして祖父の意外な過去を知ることになる。一方、龍之の事業にも、関連会社の不渡りにより不穏な影が見え始める。
「痩せた背中」
父が死んだ。その電話に、亮司は久々に故郷を訪れた。相場師として財を築いたものの、オイルショックで財を失った父は、とっかえひっかえ女をかえた。その中で、唯一家にずっと住むようになった町子は、しかし父の振る舞いが治らず、もともと変わったところがあったが、ある「事件」を起こしてしまう。そんな町子が、通夜の席で意外な行動をとる。
―――
表題作「駆ける少年」は、鷺沢さんのお父様をモデルにした作品で、お父様については 『ケナリも花、サクラも花』
で少し言及があります( 118-132
頁)。
どれも決してハッピーエンドではありませんが、アルバムをめくるおばちゃん、駆ける少年の夢、町子さんの折り紙などなど、ろいろと印象に残った作品集でした。
(2021.10.15 読了 )
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