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釈迦楽

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March 5, 2010
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カテゴリ: 今日もいい日だ



 それも途中から見たので、詳しくはよく分らないのですが、どうも青森地方で「ぼろ布」のコレクターか何かをなさっている(地方史家?)田中忠三郎さんとおっしゃる方が登場し、この地方で昔から大切にされてきた「ぼろ布」への思いを吐露されていたんです。

 で、「ぼろ布」なんて言うと、なんじゃそれ、という感じですけど、これがすごく良かった。

 番組によると、青森はその昔貧しくて、なかなか綿の織物や糸なんて手に入らなかったというのですな。ですから、布はほとんどが麻製。と言っても、麻布なんて夏向きの布ですから、これで青森の厳しい寒さを防ぐには工夫が要った。

 一つには何枚もの麻布を重ねて縫う方法です。で、しかも、新品の麻布もそうは手に入らないので、古い麻布を何枚も継ぎはぎしながら重ねて縫うわけ。一種のパッチワークですよ。で、この重ね縫い・継ぎはぎ縫いの麻布に家族一堂が丸裸で包まって、互いの肌のぬくもりを寄せ集めて寝たと。

 しかし、もちろんこの地方にも晴れ着が必要な時もある。特に女性はそうです。そこで、わずかながら手に入る木綿の糸で麻布に刺し子をするんですな。藍で染めた麻布に、白い木綿の糸で上手に模様を入れながら刺し子をする。この地方の女性は小さな時から針を操る術を身につけ、そうして自らの手で作った晴れ着を二三枚、お嫁入りの時に持っていくというわけ。貧しい中もやっぱりある、女性らしい洒落っ気と誇りとが、その刺し子を施された布にありありと残っているんですね。

 で、また、そうやって服や布団としてぼろぼろになるまで使い切った布は、細く切り裂いてそれ自体を糸にし、その糸を紡いでまた布にする。

 で、それでなお使い切った布は、これまた継ぎ合わせて、お産の時、下に敷いて生まれてくる赤ん坊を受ける布に使うというのですな。つまり、何度も何度も使いまわしながらその家族が身につけ、その家族を暖めてきた布を、最後の最後で、新しい命の受け皿にするというわけ。だから、そうやって使いに使って、ぼろぼろになった端切れには、青森での暮らしというもの、そして一つの家族の歴史というものが、どうしようもなく詰まっているんですな。

 もちろん今では青森だってそんなぼろ布を必要とするほど貧しい家庭というのはないわけでして、今時の若い人はそんなゴミみたいなものに目もくれません。だけど、そういうことを経てきたお年寄りたちは、そういうぼろ布の端切れを今もなお捨てられないでいて、大切にとってあったりするわけですよ。で、そういう思いのこもったぼろ布を、田中忠三郎さんは青森の各地のおばあさんたちから分けてもらいながら、大切に大切に、いとおしむようにコレクションしていらっしゃるわけ。そのぼろ布に、東北の暮らしの貴重な歴史があるから。田中さん曰く、青森のお年寄りの顔に深く刻まれた皺が美しいように、このぼろぼろの布には美しさがあると。何ともいえない柔らかさと温かみがあると。

 いや~。素晴らしい。田中さんみたいなのを真のコレクターというのじゃないでしょうか。価値なんかないと思われているものに価値を見出し、他の人には見えないものを見ていらっしゃるんだもの。そして、東北の暮らしを支えたぼろ布に感謝の気持ちを抱きながら、慈しんでいらっしゃるのですから。ほんと、ぼろ布の一枚一枚を手に取り、それを見つめる田中さんのまなざしの何とやさしいこと! それを見ているだけでも、何か教えられるものがあります。

 というわけで、今日はとても素敵な番組が見られて、いい気分のワタクシなのでありました、とさ。NHKの『美の壺』という番組、谷啓さんが出られていたころからファンでしたが、その中でも今回は、いい目のつけどころだったのではないでしょうか。もし、またこの回が再放送されるようでしたら、ぜひご覧になってくださいね~。教授の熱烈おすすめ!です。





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Last updated  March 5, 2010 04:01:22 PM
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