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October 6, 2010
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カテゴリ: 教授はつらいよ



 TOEICを受験させるメリット、と言うか、お題目はですね、とりあえずこれが英語力の客観評価になる、ということですね。例えばまったく同じ英語力を持った学生が二人居たとして、一人は点の厳しいA先生のクラスに入ったためにC評価を受け、もう一人は点の甘いB先生のクラスに入ったためにA評価を受けた、なんてことはあり得る。しかし、この二人がTOEICを受験すれば、同点になるわけですから、その意味でTOEICで評価した方が公平感はあると。

 だもので、この客観評価のスケールを使って、学生の英語力評価の一助にしようと、まあ、そういうわけですな。

 しかし、実際にはこれが問題山積みでして。

 例えば、今、うちの大学では、TOEICの点数のあまりにも低い学生には、英語の単位を出さない、というふうにすることを検討中なんですけど、これは果たしてよい制度なのか・・・。

 例えば、英語のセンスがまったくない人というのは居るもので、それは例えば運動神経がからっきしない人がいるのと同じ。そういうのは、通常の努力程度ではなかなか英語が上達するものではありません。

 従来であれば、まあ真面目に授業に出ていれば、多少、期末テストの成績が悪くとも、お情けで合格にしてやれ、なんてことが出来たわけ。しかし、TOEICの客観評価を導入したら、こういう学生は大学が定めた最低点にいつまでたっても到達できず、何年も英語の単位を落とし続ける、なんて事態にもなりかねない。果たして、それでいいのか。

 それに、TOEICテスト自体の性格の問題もあります。

 TOEICテストというのは、結局、社会人向けのテストですからね。ビジネスの場でどのくらいの英語運用能力があるかを計るものなので、必ずしも学生向けとは言えないところがある。出て来るシチュエーションが学生生活とは関係ないものが多いですからね。で、そんなテストを学生に受けさせて、果たして意味があるのか。

 でまた社会人向け、ビジネスマン向けの上、さらに英米中心主義ですからね。その点でもまた実情と合わないところがある。日本人にとって、本当のビジネスの場というのは、例えば中国の会社と取引するのに、日本人ビスネスマンと中国人ビジネスマンが英語で打ち合わせする、というようなものでしょ。つまり、「非ネイティヴ対非ネイティヴ」なんてのがかなりのウェイトを占めるはずなのに、そういうシチュエーションをTOEICは想定していないというね。

 でも、ま、その辺は百歩譲ってよしとしましょうか。

 しかし、こういうものを導入すると、大学の上層部は、「うちの学生のTOEICのスコアはやたらに低いではないか。英語科の教員は何をやっているんだ」というようなことを言い出すに決まっています。

 だけど、そんな1週間に1度くらいの授業で英語が上達するくらいなら、誰も苦労しませんって。学生のTOEICスコアが低いのを、こちらのせいにされたら、たまりませんわ。

 大体、どうしていつもいつも英語の教員には「成果」を出すことが求められるのか。それが問題です。

 例えば英語以外の教科、例えば「体育」を例に挙げれば、日本人なら誰だって小学校、中学校、高校、大学教養課程で十数年、体育の授業を受けているわけでしょ? 十数年ですよ。だったら、日本人の誰もがバック転の一つくらいできそうなものですけど、実際にはほとんどの人ができないでしょ、バック転。十数年、体育教育を受けてきてバック転一つできるようにはならない。だけど、それをもって「体育の先生方は何をやっているんだ!」なんて批判されることはないじゃないですか。じゃ、なんで英語という教科だけ、いつもいつもそういう批判をされるのか。

 私、思うに、一般教養の英語なんざ、少なくとも週1回くらい横文字に触れる、その程度のもので良いのではないかと。一般教養はその程度でお茶を濁しておいて、英語を専門とする学生だけは徹底的に鍛える、というのでいいじゃないですか。

 他の大学って、TOEICをどんなふうに使っているんですかね・・・。どこか、TOEICを導入したために、すごくメリットがあった、というところはあるのかしら? そういう上手い使い方があるなら、まあ、私も導入に賛成しなくもないですが。

 とにかく、こういうやっかいな議題が出てきたりすると、それを考えるだけでものすごい労力。そんなものがなかった昔が、懐かしいですわ。やれやれ・・・。





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Last updated  October 7, 2010 12:20:50 AM
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