I love Salzburg

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2018.04.08
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カテゴリ: 日本の旅
「まあ、ここに座りなさい。」

国宝の本堂の中に足を踏み入れた私に、お寺の男性が声を掛けてくださった。

「どちらから見えられたのですか?」
「四国の香川です。」
「じゃあ、ライバルというわけだ。」
???
「ここはね、天台宗のお寺なんですよ。」
「ああ、お大師さま、、、」





彦根城の帰り、いたるところにある桜並木に目を奪われながら、湖東三山のひとつ、西明寺を訪ねた。
一番美しいのは紅葉の季節らしいが、8年ほど前、同じく湖東三山の百済寺(ひゃくさいじ)を訪れた際、京都とはまた違う趣きの深さに感動し、他の二つの寺院もお参りしたいと思っていた。
湖東三山とは、琵琶湖の東側にある三つの天台宗寺院をまとめてそう呼ぶ。


「ここの本尊の薬師如来さまは秘仏でね、実は私も見たことがない。」
この後、40分ほど説明が続くことになろうとは知らない私は、「へえ」と本堂中央に座した。

写真の薬師如来像は左手に薬壺を持ち、右手の薬指は少し前に曲げられていた。
薄暗くてよく見えなかったが、薬壺を持つ左手も僅かに薬指のみ曲げられているようだった。
「薬指は薬師如来さまからいただいた指でしてね、薬などはこの指で塗ると治りが早いですよ。」
「生きている間は誰しも病気をしますから薬師如来さま、生まれる前は釈迦如来さま、亡くなった後は阿弥陀如来さまが守ってくださります。
釈迦如来さまは手のひらを見せる形、薬師如来さまは先ほども言ったように薬指を曲げてらっしゃる。そして、指で輪を作ってらっしゃるのが阿弥陀如来様。」

こういう話をじっくり聞く機会がなかった私は、少し前のめりになって真剣に頷いていた。

秘仏の薬師如来像を祀った箱の両側に並ぶ十二の像にライトを移して説明を続ける。

「あんたの干支はなにかな?」
「ネズミです。」
「じゃあ、子年の像を拝むんだよ。それ以外に拝んでも聞いてもらえないから。」

薬師如来を守護する十二神将は、生まれ年の干支の守り本尊とされている。
「ここの十二神将立像は、文字の読めない人にもわかるように頭上に干支を乗せてるのでよく見てごらん。」
「この像が造られた当時、日本にはトラと羊が入ってきていなかったから、この二つは本物と全然似てないのが面白いだろ。」
西明寺の十二神将像は、運慶の弟子の作と伝わっている。

「ここはね、宝くじとギャンブル以外はなんでも言うことを聞いてくださるからね。それも一つだけじゃない、いくつお願いしても聞いて下さる。」
別に頼み事をしようと思ってお参りにきたわけじゃない私は、何をお願いすればよいか思いつかずきょとんとした。

「もしも他の方のお願いを代わりにする場合は、その人の干支に向かってするように。」
「実は、私も息子もここでお願いして癌が治ってね。・・・・・・・・・・・」


おじさんは非常に話が好きらしい。
住職さんではないとのことだった。




「あ、国宝なのはこの建物の本堂と三重塔。どちらも鎌倉時代の作で、まず本堂が滋賀県第一号の国宝に指定されて、その数年後に三重塔。二天門は室町時代作で重要文化財。」





「実はこのお寺も戦国時代に織田信長に焼き打ちされたんだけど、本堂と三重塔、そして二天門のみ焼かれずに済みましてねえ。」
昔習った教科書では、信長といえば延暦寺の焼き打ちとしかなかっただけに驚いた。

​話は延々とその後も続いた。



外は青空が広がり、さきほど歩いた庭園では陽の光が眩しく踊っているに違いない。
この寺のお庭は蓬莱庭と呼ばれ、薬師如来や十二神将などをあらわした石組と鶴亀の形をした島が浮かぶ池が美しい。
苔の緑に心鎮まる。






ー 龍應山西明寺略縁起 ー

西明寺は平安時代の承和元年(834)に三修上人が、仁明天皇の勅願により開創された寺院である。
平安、鎌倉、室町の各時代を通じては祈願道場、修行道場として栄えていて山内には十七の諸堂、三百の僧房があったといわれている。
源頼朝が来寺して戦勝祈願されたと伝えられている。
戦国時代に織田信長は比叡山を焼き打ちしてその直後に当寺も焼き打ちをしたが、幸いに国宝第一号指定の本堂、三重塔、二天門が火難を免れ現存しているのである。
江戸時代天海大僧正、公海大僧正の尽力により、望月越中守友閑が復興され現在に至っている。






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Last updated  2018.04.11 15:20:05
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