Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2017/01/15
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 31.ギブソン(Gibson)

【現代の標準的なレシピ】 (容量の単位はml) ジン(45~50)、ドライ・ベルモット(10~15)、パール・オニオン(1個)  【スタイル】 ステア

 少なくとも1910年代まで米国内で誕生していたと思われる古典的カクテルの一つです。マティーニに限りなく近くて、それでいてマティーニとは必ず区別されるカクテルですが、それがギブソンです。

 違いと言えば、オリーブの代わりにパール・オニオンを使う程度ですが、そもそもマティーニにオリーブが入るようになったのは、1930年代半ば以降なので、古い時代のカクテルブックには単に「マティーニのレシピにパール・オニオンを加えたもの」としか記されていないことも多いのです。

 欧米のカクテルブックで「ギブソン」が初めて登場するのは、確認できた限りでは、1917年に米国で出版された「173 Pre-Prohibition Cocktails」(Tom Bullock著)です。なので、少なくとも禁酒法時代(1920~1933)以前に存在していたことは間違いありません。

 誕生の経緯については、下記の2説がさまざまな文献や専門サイトでよく紹介されています。

 (1)19世紀末の米国の画家チャールズ・ダナ・ギブソン(Charles Dana Gibson)がニューヨークの「プレイヤーズ・クラブ」で「自分だけのマティーニを」と所望したところ、チャールズ・コノリー(Charles Connolly)というバーテンダーが、オリーブをパール・オニオンに替えて供した(考案の時期については、もう少し後の禁酒法時代=1920~33年=だったという説もあります)。

 (2)米国の禁酒法時代(1920~33)、英国駐在だったギブソン米国大使がパーティーの席で、「本国は禁酒法が施行されているので自分は飲めない」と言って、カクテルグラスに水を入れ、パール・オニオンを飾って飲んだことから考案された。
 ※上記に紹介した1917年刊のカクテルブックに紹介されていることからも、この説には無理があると思われます。

 またWikipedia英語版では、最近発掘されたものとして、さらに以下の2説も紹介しています。どれも決定的なものではありませんが、(4)の説はかなり具体的です。

 (3)ギブソンという名の銀行家が顧客と一緒にマティーニ・ランチを食べる際、しらふでいられるようにあらかじめ店のバーテンダーに「自分のグラスには水とパール・オニオンを」と頼んだことから(出典や時期については明記なし)。

 (4)サンフランシスコでビジネスマンをしていたウォルター・ギブソンという人が、1890年代に、当地のボヘミアン・クラブで考案した(原資料は、San Francisco Chronicleの記者Charles MaCabeの著書「Man’s Weakness」)。
 ※この説については、1898年にこのギブソン・カクテルについての記録を残している同クラブのメンバー、ウォード・トンプソンの証言によっても裏付けられているとのことです(原資料はウォール・ストリート・ジャーナルの記事 → Eric Felton: A Thoroughly Western Cocktail, Wall Street Journal, May 30, 2009)。

 ご参考までに、歴史上有名なカクテルブックをいくつか見ておきましょう。
・「ABC of Mixing Cocktails」(Harry MacElhone著、1919年刊)英 → なぜか収録なし。
・「The Savoy Cocktail Book」(Harry Craddock著、1930年刊)英
 ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、パール・オニオン
・「The Artistry of Mixing Drinks」(frank Meier著、1934年刊)仏
 ジン4分の3、ドライ・ベルモット4分の1、パール・オニオン
・「Mr Boston Official Bartender's Guide」(1935年刊)米
 ジン4分の3、ドライ・ベルモット4分の1、レモン・ピール、パール・オニオン
・「The Official Mixer's Manual」(Patrick G. Duffy著、1948年刊)米
 ジン5分の4、ドライ・ベルモット5分の1、パール・オニオン
 ※ちなみに、Wikipedia英語版では、ジンとドライベルモット6:1のレシピを「標準的なもの」として採用しています。

 「ギブソン」は日本にも早い時期に伝わり、1920年代のカクテルブックに登場しています。しかし、現代の日本のバーでは、比較的知名度はあっても、マティーニに比べると注文する人はほとんどいない哀しいカクテルでもあります。

【確認できる日本初出資料】 「コクテール」(前田米吉著、1924年刊)。レシピは、「ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ一振り、玉ネギ小刻み少々」となっています。ドライ・ベルモットではなく、スイート・ベルモットを使うという驚くべきレシピですが、これは当時、マティーニ自体がまだ、スイート・ベルモットを使うケースが多かったことが背景にあるのでしょう。
 ※1920年代の日本ではパール・オニオンが手に入りにくなったことから、玉ネギの小刻みで代用しているところに苦労の跡が偲ばれます。



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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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