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March 17, 2010
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カテゴリ: 教授の追悼記



 ということで、そろそろその準備に入ろうかと、昨年の秋にアメリカに滞在した折、集めてきた資料を読み始めたのですけど、中に結構いい資料があって、段々調子が出てきました。調子がいい時は、新しく仕入れた知識と今までに積み重ねた知識が上手いこと重なって、新しい発想がモリモリと出てくるんですが、何となく、それに近い手応えが出てきた感じかなあ・・・。

 例えば、最近読んだ資料の中に、「コンピュータが書いたロマンス小説」というのが実際にある、ということが書いてあって、ホントかよと思いつつアマゾンで調べたら、確かにありますね、その本。ということで早速購入したんですが、どうもその小説、とある有名なロマンス作家の文体の癖なんかをコンピュータに入力し、それをもとにでっち上げたものらしいんですな。

 でまたうまい具合に、その「とある有名ロマンス作家」というのが、まさに私が論文中で触れようと思っていた作家と来ているのでね。これで三題噺ができた、というもんじゃないですか。

 ま、調子がいい時ってのは、こんな感じですわ。


 ところで、そんな具合に調子に乗りつつあるときに入ってきたのが早川書房のポケミスの表紙を長く描かれていた勝呂忠さんが亡くなったというニュース。享年83歳。

 早川のポケミスというのは、1953年から出版され、長く続いているミステリー叢書ですが、その表紙を飾る油絵の抽象画の大半は、この勝呂氏が描いたと言われておりまして。少なくともこのジャンルに詳しい方なら、その特異な画風を覚えておられる方も多いことでしょう。

 ちなみに、専門的なことを言いますと、早川のポケミスというのは、当時アメリカで流行り始めたペーパーバック本、とりわけ「NAL」という出版社(あるいはその前身のアメリカ版ペンギン・ブックス)の叢書の体裁を模倣しているのですが、NALのペーパーバック自体が1940年代末から始まっているので、それを考えると早川の模倣は非常に早い。つまり、それだけ鋭敏に海外の状況を見ていて、その流行の行方をいち早く取り入れたということでして、それは見事なものでございます。

 でまた、勝呂氏の表紙絵というのが、NALの看板表紙絵画家だったジェイムズ・アヴァティの油絵のスタイルと、ロバート・ジョナスの抽象画のスタイルを上手い具合に組み合わせたような感じの絵で、これまた非常に趣味がいい。模倣の仕方が実にうまいと言いましょうか。

 その辺のアンテナの張り方と模倣のテクニックというのは、さすが日本(人)だなあ、と思いますね。いい意味で。

 ということで、勝呂氏の業績は、出版史あるいは商業美術の方面から改めて検証・顕彰されるべきだと思いますが、誰か日本のポケミスファンあたりで、そういうことをやる人はいないものでしょうか。ディープな話題になるので、この方面が好きで好きでたまらん人がやるべきだと思うのですが。

 ま、勝呂氏の死の報せを聞いてこんなハッタリが口をついて出る辺り、私もまたいい感じで自分の専門に対するアンテナが張れてきたな、という実感を抱いているのでありました、とさ。





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Last updated  March 17, 2010 11:51:38 PM
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