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釈迦楽

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November 18, 2010
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カテゴリ: 思わず納得!



 私はそもそも専門が文学研究ですので、英語教育というものにはほとんど興味がないのですが、しかし、英語教育を研究している人たちに対して不満だけは沢山ある。つまり、どうしてあの人たちは「英語学習の最善の方法は何か」、ということを確立しないのか、ということに対する不満ですね。明治維新以来、もう百数十年も日本人と英語の付き合いはあるのに、まだ「この手順で勉強すれば、英語ができるようになる」という方法を一つも確立していないのは、英語教育研究者の怠慢以外の何物でもないのではないかと、そう思っているわけ。

 その不満が募るあまり、三年ほど前のことですが、専門でもないのに英語の教則本を書いてしまったことすらあります。これは「ベーシック・イングリッシュ」という概念を日本人向けに解釈し直したもので、私は外国人が英語を勉強するのだったら、この方法が一番いいと思っているので、それを積極的に推したわけですね。

 でも、自分で書いてみて非常に勉強になったことは事実。つまり、教則本を書くとですね、そこに自分の英語学習に対するスタンスがものすごく鮮明に表れるんですね。ああ、自分は英語というものを、こういう風にとらえているんだな、と。

 で、そんな自らの経験を踏まえまして、また今年、大学院の授業で英語教育を専門に勉強している人たちのクラスを担当することになったのを機に、その人たちに向かって「自分で『これが最善の方法論だ』と思う英語の教則本を作ってみなさい」という宿題を出したわけ。一度それをやると、自分の「英語哲学」がよくわかるから、と。

 ところがね、私にはこれ以上明確なものはないだろうと思われるこの私の指示が、院生たちにはどういうわけか通じないんですな。

 私が、「既存の英語教育のスタイルとか、指導要領なんかのことは考えなくていい。とにかく、自分で『この方法でやれば、英語を習得できる』と信じる方法を、ひとつ作ってみなさい」と言っているのに、どうしても既成の枠にとらわれてしまって、そこから飛び出すことができないようなんです。

 私としては、それが英語学習の最善の方法だと思うのであれば、英語学習を始めたばかりの中学生向けの教則本の第一行目に「まずは以下に示す二万語の英単語を1か月以内にすべて暗記しなさい」という指示を出したっていいと思っていて、その場合、重要なのはその二万語の選択だと思っているですけど、そういう教則本を書こうとする院生は一人もいない。

 じゃあ、彼女らがどんな教則本を書くつもりかというと、たとえば「最初から文字を導入すると、英語嫌いになる生徒が出てくるから、最初は文字を一切使わない」とか、そういう方針で行く、というのです。あるいは「英語学習には動機づけが重要だから、料理を作るという課題を与え、その目的の達成のためには英語で書かれたレシピを読まなければならないというシチュエーションを作り、実際に料理を作りながら楽しく英語学習をさせる」とか。

 あるいは、小学生向けの英語教則本を書く、という目標を立てたある院生は、とにかく最初は英語の歌を歌ったり、自己紹介をしたりする、というプランを立て、しかも文字は一切使わない、という方針で行くそうで・・・。

 で、そんなプランを聞かされた私が仰天して、そんな生易しい方法で英語が習得できると思っているの? と問うと、いや、生徒たちが一般に持っている英語学習への抵抗を減らすためには、こういうのが一番いいんじゃないかと思うのですが、ってなことを言う。

 そこで私が、「いや、そもそも外国語を学ぶということはすごくキツイことなんだから、抵抗を減らすとか、そんなこと言っている暇ないでしょう?」と問うのですけれど、「英語教育」を専門に勉強している彼女たちには、私の言うことはさっぱり通じないわけ。相変わらず、「5時間かけて、英語のレシピ通りに料理を作る」なんて言っている。

 私に言わせれば、英語のレシピで料理を作ったり、英語の歌を歌ったりすることは、英語学習でもなんでもない。ただの娯楽です。そんなの英語を勉強する最善の方法では絶対にないと思う。だけど、私のその意見は、どうしても彼女たちには伝わらないんだなぁ・・・。


 で、そんな院生たちと激論を交わしながら私が遅まきながら気付いたことは、ですね、日本の英語教育の研究者たち、およびその卵たちが日夜研究していることは、「如何にしたら英語ができるようになるか」ではまったくない、ということです。彼らはそういうことを研究しているのではない。

 彼らが研究しているのは、「英語学習者(初学者)が、いかに英語嫌いにならないようにさせるか」だったんです。

 だから、いきなり文字を教えたらダメだ、とか、文法を教えたら英語が嫌いになる子が出てくるから、とりあえずそれは避けよう、とか、とりあえずは歌を歌おうとか、料理を作ろうとか、そういう発想になるんですな。

 どんな茨の道でもいい、とにかく英語ってのは、どうやれば身につくのか。英語教育の研究者たちが作る「世間」には、どうやらワタクシのこのシンプルな問いは、届かないらしいのでございます。





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Last updated  November 19, 2010 01:48:03 AM
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