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2017/07/08
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 59.モスコー・ミュール(Moscow Mule)

【現代の標準的なレシピ】 ウオッカ(45)、ライム・ジュース(15)、ジンジャー・エール(またはジンジャー・ビア)(適量)、カット・ライム(数個)、氷  【スタイル】 ビルド ※銅製のマグでつくって提供することが多い。

 米国西海岸エリアで1940年代初めに誕生し、50年代に(全米で)急速に人気が広がったカクテルというのが定説でしたが、近年の研究では、誕生した場所はニューヨーク・マンハッタンのホテル・バーだったという説も出ています。

 カクテル名は直訳すれば、「モスクワのラバ」。一見飲みやすいけれども、急いで飲むと「ラバに蹴られたくらいに効く(キックの強い)飲み物」という意味で名付けられたと紹介される(出典:多数の文献や専門サイト)ことが多いのですが、これを裏付ける確実な資料は、残念ながら伝わっていません。誕生の経緯については、従来、主に以下のような説がよく紹介されてきました。

 (1)1940年代初頭、ロサンゼルス・ハリウッドのレストラン・バー「コックン&ブル」(Cock ’n’ Bull)のオーナー・バーテンダー、ジャック・モーガン(Jack Morgan)氏が、ジンジャー・ビアの在庫をさばくために考案した。
 スミノフ・ウオッカの販売促進をしていた製造元のヒューブライン社(Heublein Brothers Inc.)のジョン・マーチン氏が、モーガンの考案したドリンクのことを知り、一緒に組んでPRしたことで全米へ普及していった。
 ※「コックン&ブル」はハリウッドのセレブも通う当時の人気レストラン・バー。モーガンは当初、ベースをリキュールの「ピムズNo.1」でつくっていたとの説もあります(出典:Wikipedia日本語版)

 しかし、他にも以下のような3つの説(誕生の経緯)も伝わっています。

 (2)1941年、ニューヨーク・マンハッタンのチャットナム(Chatnam)・ホテルのバーに集まった3人の人物によって考案された(当初は「リトル・モスクワ」という名前だった)。その3人とは、「コックン&ブル」のジャック・モーガン氏、ヒューブライン社のジョン・マーチン氏、そして、ピエール・スミノフ社の社長・ルドルフ・クネット氏。考案されたドリンクは、4、5日後に「モスコー・ミュール」と命名されたという(出典:Wikipedia英語版、原史料はthe New York Herald Tribuneの1948年の記事とのこと)。
 ※その後、最初にブレイクしたのは、マンハッタンではなく西海岸でしたが…。

 (3)1940年代、「コックン&ブル」のバーのチーフ・バーテンダーだったウェス・プライス(Wes Price)という人物が、店の貯蔵庫に売れ残っていたスミノフ・ウオッカとジンジャー・ビアの在庫をさばくために考案した(出典:Wikipedia英語版、原史料は、エリック・フェルテン氏によるThe Wall Street Journalの2007年の記事とのこと)。
 ※なお、考案に当たっては、モーガン氏の友人でもあった銅器製造会社「Moscow Copper」のソフィー・ベレジンスキー(Sophie Berezinski)氏の協力もあり、後に銅製マグの使用が一般的になったと伝わっています(出典:Wikipedia英語版)。

 (4)第二次大戦後、ヒューブライン社のジョン・マーチン氏が、スミノフ・ウオッカの販促のために、「コンクン&ブル」のオーナー、ジャック・モーガンと組んで考案。マーチン氏のガールフレンドで、銅製品メーカーを営んでいたオズライン・シュミットが自社の銅製のマグカップで提供するアイデアを提案した。このスタイルが人気を呼び、またたく間に米国内に幅広く普及した。店の常連客は「マイマグ」をキープするようになった(出典:The Craft Of The Cocktail<Dale Degroff著>、Meehan's Bartender Manual<Jim Meehan著>)。 

 カクテル史に詳しい米国のバーテンダー、ジム・ミーハン(Jim Meehan)氏は自著「ミーハンズ・バーテンダー・マニュアル(Meehan's Bartender Manual)、2017年刊」で、(1)と(4)の説を支持しています。どの説が正しいにしても、1942年当時の新聞・Insider Hollywoodの記事で、「モスコー・ミュールというニュー・ドリンクが、映画の都ハリウッドで人気を得ている」と紹介されており(出典:Wikipedia英語版)、少なくとも1940年代初頭にはそれなりに普及していたことは確実です。そして、コックン・ブル(またはジャック・モーガン氏)とヒューブライン社がこのカクテル誕生に深く関わっていることは間違いないでしょう。

 「モスコー・ミュール」が欧米のカクテルブックで初めて紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、1946年に米国で出版された「The Stork Club Bar Book」(Lucious Beebe著)と言われています。そのレシピは「クラッシュド・アイスを入れたマグにウオッカ2オンス、ジンジャー・ビアを入れ、生ミントの小枝1本を飾る)」となっています。

 また、その2年後の1948年に米国で出版された「The Official Mixer's Manual」(Patrick Gavin Duffy著、1934年初版)の改訂版にも登場(レシピは「氷を入れた12オンスグラスに、ウオッカ1.5ジガー、ライム・ジュース半個分(ライムの外皮はグラスに入れる)を入れ、ジンジャー・ビアで満たす」)しており、40年代後半には、「モスコー・ミュール」はバーの現場でかなり認知されていたことが伺えます。

 1950年代の「Mr Boston Official Bartender's Guide」では、現代のように銅製のマグカップ(Copper Mug)で提供するように指定していますが、これはジャック・モーガンの友人の提案が定着した結果でしょう(出典:Wikipedia英語版)。

 「モスコー・ミュール」は、日本には戦後まもなく伝わり、50年代のカクテルブックで初めて紹介されています。ただし、街場のバーで広く認知されるようになったのは、私の記憶でも1960年代後半~70年代前半以降だと思っています。

 なお、ベースのウォッカをテキーラに替えると「メキシカン・ミュール」、またラムに替えると「ジャマイカン・ミュール」、スコッチ・ウイスキーに替えると「マミー・テイラー」、ジンに替えると「マミーズ・シスター」という名にそれぞれ変わります(出典:Wikipedia日本語版)。

 ただし「マミー・テイラー」については、1899年にビル・スターリット(Bill Sterritt)というニューヨークのバーテンダーが考案したと伝わっており(出典:Webtender.com→The Washington Post, May 15th, 1900、ほか欧米の専門サイト情報)、モスコー・ミュールよりも先の誕生です(カクテル名は、1890年代に人気のあったブロードウェイの女性歌手の名前にちなむとか)。

 現代のバーでは、生姜を漬け込んだウオッカをベースに使うなど、オリジナルな「モスコー・ミュール」も人気を集めていますが、シンプルなカクテルだけに、これからも様々なバリエーションが考案されていくことでしょう。

【確認できる日本初出資料】 「オーソドックス・カクテルズ」(落合芳明著、1955年刊)。レシピは原文のまま紹介すると、「ライムを半分に胴切りしてマグに絞り出す。次に氷塊2個とリキュール・グラス2杯前後のウオッカを加え、残余をジンジャー・エールで満たして供する」(※リキュール・グラスのサイズについては言及はありません)。



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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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