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釈迦楽

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March 29, 2010
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カテゴリ: 今日もいい日だ




 ところで、春休み中とてひっそりと静まり返った研究室棟の我が研究室に向かうと、廊下の奥の方から何やら人の気配が。誰かと思えば、この4月から東京方面の他大学に移籍されるM先生。研究室を引き払うために、今日も出勤されていたんですな。

 ということで、私の方の仕事が一段落したところでM先生を誘い、共同研究室で二人でお茶を飲むことに。先生とゆっくり話ができるのも今日が最後でしょうからね。

 で、先日の卒業式・謝恩会の感想やら、移籍先の大学での勤務状況などを伺ったり(うちの大学より持ちコマ数がずっと少なく、しかも専門の授業の担当が多いとのこと、羨ましい!)したのですが、そのうち話が英語の授業の話になりまして。

 ま、大学というところはそれぞれの教授が自分の好きなように授業をすることになっておりまして、また互いに干渉し合わないというのが暗黙のルールになってもおりますので、私はM先生がどのような英語の授業をしているか、今まで知らなかったのですが、伺ってみると、意外なことに、文学作品を読んでいらっしゃる、というのですな。つまり、英米の小説を授業中に読んでいると。

 いや~。実は私も十数年前まではそうでした。しかし、その後、「文学なんて役に立たないから、もっと実用英語的なことをやって欲しい」という大学側からの要請もあり、最近は英語の授業で英米の小説を原文で読む、なんてことはまったくやっていなかったんです。しかし、M先生はそういう状況をも顧みず、敢えて文学作品を読んでいたと。

 で、「授業で小説とか読むと、学生の受けが悪くないですか?」と尋ねると、「全然そんなことないですよ、むしろ好評でしたよ」とのこと。M先生曰く、「学生たちは、物語を欲している」のだとか。

 で、じゃあ、実際にどんなものを読んでいらっしゃるのか、さらに突っ込んで聞いたところ、2ページから3ページで読み切れるショート・ショート的な英語の小説をこのところずっと読んでいらっしゃったのだそうで。これなら毎回の授業で一話完結の物語を読み切れるので、ちょうどいいのだとか。ショート・ショートというと、何だか二流・三流の作家のSF作品みたいなものを想像してしまいますが、実際には英米の著名な作家のものすごく短い短編作品を集めた大学生向け教科書が、あちこちの出版社から出ているのですって。

 で、その教科書の使い方ですが、M先生は受け持ったクラスの学生を二人ひと組のペアにして、例えば何ページの何行目から何行目までで分らないところを各ペアに合議させ、ある程度の時間をおいてから、「そこまでで分らないところ、ある?」という風に聞く、というのですな。で、合議しても分らない箇所がある場合は、そこで質問が出るので、それに対してM先生が答え、質問が出なければ次へ進む。また、M先生から見て難しい箇所なのに質問が出なかった場合は、逆にM先生から学生たちに質問したりもする。

 そして、英語としてではなく、小説の意味として考えるべき描写などは、M先生の方から学生たちに先に質問し、各ペアに合議させて、その意味を考えさせる、というようなこともするそうなのですが、この「小説の意味を考える」という側面は学生たちに結構好評で、さっと読むと気がつかないけれど、よく読むと、そんな深い意味が隠されていたのか~、などと驚くのだとか。

 とまあ、ざっと伺った限りではM先生はこんな感じの授業をされていたらしいんですけど、要するに、文学を材料にして英語を教えるという意味では、ほんとに王道というか、直球の授業をされていたわけですな。で、それが学生に受けた、と。

 はあ~。そうなの? それでいいのだったら、私も昔に帰って、そんな感じの「文学的」な授業に戻そうかな・・・。

 確かに最近、英語における「リーディング」の重要性が再び脚光を浴びるようになり、とりわえ文学作品を使った授業の復権が言われていることは知っていましたが、「そんなこと言ったって、このご時世、英語の授業で英米の小説を読みますなんて言ったら学生から総スカンだろう」と勝手に思い込んで、それを実際にやるところまでは行かなかったんです。でも、身近な先生から「学生は小説を面白がって読むよ。実用英語向けの無味乾燥な英文を読ませるとか、TOEIC対策の授業なんかやるより、よっぽど受けるよ」と言われると、「じゃあ、私もその路線でやって見るか・・・」という気になります。

 そりゃ、私はアメリカ文学の研究者なんだから、授業中に文学作品が読んでいいのだったら、その方がよっぽど上手に教えられるでしょうからね。

 ということで、我が大学を去りゆくM先生と最後にゆっくりお話をするチャンスを得、そこで「学生たちは、物語を欲しているのだ」という言葉をもらったことは、私にとってとても有意義なことだったのでありました。

 M先生、この言葉、先生のこの大学への「置き土産」として、私がしかと受け取りましたぞ! 移籍先の大学でも、どうぞお元気で!





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Last updated  March 29, 2010 10:00:10 PM
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