Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2007/10/16
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 僕がスコッチモルト・ウイスキーを本格的に飲み始めた歴史は意外と浅い。90年代の後半になってからだ。その醍醐味を教えてくれたのは、単身赴任していた徳島のBARのマスターだった。アイラ島の羊

 最初に飲んだのがアイラ島という島で蒸留されたモルトだった。名前は「ボウモア」とか「ラフロイグ」と言った。他にも「アードベッグ」「ラガヴーリン」「カリラ」というモルトも味わったが、一番強烈に印象に残ったのは最初の二つだった( 写真左 =空港のすぐそばにも羊がいっぱい)。

 スモーキーでソルティでスパイシーで、そして強烈なヨード香。こんなウイスキーはそれまで経験がなかった。それは「島の風土と人が造り出すマジック(魔法)だ」と教えられた。以来、「いつかアイラへ」が僕の夢だった。ラウンド・チャーチ

 そんな夢が2007年9月24日、ついに叶った。午前9時15分。僕は確かにこの足で、アイラの地に降り立った。レンタカー(日産車)のハンドルを握り、一路ボウモアの街を目指す( 写真右 =ボウモアの街のシンボル「ラウンド・チャーチ」)。

 アイラ島の車道は日本と同じ左側通行。道はほぼまっすぐな一本道だから走りやすいし、迷うこともない。信号は走っても走っても、見あたらない。島にはおそらく、一つもないと想像する(島のすべての道を走ったわけではないが…)。ボウモアの街並み

 天気は小雨が降ったり止んだりと不安定。当然車のワイパーを使う。すると、ワイパーと思って入れたスイッチは方向指示器。ワイパーはハンドルの右側にあった。つまり日本車なのに日本と逆。左ききが多い国民に合わせたためか。

 ボウモアへ行く途中、左も右もほとんどが牧草地。時々、羊が道路を横切る。こちらの羊は顔が黒くて可愛い。羊ばかりだと思っていたら、牛も結構たくさんいる。でも人はあまり見かけない。おそらく人の数より家畜の数の方が多い?ハーバー・イン

 30分ほど走って初めて緩やかな左カーブに出合った。するといつか写真で見たことのあるボウモアの円い教会が視界に入ってきた。そして教会の前にたどり着き、坂道の下の方を望んだら、やった! ボウモアの街だ!( 写真左上 )やっと来たぞー!

 夢にまで見たボウモアの街に、僕はとうとうやって来た。まだ午前11時すぎ。ボウモア蒸留所のツアーは午後1時半に予約している。僕らはとりあえず、今晩泊まる予定の「ハーバー・イン」( 写真右上 )というホテルにチェックインの手続きだけを済まそうと訪れる。観光案内所

 ホテルはまだお掃除の真っ最中。レンタカーをホテル前の駐車場に置かせてもらい、昼飯に出かける。目指すは、日本の馴染みのバーテンダーから勧められた「ロッホサイド・ホテル」のレストラン。ボウモアの街には単独のレストランはない(実際、1軒も見かけなかった)。だからホテルのレストランくらいしか、ご飯を食べる所はない。それも、このロッホサイド・ホテルとボウモア・ホテルくらい。

 ロッホサイド・ホテルのレストランでランチを食べた僕らは、その後、街のショップを覗いたり、メインの交差点側にある観光案内所( 写真左上 )にお邪魔したりしながら時間をつぶした後、いよいよボウモア蒸留所のビジター・センターへ。ボウモア蒸留所正面

 ボウモアの街は小さい。端から端まで歩いても15分もかからない。泊まったハーバー・インからボウモア蒸留所までは徒歩2分ほど( 写真右 =白壁が美しいボウモア蒸留所)。

 ビジターセンターの受付で「予約している****です」と告げると、「ツアーは2時からなので、しばらくお待ちを」とすぐ横のサロンに案内される。

 ビジターセンター( 写真左下 )は最近改装されたらしく、見学者サロンの展示も見やすく、美しい。ショーケースには当然のように、ブラックボトル、バイセンテナリーなどファン垂涎の歴代の稀少ボトルが並ぶ。そして広い窓からは海も望めて、とても心地よい。ボウモア・ビジターセンター

 サロンで待っていると、デイビッドという男性従業員が僕らの前に現れ、「ハロー、ボウモアへようこそ」と挨拶してきた。デイビッドは若くてイケメン。まだ30歳前半かな。そして、ただちに「後へついてきてください」と言った。そして、デイビッドと僕ら2人、計3人だけの見学ツアーがスタートした。

 他の一般観光客と一緒のツアーで案内されると思っていた僕らは、少々面食らった。僕ら2人だけが「特別扱い」されているために、他のツアー客は「あいつら何者?」と不思議そうに、羨ましそうに見ている。

 フロアモルティング(製麦・発芽)、キルン(乾燥塔)でのピート焚き、糖化作業(マッシング)、発酵桶、蒸留釜(ポットスティル)など、モルトができるまでの過程を見るのは普通のツアーとほぼ同じ中身だが、やはり、少人数で丁寧に案内されるのはいい気分。案内してくれたデイビッドと

 デイビッドは一生懸命、僕らに対して説明してくれるのだが、残念ながらスコットランドなまりの英語なので、聴き取りにくい。デイビッドは時々、「僕、早くしゃべりすぎているかい?」と聞いてくれるのだが、早さの問題じゃなくて、スコットランドなまりの問題なんだけど、それは言えない。

 デイビッドはツアーの最後に、「通常のツアーでは見せない場所」にも連れていってくれた。そこはモルトの樽の貯蔵倉庫で、なんとその場で、樽出しのモルト2種(シェリー樽&バーボン樽)とニューポット(貯蔵前の出来たてのモルト)まで味わわせてくれた(ちなみに、デイビッドは「ニューメイクス」と言っていた)( 写真右上 =案内してくれたデイビッドと)。フロアモルティング

 車はハーバー・インに置いてきたので心おきなく飲める。だが樽出しモルトは57~62度くらいだから、さすがにキツい。少々酔っぱらった気分)。でも、デイビッド、ほんとに有難う! こんな歓待は予想していなかったぞー!。

 ボウモア蒸留所で至福の時を過ごした僕らは、ホテルの部屋で酔いを少しさました後、再び街を散策。土産物店などを覗いていたところ、日本で写真で見たバンが通りのスーパーの前でとまっているのを目撃した( 写真左 =ボウモアでのフロアモルティング作業)。テイスティング

 バンの側面には「Lady Of The Isles」とある。アイラで知らない人のない観光ガイド、クリスティーンの車だ。実は、日本を発つ前、「アイラでクリスティーンにもし会ったら、手紙を渡してほしい」とあるバーテンダーから頼まれていた( 写真右 =倉庫の中の樽から直接飲ませてもらえるなんて!)。

 僕はスーパーの中にクリスティーンがいるんじゃないかと思い、店に入って中を探した。すると、いた!というより、クリスティーンの方から、「コンニチワー!」と僕に声をかけてきた。島の名物ガイド・クリスティーンとクリスティーンは日本人を案内する機会が多くて、日本(大阪にも!)にも来たことがある親日家。だから、カタコトの日本語を知っている。

 僕も日本を発つ前、クリスティーンとメールのやりとりを少ししていたが、本人と会うのは初めて。名乗った僕をすぐに思い出してくれたクリスティーンは、大感激してくれて、強~いハグで歓迎してくれた( 写真左 =クリスティーンとの出逢いを喜ぶ)。スーパーの表示

 初めてのアイラ訪問。本来なら、僕らは彼女にガイドを頼んでもよかったのだが、気ままに動きたかったので今回はレンタカーを借りた。それでも、クリスティーンは「遠い日本からはるばるアイラまで来てくれてほんとに有難う。嬉しいよ」と喜んでくれた。僕らは日本での再会を約束して別れた。( 写真右 =スコットランドの公用語は英語とゲール語。街のスーパーの表示はゲール語も併用)。生ガキ

 さて、そろそろ晩飯の時間。泊まったホテル「ハーバー・イン」のレストランを予約している。「晩飯を食べるなら、少し高いけどハーバー・インが美味しいよ」と、これもあるバーテンダーのオススメ。

 確かにハーバー・インは美味しかった。生牡蠣のボウモアがけ( 写真左 )、アンコウ(モンクフィッシュ)のソテー等々、素材が新鮮なこともあるが、スコットランドの島のレストランとは思えない洗練された味わい。ロッホサイドホテルのパブ

 従業員に「シェフ(彼=him)にエクセレントだと伝えてくれ」と頼むと、「彼女(She)だ」と応じた。ハーバー・インの女性シェフに乾杯!

 美味しいディナーの後は、歩いて数分のロッホサイド・ホテルのパブへ( 写真右 )。このパブは、アイラのモルトのすべてが味わえると言っていいほどの品揃えを誇る。

 パブには毎晩、地元の人だけでなく、世界中からモルトを愛する人たちが集い、幸せな夜を過ごす。この夜もカナダ、ドイツ、ニュジーランド…と国際色豊かだった。日本から来た僕らもその輪の中に加わり、一緒に素敵な思い出を刻んだ。

 ◆英国の旅:アイラ島編(3)へ続く。





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Last updated  2011/10/25 12:05:26 AM
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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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