活字と植物メンテ、クラシックの日々

活字と植物メンテ、クラシックの日々

2005/09/03
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カテゴリ: カテゴリ未分類
<オホーツク>


昨夜から早朝にかけて、湿気を含んだ重たい雪が降り積もった。
夜が明けても、雨雪が降り続く。
道路の雪はすぐに解け、水たまりになりつつある。

山は、夕べの雪がそこらじゅうを覆っている。
しかし・・・エゾシカたちはいつもと同じように、
積もった雪の間を飛び回り、自分が気に入った木のところで
木の皮を食べているのである。

シカたちのそばには数匹のカラスが飛び回る。
雪で倒れてしまったシカを食しようとして
探しているのだろうか。


近くに、老人が乗った軽自動車が止まった。
車に乗せてきた孫に、
「ほら、あそこにシカがいるよ」
と、車窓の外を指差し、
教えてやっているようだ。

ディズニーの世界から飛び出した動物のように、
見ためは可愛らしいエゾシカ。
しかし・・・・

少し離れたところには、
シカの背が届く高さまで皮を食い荒らされた木々が
表面をむき出した姿をさらす。
このままの状態にしておくと・・・
当然のことなのだが、表面から腐ってゆく運命である。


林業関係者もこういったシカの食害に手を焼いている。
農家の人たちは、畑で育てている作物が被害にあい、
泣き寝入りをしているのである。

エゾシカは、明治初期の大雪と乱獲のため、絶滅寸前まで激減したらしい。
しかし、保護政策により生息区域を拡大、その結果…
今度は異常に激増してしまった。

人間と動物との共存。
こんなきれいなことばで、みんなが解決策を探しているのだが…。


もとはといえば…
これはあまり言いたくないが、現実のことだから。

もとはといえば…
自然とうまい具合に共存していた先住民族の住む土地に
和人たちがやってきて、
自分たちの都合の良いように開拓を進めたことが
諸悪の根源なのだ。


先住民族たちは、獲物を獲る場合は
自分たちの必要な分だけにし、
自然と調和を保っていた。
しかし、和人たちは
市場で売るために乱獲をし、
自然を壊してきた。

そして、先住民族の家族を男女別々に住まわせて
子供を作れない状態にして子孫を絶やし、
結果的に先住民族を激減させたのである。


開拓が進み、めでたくこの土地は和人たちの手に移った。
その後、この土地に鉄道をひき、道路を作ろうとして、
囚人たちを連れてきて重労働をさせた。
囚人たちは、ケガをしても病気になってもほとんど手当てがなされず、
ボロ雑巾のように死んでいったようだ。


北海道の中で、
オホーツク地方は開拓が遅れていたようである。
それは、厳寒、そして、きつい峠などがあったためだろう。
それでも、大正時代以降は徐々に人口が増え、
鉄道も道路も、立派なものが作られていった。


ところが、ここにきて・・・
鉄道は赤字だという。
多くの人々の、まさに血と汗と涙で開拓され、作られた鉄道が、
JRという会社ができた直後、あっけなく廃線となった。

そして、ここは不便な土地だからと、人々が中央へ向かう。
人口は減るばかりだ。
鉄道から代替となったバスも、いずれは廃止されるという噂がある。

10年ほど前、オホーツクのある町のある高校の卒業式で、
当時の町長が、
「若い皆さんは安心して都会に行ってください。
この町は残った私たちで守ってゆきます」
という趣旨の“お祝いのことば”を述べたという。
そんな・・・
若い人は都会にどんどん行っていいよ!
と、町の主要な人物が奨励するなんて・・・。
ああ、そんなこと。。。。
しかし、そう言わずにいられない事情があったのかもしれないが・・・。


この土地はこのあと、100年も経ってしまうと、
ほとんどの人間がいなくなり、
動物たちの天国になるのかもしれない。

それならば、明治時代からの開拓などせず、
せめて、オホーツク地方だけでも、
手つかずの状態で残しておけばよかったのに。

ああ、なんという無駄な開拓、無駄な行為がおこなわれたのだろう。

貴重な自然が失われた。
先住民族たちの生きる権利が奪われた。
そして・・・多くの人命が無残な形で失われた。


しかし、私たちは
そんな極悪非道な行いをした和人の子孫、なのだ。
この土地で、どんな形であれ、生きてゆかねばならない。


<2005.3執筆>





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Last updated  2005/10/08 05:41:03 AM


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